異世界陸軍活動記

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パルドラ要塞

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 拡張と改修工事が完成した。

 いままでは番号を振られただけの名前も無き砦だったが、今後ハルツールの国土防衛の要となる要塞へとその姿を変えた。
 名前もパルドラ要塞と新しく立派な名に命名される事になった。

 あくまでも通路的な立ち位置のキャンプ地に比べ、パルドラ要塞には対空兵器や対人用の兵器、それに立派な防壁まで、まるで移転門を守る要塞のようになった。

 内部には兵士の宿舎、テントではなく宿舎だ。俺が泊まる場所は大部屋にはなるがテントよりはかなりましになっている、その他にも食堂やら簡単な娯楽施設まで完備されている。

 それまで不法占拠のように土地の一角に勝手に家を建てていたハヤト隊だったが、宿舎が完成されると立ち退きを命じられ、全員宿舎に移る事になった。
 ソルセリーが最後までダダをこねていたが、それも却下され無事に全員移動になった。

 ソルセリーは一人部屋じゃ無ければ嫌だと言い出したが、元々ソルセリー用に1人部屋を空けていたらしく、ソルセリーはそちらに移動している
 
 ソルセリーと離れる事になったせいだろうか? エクレールの顔色が最近よくなってきている。
 
『解放感』

 という言葉がピッタリとあう、ソルセリーが不機嫌な時は彼女の相手をする事を余儀なくされていたエクレールは、よく腹いせに俺に対し八つ当たりをして来てたのに、最近はそれも無くなった。
 ストレスが無くなったのは良い事である

 タクティアは元々本部の参謀なので1人部屋を、俺とライカは他の兵士と同じで大部屋になった。
 最初は久々に修学旅行っぽい感じがして楽しかったのだけど、それが何日も続くと結構ストレスになる、ライカも同じらしく

「あの土の家が恋しいですよ」
 何て言ってくる、俺も戻れる物なら戻りたい、大部屋だとデュラ子に抱きついて寝る事も出来ない、あの柔らかくてひんやりした体に抱きついて寝ると、あっという間に眠れるから良かったのに‥‥‥‥

 そして女神に封じられた『探知』魔法の対策は何もできていない、ハヤト隊には探知魔法を使える人間がいないという事になる、色々試してはみたが成果はゼロ、お手上げ状態だ。

 今まで普通にあったものが急に無くなると、途端に不安に駆り立てられる。何もないのが分かっていても不安でついそっちの方向を見てしまう。
 今までだったら見なくても探知で何かが来たなと確認できたが、探知が無くなってからは全て自分の目で確認が必要になってしまう

 あまりにも周りをキョロキョロしていたせいか

「隊長は最近ずっと周りを見てますけど、どうかされたんですか?」
 など指摘される、軍はもちろん、同じ部隊の隊員にすら探知が無くなった事は秘密にしているので

「幽霊が見える」
 と嘘をついて誤魔化した。
 
 このまま探知の事は誤魔化したままでいいのか、それとも隊員達だけには本当の事を言った方がいいのか? タクティアはまだ話すなと言っていたので今は話さないでおこうかと思う





 ・・・・

 ・・・・

「・・・ってウチの隊長が言ってて」

「それって本当かよ? この宿舎でか?」
「でもライカの所の隊長ってさ、ほら‥‥結構特殊だろ? だったらそう言ったのも見るのかも」
「そう言えば俺、トイレに行った時、白い服着た人がいたような気がしたんだよ」
「お、俺も似たような事が━━」
「俺の時は━━」
「俺の━━」
「私の━━」



 ◆◇


「ハヤト隊長、ハヤト隊長」
 タクティアが俺の耳元に小声でささやいてくる

「どうした?」
 内密な話かな

「ハヤト隊長の泊っている宿舎に幽霊が出るって本当ですか?」

「えっ! マジで?」

「結構な数の目撃情報があるんですよ、ハヤト隊長は知らなかったんですか?」

「そんな怖い事言わないでよ、初耳なんだけど」

 怖ぇぇぇえ! いや、ちょっと前に戦闘とかあったけどさ、死んでから出てくるとか勘弁してよ
 ‥‥‥‥ティンパー!? もしかしてあの時倒したティンパーなの?
 やめてよ! さっさと成仏して魔力に変わってよ!



