異世界陸軍活動記

ニボシサービス

文字の大きさ
135 / 260

私にも作れ

しおりを挟む
「はてさて、一体何を作ったらいいやら‥‥」

 年が明け、やっと休暇がもらえる事になり、本来なら何もしないでぼーっとしていたいが、俺は家の居間でソファーに座り、「うーんうーん」と悩んでいる

 悩んでいる理由、それはソルセリーの何かを作らなければならない。
 エクレールに作ってあげた弓を見たソルセリーが、「私にも作れ」と強要してきたからだ。

『何を作ったらいいの?』
『任せるわ』
 といったやり取りがあり、作る物も完全お任せである

 日本にいた頃、母がよく父に電話で
「今日何が食べたい?」
 と聞いたりしていたが、父は
「何でもいい」
 といつも答えていた。
 
 夫婦仲がいい両親だったが、こればっかりは母がよく文句を言っていた。
「何でもいいって言うのが一番困る」
 
 で、次に俺に何が食べたいか聞いてくるのだけれど、俺は常に餃子一択だった。母が父に何が食べたいか聞いた時は、必ずと言っていいほど餃子になる、餃子だったら家の家族は誰も文句を言わないし

 今思うと、母は餃子を作りたい時は父に聞いていたのかもしれない、俺も言い出しっぺだし、皮に包むのだけは手伝っていた。
 もしかして、俺が手伝うから楽できると思っていたのだろうか?

 エクレールは弓と注文があったし、ライカに作ってあげた魔法が発射出来る銃は付与してあげただけだし、タクティアに至っては、完全に俺の玩具である。
 でもって、ソルセリーは何でもいいと言って来た。一応それぞれ希望があったから良かったが、何でもいいと言われると本当に困る、今この瞬間に母の悩みを理解した

「どうぞ旦那様、クオルシが入りました」
 背中に背負っていた小さな魔女3人を切り離した状態の、召喚獣ラグナ(見た目悪魔)が、クオルシを入れてくれた。
 気が利くというか、何とも素晴らしい執事である、たまにこいつが召喚獣である事を忘れる時がある

「おっとぉ、ありがとう」
 コーヒーに似た味のクオルシを一口飲み、頭の中をすっきりさせよう。

「ひい、ふぅ、みぃはどうした?」
 もうやる事も無いはずだが、ラグナの背中に引っ付いていないのでちょっと気になった

「はい、3人共旦那様の部屋におります」

「‥‥‥‥そう」
 以前、何度か俺の脱いだ洗濯物を被っていた事があったが‥‥いや、怖いからこの先の事は考えないでおこう

「所で旦那様、お考えになっているのは、ソルセリー様にお作りする物の事で悩んでらっしゃるのでしょうか?」

「そうだよ」

「でしたら、女性ですしアクセサリー型の防具などはいかがでしょう? 魔石に『耐壁』か『幻惑』など付与されたら、いざという時に役に立つかと」

「いや、アクセサリーはNGだよ」

「は? 『えぬじい』ですか? 申し訳ございません、『えぬじい』とは?」

「あちゃ~、ごめんごめん、ついついマルチリンガルな才能を出しちゃったか」
 いけないいけない、この世界には無い英語を披露してしまった。

 一つの言語しかないこの世界で、俺は日本語はもちろん、他の言語(単語)も話せる、不意に口にしてしまう事があるが‥‥仕方ないよね、頭いいし俺

「流石、旦那様ですね、まるちりんがると言う未知の言葉まで‥‥」

「悪いねラグナ、今度から気を付けるよ」

「気を使って頂いてありがとうございます、多彩な才能をお持ちの旦那様の執事である事をこのラグナ、誇りに思っております」

「そうか、俺も誇りに思われるような主人(召喚者)であるように努力しないとな」
 はっはっはー、と高笑い

「向上心に溢れる旦那様を見たら、我らも嬉しく思います。所で、多分ではありますが、『えぬじい』とは、『No good』の略では無いでしょうか?」

「はっはっ‥‥‥‥あ、うん‥‥‥‥」
 なんとも優秀な召喚獣執事である。

 


 ちなみに、リハビリの為、暫くフェルド・ガーンでいた俺だったが、部隊の隊員達との間に溝を感じ始めたのと、リテア様という燃料が近くに無かったため、ウエタケ・ハヤトに戻りました。


  ◆◇

「ただいまー」

「お帰りなさいませ旦那様、留守の間にお客様などは来られませんでした」

「うん、夕食まで鍛冶部屋に籠るから、何かあったらよろしく」

「はい」

 クオルシを飲み一息いれた後、俺は軍本部に向かい必要な物を全て揃えてきた。
 タクティアに連絡し、あらかじめ揃えて欲しいと伝えてあったので、到着した時には既に準備はしてあった。
 それにしても、タクティアも休暇のはずなのに働いていたとは‥‥まぁ、知ってて連絡したんだけど

