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番外編【この暑さには勝てません】3お触り禁止宣言①
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「しばらくの間、オレに触らないでくれ」
ある日の夕食後、突然、僕は恋人にお触り禁止宣言をされてしまった。自慢ではないが、僕と恋人の仲はラブラブで、愛し合う行為も毎日のように行っていた。それをいきなり禁止にされるというのは、それすなわち。
僕の他に、誰か気になる相手でもできた。あるいは。
僕との仲を考えなくてはならないような出来事が起こってしまったのだ。
恋人と僕は元々、教師と生徒の関係だった。僕が高校生の頃、数学を教えてくれた新人教師が今の恋人である。数学教師だった彼に、僕は一目ぼれした。色白でひょろっと背の高い、銀縁メガネをかけた、いわゆる理系タイプの容姿。僕の好きなタイプが現実に現れたようだった。ちなみに僕の容姿は平均身長で、黒髪短髪の優等生タイプの見た目をしている。先生からの受けはよかった。
「来週、付き合って10年目の記念日で、今年は節目の年なのに」
彼と付き合い始めて早10年。出会ってからだと20年が経過している。そんな大事な日であり、大事な年なのに、ここに来てそんな理不尽なことを言われてしまうとは。
教師と生徒から恋人になるのはなかなか至難の業だ。彼と付き合うために、僕は在学中、猛アタックを繰り返した。しかし、僕も分別ついた学生だったので、付き合うのは卒業後になると長期戦を覚悟していた。押しに弱いかと思われた恋人だったが、僕の熱烈なアタックの甲斐もあり、卒業後10年を経てようやく付き合うことができた。
そしてさらに嬉しいことに今年、彼と同棲をすることになった。そうなれば、今年は三つの大事な節目となる年だ。
恋人は見た目が理系で神経質で気の弱そうな見た目だが、中身はかなり自己中心的な俺様系の性格をしていた。昔はヤンチャしていたようで、口調も生徒の前ではあくまで丁寧な言葉を使っていたが、誰もいないところでかなり汚い言葉で怒っていたのを目撃している。そのギャップも最高だった。
さて、過去のことは考えていても仕方ない。まずは彼がどうしてそんなことを言い始めたのか。その理由を探さなくてはならない。
その日の夜、彼は同棲してから初めて、僕と同じベッドで寝るのを拒否し、リビングのソファで寝ると言って、寝室を出ていった。ひとりでは大きすぎるベッドに、僕はあまりのショックでまったく眠れなかった。そして、一睡もせず朝を迎えた。
朝、改めて隣に恋人がいないことを確認して、いったん思考が停止する。しかし、無情にも時間は過ぎていく。今日は平日で体調不良でもないのに会社を休むわけにはいかない。しぶしぶ会社に行くためにベッドから起き上がり、寝室を出てリビングに向かう。
リビングにはソファで寝ていたはずの恋人が鼻歌を歌いながら朝食を作っていた。どうやら、同じベッドで寝られずに悲しみにふけって一睡もできなかったのは僕だけだったらしい。いよいよ、これは別れのカウントダウンが始まっている。
「おはようございます」
そんな嫌な事を考えながらも、表情には出さないように平静を保って恋人に朝の挨拶をする。
「おはよう、なんだか顔色が悪いけど、大丈夫か?」
「あなたと寝るのが当たり前になっていたから、昨日はあなたが隣にいなくて、一睡もできませんでした」
恋人は僕の顔を一瞬見ただけで、いつもと違うことに気付いてしまった。顔色が悪いのは当たり前だ。一睡もできなかったのだから。そしてそれは恋人が隣にいなかったからであり、体調不良の原因は恋人にある。
「そんなに怖い顔で見つめるなよ。ほら、さっさと朝ごはん食べて仕事に行くぞ」
つい、恨めし気な視線を恋人に向けてしまったら、怖い顔と言われてしまう。そんな表情をさせた張本人が言うことか。まったく嫌になってしまう。とはいえ、テーブルにおいしそうな味噌汁とほかほかの白米を持ってこられては何も文句は言えない。
『いただきます』
僕たちはテーブルに向かい合わせに座り、朝食を取り始める。恋人は理系タイプで料理ができないかと思っていたが、その逆だった。かなりの料理好きで、毎日の朝と夜の料理は彼が担当してくれている。僕だって、そこそこ料理は作れるが、恋人が好きで作ってくれているのでありがたくいただいている。彼の料理に胃袋も掴まれてしまった。
身体も心も胃袋も掴まれてしまっては、もう別れようがない。ここまで依存させておいて今更別れたいなど、許せるはずがない。
「じゃあ、行ってくる」
「……。いってらっしゃい」
