異世界陸軍活動記

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 コトンとデュラ子が喧嘩をしているなか、糖度100%かな? と思われるくらい限界まで甘く品種改良された皮つきの果物を一つ食べ、デュラ子が持って来てくれた布団の中に入った。
 すると喧嘩していた二人は、そこでようやく俺の体調が悪いと思い出したのか、ピタリと喧嘩を止め謝って来た

「ごめんなさいハヤト」
「申し訳ない旧主よ」

「いいよいいよ」

 色々と迷惑をかけているのはこっちの方だから、別に怒る事はない。逆にこっちが申し訳ないくらいだ。俺が布団に入るとコトンがズレた部分を掛け直してくれた

「だいぶ良くなってきたから、二人はもう家に帰っても大丈夫だよ、ありがとうね」

「う~ん、昨日よりはよくなってきてるみたいだけど、本当大丈夫なの?」

「明日には普通位になっていると思う」

「そう‥‥ならいいんだけど」

 いつまでも付き合わせてしまうのは悪いし

「旧主が復調傾向にあるのは良い事だ、大丈夫と言うなら我々は家に帰ろう。しかしその前に一つ聞きたい事があるのですがよろしいか?」

 デュラ子が何か聞きたい事があるらしいが
「いいよ、なんだろ?」

「ならば聞かせてもらいます。‥‥他の召喚獣はどうされた?」

「‥‥‥」
 その問いに思わず息が止まる

「デュラ子何言ってるの? ラグナは別のとこでお使いをしてるって言ってたじゃない」
 
 コトンは俺が帰ってきた際、ラグナを別行動させておりまだ帰って来てはいないといった事を、もう忘れたの? と言う具合にデュラ子に話す

「主はそれでも召喚者なのか? 旧主はちょくちょく2体同時に召喚していただろうが、それすら気づいてなかったのか? ラグナが出かけているが、あともう一体出て来れるはずだ」

「え? 同時に?」

「まあこのポンコツ主の事は今はどうでもいいでしょう、旧主よ‥‥」

 ポンコツですって! というコトンの声が聞こえたにも関わらずデュラ子は話を続ける

「自らの主となる者が窮地にも拘らず出てこないというのは有りえません。他の有象無象の召喚者達の召喚獣とは違い、旧主の召喚獣は別物‥‥自身で判断し行動しております。危機的状況に2度も現れないなど、あってはならぬことであり、有りえません。旧主よ‥‥もう一度訪ねます。‥‥他の召喚獣はどうされた?」

 デュラ子にはとっくに気づかれていたようだ。通常だったらラグナがいなくとも俺が何かしらの危機を迎えた場合、ポッポ辺りが飛び出て知らせに行くだろうし。 
 どちらにせよその内バレるのは仕方ないと思っていたが‥‥。まあいい、コトンには言っておくか

「他の召喚獣はもういない」

「‥‥は?」
「ん?」

 この答えにはデュラ子も予測不可能だったのか惚け、コトンに至っては理解さえ出来ていないようだった

「ラグナも含め召喚獣全てが消滅した」

「ッ!」
「えっ何どういうこと?」

「召喚獣だけじゃなく、全ての魔法が使えなくなった。それは『防病の契約』も同じで、だから今俺はこうして体調が思わしくない、病気というものにかかっている。
 『生命の契約』方も同じだと思う、でもこれは時間が経たないと実際の所は分からないけど」

「‥‥旧主よ、何故━━」

「理由は話せない」

「‥‥はい」

 デュラ子が驚きの表情でいるなか、コトンだけはまだ理解できていないようだった

「ねえハヤトどういうことなの?」

 一度契約した魔法が使えなくなった、というのはこの世界では無い事なのだろう。前例がないのだろう、だからコトンには理解できないのかもしれない。
 そのコトンに分かりやすく説明する

「あのね、俺はもう契約した魔法全部が使えなくなったんだよ」

「使えなく?」

「そう‥‥俺が家に帰ってきた時、鍵が無いって言ってたでしょ? 『収納』魔法が使えないから鍵を取り出せなかったんだよ。
 武器を布で包んで手で持っていたのもそう、しまえなかったから手で持ってるしかなかったから。
 今調子が悪いのも、『防病の契約』が発動してないから病にかかっている」

