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挨拶も終わり、もうここには用はない。ヴィレームはフィオナに帰ろうと促す。すると彼女は、自室に取りに行きたい物があると言うのでヴィレームはフリュイと共に応接間にて待つ事になった。
彼女を一人にするのは心配だったのだが、彼女から「直ぐ戻りますから、大丈夫です」と言われたので大人しく待っている。
彼女の両親等は、花嫁代を約束した時点で、もうこちらには用も興味もない様子で早々に退室した。本当に非常識な人間達だったと、呆れながら息を吐く。
故にこの部屋に居るのは、一人と1匹だけだ。
フリュイはヴィレームの隣で丸まって座り、片目を開けてこちらの様子を伺ってくるが別段何をする訳でもない。時折欠伸をして退屈そうにしている。
暫しフリュイと冷戦状態で大人しく待っていると、扉がノックされた。
直ぐにと言っても随分と早いなと、思いながら振り返ると入って来たのはフィオナではなく、見慣れない青年だった。
だがヴィレームには直ぐ分かった。彼がフィオナの弟のヨハンなのだと。
「初めまして、ご挨拶がおくれましたが僕はフィオナ・ヴォルテーヌの弟のヨハンです」
彼は人好きのする笑みを浮かべ、丁寧にお辞儀をした。
ヨハンはヴィレームの向かい側に腰を下ろした。
「本当に、姉さんと結婚されるんですか」
眉を上げ驚いた表情をする。その様子からまだ少し幼さが残る印象を受ける。一言二言挨拶を交わした後、直ぐに本題に入った。
「ご両親方には、許可は頂く事が出来ましたので、そのつもりです」
そう言ってヴィレームはニッコリと微笑む。
「姉さんは……貴方と結婚したいと言っているんですか」
「勿論。今日挨拶に来たのは、彼女の意思でもあります」
ヴィレームがそう告げた瞬間、スッと彼の表情が変わる。
「……本当に?本当に姉さんが貴方と結婚したいって言ったの?貴方が姉さんを脅迫でもしてるんじゃないの」
穏やかな空気は、張り詰めたものに変わった。彼の『裏』の顔が見え隠れしている。
「そんな事をする意味はないよ。僕達は、互いに想い合っているからね」
その言葉に更に目付きが鋭くなった。
「じゃあ、そもそも貴方が姉さんと結婚したい理由は何?」
「彼女の事を愛しているから、では理由にならないかな」
ヨハンは、下らないと言わんばかりに、鼻を鳴らした。
「嘘だ。そんなの口では何とも言える。貴方は見てくれも悪くないし、伯爵家出身ではあるが、お金は随分と持っているらしいね。そんな人間がわざわざ醜女と呼ばれる姉さんを選ぶ理由がない。何か裏がある筈だ。あぁ、もしかして姉さんを自国に連れ帰って見世物にでもしたいとか?」
姉に執着している割には、随分な物言いだ。見下している様にしか聞こえない。ヴィレームは無性に腹が立った。
「僕の大切な人を、侮辱する言い方はやめてくれないかな」
「別に侮辱なんてしてないよ。ただ、あの醜い醜い姉さんを理解してあげるのも、愛してあげられるのも、この世で僕一人だけなんだ……」
恍惚とした表情を浮かべそう話すヨハンに、ヴィレームは眉根を寄せた。
「お前には、到底姉さんの事は理解出来ない。姉さんの事を分かってあげられるのはこの僕だけだ。知らない様だから教えてあげるけど、僕と姉さんは深い絆で結ばれているんだよ。お前の入る隙なんて微塵もないんだ。残念だったね、わざわざ挨拶にまで来たというのに、無駄足になって。分かったら御託を並べてないで、さっさと帰れよ。勿論一人でね。僕はこれから、お前に捨てられた可哀想な姉さんを、慰めてあげなくちゃいけないから忙しいんだ」
まるで鼻歌でも歌い出しそうな程、機嫌よく話す。
