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新・世界の始まり
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ともに人生を生きた女との永遠の別れを経験し、ネクターは私がいる天界へと帰って来た。
今この展開には私とネクターしかいない、ユーサリーとサーナ、そして断罪者は消滅し、カネオンはこの星を去った。
女神マシェルとしての私はカネオンにこの星で創造され、この星から動くことが出来ない。というのもカネオンやユーサリーとは違い、この星から出て行くほどの力が無いからである。
よってカネオンは私をこの星に残して去っていった
ネクターはユーサリーの力を吸収し、新たなる神としてこの星を見守る事になる。ユーサリーが決めた『この星の子に関わらない』というのをそのまま引き継ぎ、これからもネクターと私はこの星の子を静かに見守り続ける事となる
のはずだったが‥‥
「暇だよ~」
ネクターが暇を持て余し始めてしまった
「‥‥ここに来てから人の時間でまだ2年程しかたってませんが」
「『しか』じゃなくて『も』なんだよなー。何にもする事が無いってのは、こんなにしんどいとは思わなかったよ。学校行ってた時は永遠に休みたいとか思ってたけど、永遠の休みがこれほど辛いものとは‥‥。
いっそのこと地上に降りたいけど、この状態だと永遠に降りる事出来ないしね」
そう‥‥カネオンとユーサリーは生命の次元が違い過ぎていて、地上に降り、人はもちろんの事、物にも触れることが出来ない、だから代わりに私とサーナを創造したのだから
「‥‥そもそも地上に降りるという事は、人の子に関わるという事と思いますが」
「そうなんだよねー、もし降りれたとしてもそれがあるからなー、というか、もし降りれたらて事が既に無理だけど。
ねぇマシェル、何か面白い話とか無い?」
ネクターは私にそう話を振ってくる
「‥‥面白い話ですか‥‥」
「「‥‥」」
「「‥‥」」
「あ、いや、やっぱいいや」
もう少しで出てきそうだったがそれをネクターが止めた
「‥‥そうですか」
その後も事あるごとに、ネクターの口からは「暇だ」という言葉が出て来た
「暇だよー! 誰か何とかしてよー!」
誰かというのは私の事を言っているのだろうか? ここには私とネクターしかいないし、とは言っても私にはどうすることも無く、とりあえずネクターが暇をしないような面白い話を考えていた。
考えていたらそれでいて長い年月が過ぎた。ネクターも何か考えていたらそれなりに暇にはならないのではないだろうか?
長い事考えていた気がする‥‥、でも私にはネクターが満足するような面白い話などは思い浮かばなかった。
そうしているうちにネクターは自分でそれの解決方法を見つけていた
「‥‥何をしているのですか?」
「いやね‥‥あっちの文明がある星にさ面白い奴らがいて、ずっとそれ見てる。見てると飽きないんだよね」
「‥‥そう、ですか」
ネクターは他の星に住む者達の生活を覗き込み、それで暇を潰すようになっていた。でもそれはまるでカネオンがやっていたのと同じである。そして時折、他の星に住む者達がどんなことをしているのか事細かく楽し気に私に教えて来る、その事もカネオンとそっくりだった。
カネオンも私に必要もない事を楽しそうに教えて来ていたが、私はそうした時一刻も早く立ち去りたい気分になったものだった。
でも‥‥、楽しそうに話してくるネクターの笑い顔は、どことなくサーナに似ていて、私はその話に聞き入っていた
そんな中‥‥
「見つけたよマシェル!」
「‥‥何をですか?」
「俺の故郷だよ! 地球だよ、ウエタケ・ハヤトの故郷をやっと見つけたよ」
「‥‥その星をずっと探してたのですか?」
「ですか? って、ずっと前に言ってたじゃん地球を探してるって」
「‥‥そう、なんですか? ごめんなさい聞いてなかったようです」
「もおー、言ったじゃん、探してるけど見つからないってさ。まあそれはいいとして、やっと見つけたんだよ、ずっと同じ宇宙にあると思ったら別の宇宙にあってね、探すのに苦労したよ」
「‥‥別の宇宙とは?」
「マシェルは知らないか、あのね? 例えば俺のこの手に本がある」
「‥‥ありませんが」
ネクターの手には本は無い、私には見えない本だろうか?
「あるとする、あるとして考えてね」
「‥‥はい」
「宇宙ってのは一つじゃなくて、この本のページのように沢山あるんだよ、その中の一枚が俺達がいるこの宇宙であって、ページを開くと別の宇宙がある。
でも残念ながら普通だったら次のページになんて行く事なんかできないんだ。
もし行けるとしたらカネオンやユーサリー程の力を持った者、そして俺はユーサリーの力を吸収した」
そこまで言われたら私にも分かる、ネクターは地球に行こうとしているのだろう、でもそれだとこの星はどうなるのだろうか?
「‥‥つまりネクターは地球に行きたいと」
「それは無理」
「‥‥ユーサリーの力を吸収したのなら行けるのでは?」
「そう思ったんだけどさ、吸収しても無理なものは無理らしい、元がやっぱり違うんだろうね、でもご心配なく。本体は行けないけど分体なら余裕で行ける」
「‥‥分体とは?」
「要はマシェルやサーナが創造されたのと同じでね、自分の魂の一部を切り離してもう1人の自分を作るんだよ、あーでもどっちかといったら召喚獣に作り方は近いかな? で、それをその別の宇宙に投げ入れるんだ」
「‥‥なるほど、それでネクターは地球に分体を送ってどうするつもりですか?」
「そうね、とりあえず向こうの神様に挨拶に行って「お世話になりました」ってね? その後、明智光秀が何で信長を裏切ったのかを聞きたい」
その後ネクターは自らの魂の一部を切り離し、地球へと分体を送り込んだ‥‥
暫くしてその分体はネクターの元に戻って来る
「‥‥地球の神に挨拶は出来ましたか」
「神様いなかったわ、詳しくはいなくなってた。いた形跡はあったけど、もうかなり前に捨ててたね」
「‥‥捨てた?」
「うん、自分の思う通りに星が成長しなかったんだろうね、最後に隕石ブチ当ててどっかに消えてたよ。その結果、哺乳類が生き延びてその後、人間が誕生する事になったんだけど」
「‥‥自分が見守っていた星に別の星をぶつけたのですか?」
「そうだね、まあでもその気持ちも分かるよ、俺も町が上手く発展しなかったらり資金難になったら、隕石落としたり、災害発生させて壊滅させたりしてたからね」
まさか! と思った。まさかネクターがその地球にいた頃、そんな事を平気でしていたなんて‥‥と。それではユーサリーがしていた事よりも更に━━
「ちなみにゲームの話ね」
その後もネクターは他の宇宙にある生命が宿る星を覗き、時間を過ごしていた。星を見るなら自分のいる星を見たらいいと思ったのだが‥‥、でも私はネクターが意識して自分のいる星を見ないようにしているように感じた。
そのネクターは━━
「俺ちょっと別の星に遊びに行こうと思う、人としてね」
と言い出した
「‥‥他の星には行けなかったのでは?」
「そうだけどね、でも分体があるじゃん? それを他の星に送り出して、その分体が死んだら魂を回収して取り込む、そうするとその分体が生きて来た記憶が俺の物になるじゃん?」
「‥‥」
「‥‥理解してる?」
「‥‥はい」
「あっ、そ、そう。ならいいんだけど」
ネクターは自身の魂の一部を切り離すと
「さあ行ってこい! 楽しい記憶を楽しみにしてるからな!」
他の星へと投げ入れた
そして暫くの時を経てその魂がネクターの元に帰って来た
「‥‥随分早かった気がしますが」
「そうだね、多分死んだんだと思うけど‥‥取りあえずどんな人生を歩んできたのかな? では、合体!」
切り離した魂を取り込むと、ネクターは少し難しそうな顔をする
「‥‥どうでしたか?」
「んー‥‥2年程しか生きられなかったね」
たった2年しかネクターは生きられなかったようだ
「文明がめちゃくちゃ低い星だったから、俺の知識で文明力を上げようとしたんだよね。最初は神の使いとか言って祀り上げられてたんだけど、やり過ぎたのか途中から悪魔の使いとか言い出されてさ、処刑された」
「‥‥それこそネクターの持つ神の力で抑えられたのでは?」
「いや、力を持たせなかったんだよね」
「‥‥どうして?」
「それだとヌルゲー過ぎてつまらないからね、それにそこの星を管理する神に、力を持ち込まないならOKって言われてたし。
でもやっぱりある程度の力は必要だね、『洗浄』魔法ぐらいは持たせるべきだったよ。まあでも、結構面白かったけどね、何をするにも手探り感があって。んーそうだね点数を付けるなら‥‥70点かな?」
ネクターはその星に70点という点数を付けた。人の手によって殺されたとはいえ、久々の人としての生活は楽しかったのか、次々と楽しそうだと思う星に切り取った魂を投げ入れていた。
ある時は━━
「マシェル、槍の達人がいる星を見つけたよ。俺も槍を使ってたけど中途半端だったしさ、やっぱりこう、達人クラスまで上達したいじゃん? だからその星でその達人に指示を仰ごうと思うんだ」
意外だった、ネクターはどちらかと言うと飽きっぽく、訓練とか練習とかが嫌いな性格だと思っていた。でもネクター曰く
「それって俺がやる訳じゃないじゃん? やるのは分体の方だし、俺はただその記憶と経験を貰うだけだよ」
「‥‥そうですか」
それでいいのですか?
