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閑話 ウエタケハヤトの新年
しおりを挟む竜騎士隊ではなく、ハヤト隊だった頃の話
~~~~~~
「@?+*‘$%&’=++*”」
「はい? 何ですって?」
軍の参謀でありならがら、道楽でハヤト隊に所属しているタクティア・ラティウスは、聞きなれない言語に首を傾げる
「新しい年を迎えて、おめでたいですねって言ったんだよ」
我がハヤト隊は長い事戦地で過ごし、もしかしたらこのまま緩衝地帯から本国へ帰れないのでは? と皆が不安に思っているなか、ようやく長期の休暇を取れる事となった。
他の部隊が次々と交代で休暇に入るのに、何故かハヤト隊だけは蚊帳の外である。
結論としては全部タクティアのせいだけど、今回やっと長期の休暇を取れた。もしかしたらタクティア自身が帰りたかったから、という理由かもしれない。
そしてこの日は新しい年を迎えた言わば新年。年末年始と言えば、年の最後の日にお寺に向かい除夜の鐘を聞き、年が明けたらその足で神社に行きおみくじを引きに行く。
日をまたいで続く行事であり、子供が夜更かしをしても許される2日間である。
日本の代表する祝日であり、日本中が祝賀ムードで盛り上がるが、異世界に飛ばされた俺はこの日、休暇であるにもかかわらず、軍本部にいた
「おめでたい? 何がそんなにおめでたいんですか?」
「お前の頭だよ、新しい年を迎えてって言ったばっかじゃん。一秒前に言った事も覚えてないの?」
「‥‥新しい年を迎えて‥‥ですか?、具体的に何がおめでたいのか理解できないのですが?」
このタクティアの発言、これが俺がこの場にいる理由である。
通常(俺の母なる地球の価値観)なら、この日がおめでたく無くて何がおめでたいのか? となるが、この星では新年は祝日でも何でもない、ただの平日である。
どこもかしこも通常運転、通常営業、お祭りのような騒ぎなど一切ない。
代り映えしない日常風景に嫌気がさし、仕方なくタクティアを弄りに来たわけである、家にいても面白くないし。
どうせ休暇中もタクティアは仕事をしているだろうと思っていたが、やっぱりタクティアは休暇中も働いていた
「理解できないって‥‥あのね? 理解できないタクティアに良い例えを教えて上げよう。ここに新しい魔道具があるとする」
「何に使用する魔道具ですか?」
「何でもいいんだよ、とにかく魔道具がある、新しく貰えた部隊の軍用車でもいい」
「言っておきますけど、新しい部隊の車なんて故障しない限りもう貰えませんよ? だから大事に運転してください。
ハンドルを握ってから、秒でフロントバンパーを凹ますような事は止めて欲しいんですけど」
「ぐっ━━む、昔の事だろそれ、今更蒸し返すことも無いだろう」
初めて部隊で貰った軍用車、それを運転早々ハンドルミスでぶつけてしまった事をぶり返してくる
「つい最近も左の後ろを、ちょっと擦ってましたよね? 部隊の全員がそれを知ってますし、塗装が剥がれた場所に泥をこすり付けて、汚れているように見せているのも皆知ってますよ?」
「‥‥‥」
「どうしました? 眼球が左右に揺れてますよ、もしかしてアレで隠し通せると思っていたんですか? かなり動揺しているみたいですが」
「‥‥も、もう皆にバレているんなら別にそれでいいじゃん」
隠せてないのなら開き直ろう
「良くは無いです」
新しい年を迎えたタクティアは少々厳しい
「タクティア、話を戻そう。まずその事は横に置いといてくれ」
「じゃあ横に置いときます」
タクティアは手で机の横に送仕草をする。そのうちまた引っ張り出してきそうなので、出来れば鍵をかけて欲しい、その鍵は俺に渡してくれ
「で‥‥だ、えー何だっけ?」
「魔道具」
「そう魔道具! 新しい魔道具があったらそれはおめでたいだろ?」