ヨハンは勝ち誇り、話は終わったとばかりに席を立つと、扉へ向かう。扉の前で一度止まると振り返り「姉さんは、僕だけのものだ。誰にも渡さない」暗い笑みを浮かべそう言った。
彼女を一人にするのは心配だったのだが、彼女から「直ぐ戻りますから、大丈夫です」と言われたので大人しく待っている。
彼女の両親等は、花嫁代を約束した時点で、もうこちらには用も興味もない様子で早々に退室した。本当に非常識な人間達だったと、呆れながら息を吐く。
故にこの部屋に居るのは、一人と1匹だけだ。
フリュイはヴィレームの隣で丸まって座り、片目を開けてこちらの様子を伺ってくるが別段何をする訳でもない。時折欠伸をして退屈そうにしている。
暫しフリュイと冷戦状態で大人しく待っていると、扉がノックされた。
直ぐにと言っても随分と早いなと、思いながら振り返ると入って来たのはフィオナではなく、見慣れない青年だった。
だがヴィレームには直ぐ分かった。彼がフィオナの弟のヨハンなのだと。
「初めまして、ご挨拶がおくれましたが僕はフィオナ・ヴォルテーヌの弟のヨハンです」
彼は人好きのする笑みを浮かべ、丁寧にお辞儀をした。
ヨハンはヴィレームの向かい側に腰を下ろした。
「本当に、姉さんと結婚されるんですか」
眉を上げ驚いた表情をする。その様子からまだ少し幼さが残る印象を受ける。一言二言挨拶を交わした後、直ぐに本題に入った。
「ご両親方には、許可は頂く事が出来ましたので、そのつもりです」
そう言ってヴィレームはニッコリと微笑む。
「姉さんは……貴方と結婚したいと言っているんですか」
「勿論。今日挨拶に来たのは、彼女の意思でもあります」
ヴィレームがそう告げた瞬間、スッと彼の表情が変わる。
「……本当に?本当に姉さんが貴方と結婚したいって言ったの?貴方が姉さんを脅迫でもしてるんじゃないの」
穏やかな空気は、張り詰めたものに変わった。彼の『裏』の顔が見え隠れしている。
「そんな事をする意味はないよ。僕達は、互いに想い合っているからね」
その言葉に更に目付きが鋭くなった。
「じゃあ、そもそも貴方が姉さんと結婚したい理由は何?」
「彼女の事を愛しているから、では理由にならないかな」
ヨハンは、下らないと言わんばかりに、鼻を鳴らした。
「嘘だ。そんなの口では何とも言える。貴方は見てくれも悪くないし、伯爵家出身ではあるが、お金は随分と持っているらしいね。そんな人間がわざわざ醜女と呼ばれる姉さんを選ぶ理由がない。何か裏がある筈だ。あぁ、もしかして姉さんを自国に連れ帰って見世物にでもしたいとか?」
姉に執着している割には、随分な物言いだ。見下している様にしか聞こえない。ヴィレームは無性に腹が立った。
「僕の大切な人を、侮辱する言い方はやめてくれないかな」
「別に侮辱なんてしてないよ。ただ、あの醜い醜い姉さんを理解してあげるのも、愛してあげられるのも、この世で僕一人だけなんだ……」
恍惚とした表情を浮かべそう話すヨハンに、ヴィレームは眉根を寄せた。
「お前には、到底姉さんの事は理解出来ない。姉さんの事を分かってあげられるのはこの僕だけだ。知らない様だから教えてあげるけど、僕と姉さんは深い絆で結ばれているんだよ。お前の入る隙なんて微塵もないんだ。残念だったね、わざわざ挨拶にまで来たというのに、無駄足になって。分かったら御託を並べてないで、さっさと帰れよ。勿論一人でね。僕はこれから、お前に捨てられた可哀想な姉さんを、慰めてあげなくちゃいけないから忙しいんだ」
まるで鼻歌でも歌い出しそうな程、機嫌よく話す。
ヨハンは勝ち誇り、話は終わったとばかりに席を立つと、扉へ向かう。扉の前で一度止まると振り返り「姉さんは、僕だけのものだ。誰にも渡さない」暗い笑みを浮かべそう言った。
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