異世界陸軍活動記

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勇者 ②

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 敵の奇襲に持ちこたえたが、輸送任務中に敵部隊に襲われ、一部の荷物が駄目になってしまった。

 だがそれが問題なわけではない、マシェルモビアが支配する緩衝地帯に敵国ハルツールが入り込んでいた。という事が問題なのだ

 それに加え‥‥

「それは本当なんだな? フロルド」

「ああ、間違いねぇ、俺っちはアイツを殺す為に前線を希望したんだ。アイツの顔は忘れねぇ」

 フロルドは自身が遭遇した敵兵の中にグースがいたと証言、フロルドの所属する部隊どころか、砦全体の兵士が動揺する。
 話を聞きいた内の一人で、フロルドに加勢しようと近づき、足を投擲武器により弾かれた味方兵士は卒倒し、先ほどから倒れたままになっている。
 フロルドと戦っていた敵兵が、まさかグースだとは思っても見なかったのか、知った瞬間口から泡を立てて倒れてしまった

「あの中にグースが居たなんて‥‥」
 小隊長が青い顔をし俯く

「もちろん追撃するんだよなぁー、補給物資は届けたんだ。このままあの野郎を追っかけようじゃねぇか」

「ば、馬鹿な事を言うな、グースなんかと戦えるわけないだろう、あんなのと戦ってもしも‥‥」

 死んだら魂を喰われるってか? くだらねぇ‥‥

「なぁ小隊長、敵が領土に入って来てくれてるのに見逃すつもりか? わざわざあっちから来てんだよ、こっちが出てやらなくてどうすんだよ? もっかい言うぞ、ここはマシェルモビアの領土なんだ。ハルツールの軍がここまで来てんだ、戦わないでどうすんだよ」

「し、しかしだな‥‥相手はグースだ。もしも隊員の命が━━」

 この腰抜けが‥‥
「別にお前みたいなヘタレが相手しろとは言ってないだろぉ?」

「おい! フロルド、お前隊長に向かって!」

「うっせぇな! ならお前がグースの相手をすんのか?」

「うっ‥‥そ、それは‥‥」

 どいつもこいつも‥‥
「なぁ隊長よぉ、俺っちが前線を希望してる理由は知ってんよな?」
 フロルドはすっかり黙り込んでしまった隊長に顔を近づける

 隊長は少し気圧され
「あ、ああ」

「グースはなぁ、俺っちの獲物だ。他の奴には渡さねぇ、俺っちがこの手であの首を取るんだよ」

 ティンパーの仇は必ず取らなければならない、だからフロルドは前線を、グースが出没したとされる場所に志願したのだ

「グースの相手は俺っち一人でやる、他の奴は周りの奴らを抑えて欲しいんだよ、助けはいらねぇ、アイツを倒さないと俺っちは終われないんだよ‥‥‥なぁ、頼むよ、ティンパーの‥‥親友の仇を取らせてくれ、次は必ず奴を‥‥‥」

 隊長を見つめ真剣な顔で訴えるフロルドの頬には、本人も気付かないうちに一つの雫が零れ、手の平に爪が食い込むほどきつく握りしめられていた

「フロルド‥‥‥」
 その流れた後を見た隊長は
「‥‥‥援護は出来ないぞ」

「ああ! それでいい! 俺っちが負けたらそのまま捨てて行ってもかまわねぇ、他の雑兵を抑えてくれればそれでいい」

「‥‥わかった。だがこの小隊だけでは戦力的に足りない、他の━━」
「ウチの隊が加勢しよう」

 小隊長が応援を打診しようとすると、砦にいる別部隊の隊長が手を上げる
「グースの相手は流石に隊員にはさせられない、それでもいいなら我が隊が加わろう、それでいいんだな?」