その後も、「剣の達人が━」とか「弓の達人が━」とか言い、自身の魂をその星々に投げ入れてゆく。そのネクターだがとある時、興奮した状態で私を呼び掛けて来た
「マシェルマシェル!! ついに見つけたよ!」
「‥‥何を見つけたのですか?」
「女だよ!」
「‥‥女?」
「そう! 男女の比率が1対100の女の方が多いハーレム星だよ!」
「‥‥ハーレム星ですか」
「そうなんだよ! 男の夢が詰まった魅惑の星だ。しかもその星は美女しかいなく、エルフとか獣人とかもいるんだよ!」
「‥‥はあ」
イマイチピンとこない私は曖昧な返事を返したが、ネクターはそれを別の意味と捉えたらしく
「ち、違うよ! 別にいかがわしい意味で見つけた訳じゃないんだよ! ただ興味本位で、そ、そう、勉強の一貫で興味があっただけなんだよ! だから変な意味じゃないからね!?」
「‥‥そうですか」
私は何も言ってはいないのですが
「そ、そんな訳でさ、とりあえずホラ! 行っておいで! 良い人生を歩むんだよ!!」
ネクターは自分の魂をその星に投げ入れた
‥‥
その魂は早い段階でネクターの元へと戻って来る
「‥‥随分早かったですね」
「そうだね、まあでも良い人生だっただろうに、ではさっそくその楽しかったであろう記憶を━━」
魂を取り込むネクターだが、取り込む前は笑顔だったのに、取り込んだ瞬間その表情は真顔に変わる
「‥‥どうでしたか? 楽しかったですか?」
「‥‥」
「‥‥ネクター?」
「腹上死したんだが‥‥」
ネクターがハーレム星と名付けたその星は、男女の比率が1対100と歪であり、女性の方が権力を持ち、女性の方が性欲が強いという星だった。
そこに降り立ったネクターは、初日に美しい女性と関係が持てるというほどであり、その後ネクターは美しい3人の女性と結婚することになる。
朝昼晩と行為を求められた結果、その最中に命を落とすことになった
「なんだよこの星‥‥クソじゃん。この星を作ったアイツは馬鹿じゃねーの? 死ねよ‥‥俺がアイツの存在諸共、星ごと消そうか?」
余程辛い思いをしたのか? 普通ネクターは他の星に魂を投げ入れ、もし早死にしてもここまで罵倒はしなかった。「ここに問題はあるけど、この部分は素晴らしかった」と、その星を作った神に対し笑顔で敬意を持って好意的に評価していた。
だが今回のハーレム星に関しては今までにないほど、否定しかなかった。点数も5点という低いものだった
『地獄を味わった』というネクターは、『この宇宙で一番惨いのは女の性欲』と言っていた。そして‥‥何故かネクターはその後、私からもちょっとだけ距離を取るようになっていた
そんなネクターだが、本当にこの子はよく死ぬ。今まで送り出した魂の中で、天寿を全うしたのは全体の1割にも満たない。
何かしらの厄介ごとに顔を突っ込み、自ら命を終える事が多い。
そして今回も━━
「ぐああああぁぁぁー! 惜しいぃぃぃ!」
送り出した魂が、どうやらまた短命で終わったようだ
「‥‥今回はどうしましたか?」
「いやあ~惜しかった! もうちょっとで四天王の一人を倒せたのに!」
今回の魂が送り出された星には魔族がおり、魔族と人が争いを起こしている星だったらしく、ネクターは魔王が率いる四天王の一人と戦い、命を落としたらしい
「まさか心臓が2つあるとか、そんな漫画みたいな展開があると思わなかったよ、いやあ惜しかった。気づいていたら勝てたのに、でも俺の慢心が起こした事だからしょうがない。
最終的には短命だったし、最後は残念だったけど‥‥95点!」
今までで最高の得点だった
「‥‥記録更新ですね」
「ああ最高に楽しかったよ、この星は日本から大量に転生者を連れて来てるから、日本食も久々に食べる事が出来たし、なんかファンタジーぽくて良かったよ。
まあそれも、あいつがいたおかげでいい条件でこの星に入れたからな‥‥ちょっとだけお礼しておこうかな? マシェル悪いけど魔石にさ、『癒し』と『防病の契約』付与してくれない?
