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第8話 モブ、修羅場フラグをさらに立てる

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「―ねえ、私達、良いコンビだと思わない?」

 そうして、いつものように河原で稽古をしていたマフィに声を掛けて二人で木剣を打ち合っていると、マフィからそんなことを言われた。実際、マフィの稽古での成長は著しい。

 ミュラとの稽古も同じくらいすごいが、マフィはミュラとはまた違った動きをするため、おかげでかなり経験を積むことができている。だから、俺はそんなマフィの言葉に素直に頷きながら声を返した。

「ああ、俺もそう思うよ。マフィと稽古しているおかげで、かなり成長できたしな」
「そっか、良かった……実は私達が稽古してるの、結構噂になってるみたいなんだよね」
「ん? そうなのか?」
「うん。すごい剣捌きをしてる子供達が稽古をしてるって」

 はて? 似たような話をどこかで聞いたような……まあ、気のせいか。最近、強くなるのが楽し過ぎるせいでそんな風に思ってるだけだな。

 そんな俺に、マフィは構えていた剣を下ろすと、汗を拭いながら笑みを返してきた。

「実際、私もシュウのおかげで、なんかすごい成長した気がするんだ」
「いや、実際、マフィは間違いなく成長してるぞ」

 そう言って、俺はマフィのステータスを見る。

------

Lv 17

『英雄』
全ステータス上昇補正【中】
全状態異常耐性【中】
魔法【中級・全属性】

『剣士』
武器ダメージ増加
剣撃【小】

------

 Lv17……これが『プリテスタファンタジー』の世界を基準に考えると、恐らくレベルの最大値は100だ。そして、まだ『プリテスタファンタジー』のストーリー開始前だというのに、Lv3だったマフィのレベルがここまで上がった……これはかなりすごいことじゃないか?

 しかし、このレベルって概念、実は俺にしか分からないらしく、ミュラに聞いた時は―

「はぁ……何の話?」

 と返され、マフィに聞いた時は―

「レベル……?」

 と不思議そうな表情で返されてしまった。しかしまあ、この二人だけで決めるのは良くないと思い、エリシルにも聞いてみたのだが―

「レベル? え~と……人の名前か何か?」

 とまあ、こんな感じでレベルという概念を持っているのが俺だけだと判明したわけだ。ただ、この確認のせいで、俺が記憶の混濁をしていたこともあり、どこか「可哀想な子」を見るような目で対応されたのはいささか遺憾である……くそ、現実世界ならゲームをやってる子供なら誰でも知ってるよ!

「あ、そういえば、お師匠様から聞いた話なんだけど……」
「ん?」

 そんな風に俺が不名誉な扱いを嘆いていると、ふとマフィは真剣な表情でこんなことを教えてくれた。

「なんか最近、街の中を王国の騎士が巡回しているから気を付けなさいって言われたんだ」
「騎士団……? あぁ……そういや、居たな、そんなの」

 あれだ、『プリテスタファンタジー』じゃラスボスのミュラに倒されてばっかりの名前もない味方キャラだ。

 ただ、これも微妙に複雑な話なんだが……実は序盤の騎士団は完全に味方とは言えないキャラだった。というのも、『プリテスタファンタジー』では序盤は国王が騎士団を取り仕切っているものの、中盤以降ではその娘であるお姫様が騎士団に命令を下しているのだ。

 この国王なのだが、実はかなりの悪人だったことが発覚する……そもそも、ミュラがラスボスになる理由を作った人間というのが、この国王なのだ。

 序盤の黒幕であり、騎士団に命令して孤児院を襲ったのがこの国王なのだが……そんな国王に対して、亡き王妃の意志を継いでいた王女様は正義感に溢れており、その王女を国王の幽閉から解放するのが主人公の序盤の目的の一つだ。

 しかしながら、名前もなく、顔すら流用されている騎士団は文字通り脇役キャラであり、国王の命令だろうと、王女様の命令だろうと、とりあえず命令を受けて「おおおおおっ!」と歓声を上げながら突進するだけの存在であり、同じ顔が流用されているため、「あれ? さっきお前、やられてなかったっけ?」などと心の中で何度もツッコミを入れたくなる脇役中の脇役である。

