結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ

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1結婚生活をするにあたり~一緒に住むための条件③-1~

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 さて、一緒に住むことになりつつある私たち夫婦だが、まだ問題が残っている。親との同居問題、ペットのこと、もう一つは性行為の強要である。私は何度も言っているが、家族や親せき以外と一緒に一夜を明かしたことがない。

 

 学校行事としての修学旅行や林間学校などを入れたら話は別である。自慢ではないが、身体はいたって健康体で、風邪をひいて学校を休んだことも、インフルエンザで学校を休んだこともない。小学校の低学年に数日休んだことがあるくらいで、高学年になって休んだことはない。中学、高校も皆勤賞をとったくらいには健康体である。

 そんなことはどうでもいいのだが、とりあえず、自ら進んで他人と一緒に一夜を明かしたことがないということだ。修学旅行は、クラスの女子のだれかと絶対に一緒の部屋に泊まる必要があった。そうなると、私がたとえ、クラスの中で浮いていても、優しい誰かと一緒の部屋に泊まることができた。

 一緒に住むとなると、話は変わってくる。今度は自らの意志で家を選び、お金のことも責任をもたなければならない。加えて、結婚した夫婦が一緒に住むのだから、性行為はおのずとすることになるだろう。私はそれがたまらなく嫌だった。

 二次元として、文字や映像としてみる分にはいいのだが、いざ自分がするということが想像できないのだ。そもそも、人との接触を極力避けたい性格なのに、肌と肌が密着する性行為などできるわけがない。たとえ、大鷹さんのようないい人でも無理である

 想像しただけで鳥肌もので、気持ちが悪くなってしまう。

 一緒に住むのなら、その辺もしっかりと話しておかなければならない。それに、他にもいろいろ一緒に住むうえでルールを決めておく必要がある。


 



 グリムとの対面が終わって数週間後のある日の週末、私たちは不動産屋に来ていた。一緒に住むためのマンションを探していた。

 私としては、会社から遠くなくて、さらには自分の部屋がしっかりと確保してあればいいというくらいだった。しかし、大鷹さんは意外と神経質な性格だったようだ。

 部屋の間取りやキッチンの中身、トイレやふろ場など、あらゆるところに目を向けて、あそこはここがダメだ、この物件ではここがダメだとああだこうだ言っていた。





「私は別に自分の部屋さえ確保してくれて、なおかつ会社から近ければ問題ないですよ。」

 結局、部屋決めは大鷹さんに任せることにした。そして、新築のマンションを借りることができた。私の仕事場と大鷹さんの仕事場のちょうど中間くらいにある場所で、私の要望通りに、自分の私室がある2LDKの部屋を借りることができた。


 部屋が決まり、私は一緒に住むにあたり10のルールを設けることにした。もちろん、お金のことは大事なので、家賃や食費などのお金の問題は別に決めておく。



 条件は10にのぼるが、住んでいくうえで新たに増えることも考えられる。その時はその時で、新たにルールを増やせばいいだけの話だ。今現在で決めておきたいことを大鷹さんに紙に書いて渡すことにした。

~一緒に住むにあたり、守ってほしい10のルール~ By紗々
①寝室は別々
②家事は分担
③洗濯は別々
④風呂は紗々が先に入る
⑤ペットの「グリム」を飼育してもいいマンション→削除
⑥お互いの接触はしない(性行為の禁止)
⑦趣味を批判しない
⑧仕事は続ける
⑨浮気は推奨で、性欲は外で発散させる 男の方がよいが女でも可
⑩いつでも離婚できるように物は増やさない

 ⑤については、親が実家で飼育してくれるとのことなので、項目から外された。しかし、大鷹さんが決めたマンションは珍しく、ペットの飼育が許可されている物件だった。この紙を渡し、一通り目を通した大鷹さんは、はあ、と一つ大きなため息をつく。

 




 私たちは今、大鷹さんの家のリビングテーブルをはさんで向かい合わせに座っている。


「①から⑧まではいいとして、⑨⑩については意味がわからないのですが。」

「書いてある通りの意味です。もともと、私の結婚理由は知っているでしょう。それに沿って考えた結果がこの10のルールです。」


 私の言葉に再度、大きなため息をついた大鷹さんだった。




「紗々さんの結婚理由も、実は結婚したくなかった理由も知っていますけど、すでに僕と結婚している時点で⑨⑩は必要ないのでは。」

「いえ、結婚しているからこそ、必要なのです。知っての通り、私は自分の子供はいらないと考えています。そうすると、子供が欲しい大鷹さんは困るわけです。子供が欲しい大鷹さんが取らなければいけない行動は一つ。子供を産んでくれる新しい結婚相手を見つけるしかない。」

 続けて、⑨⑩の設定理由も説明する。

「だからこそ、⑨⑩が必要になってくるというわけです。浮気推奨することで、新しい大鷹さんを好きになってくれる女性を探しだすことができます。そして、⑩は近い将来、離婚することになるわけなので、ものを増やすことはNGというわけです。」

 しっかりと説明できたと思う。我ながらうまく説明できた。

「わかりました。ただ、浮気の相手が男の方がよいというのはどういうことでしょう。子供を産んでくれる、紗々さん以外の女の人を僕は探した方がいいということは、納得できませんが、理解できます。男の方がいいという理由を聞いてもいいですか。それと、この話に関係ないのですが……。」

 うっかり説明を忘れていた。それについても説明をしておくべきだった。

「それはですね。ええとですね……。」







「ピンポーン。」

 突然、玄関からインターホンの音がした。タイミングの悪い来訪者である。

 大鷹さんが相手をモニターで確認して、玄関のドアを開ける音が聞こえる。どうやら、宅配便のようである。



「すいません。欲しい漫画があって、本屋に行けばいいんですが面倒くさいので、ネットで頼んでいて、今それが届いたみたいです。」

 大鷹さんがもってきた箱の中身に興味がわいた。いったい、どんな漫画を読むのだろうか。ゲームは好きと聞いていたが、どんな漫画を読むのかまでは知らなかった。

 私が、届いた箱の中身が気になることを察したのだろう。苦笑して、箱を開けて中身を見せてくれた。

 箱には漫画がぎっしりと入っていた。それは、誰もがよく知る巨人が出てくる漫画だった。





「意外とミーハーなんですね。大鷹さんは。」

「ええと、大阪のテーマ-パークに友達と遊びに行ったときに、この漫画のブースがあって、それから少し興味がわきまして、アニメもやっているでしょう。だから、今ある巻数を一気に購入しようと思いまして。」

 漫画の購入理由を説明しだす大鷹さんだが、私も別に漫画は読むので問題はない。そこで、私は大鷹さんの浮気相手は男推奨の説明方法が思い浮かんだ。





「そうそう、先ほどの話の続きですが、大鷹さんの浮気相手が男の推奨の理由ですが、それはずばりこれです。」

 びしっと、今届いたばかりの漫画を指で指し示す。そう、これが大きな理由である。私が腐女子と呼ばれる由縁はここに詰まっている。

「これですか。」

 いまいち理解していない大鷹さんにさらに説明を加える。






「これです。私は世間でいう腐女子と呼ばれる人種です。いわゆるBL(ボーイズラブ)が好きなのです。だからこそ、それを漫画やアニメという二次元ではなく、実際に見たいという願望が強いのです。」

「はあ。」

「それに、私には常々BL漫画を読んでいて、考えていたことがあるのです。」

 それから私はBL漫画にある欠点を説明した。いつもの通り、私の話を黙って聞いてくれる心優しい旦那である。
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