・・・・・・・
・・・・
それから長い時間が過ぎる、それは女神の私でも長いと思う時間だ
他の星に遊びに出かけていたネクターだが、その遊びももうしなくなっており、自分がいる星の人の子をじっと眺めるようになっていた。
そしてこの頃かからネクターの姿に変化が訪れる、人で言う20歳位の若さの見た目だったが、徐々にだが老い始めていた。
神であるネクターは老いる事は無いのだが‥‥、それは神であったユーサリーが何故か老いたようにネクターも近づき始めていた
その時にはこの星の二つの国の情勢も変わって来ていた
長い事均衡を保っていた二つの国は均衡が破れ、マシェルモビアが優勢となってゆく。先のネクターを喰らい頭が肥大化したヴァンギエル族の末裔が、ハルツールの内部を徐々に侵食して行き腐敗する。
そこをマシェルモビアが好機としてハルツールに一気に攻め入っていた。
本国まで攻め込まれたハルツールはその戦いの中で、破壊の一族を失う事となる
サーナが最初の魔法陣を敷くきっかけとなり、ネクターが直接その体に魔法を埋め込み、そしてウエタケ・ハヤトとしても、サコナ・ソルセリーとして縁の合った破壊の一族だったが、末裔が‥‥その血が消滅する事となった。
その一族が途絶えたとなったとしても、ネクターは動く事は無かった
「‥‥よいのですか?」
と聞いても
「人の子が作った歴史だから‥‥」
としか帰って来ず、ずっと地上を見ていた
その後、ハルツールはマシェルモビアに敗北。
この星はマシェルモビアによって統合される事になった
かつて自分が所属していた国が無くなっても、ネクターはただ見ていただけだった‥‥
統合された世界は、本国の北と支配された南で格差はあるものの、この星で初めての平和な世界が待っていた‥‥
その後一度だけネクターに尋ねた事がある、国が一つ消えてしまった事に
「‥‥本当にこれでよかったのですか?」
「人の子がそうしたのならそれでいいと思う」
この頃にはネクターはもう老人と呼べるほど、姿が老いていた。そしてその顔は常に何か悩みを抱えているように感じていた
「どうせ最終的にはただの娯楽」
「‥‥娯楽とは?」
「人の子が争い戦争をする事だよ、そのなかで国が消えるというのはよくある事━━」
ネクターがカネオンのような事を言う、カネオンは人の子が苦しんでいるのが好きと言う程だったが
「━━私ががネクターとしてこの星で創造された時、その時にはもう居なかったけど、その前はいたんだろう『竜騎士』と呼ばれる存在が?」
「‥‥はい、私が創造された時はまだいました」
「それは、今でも語られる話とは別物ではなかったかな?」
「‥‥はい」
かつて竜騎士と呼ばれた者達は、今に語り継がれる存在とは全く別だった。遊牧民として生きて来た彼らは、人を乗せ飛ぶことの出来る温厚な動物を乗りこなし、家畜と共に生きて来た。
それが、世界が一つの大陸として繋がると、その生活が一変する。
空を飛べる動物と彼らは、戦争の道具として扱われるようになる。権力でねじ伏せられ半ば強制で、もしくは家族を人質に取られたりなどして戦場に駆り出された。
その結果、元々繁殖力の低かった空の飛べる動物は、4年程で絶滅する事となる。
竜騎士としての活躍も、どれも悲惨なものだった‥‥
「でも何百年も経つと、その事実とは違い、英雄のように扱われるようになる。それは本になったりして永遠にね。
そこにはもう娯楽以外の何物でもない、無かった事をあるように語られ、それに楽しみを覚える。
ウエタケ・ハヤトが生まれた星でもそうだ、何百年前の戦争なんて娯楽でしかない。その戦いを模した遊びなどもあるし本もある。それを面白おかしく表現する作品もあるし、いずれにしろ時間が経てばただの娯楽‥‥。
もちろん当時生きた人からすれば、たまったものではないだろうが。だから戦いが起こり、国が無くなったとしても、結果それは人の子が望んだことだ」
「‥‥そうですか」
・・・・
・・
その後も一つになった世界は平和が続く、でもそれに反してネクターの表情からは辛く悲しいものが溢れているように感じた。
年を取らないはずのネクターは、まだ存在していた頃のユーサリーと同じように老いていた。そのネクターがたまに語っていたことがある
「人は文明を進化させる事が、その魂に刻まれた宿命である。文明を進化させ発展し、星という器から抜け出し、そしていずれ肉体とする器を捨てる事が望まれている。
その魂に宇宙からエネルギーを吸収し、より大きなものに、大きな存在になる。それがユーサリーやカネオンのような神になる」
「‥‥その話だと、ユーサリーやカネオンが元々人の子だったと聞こえますが?」
「その認識で問題ない、そして神になったものは、人の子を作る為に星を作り、人の子が住めるように環境を整える。
そういう風に作られていると様々な星を見て来て最近気が付いた」
つまり神が星を作り子を作ったとなると、ユーサリーやカネオンを作った神もいる事になる。そうなると‥‥
「‥‥その考えでは話が合いません、神が星を作り子を作ったとしたら、最初に星を作り出したのは誰になるのですか?」
「それは、本当の神が最初に作ったのだろう」
「‥‥本当の、神‥‥?」
別の時にはこんな事も言っていた
「神には二つの種類がいる。
星を徹底して管理をし、自ら手を出す『管理者』と、ただ傍観するだけの『監視者』の二つ。前者はユーサリーで後者はカネオンだと思えばいい。
『管理者』は自分が人であった時、同じように神の手が直接加わっていたのか、自身が作った人の子に手を加える事がある。
一方、『監視者』は自身が人であった時、神の恩恵が全く無かったせいなのか、手出しはあまりしない。
そして人の子は最終的に肉体としての器を捨てる時、圧倒的に『監視者』が神の場合が多い。
この星は‥‥『監視者』ではなく、『管理者』によって手を加えられている‥‥。それは‥‥、この星の文明が手を加えられすぎた結果、人の子が起こす自発的な発展が遅いという事。‥‥私が、私の判断が、もしかしたらもう遅すぎたのかもしれない」
老いたネクターは、悲しげな眼で、それは強い後悔も含まれているような気がした
「私には決断できなかった‥‥。もしかしたらもう遅いかもしれない、星の寿命が尽きるまで、人の子は宇宙に上がる事が出来ないのかもしれない。
魂に刻まれた使命を全うせず、この星と共に終えるのかもしれない。魔法という物を私があの時地上に敷かなければ‥‥」
老いたネクターの目には私に対する微かな期待が見えたように感じた。でも私には、その期待は何に対する期待なのか理解出来なかった
「‥‥ネクター?」
ネクターの目は私の言葉に、目を少し伏せた
「‥‥‥‥いや、なんでもない。今頃ユーサリーの考えが理解できるようになっただけだよ。ただ私が愚かだっただけだよ」
◆◇
長い時間が過ぎても、一つに統合された世界は平和だった。
地上では永遠と続くであろうこの平和に染まっていたが、それを見つめていたネクターは永遠では無かった
消滅するはずの無いネクターが、今まさに消滅しようとしていた
「‥‥ネクター私はどうしたらいいですか?」
それにネクターはただ横に首を振るだけ。
そして徐々に消えてゆくネクターの体
「‥‥ネクター姿が消えています」
それに頷くだけのネクター、その姿は消えて行き、存在がいよいよ希薄になった時、ネクターの口が開かれ
「ごめんねマシェル、僕には無理だったよ、だから‥‥っ‥‥後は‥‥頼む」
その言葉の後、人の姿が消え、魂が現れる。
私はそれを捕まえようとした、ネクターの魂を捕まえ、私が新しい器を与えればネクターがまた存在できると考えた。
だからネクターの魂に手を伸ばし捕まえたが━━
ネクターの魂は私が捉えると同時に、世界に溶けて消えていった。
私の手にはネクターの残滓だけが残り、それも跡形もなく世界に消えてゆく‥‥
こうして私は、この星のただ一人の神になった‥‥
◆◇
ネクターがこの星から消え、長い時間が過ぎる。
平和を謳歌するこの星の子達だが、それに暗雲が立つ。世界が平和になり、軍隊の意味もなさなくなってしまったマシェルモビア、今まで回されていた予算は経済に回されるようになり、軍は大幅な縮小をしていた。
そんな中、様々な思想が生まれ、人々は様々な考えが生まれるようになる。そしてその思想は大陸北部、元々マシェルモビアの領地だった『都市・トルクネ』から発生する
マシェルモビアが国として北部を制圧していた際、恐怖を盾にして周囲の国々を併合して行った。それが今になり非難されるようになり、その結果元々我々は独立国だったという考えが出て来るようになる。
それは最初誰もが気にしない程の話だったが、徐々にだが大きくなり、それが少しづつ大きな波に変わっていく。
最初興味が無かった者達も少しずつその主張に耳を傾けるようになり、遂に都市トルクネがマシェルモビアから独立を宣言した。
最初その事を鼻で笑っていたマシェルモビアの中央政府。だがそれに呼応するように次々と独立を宣言する都市が現れ、遂に中央政府は鎮圧に乗り出す
