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十三話〜愛人と帰宅する夫〜
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夜会後から、ユーリウスは毎日屋敷に帰ってくるようになった。理由は父である公爵から随分と口煩く言わられたらしい。
だが帰宅するのは、毎日日を跨いだ頃で更に朝は早いので顔を合わせる所か姿を見る事はほぼほぼない。
そんなある日、ユーリウスが珍しく早めに帰宅したのだが、その隣にはフラヴィの姿があった。
「ここは私の屋敷だ。文句は言わせない」
廊下で鉢合わせしてしまったユーリウスが有無を言わさず言い捨てた。隣のフラヴィはご満悦で笑みを浮かべている。更に「お・い・も・さ・ま」と唇が動いたのが分かった。
こちらは特に何も言っていないのに攻撃的な二人に呆れるが、そんなエレノラを余所にユーリウス達は身体を寄せ合いながら去って行った。
その夜、フラヴィは屋敷に泊まり翌朝には帰って行ったみたいだ。
それからというもの、毎日別の愛人を伴いユーリウスは帰宅した。
愛人達とは一応夫婦の寝室ではなく、客室で寝ているようだ。
ただ幾ら毎日屋敷に帰るように言われたからといって、これ見よがしに愛人を伴い帰宅するなら寧ろ帰って来ない方がましだ。
エレノラは別段気にはしていないが、使用人達が気不味そうで屋敷内の空気が頗る悪い。それに大袈裟な程気を使われるので、申し訳なくなってしまう。
そんな事を繰り返す中で、ふと思った事がある。それはユーリウスが愛人の中でもフラヴィには特別優しいという事だ。それを毎度の如く遊びに来たロベルトに何気なく話してみるとーー
「ああ、フラヴィは幼馴染だからね。昔、結婚話まで上がったくらいだし」
「どうして二人は結婚しなかったんですか?」
「フラヴィが拒否したんだよ」
「でもフラヴィ様は、ユーリウス様がお好きなのでは……」
二人がそんな間柄とは驚きだ。
それに誰がどう見てもフラヴィがユーリウスを好いている事は明白で、何故結婚を断ったのかと不思議でならない。
「そうだね、きっと誰よりも兄さんを愛していると思う」
珍しく真剣な口調の彼はどこか切なそうに笑った。
「別に本人から聞いた訳じゃないから本当の事は分からないけど、多分フラヴィは耐えられる自信がなかっただと思う」
「耐える、ですか?」
「そう。兄さんは常に沢山の女性と関係があるから、結婚して自分だけを愛して貰える自信がなくて怖かったんじゃないかな。他の女性の元へ行く夫を見送る覚悟がなかったんだと思う。それでも諦め切れずに、物分かりのいいフリをしながら沢山いる女性達の一人になった」
「他の令嬢もフラヴィ様と同じなんですか?」
「う~ん、多分似たような感じだと思うよ」
「私には理解出来ません」
「お子様の義姉さんにはまだ早かったかな?」
「私はもう子供では」
「子供だよ。恋の一つもした事ないだろう? 頭は良いとは思うけど、そういった意味では子供と大差ない」
そんな風に言われたら、反論が出来ないと口を閉じた。確かにこの歳で初恋もまだだ。そもそも父や弟達、家を護る事で精一杯で恋なんてしている余裕はなかった。
「義姉さんも、ちゃんと女になったら少しは理解出来るかもね」
「私は女性です」
「はは、そうじゃなくて、生娘じゃなくなったらって意味だよ」
「っ‼︎ 破廉恥です!」
ロベルトが帰った後、エレノラが机に向かいお金の運用計画について悩んでいると、ボニーが部屋に入ってきた。
「若奥様、お手紙が届いております」
「ありがとう、ボニー」
差出人を確認するとフラヴィからだった。
そして中を見ると、まさかのお茶会への招待状だった。
だが帰宅するのは、毎日日を跨いだ頃で更に朝は早いので顔を合わせる所か姿を見る事はほぼほぼない。
そんなある日、ユーリウスが珍しく早めに帰宅したのだが、その隣にはフラヴィの姿があった。
「ここは私の屋敷だ。文句は言わせない」
廊下で鉢合わせしてしまったユーリウスが有無を言わさず言い捨てた。隣のフラヴィはご満悦で笑みを浮かべている。更に「お・い・も・さ・ま」と唇が動いたのが分かった。
こちらは特に何も言っていないのに攻撃的な二人に呆れるが、そんなエレノラを余所にユーリウス達は身体を寄せ合いながら去って行った。
その夜、フラヴィは屋敷に泊まり翌朝には帰って行ったみたいだ。
それからというもの、毎日別の愛人を伴いユーリウスは帰宅した。
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ただ幾ら毎日屋敷に帰るように言われたからといって、これ見よがしに愛人を伴い帰宅するなら寧ろ帰って来ない方がましだ。
エレノラは別段気にはしていないが、使用人達が気不味そうで屋敷内の空気が頗る悪い。それに大袈裟な程気を使われるので、申し訳なくなってしまう。
そんな事を繰り返す中で、ふと思った事がある。それはユーリウスが愛人の中でもフラヴィには特別優しいという事だ。それを毎度の如く遊びに来たロベルトに何気なく話してみるとーー
「ああ、フラヴィは幼馴染だからね。昔、結婚話まで上がったくらいだし」
「どうして二人は結婚しなかったんですか?」
「フラヴィが拒否したんだよ」
「でもフラヴィ様は、ユーリウス様がお好きなのでは……」
二人がそんな間柄とは驚きだ。
それに誰がどう見てもフラヴィがユーリウスを好いている事は明白で、何故結婚を断ったのかと不思議でならない。
「そうだね、きっと誰よりも兄さんを愛していると思う」
珍しく真剣な口調の彼はどこか切なそうに笑った。
「別に本人から聞いた訳じゃないから本当の事は分からないけど、多分フラヴィは耐えられる自信がなかっただと思う」
「耐える、ですか?」
「そう。兄さんは常に沢山の女性と関係があるから、結婚して自分だけを愛して貰える自信がなくて怖かったんじゃないかな。他の女性の元へ行く夫を見送る覚悟がなかったんだと思う。それでも諦め切れずに、物分かりのいいフリをしながら沢山いる女性達の一人になった」
「他の令嬢もフラヴィ様と同じなんですか?」
「う~ん、多分似たような感じだと思うよ」
「私には理解出来ません」
「お子様の義姉さんにはまだ早かったかな?」
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「子供だよ。恋の一つもした事ないだろう? 頭は良いとは思うけど、そういった意味では子供と大差ない」
そんな風に言われたら、反論が出来ないと口を閉じた。確かにこの歳で初恋もまだだ。そもそも父や弟達、家を護る事で精一杯で恋なんてしている余裕はなかった。
「義姉さんも、ちゃんと女になったら少しは理解出来るかもね」
「私は女性です」
「はは、そうじゃなくて、生娘じゃなくなったらって意味だよ」
「っ‼︎ 破廉恥です!」
ロベルトが帰った後、エレノラが机に向かいお金の運用計画について悩んでいると、ボニーが部屋に入ってきた。
「若奥様、お手紙が届いております」
「ありがとう、ボニー」
差出人を確認するとフラヴィからだった。
そして中を見ると、まさかのお茶会への招待状だった。
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