「え? えっ!? そんな事って」

「本当だよ、理由は言えないけど軍で初めてコトンに会った時にはもう『火』の魔法は使えなくなってたし━━」

「はっ! 旧主よ! ならば他の魔法も女━━」

「止めろ、言うなデュラ子」

「ッ! も、申し訳ございません」

 女神と言いそうだったデュラ子を止める、流石にここまでコトンには聞かせられない

「それにね、ブレドリアの『赤い柱』の後、属性魔法が全部使えなくなってたし、今回はその残りの全部が使えなくなったってことなんだ。
 まあ‥‥それでも何故か『財布』の魔法は使えるみたいだけど」

 『財布』の魔法は女神ではなく、遠い昔の天才付与師が開発したって言われているから、そこまでは奪われる事は無かったんじゃないかと思う。
 そして、そこまで言うとコトンも全ては理解出来てないものの、何とか状況を理解しデュラ子と共に無言になった。
 そして俺の方は果物を食べたせいか少し眠くなり

「悪いけどもう少し寝てもいいかな、なんかこう眠くて。俺の方は多分明日になれば全快していると思うから」

「はい」
「う、うん分かった」

 デュラ子はドアを開け出て行き、コトンも何か言いたそうだったが同じく部屋から出て行った。
 二人が出て行った後目を閉じだが、いつ眠りに落ちたのか分からない程あっという間に意識が遠のいて行った




 ◆◇

「ねえ‥‥デュラ子」

 隣にある自分の家に着いたコトンは、完全には理解してはいないがハヤトに何かあったと流石に察していた

「ハヤトの魔法が使えないって本当なの?」

「さっき旧主が言ったばかりだろう、もう忘れたのか? 脳に行く栄養が胸と尻に行き過ぎて考える事も出来ないのか?」

 辛辣な言葉を投げるデュラ子だが、コトンはそれを相手にするほどの余裕はは無かった

「はいはい、全部胸と尻に行ってますよ。それで‥‥ハヤトの魔法が使えなくなったのって‥‥」

 張り合いの無い主にデュラ子も煽るのを止める

「それは本当だと思う。旧主が『火』の魔法を使えなくなったのも知っているし、その原因も分かっている。属性魔法全てを失っていたのは知らなかったが、それ以上に魔法全てを失ったと聞いたのは初耳だった。
 今回も同じ原因で失ったのだろうが、今回旧主が戦地から帰ってきたのも魔法を失ったのが原因なのではないだろうか? 旧主はグラースオルグの反動が出て帰って来たとは言っていたが、実際は魔法が使えなくなり帰って来たと思う」

「なら、ハヤトはグラースオルグの反動のせいで魔法を失ったって言う事?」

「それは違うと思う、『火』魔法を失った時と同じ原因だろう」

「‥‥なら、どうしてハヤトは『火』魔法を失ったの?」

「それは言えぬ」

「‥‥‥」
「‥‥‥」
 部屋の中で立ち尽くした二人の間に沈黙が流れる

「‥‥でも、時間が経てばまた元に戻るとかっていうのは」

「それは無いだろう、『火』魔法を失ってからかなりの時間が経っているにも関わらず、旧主に力が戻るという傾向は無かった。多分だが、もう生涯魔法を使用する事は叶わないだろう」

「そう‥‥」


 再び訪れる沈黙、そしてその沈黙を破ったのはまたしてもコトンだった

「ハヤトは‥‥これからどうする気なのかな?」

「さあ? おそらく軍を辞めるのではないだろうか? 陸軍ではもう活躍出来ぬだろうし、軍にまだ残るというのなら海軍に所属しなければならないだろうし、旧主がまた一から軍学校に通うのは無いだろうからな、やはり軍を辞め別の道を歩むだろうよ」