中央政府と独立派で争いが起きたが、かつてあったハルツールと戦うためにあった軍隊は既に縮小されており、今は魔物が存在する緩衝地帯付近に軍隊が集まっていた。
その緩衝地帯に近い都市までもが、マシェルモビアからの独立を宣言しだし、状況は一変。長く栄華を極めていた大国マシェルモビアは、何千年という歴史をあっけなく閉じる事になる
そして独立を果たした都市は新たに国を名乗り、そして周囲の国を取り込もうと動く。最初話による交渉で動いていたが、それが武力に変わり大きなうねりとなり、世界に広がる
何千年と平和だった世界が一変、世界の都市全てを巻き込んだ戦争に発展してしまった
それを天界から私は見ていた
あれほど人の子が望んだ平和があったにもかかわらず、人の子は自らそれを手放した。
ネクターが愛した人の子達は、自ら破滅へと進んで行く。この光景をネクターが見たら悲しがるだろうか?。
あれほど手を尽くし、自分の魂を削り人の為にと尽くしてきたネクターと、自ら争いをする人の子‥‥
その時、国の一つを滅ぼそうとしたユーサリーの気持ちが少しだけ私にも分かる気がした。
人の子に裏切られたという気持ちが、その時私の心に沸き上がる、怒りにも似た気持ちが私の中に芽生え始めていた
ネクターはあの時言っていた『管理者』と『監視者』の話。
神が手を加えない方が望む方角に進むというのならば、そのようにしよう。神となる私はただの『監視者』になろう
醜い争いを繰り広げる地上に向け私は手を広げる、以前私とサーナがした事と全く逆の事を行った。
地上のあらゆる管理を辞め、更に━━
世界から魔力を消滅させた
◆◇
パチパチパチパチ
世界が一変した星から少し離れた場所に、乾いた音がする。それはリズムよく陽気なものだった
「素晴らしかったよ! 素晴らしい!!」
その声は嬉しそうであり楽しそうであり、この世で一番の娯楽を感じたと告げる
「いやぁぁぁぁぁ! いい物を見た! 流石マシェル! 俺の子!」
その声はかつて星を追い出された神、カネオンでありその手からはパチパチと祝福の拍手が鳴る
「父親の俺にこんな良い物を見せてくれるなんて、なんて親孝行な娘だろう!! 創造して良かった!! 感動した!!」
上機嫌なその神は陽気に笑う、その一方
「にしても息子の方は本当に駄目だったな、せっかく自分のケツを拭かせてやろうと思ったのに、結局は姉に拭いてもらうのかよ。
あれだけでかい事言いながらコレだからな、不甲斐ないよ、お父さんもガッカリだよ全く、まあでも結果いい方に行ったからいいだろう、良しとしようか?」
カネオンは文明が崩壊した星を見てそう言う
全てが魔力で補われているこの星は混乱の極みまさに地獄に落ちるだろう、全ての常識が覆り、今までの当たり前が通用しなくなる。
文明のレベルは石器時代に近づくだろうし、更に今まで抑えて来た自然現象がこの地を襲う事となる。自然災害が人々を襲い、災害の知識もないこの星の人の子達は、なすすべもなくその命を落とすことになる。
ただし、それだけではない、過去に天使を喰らいその力を取り込んだ一族の末裔達は、謎の奇病にかかり命を落とす。
それと同時に緩衝地帯に生息していた魔物達も同様、次々とその命が潰えていった
「どうせあのままだと停滞してただろうし、これでやっと前に進めるな。お前達も早く俺らの所まで登って来いよ待ってるからな! 来れるかどうかは今の状態だとギリギリだと思うが━━」
既に地獄が始まりつつある星を見て満足そうなカネオンは星に背を向ける、が、一つだけ言い忘れたのか混乱する星の子に向け
「‥‥おめでとう‥‥ようやくこれで縛る神のいない、君達だけの『新しい世界の始まり』だよ」
そこには本当に人の子を愛する神の顔があった
「さて俺はどこに行こうかな? その前にコレどうしようか?」
手にはもう1人の子の魂の欠片が握られている。兄の補充用として存在させられた可哀そうな子の魂の欠片が‥‥
「まあどっか放り込んでおけば勝手に転生するだろう」
ポンポンと軽く投げて掴んだ後、その欠片を━━
「どぉぉっぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁl!」
思いっきり放り投げた
◆◇◆◇◆◇
「だいぶ暗いから足元に注意してください」
「ええ分かってるわ」
「私が前に行きますからその後に続いてください」
地下に向かう3人の姿がある。たまたま見つけたその穴には階段があり、そこを松明を持った女性を先頭に、背の小さな別の女性が進み、その後ろに男性が続く
長い長い階段はかなり地下深くまで続き、階段の最後には引き戸らしい扉がある。松明をもった女性はそれを引こうとしたが、扉は奥に開いた
「引き戸じゃないのか、何だこの場所は」
少し苛立つ女性はそのまま中に入って行く
「気をつけて、何かあるかもしれないし」
「分かってます」
3人が部屋に続けて入るとそこには机があり、その前には岩が置いてあった
「‥‥何で岩?」
部屋には不釣り合いの岩に疑問を持つ、そしてその岩には文字が書かれていた
「んー‥‥随分古い文字ね‥‥読める?」
背の小さな女性が松明を持った女性に聞く
「これは‥‥読めませんねすみません」
「そうよね‥‥一体なんて━━」
「この地を訪れた君たちへ」
後ろに居た男が岩に彫られた文字を読む
「「えっ! 読めるの!?」」
「うん、まあ、何か読めますね」
「‥‥お前は一体何なのだ?」
松明の女性はそう言うが
「何なのだって言われても‥‥」
男の方もそれはよく分かっていない様子
「それはいいからなんて彫られてあるの? 続きは?」
背の小さな女性は続きを読めと促す
「はいはい、えーっとですね『君たちは魔物がはびこる土地を抜け、運よくこの場所を見つけたのだろうか? もしそうだったとしたら‥‥それはもう故郷に帰るのを諦めるしかない。だが心配しないで欲しい、川には魚がいるし水にも困らない、食物の種も用意しているので食べ物には困らないだろう』」
「魔物? おとぎ話に出て来るあの魔物か?」
男性は気にせず続けて文字を読む
「『周囲に異形の魔物と━━』」
「魔物っては一体なんだ? そこら辺にいる獣の事か? 本当にそう書いてあるのか? 適当に言ってないか?」
松明の女性は魔物というのに疑問を持ったのか男に聞くが
「ちょっと黙ってて」
背の小さな女性に止められる
「それで続きは?」
「あっはい、続きはですね」
男性は彫られた文字に目を向けると続きを読む
「『周囲に異形の魔物と呼ばれるものがおらず、たまたまこの場所を見つけたとしたのなら‥‥おめでとう‥‥人の子らよ━━』」
今この展開には私とネクターしかいない、ユーサリーとサーナ、そして断罪者は消滅し、カネオンはこの星を去った。
女神マシェルとしての私はカネオンにこの星で創造され、この星から動くことが出来ない。というのもカネオンやユーサリーとは違い、この星から出て行くほどの力が無いからである。
よってカネオンは私をこの星に残して去っていった
ネクターはユーサリーの力を吸収し、新たなる神としてこの星を見守る事になる。ユーサリーが決めた『この星の子に関わらない』というのをそのまま引き継ぎ、これからもネクターと私はこの星の子を静かに見守り続ける事となる
のはずだったが‥‥
「暇だよ~」
ネクターが暇を持て余し始めてしまった
「‥‥ここに来てから人の時間でまだ2年程しかたってませんが」
「『しか』じゃなくて『も』なんだよなー。何にもする事が無いってのは、こんなにしんどいとは思わなかったよ。学校行ってた時は永遠に休みたいとか思ってたけど、永遠の休みがこれほど辛いものとは‥‥。
いっそのこと地上に降りたいけど、この状態だと永遠に降りる事出来ないしね」
そう‥‥カネオンとユーサリーは生命の次元が違い過ぎていて、地上に降り、人はもちろんの事、物にも触れることが出来ない、だから代わりに私とサーナを創造したのだから
「‥‥そもそも地上に降りるという事は、人の子に関わるという事と思いますが」
「そうなんだよねー、もし降りれたとしてもそれがあるからなー、というか、もし降りれたらて事が既に無理だけど。
ねぇマシェル、何か面白い話とか無い?」
ネクターは私にそう話を振ってくる
「‥‥面白い話ですか‥‥」
「「‥‥」」
「「‥‥」」
「あ、いや、やっぱいいや」
もう少しで出てきそうだったがそれをネクターが止めた
「‥‥そうですか」
その後も事あるごとに、ネクターの口からは「暇だ」という言葉が出て来た
「暇だよー! 誰か何とかしてよー!」
誰かというのは私の事を言っているのだろうか? ここには私とネクターしかいないし、とは言っても私にはどうすることも無く、とりあえずネクターが暇をしないような面白い話を考えていた。
考えていたらそれでいて長い年月が過ぎた。ネクターも何か考えていたらそれなりに暇にはならないのではないだろうか?