「嬉しいとは感じますが、おめでたいとは思いませんね。逆に聞きたいのですが、ハヤト隊長は新しい武器何かを手に入れたとして、おめでたいと感じるんですか?」
「新しい武器をタダで貰って‥‥」
「無料とは言ってませんよ」
じっくり考えてみると、別におめでたいとまでは思わない。ただ嬉しいと感じるだけだ
「そうだね嬉しいとは思うけど、おめでたいとは思わないかな?」
「ですよね」
例えが悪かったのか、タクティアごときに論破されてしまった
<悲報>
ウエタケ・ハヤト、後世に残る生き恥を晒す
「じゃあさ、今までの下りはもうどうでもいいや、それよりも一番の原因なのがハルツールの祝日の無さだと思うんだ。年間を通して唯一の祝日が建国記念日しかないのはどうかと思う。せめて新しい年を迎えた日だけでも祝日になってもおかしくは無いと思うんだ」
「私に言われてもどうしようもないのですが‥‥。ハヤト隊長がいた星では、建国記念日以外の祝日もあるんですか?」
「あるぞ、新年を迎えて3日間はどこも休みだし、子供の日、成人の日、敬老の日に勤労感謝の日、そして海の日に山の日、その他沢山ある。どう? 羨ましい?」
「‥‥何ですか? その適当な祝日は」
「適当?」
「そうでしょう、そもそも子供の日って何ですか?」
「こどもの日ってのは、ほら‥‥子供が元気に育って良かったねってのをお祝いする日であって━━」
「はい? 子供は勝手に育つでしょう? ━━ああ、なるほどハヤト隊長の星では『防病の契約』が無いんでしたっけ? でも祝日にするほどの事ですか? それに成人の日ってのは何ですか?」
「成人の日は、晴れて子供から成人になったっていうおめでたい日であって━━」
「生きていれば何をしなくても成人するでしょう? 祝うほどの事ですか? それと海の日とか山の日とか、それが何の意味があるのか不明なのですが。
もしかしたら平地の日とか渓谷の日とか、盆地の日とかあります? まさかとは思いますが雨の日とか晴れの日とか、はたまた草の日なんてあるんじゃないんですか?」
「みどりの日はあるけれど‥‥」
「なるほど、ハヤト隊長の休み癖がどこから来ているのか分かりましたよ。その星特有のものだったんですね」
「休み癖って‥‥」
お前らが働きすぎなだけだよ! 社畜‥‥国畜だ国畜、ブラック国家だよ
「さて、私は書類を提出しに行きますけどハヤト隊長はどうします? ここで待ってますか?」
俺と話をしていたが、手はしっかりと動いていたタクティア、これから少し席を外すそうだが
「いや、もう帰るよ。せっかくの休暇の日に本部にいるのもアホらしいし」
「私がアホみたいな言い方に聞こえますけどまあいいです。ところで‥‥また墓地に行くんですか?」
「うん、俺の中での恒例行事みたいなものだから」
年が明け新年を迎えた時、俺は毎年戦友たちが眠る墓地に行っている。任務期間中でいけない年もあるが、帰って来てからは必ず行くようにしていた
「‥‥あまり行くと亡くなった人がその人を心配して、生まれ変わるのが遅くなるんですが」
この世界の人達は輪廻転生を信じている。
人が無くなったらその魂は新しい体を得て、生まれ変わると信じていた。だからこの世界の人達は『死』をあまり悲観していない
でも実際は違う、魂はこの世界に溶け魔力として活用される、これが大気中に漂う魔力の正体。つまり死んだら人は『無』になる。これは天使ネクターが言っていた事
「それはこの星の人達の考え方だろう? 俺は俺で別の考え方を持っているからね」
「『郷に入っては郷に従う』以前ハヤト隊長が言っていた事ですが」
「まあ、うん、そうね」
言ってたね
「別に止めはしませんが、死んだ者に対していつまでも執着してたら心が持ちませんよ。私達はそうでなくても軍人なんです、一般人と比べてもその機会は多いでしょうから。さて私は提出してきます」
「じゃあ俺も帰るわ」
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