「でも、でもハヤトなら魔法が使えなくても部隊長を長い事務めていたし、どこかの部隊を指揮する事だって出来るはずだよ!」

「主よ、人には向き不向きがある。確かに旧主は部隊をまとめる能力はあるだろう、だが旧主の場合、自分が前に出て指揮をする類いのものだ。力を失った旧主がそれを出来るはずも無い。
 かと言って後ろに引っ込み指揮をするという手もあるが、旧主にはそれは無理だろう。
 旧主は前線に出て状況を判断し、それに合わせて行動をする。前線に出ず、後方で指揮を取るなら、主の叔父の軍師殿の方が優れているだろうし、そう言った意味で向き不向きがあり旧主には出来ないだろう」

「そう‥‥か‥‥」

 ハヤトが軍を辞めるかもしれない。
 コトンには何故か言いようのない不安が、心の中に溢れて来ていた

「どうした主よ、魔法が使えなくなった旧主に愛想をつかして離れる気でいるのか?」

「そ、そんな事無い! 魔法が使えなくなったってハヤトはずっと私のハヤトなの!」

「『私のハヤト』になった覚えは旧主には無いだろうが、もし旧主から離れるのならば、せめて私を旧主の元に返してからにして欲しいな」

「ハヤトから離れる気なんか絶対にないから! これからもずっとハヤトと一緒に居るのは私だから!」

「ふん‥‥ならいいが、その割には何か考えていたようだが?」

「それは‥‥ハヤトはこれからどうするのかって思っていただけだし‥‥、このまま軍を辞めるのならハヤトは少し遠くに行ってしまう気がして」

 デュラ子は主であるコトンの顔を見て、少しだけ考え
「‥‥旧主なら軍を辞めてもどこにいても暮らせるだろう、それなりの知識もあるだろう。私は旧主から離れる事が無ければそれでいい。 
 今はそれよりも‥‥腹が減ったぞ主よ、何か作れ」

「‥‥召喚獣がお腹が空くわけないじゃない」

「旧主が果物を食べていたのを見てしまったからな、あれだけうまそうに食べている旧主を見ていたら私も食べたくなったのだ」

「うまそう‥‥?」

 ハヤトは美味しそうに食べていただろうか? 何か眉間にシワを寄せながら食べていた気がしたが? そう考えながらも食に五月蠅い我が召喚獣の為に食事を作る事にした。
 キッチンに行き戸棚から保存食用のパナンを━━

「言っとくが、保存食用のパナンにシロップを掛けだだけの物は出すなよ?」




 ・・・・・

 ・・・


 次の日

 朝食を自分の家で済ませ、デュラ子と共にハヤトの家に向かったコトン。
 家に入るとハヤトは既に起きており、リビングでくつろいでいた

「おはようハヤト、もういいの?」

「ああもう完全に回復したよ、ありがとうね二人とも、ここ数日お世話になったね」

「うんうん、あれくらい大したこと無いよ」

 コトンはハヤトの復調に喜び笑顔で答える

 ハヤトは椅子に座り、好物の一つであるクオルシを飲んでいる

「戸棚に少しだけ残っててね、コトンも飲む?」

 クオルシを進められ、コトンの顔からは笑顔が消え真顔で断る
「要らない」

「私は貰いましょう」

 一方デュラ子はハヤトが入れたクオルシを貰い、美味しそうに飲んでいた。コトンは一度勧められるまま飲んだことがあるが、まるで泥水を飲んだかの味に吹き出してしまった事がある。
 泥水を飲んだことがある訳では無いが、その色からして泥水、いや泥水以下のものにしか見えない

 デュラ子にも出すついでに自分のクオルシもお代わりをしていたハヤトは、一息つくとコトンとデュラ子に言った

「ああ、そうだ。俺さぁ軍を辞める事にしたよ」

 その言葉にコトンも隣でクオルシを飲んでいたデュラ子の手も止まる

「そう‥‥」

 昨日デュラ子が言った通りハヤトは軍を辞めると言い出した

「まあ、魔法が使えなくなっちゃったからねー。何にも出来ないから軍に居ても邪魔になるだけだしね」

「ほう‥‥、ならば旧主はこれからどうされるおつもりで?」

「それね、朝起きてからずっと考えてたんだけどさ━━」

 ハヤトは持っていたカップをテーブルの上に置くと



「俺、絵本作家になろうと思うんだ」
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