長い事考えていた気がする‥‥、でも私にはネクターが満足するような面白い話などは思い浮かばなかった。
そうしているうちにネクターは自分でそれの解決方法を見つけていた
「‥‥何をしているのですか?」
「いやね‥‥あっちの文明がある星にさ面白い奴らがいて、ずっとそれ見てる。見てると飽きないんだよね」
「‥‥そう、ですか」
ネクターは他の星に住む者達の生活を覗き込み、それで暇を潰すようになっていた。でもそれはまるでカネオンがやっていたのと同じである。そして時折、他の星に住む者達がどんなことをしているのか事細かく楽し気に私に教えて来る、その事もカネオンとそっくりだった。
カネオンも私に必要もない事を楽しそうに教えて来ていたが、私はそうした時一刻も早く立ち去りたい気分になったものだった。
でも‥‥、楽しそうに話してくるネクターの笑い顔は、どことなくサーナに似ていて、私はその話に聞き入っていた
そんな中‥‥
「見つけたよマシェル!」
「‥‥何をですか?」
「俺の故郷だよ! 地球だよ、ウエタケ・ハヤトの故郷をやっと見つけたよ」
「‥‥その星をずっと探してたのですか?」
「ですか? って、ずっと前に言ってたじゃん地球を探してるって」
「‥‥そう、なんですか? ごめんなさい聞いてなかったようです」
「もおー、言ったじゃん、探してるけど見つからないってさ。まあそれはいいとして、やっと見つけたんだよ、ずっと同じ宇宙にあると思ったら別の宇宙にあってね、探すのに苦労したよ」
「‥‥別の宇宙とは?」
「マシェルは知らないか、あのね? 例えば俺のこの手に本がある」
「‥‥ありませんが」
ネクターの手には本は無い、私には見えない本だろうか?
「あるとする、あるとして考えてね」
「‥‥はい」
「宇宙ってのは一つじゃなくて、この本のページのように沢山あるんだよ、その中の一枚が俺達がいるこの宇宙であって、ページを開くと別の宇宙がある。
でも残念ながら普通だったら次のページになんて行く事なんかできないんだ。
もし行けるとしたらカネオンやユーサリー程の力を持った者、そして俺はユーサリーの力を吸収した」
そこまで言われたら私にも分かる、ネクターは地球に行こうとしているのだろう、でもそれだとこの星はどうなるのだろうか?
「‥‥つまりネクターは地球に行きたいと」
「それは無理」
「‥‥ユーサリーの力を吸収したのなら行けるのでは?」
「そう思ったんだけどさ、吸収しても無理なものは無理らしい、元がやっぱり違うんだろうね、でもご心配なく。本体は行けないけど分体なら余裕で行ける」
「‥‥分体とは?」
「要はマシェルやサーナが創造されたのと同じでね、自分の魂の一部を切り離してもう1人の自分を作るんだよ、あーでもどっちかといったら召喚獣に作り方は近いかな? で、それをその別の宇宙に投げ入れるんだ」
「‥‥なるほど、それでネクターは地球に分体を送ってどうするつもりですか?」
「そうね、とりあえず向こうの神様に挨拶に行って「お世話になりました」ってね? その後、明智光秀が何で信長を裏切ったのかを聞きたい」
その後ネクターは自らの魂の一部を切り離し、地球へと分体を送り込んだ‥‥
暫くしてその分体はネクターの元に戻って来る
「‥‥地球の神に挨拶は出来ましたか」
「神様いなかったわ、詳しくはいなくなってた。いた形跡はあったけど、もうかなり前に捨ててたね」
「‥‥捨てた?」
「うん、自分の思う通りに星が成長しなかったんだろうね、最後に隕石ブチ当ててどっかに消えてたよ。その結果、哺乳類が生き延びてその後、人間が誕生する事になったんだけど」
「‥‥自分が見守っていた星に別の星をぶつけたのですか?」
「そうだね、まあでもその気持ちも分かるよ、俺も町が上手く発展しなかったらり資金難になったら、隕石落としたり、災害発生させて壊滅させたりしてたからね」
まさか! と思った。まさかネクターがその地球にいた頃、そんな事を平気でしていたなんて‥‥と。それではユーサリーがしていた事よりも更に━━
「ちなみにゲームの話ね」
その後もネクターは他の宇宙にある生命が宿る星を覗き、時間を過ごしていた。星を見るなら自分のいる星を見たらいいと思ったのだが‥‥、でも私はネクターが意識して自分のいる星を見ないようにしているように感じた。
そのネクターは━━
「俺ちょっと別の星に遊びに行こうと思う、人としてね」
と言い出した
「‥‥他の星には行けなかったのでは?」
「そうだけどね、でも分体があるじゃん? それを他の星に送り出して、その分体が死んだら魂を回収して取り込む、そうするとその分体が生きて来た記憶が俺の物になるじゃん?」
「‥‥」
「‥‥理解してる?」
「‥‥はい」
「あっ、そ、そう。ならいいんだけど」
ネクターは自身の魂の一部を切り離すと
「さあ行ってこい! 楽しい記憶を楽しみにしてるからな!」
他の星へと投げ入れた
そして暫くの時を経てその魂がネクターの元に帰って来た
「‥‥随分早かった気がしますが」
「そうだね、多分死んだんだと思うけど‥‥取りあえずどんな人生を歩んできたのかな? では、合体!」
切り離した魂を取り込むと、ネクターは少し難しそうな顔をする
「‥‥どうでしたか?」
「んー‥‥2年程しか生きられなかったね」
たった2年しかネクターは生きられなかったようだ
「文明がめちゃくちゃ低い星だったから、俺の知識で文明力を上げようとしたんだよね。最初は神の使いとか言って祀り上げられてたんだけど、やり過ぎたのか途中から悪魔の使いとか言い出されてさ、処刑された」
「‥‥それこそネクターの持つ神の力で抑えられたのでは?」
「いや、力を持たせなかったんだよね」
「‥‥どうして?」
「それだとヌルゲー過ぎてつまらないからね、それにそこの星を管理する神に、力を持ち込まないならOKって言われてたし。
でもやっぱりある程度の力は必要だね、『洗浄』魔法ぐらいは持たせるべきだったよ。まあでも、結構面白かったけどね、何をするにも手探り感があって。んーそうだね点数を付けるなら‥‥70点かな?」
ネクターはその星に70点という点数を付けた。人の手によって殺されたとはいえ、久々の人としての生活は楽しかったのか、次々と楽しそうだと思う星に切り取った魂を投げ入れていた。
ある時は━━
「マシェル、槍の達人がいる星を見つけたよ。俺も槍を使ってたけど中途半端だったしさ、やっぱりこう、達人クラスまで上達したいじゃん? だからその星でその達人に指示を仰ごうと思うんだ」
意外だった、ネクターはどちらかと言うと飽きっぽく、訓練とか練習とかが嫌いな性格だと思っていた。でもネクター曰く
「それって俺がやる訳じゃないじゃん? やるのは分体の方だし、俺はただその記憶と経験を貰うだけだよ」
「‥‥そうですか」
それでいいのですか?