 ◆◇
 

 

「最近体の調子がいい」
 
 エクレールは刀を振るい、自身の体が軽い事を感じていた、同じ女性隊員達からも
 「肌の調子がいいね」「動きが鋭い」「いい事でもあったの?」
 などと聞かれる事が多くなった。

 理由としては自分でも分かっている、ソルセリーと会う機会が少なくなったからだ。
 兵士の宿舎に移動になったが、ソルセリーとは別々の宿舎になった。
 以前は隊長の作った一軒家だったが今は建物自体違う、食事は時間の関係で一緒になる事が多いが寝る時などは完全に違う、となると自然とソルセリーと会う時間が少なくなってくる。

 間違いなくソレが原因だ。

 体が軽いどころか心が軽い、それはソルセリーの作った食事が食べられなくなるのは残念だが、何か不機嫌になると、蒸かしたパナンだけだとか‥‥まぁそれはまだいい、他の兵士は保存食用のパナンなど食べているのだから、普通に考えても少し贅沢なのだ。

 しかし、特に機嫌が悪い時は、隊長の召喚獣が育てている苦い草をもらい、それをわざわざ入れてくる、無表情で目を見つめられながら
「おいしい?」
 などと言われたら食べない訳にも行かないし、食べ終わるまで目を放さない、あんな苦行を味わう位なら保存食のパナンを食べていた方がいい

 とにかく、今私は何年かぶりに晴れやかな心で日々を送っている、一応は最前線に配属されているのに不思議なくらいだ。

「ふむ、今日も中々調子がいいな」
 刀を振る音が自分でも鋭く感じる、ライカからは素振りでは無く実戦形式の方が上達すると言われたが、この素振りこそ私の心を落ち着かせる要因の一つなのだ。何も考えずに刀を振るうと悩みや煩悩など全て消え去ってしまう。

 エクレールは何度も刀を振るい、雑念を払っていた

「はぁ・・・はぁ、そろそろ昼かな?」
 一度宿舎に戻ろうか、流石に汗まみれでは食堂には入れまい、だれか『洗浄』を使える者を捕まえて‥‥‥‥

 『洗浄』魔法を使える者を捕まえる為自身の部屋に戻る、10人が一緒に寝泊まりできる部屋でエクレールの部屋には『洗浄』魔法を扱えるものが2人相部屋になっていた。

 部屋のドアをあけいるかどうか確認すると・・・
「あれっ? エクレールどうしたの?」

「うむ、洗浄魔法を掛けて貰いに来たんだが‥‥ん?」
 エクレールがふと、自分の荷物が所定の場所にないのに気付いた。
「私の荷物が無いのだが‥‥」

「聞いてなかったの? 部屋が移動になったのよ」

「私だけか?」

「そう、さっき荷物も取りに来てたわよ」

「聞いても無いのだが、場所はどこになる?」

「場所はね━━」







「いらっしゃいエクレール、また一緒になったわね」

 どうして自分はこの部屋に移動になったのか? 不思議でもあり絶望でもある

「‥‥ソルセリー‥‥私はここの部屋になったみたいなんだが」

「ええ、荷物はもう運ばせたわ、貴女はそこのベッドを使ってちょうだい」
 一人部屋には狭いが、ベッドがくっついた状態で並んでいた。

「そうか‥‥‥と、所でソルセリー何故私がこの部屋に移動になったのだろう? ソルセリーは知っているか?」

「知ってるわよ、私が呼んだんだから」

「へっ?」

「最近宿舎で幽霊が出るらしいじゃない、貴女が怖がっていると思って呼んであげたのよ」
 しれっとそんな事を言いだす

「あ、あははは‥‥‥」
 口では笑っているが心は張り裂けそうだ

「ほら、そろそろお昼よ、食堂に行きましょう、‥‥‥‥ん? 嫌だ、貴女汗臭いじゃない、どこで何をしていたのよ、先に行ってるからさっさと洗浄魔法でも掛けてきなさいよ」

 ソルセリーはエクレールの横を通り過ぎていった

「あはっ‥‥‥‥あははは‥‥は‥‥‥‥あ~あ」

 エクレールの苦難の日々は続く

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