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第二十九話 クレアとデート
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ステラとカフェデートを終えた私は宿に戻って今度はクレアとお出かけだ。
クレアも多少はこの街でおでかけしているが、ほとんどは備品の購入のためだ。元商人ということもあってクレアの目利きは本当に頼りになる。というわけでクレアとのデートは商店のあるエリアとは逆サイド、観光というか歴史的建造物の多いエリアに向かうことにした。
「すごい建築物がいっぱいありますね!!」
聖都というだけあってどの建築物も大理石のような素材でできていて美しい。クレアも旅をしていただろうけど、そういえばクレアがどこを旅していたかなんていう話はあまり聞いたことがなかった。
「ねぇ、クレアがこれまでしてきた旅の話を聞かせてよ」
「え、私がしてきた旅……ですか」
近くの座れるところを探して座る。目の前には噴水があって、広場として開放されている場所のようだ。この世界の噴水、どういう仕組みなんだろう。魔法かな?
「ホーランセ大森林より南の街が拠点でしたから。ニシェクやトルキガ、熱い地域にも行きました。イェピギジェっていう街では本当に大変でした。砂漠地帯なんですけど、そこで貴重な香辛料が採れるということで買い付けにいったんです……。私はまだ小さくて体力がなかったものですから、途中のオアシスで預けられたんです。その時はすごく寂しくて……辛かったのを覚えています」
「そっかぁ……」
「そしてその貴重な香辛料が両親を……。どこからかうちのキャラバンが香辛料を積んでいることが漏れたらしく、賊に襲われて……それが原因で私は奴隷商人に売られました」
そんなことがあったんだ……。私はぎゅっとクレアを抱き寄せて、
「ごめんね、辛いことを思い出させちゃって……」
そう謝った。気軽に聞いていい内容ではなかった。けれど、クレアは私を抱き返しながら思いもよらない言葉を口にした。
「奴隷になった時は本当に怖かったです。でも、ご主人様に出会えて本当によかったです。今は幸せです」
「そっか。……なら、良かった。ねぇクレア、クレアは魔王を倒したらそのあと……何がしたい?」
「え? まだ……考えたこともなかったです。でも、レリエさんがやっているという事業を手伝えたら、いいかもsれませんね。今の旅の仲間たちで、ずっと一緒にいたいですし。もちろん、ご主人様とも。私は、ご主人様の奴隷ですから」
「そっか……でも、この度が終わったらクレアのこと、自由にしてあげたい、そう思ってるからね?」
「たとえ自由の身になったとしても……私はあなたの側にいますから」
翡翠のような瞳に涙を湛えて私を見つめる。彼女のおでこにそっと口づけを落とす。
「ありがとう、クレア。大好きだよ」
クレアのためにも、魔王を……必ず倒す。決意を新たにしたのだった。
クレアも多少はこの街でおでかけしているが、ほとんどは備品の購入のためだ。元商人ということもあってクレアの目利きは本当に頼りになる。というわけでクレアとのデートは商店のあるエリアとは逆サイド、観光というか歴史的建造物の多いエリアに向かうことにした。
「すごい建築物がいっぱいありますね!!」
聖都というだけあってどの建築物も大理石のような素材でできていて美しい。クレアも旅をしていただろうけど、そういえばクレアがどこを旅していたかなんていう話はあまり聞いたことがなかった。
「ねぇ、クレアがこれまでしてきた旅の話を聞かせてよ」
「え、私がしてきた旅……ですか」
近くの座れるところを探して座る。目の前には噴水があって、広場として開放されている場所のようだ。この世界の噴水、どういう仕組みなんだろう。魔法かな?
「ホーランセ大森林より南の街が拠点でしたから。ニシェクやトルキガ、熱い地域にも行きました。イェピギジェっていう街では本当に大変でした。砂漠地帯なんですけど、そこで貴重な香辛料が採れるということで買い付けにいったんです……。私はまだ小さくて体力がなかったものですから、途中のオアシスで預けられたんです。その時はすごく寂しくて……辛かったのを覚えています」
「そっかぁ……」
「そしてその貴重な香辛料が両親を……。どこからかうちのキャラバンが香辛料を積んでいることが漏れたらしく、賊に襲われて……それが原因で私は奴隷商人に売られました」
そんなことがあったんだ……。私はぎゅっとクレアを抱き寄せて、
「ごめんね、辛いことを思い出させちゃって……」
そう謝った。気軽に聞いていい内容ではなかった。けれど、クレアは私を抱き返しながら思いもよらない言葉を口にした。
「奴隷になった時は本当に怖かったです。でも、ご主人様に出会えて本当によかったです。今は幸せです」
「そっか。……なら、良かった。ねぇクレア、クレアは魔王を倒したらそのあと……何がしたい?」
「え? まだ……考えたこともなかったです。でも、レリエさんがやっているという事業を手伝えたら、いいかもsれませんね。今の旅の仲間たちで、ずっと一緒にいたいですし。もちろん、ご主人様とも。私は、ご主人様の奴隷ですから」
「そっか……でも、この度が終わったらクレアのこと、自由にしてあげたい、そう思ってるからね?」
「たとえ自由の身になったとしても……私はあなたの側にいますから」
翡翠のような瞳に涙を湛えて私を見つめる。彼女のおでこにそっと口づけを落とす。
「ありがとう、クレア。大好きだよ」
クレアのためにも、魔王を……必ず倒す。決意を新たにしたのだった。
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