その後も、「剣の達人が━」とか「弓の達人が━」とか言い、自身の魂をその星々に投げ入れてゆく。そのネクターだがとある時、興奮した状態で私を呼び掛けて来た
「マシェルマシェル!! ついに見つけたよ!」
「‥‥何を見つけたのですか?」
「女だよ!」
「‥‥女?」
「そう! 男女の比率が1対100の女の方が多いハーレム星だよ!」
「‥‥ハーレム星ですか」
「そうなんだよ! 男の夢が詰まった魅惑の星だ。しかもその星は美女しかいなく、エルフとか獣人とかもいるんだよ!」
「‥‥はあ」
イマイチピンとこない私は曖昧な返事を返したが、ネクターはそれを別の意味と捉えたらしく
「ち、違うよ! 別にいかがわしい意味で見つけた訳じゃないんだよ! ただ興味本位で、そ、そう、勉強の一貫で興味があっただけなんだよ! だから変な意味じゃないからね!?」
「‥‥そうですか」
私は何も言ってはいないのですが
「そ、そんな訳でさ、とりあえずホラ! 行っておいで! 良い人生を歩むんだよ!!」
ネクターは自分の魂をその星に投げ入れた
‥‥
その魂は早い段階でネクターの元へと戻って来る
「‥‥随分早かったですね」
「そうだね、まあでも良い人生だっただろうに、ではさっそくその楽しかったであろう記憶を━━」
魂を取り込むネクターだが、取り込む前は笑顔だったのに、取り込んだ瞬間その表情は真顔に変わる
「‥‥どうでしたか? 楽しかったですか?」
「‥‥」
「‥‥ネクター?」
「腹上死したんだが‥‥」
ネクターがハーレム星と名付けたその星は、男女の比率が1対100と歪であり、女性の方が権力を持ち、女性の方が性欲が強いという星だった。
そこに降り立ったネクターは、初日に美しい女性と関係が持てるというほどであり、その後ネクターは美しい3人の女性と結婚することになる。
朝昼晩と行為を求められた結果、その最中に命を落とすことになった
「なんだよこの星‥‥クソじゃん。この星を作ったアイツは馬鹿じゃねーの? 死ねよ‥‥俺がアイツの存在諸共、星ごと消そうか?」
余程辛い思いをしたのか? 普通ネクターは他の星に魂を投げ入れ、もし早死にしてもここまで罵倒はしなかった。「ここに問題はあるけど、この部分は素晴らしかった」と、その星を作った神に対し笑顔で敬意を持って好意的に評価していた。
だが今回のハーレム星に関しては今までにないほど、否定しかなかった。点数も5点という低いものだった
『地獄を味わった』というネクターは、『この宇宙で一番惨いのは女の性欲』と言っていた。そして‥‥何故かネクターはその後、私からもちょっとだけ距離を取るようになっていた
そんなネクターだが、本当にこの子はよく死ぬ。今まで送り出した魂の中で、天寿を全うしたのは全体の1割にも満たない。
何かしらの厄介ごとに顔を突っ込み、自ら命を終える事が多い。
そして今回も━━
「ぐああああぁぁぁー! 惜しいぃぃぃ!」
送り出した魂が、どうやらまた短命で終わったようだ
「‥‥今回はどうしましたか?」
「いやあ~惜しかった! もうちょっとで四天王の一人を倒せたのに!」
今回の魂が送り出された星には魔族がおり、魔族と人が争いを起こしている星だったらしく、ネクターは魔王が率いる四天王の一人と戦い、命を落としたらしい
「まさか心臓が2つあるとか、そんな漫画みたいな展開があると思わなかったよ、いやあ惜しかった。気づいていたら勝てたのに、でも俺の慢心が起こした事だからしょうがない。
最終的には短命だったし、最後は残念だったけど‥‥95点!」
今までで最高の得点だった
「‥‥記録更新ですね」
「ああ最高に楽しかったよ、この星は日本から大量に転生者を連れて来てるから、日本食も久々に食べる事が出来たし、なんかファンタジーぽくて良かったよ。
まあそれも、あいつがいたおかげでいい条件でこの星に入れたからな‥‥ちょっとだけお礼しておこうかな? マシェル悪いけど魔石にさ、『癒し』と『防病の契約』付与してくれない?