 とはいえ、国王の命令で孤児院を襲ったことは『プリテスタファンタジー』では事実であり、この状況では警戒しておくに越したことはないだろう。そのため、俺は情報収集もかねて、マフィに声を返した。

「その騎士団が巡回してると何か問題があるのか?」
「知らないの? 騎士団って全然良い噂を聞かないんだよ? 王様に逆らった人を王都から追い出したり、目に付いた土地を無理矢理手に入れたりしてるって噂だよ」
「序盤で死ぬ悪役の鏡みたいな奴だな……いや、本当にストーリー序盤で死ぬボスだったわ」
「ストーリー序盤……? ボス……? えっと、何の話……?」
「あぁ、いや、クソみたいな王様だって言いたかっただけだよ」
「……それ、王様の耳に入ったらヤバいから気を付けてね?」

 おっと、いかんいかん……ミュラやエリシルを狙う非道な輩に思わず本音がもれてしまっていた。それに、主人公であるマフィも戦って、その前にその国王のせいで色々あって苦労するんだよな……やっぱクソだな、あれは、うん。

「ん……? あ、見て。ほら、噂をすれば騎士が来たわ……」
「あれが騎士団か……さすがにゲームと違って使い回しじゃないとはいえ、やっぱり、どれもこれも似たような顔ばっかりだな」
「ゲーム……? よく分からないけど、騎士団に目を付けられたら大変よ……だから、騎士団を見たらこうやって隠れた方が良いわ」

 そうして、俺が『プリテスタファンタジー』での苦労を思い出していると、マフィが俺を連れて岩陰へと連れ込み、俺達はその陰から騎士団の様子を伺うことにしたのだが……ゲーム内での理不尽な怒りが収まらず、俺はマフィの言葉を聞く余裕もなく一人呟いていた。

「くそ、あいつらのせいでミュラがラスボスになるし、マフィがどれだけ面倒なことに巻き込まれたと思ってるんだ? 一発、いや三発くらいは殴ってやりたい気分だぜ……」
「え? ミュラ? ラスボス……? えっと、誰のこと? それに、私? あの、心配してくれるのは嬉しいけど、でも、私はまだ騎士団から嫌がらせを受けたりはしてないから……」

 何やらマフィが今の俺はそれどころではなかった。俺が男主人公版のマフィを操作してた時も国王と戦う時は敵として戦うし……味方の時は弱いくせして、敵だと強いとか反則だろ。おかげで何度ゲームオーバーを経験したことか……。

「まったく、マフィを危険な目に晒しやがって……許せん」
「え?」
「ん? どうかしたか?」
「え、あ、いや、何でもないけど……」
「そうか? なら良いが」

 なんかやたらマフィが動揺している気がするが、まあ騎士団の連中に目を付けられたくないって言ってたし、この状況なら緊張くらいするか。

「それにしても……あいつらが向かってる方向、孤児院の方じゃないか?」

 俺はそんな騎士団の連中にどこか胸騒ぎを覚えながらそう口にする。おかしい……孤児院が襲撃を受けるのはまだ先のイベントのはずだが―

 ――いや、待てよ? 確かに、孤児院が壊されるのはまだ少し時間があるが……そもそも、それ以外に騎士団から襲撃を受けていた可能性もあるんじゃないか?

 公式の設定資料でも『プリテスタファンタジー』ではミュラは孤児院を失い、その復讐のため、ラスボスになったと書かれている。しかし、逆に言えば、それは細かいことが分からないということだ。

「―悪い、マフィ。今日の稽古は中止だ」
「え? どこに行く気?」
「決まってるだろ―」

 俺は胸騒ぎをおさえるべく軽く深呼吸すると、木剣を片手にマフィの下から去ると、孤児院の方に向かいながらこう返した。

「―俺の家族が居る家に、だよ」
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