「ハヤト隊長も大変ですね」
 とタクティアは言っていたが、どう考えてもアイツの方が大変だと思った

 これが社畜ならぬ、軍畜か‥‥‥‥

 鍛冶部屋に入ると、そこに本部から持って来た物を全て取り出す、まずは右手用のガントレット、ソルセリーは自分の専用の槍を構える時、右手を前に左手を後ろの方を持つ、なので右手用にした。
 持って来た物は軍が作っている中で、一番頑丈で良い物になる。
 それと天然魔石二つと、人工魔石二つである。

 何を作ろうかと悩んだ末、防具であるガントレットを選んだ。
 腕を防御する防具だ

 他の皆と一緒で武器にしようかと悩んだが、前に出ず、後ろで守られていなければならないソルセリーに、武器を持たせても意味無いだろうと考えたから、もし武器なんか渡したら調子に乗って前に出てくるかもしれない

『私も前に出るわ!』

 ‥‥‥‥うん、ありそう

 だから作ったのは防具でガントレット

「さて、やりましょうか!」
 早速取り掛かった、夕食までには終わらせないと、今日はカレーに似た辛いスープの日だからね。

 まずはガントレットの表面に、魔石を埋めるための穴を開ける、表に3っつ、それと裏に一つ、裏に開けた穴は四角の平たい穴。
 開けたらガントレット自体に『硬化』を付与、これで強度を上げる、裏の四角の穴には、同じく平たい四角にカットしてもらった人工魔石、それに『重力』を付与、防具を軽くし、表に開けた穴には、『耐壁』を付与した人工魔石が一つと、『幻惑』と『水』を付与した天然魔石が各一つずつ。

 ソルセリ―は何があっても守らなければならない、もう『破壊の一族』は彼女しか残っておらず、例え部隊が全滅しても、彼女だけは逃がす。
 ただ、彼女自身にも身を守る術が必要、『幻惑』を付与した天然魔石は、発動すると魔石自体砕け、その力全てを解放する、それ一つで安い家一軒買えるサイズの価値を持つ天然魔石、それを使い捨てにするのはもったいない気がするが、ソルセリーの戦術的価値というのはそれ以上でありかなりのおつりがくる、それを考えれば安い物だろう。
 そして、その魔石に付与する『幻惑』魔法は、俺が出来る最高の魔法を、更に魔石自体が耐えられるギリギリまで俺が魔力を注入する

「ふぅー‥‥‥‥」
 息を深く吐き、ゆっくりと空気を吸い、詠唱する

「‥彷徨える魂よ、我に内包する魔力を捧げる、その力を喰らい糧とし、全ての者を惑わし、我を隠せ‥‥‥‥『幻術』」

 『付与』魔法を発動した瞬間、大量の魔力が吸われ一瞬 クラッ としたが、そのまま魔石に集中する、細心の注意を払い、魔石に更に魔力を注ぎ込む。
 魔石が耐えられなくなるギリギリまで‥‥‥‥


 ・・・・

 ・・・・


「はぁ~~」
 疲れた‥‥‥‥

 久々の全力集中、魔法を付与し更に駄目押しで魔力を注いだ結果

「だるい」
 
 俺の魔力量にはまだ余裕があるが、魔石が駄目にならないように慎重に注ぎ込むのは神経を使う、リズムゲームをやった後のあの疲れ、瞬きせず、集中するあの緊張感。

 『幻惑』を付与した天然魔石を、さっそくガントレットの表部分にはめる。
 一辺試してみたいが、流石に家一軒の価値のある物を試す気にはなれない、付与の他に更に魔力を注いだ分、どれだけの効果があるのか俺自身にも未知数。
 だが、かなりの効果があるだろうと思っている

「あと一つ『水』魔法の付与か‥‥」

 続けて取り掛かろうと思ったが、今ので集中力が切れてしまった

「旦那様、夕食の支度が出来ました」
 ドアの向こうでラグナの声がした

「え! もう?」
 時計を見ると、既に時間は夕食の時間だった

「結構集中してたんだなぁ‥‥今行くよラグナ!」

 続きは明日やろう、今日は何だか疲れた。
 ガントレットを作業台に置き、鍛冶部屋を出る。

 何かを作れとソルセリーに言われた時、もう一つ注文を受けた
「名前も隊長が考えて欲しい」と

 その時、自分で付けなよと思ったが、その言葉を飲み込む。
 その名前だが、付与した魔法でピンときた。

「セイレーンだな」
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

処理中です...