・・・・・・・
・・・・
それから長い時間が過ぎる、それは女神の私でも長いと思う時間だ
他の星に遊びに出かけていたネクターだが、その遊びももうしなくなっており、自分がいる星の人の子をじっと眺めるようになっていた。
そしてこの頃かからネクターの姿に変化が訪れる、人で言う20歳位の若さの見た目だったが、徐々にだが老い始めていた。
神であるネクターは老いる事は無いのだが‥‥、それは神であったユーサリーが何故か老いたようにネクターも近づき始めていた
その時にはこの星の二つの国の情勢も変わって来ていた
長い事均衡を保っていた二つの国は均衡が破れ、マシェルモビアが優勢となってゆく。先のネクターを喰らい頭が肥大化したヴァンギエル族の末裔が、ハルツールの内部を徐々に侵食して行き腐敗する。
そこをマシェルモビアが好機としてハルツールに一気に攻め入っていた。
本国まで攻め込まれたハルツールはその戦いの中で、破壊の一族を失う事となる
サーナが最初の魔法陣を敷くきっかけとなり、ネクターが直接その体に魔法を埋め込み、そしてウエタケ・ハヤトとしても、サコナ・ソルセリーとして縁の合った破壊の一族だったが、末裔が‥‥その血が消滅する事となった。
その一族が途絶えたとなったとしても、ネクターは動く事は無かった
「‥‥よいのですか?」
と聞いても
「人の子が作った歴史だから‥‥」
としか帰って来ず、ずっと地上を見ていた
その後、ハルツールはマシェルモビアに敗北。
この星はマシェルモビアによって統合される事になった
かつて自分が所属していた国が無くなっても、ネクターはただ見ていただけだった‥‥
統合された世界は、本国の北と支配された南で格差はあるものの、この星で初めての平和な世界が待っていた‥‥
その後一度だけネクターに尋ねた事がある、国が一つ消えてしまった事に
「‥‥本当にこれでよかったのですか?」
「人の子がそうしたのならそれでいいと思う」
この頃にはネクターはもう老人と呼べるほど、姿が老いていた。そしてその顔は常に何か悩みを抱えているように感じていた
「どうせ最終的にはただの娯楽」
「‥‥娯楽とは?」
「人の子が争い戦争をする事だよ、そのなかで国が消えるというのはよくある事━━」
ネクターがカネオンのような事を言う、カネオンは人の子が苦しんでいるのが好きと言う程だったが
「━━私ががネクターとしてこの星で創造された時、その時にはもう居なかったけど、その前はいたんだろう『竜騎士』と呼ばれる存在が?」
「‥‥はい、私が創造された時はまだいました」
「それは、今でも語られる話とは別物ではなかったかな?」
「‥‥はい」
かつて竜騎士と呼ばれた者達は、今に語り継がれる存在とは全く別だった。遊牧民として生きて来た彼らは、人を乗せ飛ぶことの出来る温厚な動物を乗りこなし、家畜と共に生きて来た。
それが、世界が一つの大陸として繋がると、その生活が一変する。
空を飛べる動物と彼らは、戦争の道具として扱われるようになる。権力でねじ伏せられ半ば強制で、もしくは家族を人質に取られたりなどして戦場に駆り出された。
その結果、元々繁殖力の低かった空の飛べる動物は、4年程で絶滅する事となる。
竜騎士としての活躍も、どれも悲惨なものだった‥‥
「でも何百年も経つと、その事実とは違い、英雄のように扱われるようになる。それは本になったりして永遠にね。
そこにはもう娯楽以外の何物でもない、無かった事をあるように語られ、それに楽しみを覚える。
ウエタケ・ハヤトが生まれた星でもそうだ、何百年前の戦争なんて娯楽でしかない。その戦いを模した遊びなどもあるし本もある。それを面白おかしく表現する作品もあるし、いずれにしろ時間が経てばただの娯楽‥‥。
もちろん当時生きた人からすれば、たまったものではないだろうが。だから戦いが起こり、国が無くなったとしても、結果それは人の子が望んだことだ」
「‥‥そうですか」
・・・・
・・
その後も一つになった世界は平和が続く、でもそれに反してネクターの表情からは辛く悲しいものが溢れているように感じた。
年を取らないはずのネクターは、まだ存在していた頃のユーサリーと同じように老いていた。そのネクターがたまに語っていたことがある
「人は文明を進化させる事が、その魂に刻まれた宿命である。文明を進化させ発展し、星という器から抜け出し、そしていずれ肉体とする器を捨てる事が望まれている。
その魂に宇宙からエネルギーを吸収し、より大きなものに、大きな存在になる。それがユーサリーやカネオンのような神になる」
「‥‥その話だと、ユーサリーやカネオンが元々人の子だったと聞こえますが?」
「その認識で問題ない、そして神になったものは、人の子を作る為に星を作り、人の子が住めるように環境を整える。
そういう風に作られていると様々な星を見て来て最近気が付いた」
つまり神が星を作り子を作ったとなると、ユーサリーやカネオンを作った神もいる事になる。そうなると‥‥
「‥‥その考えでは話が合いません、神が星を作り子を作ったとしたら、最初に星を作り出したのは誰になるのですか?」
「それは、本当の神が最初に作ったのだろう」
「‥‥本当の、神‥‥?」
別の時にはこんな事も言っていた
「神には二つの種類がいる。
星を徹底して管理をし、自ら手を出す『管理者』と、ただ傍観するだけの『監視者』の二つ。前者はユーサリーで後者はカネオンだと思えばいい。
『管理者』は自分が人であった時、同じように神の手が直接加わっていたのか、自身が作った人の子に手を加える事がある。
一方、『監視者』は自身が人であった時、神の恩恵が全く無かったせいなのか、手出しはあまりしない。
そして人の子は最終的に肉体としての器を捨てる時、圧倒的に『監視者』が神の場合が多い。
この星は‥‥『監視者』ではなく、『管理者』によって手を加えられている‥‥。それは‥‥、この星の文明が手を加えられすぎた結果、人の子が起こす自発的な発展が遅いという事。‥‥私が、私の判断が、もしかしたらもう遅すぎたのかもしれない」
老いたネクターは、悲しげな眼で、それは強い後悔も含まれているような気がした
「私には決断できなかった‥‥。もしかしたらもう遅いかもしれない、星の寿命が尽きるまで、人の子は宇宙に上がる事が出来ないのかもしれない。
魂に刻まれた使命を全うせず、この星と共に終えるのかもしれない。魔法という物を私があの時地上に敷かなければ‥‥」
老いたネクターの目には私に対する微かな期待が見えたように感じた。でも私には、その期待は何に対する期待なのか理解出来なかった
「‥‥ネクター?」
ネクターの目は私の言葉に、目を少し伏せた
「‥‥‥‥いや、なんでもない。今頃ユーサリーの考えが理解できるようになっただけだよ。ただ私が愚かだっただけだよ」
◆◇
長い時間が過ぎても、一つに統合された世界は平和だった。
地上では永遠と続くであろうこの平和に染まっていたが、それを見つめていたネクターは永遠では無かった
消滅するはずの無いネクターが、今まさに消滅しようとしていた
「‥‥ネクター私はどうしたらいいですか?」
それにネクターはただ横に首を振るだけ。
そして徐々に消えてゆくネクターの体
「‥‥ネクター姿が消えています」
それに頷くだけのネクター、その姿は消えて行き、存在がいよいよ希薄になった時、ネクターの口が開かれ
「ごめんねマシェル、僕には無理だったよ、だから‥‥っ‥‥後は‥‥頼む」
その言葉の後、人の姿が消え、魂が現れる。
私はそれを捕まえようとした、ネクターの魂を捕まえ、私が新しい器を与えればネクターがまた存在できると考えた。
だからネクターの魂に手を伸ばし捕まえたが━━
ネクターの魂は私が捉えると同時に、世界に溶けて消えていった。
私の手にはネクターの残滓だけが残り、それも跡形もなく世界に消えてゆく‥‥
こうして私は、この星のただ一人の神になった‥‥
◆◇
ネクターがこの星から消え、長い時間が過ぎる。
平和を謳歌するこの星の子達だが、それに暗雲が立つ。世界が平和になり、軍隊の意味もなさなくなってしまったマシェルモビア、今まで回されていた予算は経済に回されるようになり、軍は大幅な縮小をしていた。