「ああ、恩に着る」
 滅多に人に頭を下げないフロルドは、深く頭を下げた

「良かったね、ルイバ」
 横からアンナが飛びつき、フロルドの顔をゴシゴシと拭きだした

「お、おわぁ! 何だよアンナ!」
 自分が涙を流しているとに気づいていないフロルドは、アンナの手を振りほどく

「べっつにぃー、でもこれでグースを討ち取れるね、私も一緒にグースと戦ってやるから感謝しろよ」
 アンナは自分の籠手でフロルドの胸を叩いてくる

「アンナ‥‥」
 名を呼び、フロルドはアンナを見つめた

「えっ、ちょっと、こんな場所でそんなに見つめられたら━━」

「お前ちゃんと話聞いてたか?」

「え?」

「俺っちは一人でやるって言ったんだぞ? お前は少しは人の話を聞け」

「なっ!」
 自分の考えとは違った言葉が返ってきたアンナは‥‥

「ふん!」
 思いっきりフロルドの胸を叩いた。



 ◆◇


「まだ痛むか?」
 
「大丈夫だ、問題ない」
 エクレールに『癒し』を掛けられたハヤトだったが、まだ重く感じる胸に手をやる

「曹長!」
 リプケン小隊の隊長であるリプケンが、ハヤトに駆け寄る
「怪我をしたのか? 動けるか?」

「ああ、なんとか、リプケンそっちはどうだ?」

「うちは‥‥もう戦うどころではない半数が戦闘不能だ、すまない! 最初の魔法砲撃さえ成功させていたらこんな事には」

「いや、リプケン隊のせいじゃない、あの補給部隊には厄介な奴が居たせいだ」
 まだ胸が痛むのか、深く深呼吸するように息を吐く
「それよりも直ぐに安全圏まで撤退しないと不味い事になる、動けない者は動ける者がおぶって行くしかない」

「待ってくれ、それは曹長がいれば追って来られる事は無い、そのはずだっだろう?」

 ハヤト隊の一人でタクティア・ラティウスは、グラースオルグでもあるハヤトが居る事で、敵兵は無理に追って来ない、そう考えていた。
 今回の作戦でタクティアは、そのためにハヤトを、そしてリプケン小隊に随伴させたのだった

 だが‥‥

「いや、アイツは喜んで俺を追ってくる、間違いない」

「アイツ?」

「とにかく、追撃は必ずある負傷者には悪いがすぐに帰還しよう、追撃されて時間を取られたら他の敵拠点からの援軍で完全に退路を塞がれる」

「‥‥分かった、曹長がそこまで言うならすぐに撤退しよう」
 リプケンは少しだけ考えた後、即時撤退をすると判断した

「尻は俺が持つからリプケン小隊は先に行ってくれ、エクレールもリプケンに続いてくれ」

「分かった」
「ああ」

 ハヤトは申し訳なさそうな顔で
「オーバは‥‥悪いが俺と一緒にしんがりだ」

「了解した」
 

 ・・・・

 ・・・・

 リプケン隊とエクレールが先行して撤退し、ハヤトとオーバは少し遅れてその後を追う

「隊長、まだ胸が痛みますか?」
 少し呼吸が乱れている事にオーバは気づく

「ああ、痛むというより息苦しいだけど」

「だったら召喚獣に乗って移動したら」
 なるべく負担が無いようと思い提案、だが

「オーバはカーネロに乗った事はある?」
 召喚獣でトラに似たような容姿の召喚獣である

「はい、一度だけですが」

「乗り心地いいよねあれ、早いし揺れないし‥‥でも俺の召喚獣ってかなり上下に揺れるんだよね、だから走っていた方がマシだったりするんだ」

「なるほど」
 オーバはそれに納得

「それと‥‥いきなり『召喚者殺し』を投げつけられたら対処出来ないからね」
 投げられた『召喚者殺し』に気付かず、そのまま召喚獣に命中する場合もある

「隊長、それは『探知』魔法を使って━━」
 索敵したら‥‥と言いかけたオーバだが

「悪いけど俺、『探知』魔法が使えない状態にあるんだよ」

「えっ?」

「理由は聞かないで欲しい」

 そう言われてしまうとオーバには何も言えないし、それ以上詮索しない
「了解しました」
 とだけ答えた。

 そして隊長であるハヤトは、アイツと言っていた男は必ず追ってくると言っていた。
 放った魔法が直ぐに爆発させられたのもあるが、たった一人で小隊規模もしくは中隊規模に力が届くであろうと言われているハヤト、そのハヤトも追い詰めた人物‥‥オーバはハヤトと共にしんがりを務める事になったが、死ぬ気は無い、死なないためにもアイツと言われた男の情報が欲しかった

「隊長、あの男の情報が欲しいのですが」

「うん」

「まず魔法が効かないのですよね」

「ああ、『水』は発動もしないし、その他の属性魔法の全てが放った直後に爆発を起こす、その事から奴が使える魔法は『水』だけだと思う、何度か戦ったが『水』以外の魔法は見ていない。
 ただし、地中には魔法が発動する事が出来た。地雷を設置したがそれを防がれる事は無かった。
 そして属性以外の魔法は発動可能で通用する、それも確認済み、それと奴は元召喚者だが、召喚獣を犠牲にして『召喚者殺し』を手に入れた可能性がある、『召喚者殺し』を手に入れてから、奴は召喚獣を出していない、そのため奴はたった一体の召喚獣を犠牲にしたと思う、だから召喚獣は出せないと思って構わない」

「なるほど‥‥」

「それと、『召喚者殺し』は投擲してもすぐに手元に戻ってくる、つまり再召喚だ。投擲したと思っても気を抜くな、それに‥‥」

「それに?」

「奴の槍捌きは‥‥ライカの剣技には劣るが、同等と考えておいて欲しい」
 
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