朝は恋人の方が先に家を出る。僕もその後、家を出るのだが、恋人をお見送りする感じが気に入っていた。そして、見送るときの毎日の日課を楽しみにしていた。それなのに。
「いってきますのキス、なかったな」
どうやら、本格的に恋人の身辺調査をしたほうがよさそうだ。どうして僕との接触を避けようとするのか。原因を早急に見つける必要がある。
ある日の夕食後、突然、僕は恋人にお触り禁止宣言をされてしまった。自慢ではないが、僕と恋人の仲はラブラブで、愛し合う行為も毎日のように行っていた。それをいきなり禁止にされるというのは、それすなわち。
僕の他に、誰か気になる相手でもできた。あるいは。
僕との仲を考えなくてはならないような出来事が起こってしまったのだ。
恋人と僕は元々、教師と生徒の関係だった。僕が高校生の頃、数学を教えてくれた新人教師が今の恋人である。数学教師だった彼に、僕は一目ぼれした。色白でひょろっと背の高い、銀縁メガネをかけた、いわゆる理系タイプの容姿。僕の好きなタイプが現実に現れたようだった。ちなみに僕の容姿は平均身長で、黒髪短髪の優等生タイプの見た目をしている。先生からの受けはよかった。
「来週、付き合って10年目の記念日で、今年は節目の年なのに」
彼と付き合い始めて早10年。出会ってからだと20年が経過している。そんな大事な日であり、大事な年なのに、ここに来てそんな理不尽なことを言われてしまうとは。
教師と生徒から恋人になるのはなかなか至難の業だ。彼と付き合うために、僕は在学中、猛アタックを繰り返した。しかし、僕も分別ついた学生だったので、付き合うのは卒業後になると長期戦を覚悟していた。押しに弱いかと思われた恋人だったが、僕の熱烈なアタックの甲斐もあり、卒業後10年を経てようやく付き合うことができた。
そしてさらに嬉しいことに今年、彼と同棲をすることになった。そうなれば、今年は三つの大事な節目となる年だ。
恋人は見た目が理系で神経質で気の弱そうな見た目だが、中身はかなり自己中心的な俺様系の性格をしていた。昔はヤンチャしていたようで、口調も生徒の前ではあくまで丁寧な言葉を使っていたが、誰もいないところでかなり汚い言葉で怒っていたのを目撃している。そのギャップも最高だった。
さて、過去のことは考えていても仕方ない。まずは彼がどうしてそんなことを言い始めたのか。その理由を探さなくてはならない。
その日の夜、彼は同棲してから初めて、僕と同じベッドで寝るのを拒否し、リビングのソファで寝ると言って、寝室を出ていった。ひとりでは大きすぎるベッドに、僕はあまりのショックでまったく眠れなかった。そして、一睡もせず朝を迎えた。
朝、改めて隣に恋人がいないことを確認して、いったん思考が停止する。しかし、無情にも時間は過ぎていく。今日は平日で体調不良でもないのに会社を休むわけにはいかない。しぶしぶ会社に行くためにベッドから起き上がり、寝室を出てリビングに向かう。
リビングにはソファで寝ていたはずの恋人が鼻歌を歌いながら朝食を作っていた。どうやら、同じベッドで寝られずに悲しみにふけって一睡もできなかったのは僕だけだったらしい。いよいよ、これは別れのカウントダウンが始まっている。
「おはようございます」
そんな嫌な事を考えながらも、表情には出さないように平静を保って恋人に朝の挨拶をする。
「おはよう、なんだか顔色が悪いけど、大丈夫か?」
「あなたと寝るのが当たり前になっていたから、昨日はあなたが隣にいなくて、一睡もできませんでした」
恋人は僕の顔を一瞬見ただけで、いつもと違うことに気付いてしまった。顔色が悪いのは当たり前だ。一睡もできなかったのだから。そしてそれは恋人が隣にいなかったからであり、体調不良の原因は恋人にある。
「そんなに怖い顔で見つめるなよ。ほら、さっさと朝ごはん食べて仕事に行くぞ」
つい、恨めし気な視線を恋人に向けてしまったら、怖い顔と言われてしまう。そんな表情をさせた張本人が言うことか。まったく嫌になってしまう。とはいえ、テーブルにおいしそうな味噌汁とほかほかの白米を持ってこられては何も文句は言えない。
『いただきます』
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身体も心も胃袋も掴まれてしまっては、もう別れようがない。ここまで依存させておいて今更別れたいなど、許せるはずがない。
「じゃあ、行ってくる」
「……。いってらっしゃい」
朝は恋人の方が先に家を出る。僕もその後、家を出るのだが、恋人をお見送りする感じが気に入っていた。そして、見送るときの毎日の日課を楽しみにしていた。それなのに。
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