そんな中、様々な思想が生まれ、人々は様々な考えが生まれるようになる。そしてその思想は大陸北部、元々マシェルモビアの領地だった『都市・トルクネ』から発生する
マシェルモビアが国として北部を制圧していた際、恐怖を盾にして周囲の国々を併合して行った。それが今になり非難されるようになり、その結果元々我々は独立国だったという考えが出て来るようになる。
それは最初誰もが気にしない程の話だったが、徐々にだが大きくなり、それが少しづつ大きな波に変わっていく。
最初興味が無かった者達も少しずつその主張に耳を傾けるようになり、遂に都市トルクネがマシェルモビアから独立を宣言した。
最初その事を鼻で笑っていたマシェルモビアの中央政府。だがそれに呼応するように次々と独立を宣言する都市が現れ、遂に中央政府は鎮圧に乗り出す
中央政府と独立派で争いが起きたが、かつてあったハルツールと戦うためにあった軍隊は既に縮小されており、今は魔物が存在する緩衝地帯付近に軍隊が集まっていた。
その緩衝地帯に近い都市までもが、マシェルモビアからの独立を宣言しだし、状況は一変。長く栄華を極めていた大国マシェルモビアは、何千年という歴史をあっけなく閉じる事になる
そして独立を果たした都市は新たに国を名乗り、そして周囲の国を取り込もうと動く。最初話による交渉で動いていたが、それが武力に変わり大きなうねりとなり、世界に広がる
何千年と平和だった世界が一変、世界の都市全てを巻き込んだ戦争に発展してしまった
それを天界から私は見ていた
あれほど人の子が望んだ平和があったにもかかわらず、人の子は自らそれを手放した。
ネクターが愛した人の子達は、自ら破滅へと進んで行く。この光景をネクターが見たら悲しがるだろうか?。
あれほど手を尽くし、自分の魂を削り人の為にと尽くしてきたネクターと、自ら争いをする人の子‥‥
その時、国の一つを滅ぼそうとしたユーサリーの気持ちが少しだけ私にも分かる気がした。
人の子に裏切られたという気持ちが、その時私の心に沸き上がる、怒りにも似た気持ちが私の中に芽生え始めていた
ネクターはあの時言っていた『管理者』と『監視者』の話。
神が手を加えない方が望む方角に進むというのならば、そのようにしよう。神となる私はただの『監視者』になろう
醜い争いを繰り広げる地上に向け私は手を広げる、以前私とサーナがした事と全く逆の事を行った。
地上のあらゆる管理を辞め、更に━━
世界から魔力を消滅させた
◆◇
パチパチパチパチ
世界が一変した星から少し離れた場所に、乾いた音がする。それはリズムよく陽気なものだった
「素晴らしかったよ! 素晴らしい!!」
その声は嬉しそうであり楽しそうであり、この世で一番の娯楽を感じたと告げる
「いやぁぁぁぁぁ! いい物を見た! 流石マシェル! 俺の子!」
その声はかつて星を追い出された神、カネオンでありその手からはパチパチと祝福の拍手が鳴る
「父親の俺にこんな良い物を見せてくれるなんて、なんて親孝行な娘だろう!! 創造して良かった!! 感動した!!」
上機嫌なその神は陽気に笑う、その一方
「にしても息子の方は本当に駄目だったな、せっかく自分のケツを拭かせてやろうと思ったのに、結局は姉に拭いてもらうのかよ。
あれだけでかい事言いながらコレだからな、不甲斐ないよ、お父さんもガッカリだよ全く、まあでも結果いい方に行ったからいいだろう、良しとしようか?」
カネオンは文明が崩壊した星を見てそう言う
全てが魔力で補われているこの星は混乱の極みまさに地獄に落ちるだろう、全ての常識が覆り、今までの当たり前が通用しなくなる。
文明のレベルは石器時代に近づくだろうし、更に今まで抑えて来た自然現象がこの地を襲う事となる。自然災害が人々を襲い、災害の知識もないこの星の人の子達は、なすすべもなくその命を落とすことになる。
ただし、それだけではない、過去に天使を喰らいその力を取り込んだ一族の末裔達は、謎の奇病にかかり命を落とす。
それと同時に緩衝地帯に生息していた魔物達も同様、次々とその命が潰えていった
「どうせあのままだと停滞してただろうし、これでやっと前に進めるな。お前達も早く俺らの所まで登って来いよ待ってるからな! 来れるかどうかは今の状態だとギリギリだと思うが━━」
既に地獄が始まりつつある星を見て満足そうなカネオンは星に背を向ける、が、一つだけ言い忘れたのか混乱する星の子に向け
「‥‥おめでとう‥‥ようやくこれで縛る神のいない、君達だけの『新しい世界の始まり』だよ」
そこには本当に人の子を愛する神の顔があった
「さて俺はどこに行こうかな? その前にコレどうしようか?」
手にはもう1人の子の魂の欠片が握られている。兄の補充用として存在させられた可哀そうな子の魂の欠片が‥‥
「まあどっか放り込んでおけば勝手に転生するだろう」
ポンポンと軽く投げて掴んだ後、その欠片を━━
「どぉぉっぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁl!」
思いっきり放り投げた
◆◇◆◇◆◇
「だいぶ暗いから足元に注意してください」
「ええ分かってるわ」
「私が前に行きますからその後に続いてください」
地下に向かう3人の姿がある。たまたま見つけたその穴には階段があり、そこを松明を持った女性を先頭に、背の小さな別の女性が進み、その後ろに男性が続く
長い長い階段はかなり地下深くまで続き、階段の最後には引き戸らしい扉がある。松明をもった女性はそれを引こうとしたが、扉は奥に開いた
「引き戸じゃないのか、何だこの場所は」
少し苛立つ女性はそのまま中に入って行く
「気をつけて、何かあるかもしれないし」
「分かってます」
3人が部屋に続けて入るとそこには机があり、その前には岩が置いてあった
「‥‥何で岩?」
部屋には不釣り合いの岩に疑問を持つ、そしてその岩には文字が書かれていた
「んー‥‥随分古い文字ね‥‥読める?」
背の小さな女性が松明を持った女性に聞く
「これは‥‥読めませんねすみません」
「そうよね‥‥一体なんて━━」
「この地を訪れた君たちへ」
後ろに居た男が岩に彫られた文字を読む
「「えっ! 読めるの!?」」
「うん、まあ、何か読めますね」
「‥‥お前は一体何なのだ?」
松明の女性はそう言うが
「何なのだって言われても‥‥」
男の方もそれはよく分かっていない様子
「それはいいからなんて彫られてあるの? 続きは?」
背の小さな女性は続きを読めと促す
「はいはい、えーっとですね『君たちは魔物がはびこる土地を抜け、運よくこの場所を見つけたのだろうか? もしそうだったとしたら‥‥それはもう故郷に帰るのを諦めるしかない。だが心配しないで欲しい、川には魚がいるし水にも困らない、食物の種も用意しているので食べ物には困らないだろう』」
「魔物? おとぎ話に出て来るあの魔物か?」
男性は気にせず続けて文字を読む
「『周囲に異形の魔物と━━』」
「魔物っては一体なんだ? そこら辺にいる獣の事か? 本当にそう書いてあるのか? 適当に言ってないか?」
松明の女性は魔物というのに疑問を持ったのか男に聞くが
「ちょっと黙ってて」
背の小さな女性に止められる
「それで続きは?」
「あっはい、続きはですね」
男性は彫られた文字に目を向けると続きを読む
「『周囲に異形の魔物と呼ばれるものがおらず、たまたまこの場所を見つけたとしたのなら‥‥おめでとう‥‥人の子らよ━━』」
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buchi
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グダグダな感想ですが、応援してる気持ちを伝えたくて、なんかすんません
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誤字報告です。
隊長もっと早く抜てくれ 「い」が抜けています。
その後の連続抗議はこのままでいいのかな。
ありがとうございます、抜けていた部分を修正しました。あと、分かりずらかった部分を少しだけ変えました。