キスから始まる異世界ハーレム冒険譚

楠富 つかさ

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第二十八話 ステラとデート

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 翌日、まずはステラとデートすることにした。最初に誘わないと何かと理由をつけて逃げられてしまいそうだったから。

「ったく、別にあたしに時間割かなくなっていいだろ。他の連中をだな」
「いやぁ、そういうわけにはいかないよ。ステラだって大事な仲間だし。私だってステラとデートしたいって思ってたから」

 ステラはちょっとひねくれたところがあるけど、真正面から好意を伝えればそれを無下にするようなことはしない。こういう性根に感じられる真っすぐさがステラの魅力なんだよなぁ。
 それに時折見せる品の良さ。口調はちょっと粗野だけど、立ち居振る舞いや気遣いが、街のコソ泥のそれじゃないんだよなあ。でもきっと、ステラの出自に係わることだろうし、聞かない方がいいのだろう。

「ステラってちょっとミステリアスだよね」
「は? ……いや、ユールが明け透けなだけじゃないか?」

 ステラとのデートは大半が散歩、ある程度歩いたらレリエと行くお店とは別のお店でお茶をする予定だ。

「私にも私なりに秘密にしていることはあるんだけどなあ」

 異世界のこととか全然しゃべってないし。まぁ、言ったところで何かがあるとは思えないけど。

「ステラがいつか、ステラの秘密を教えてくれたら……その時は、私も何か秘密を打ち明けようかな」

 そうだ、もしステラが秘密を打ち明けてくれたらその時は初めてであった時……私たちがスリの被害にあった時、どうしてステラがスリなのか分かったか、それを教えてあげることにしよう。異世界には犯罪の手口を紹介して警戒を促す番組があるってことを。……テレビをうまく説明してあげられるかなあ。

「で、けっこう歩いたがどこでお茶するんだ?」
「あそこのお店、ちょっと高そうだったから興味あったんだあ」
「……だからこんな格好をさせられているのか」

 今日のステラは普段のチューブトップにホットパンツとはかけ離れた、うす黄色のワンピースを着ている。足元のサンダルも戦闘用ではなくおしゃれ用。私も冒険者って感じの恰好ではなく、それなりに品のある町娘みたいな恰好をしている。

「まぁ、いいお店に入るから身ぎれいにしてもらったっていうのもあるし、せっかくのデートなんだからオシャレした方が気分も上がるっていうか。そういうもんだよ」
「……まぁ。それくらいのことは分かるさ」

 はにかむステラが無性に美しくて、思わずドキッとしてしまった。……どういう経緯でステラがスリを始めたか知らないけれど、いつかは穏やかな生活を送ってほしいものだ。……まぁ、魔王討伐の旅に巻き込んでしまった私が言えたことじゃないかもしれないけれど。
 だからこそ、いつか魔王を倒して世界そのものが穏やかになったら、きっとステラも……。

「なんだ? 入らないのか?」
「もう、今行くよ」

 ステラのことがますます好きになった。キスしたいけど、宿に戻るまで我慢しようっと。
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