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番外編【自分の着たいものを着ればいい】2前髪は短いに越したことはない(切りすぎ注意)
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「先輩、前髪どうしたんですか?」
月曜日の朝、出勤して更衣室で制服に着替えていたら、河合さんに話しかけられた。更衣室にはたまたま、私一人しかいなかったので河合さんと二人きりになった。私と河合さんが二人きりになるタイミングが結構ある。
冬至を終えた次の日、私は美容院に髪を切りに行った。いつも担当してくれる人に空きがなかったので、違う人を指名して切ってもらったのが、それがいけなかった。大鷹さんには苦笑いをされたが、変とはいわれなかった。私も切られた直後は何とも思わなかったのだが、帰宅後、洗面所の鏡を見てじわじわと前髪が短すぎてやばいことを実感した。
そうして、週明けの月曜日に河合さんに決定的な言葉を言われたわけだ。どうしたんですか、なんて言葉は変だと言っているようなものだ。
「や、やっぱり切り過ぎですよね」
「い、いえ、別に変とは言っていませんけど、接客業をするものとしてさすがにその短さはちょっと……」
やはり短く切り過ぎたのだ。どうしても、前髪が目に入るのが嫌で短く切ってもらうことが多いのだが、やり過ぎは良くない。
「短いのは短いで、先輩らしさが出ていて良いと思いますよ。ところで、前々から聞こうと思っていたんですけど、先輩の冬の私服っていつも同じなんですか?」
「同じとは?」
前髪の話題はここで終わりらしい。私もこれ以上突っ込まれたくはないのでありがたいが、次に河合さんが話題にした服装もあまり触れられたくない話題だった。そもそも、服装についての話題は、先日大鷹さんと語り合ったばかりだ。同じ話をもう一度別の人に話すのは面倒くさい。
「会社の出勤と退勤に関しては、制服に着替えるので特に何を着ていてもいいとは思うんですけど、どこか出かけるときはやっぱりオシャレしたいじゃないですか?」
「はあ」
回りくどい言い方をしているが、結局何が言いたいのか。朝は時間に余裕がないことが多い。腕時計を見るともうすぐ始業の時間だ。すでに着替えを終えたので更衣室を出たほうがいい。
がちゃり。
「おはようございます」
「おはよう、倉敷さん、河合さん」
『おはようございます』
私たちの会話はここで中断された。同僚の平野さんと安藤さんが更衣室に入ってきた。
「あれ、倉敷さん、髪の毛切ったんだね」
「そうだね。ずいぶん、思い切った長さだね」
「あはははは」
どうやら、世間的に見て、私の前髪はかなり短いらしい。いつもは眉上まで前髪を切ってもらうのだが、ぱっつんヘアにならないように少しだけ斜めにしてもらったり、前髪の間に変化をつけるためにギザギザにしたりと工夫してもらっていた。しかし、今回はぱっつんヘアになってしまった。そこが変に見える理由だろう。
そもそも、30代にもなる女性がぱっつん前髪なのがおかしいのだ。まあ、できるだけ短くしてくださいと頼んだが私も大概なのかもしれないが。
こうして、私は短い前髪のまま(短すぎて修正しようがない)接客をするため、銀行の窓口に立つのだった。
とはいえ、他人の前髪など見て指摘するほど暇な人間はあまりいない。銀行に来るお客さんたちは仕事の合間に来る人もいる。そのため、私自身に面と向かって前髪を指摘するお客さんはひとりもいなかった。
「今日、河合さんに私服について言及されました」
短い前髪をしたまま、一日の仕事を終えて帰宅。急に寒くなったので、コートの前をシッカリと閉じて車に乗る。寒くなると、風邪やインフルエンザが流行りだす。私も接客業をしているので、お客さんから移される可能性が高い。しっかりと防寒して寒さに備えている。
帰宅後、夕食の塩鮭と豚汁を食べながら、大鷹さんに今日会った出来事を話していく。基本的に大鷹さんは自分のことを多くは語らない。私の方から自分の身の回りのことを話し、それに対して、大鷹さんが僕は~と話してくれることが多い。
「河合江子が……」
「そうですよ。ていうか、大鷹さんと河合さんってたまにびっくりするくらい、私に質問する内容が同じ時がありますよね?やっぱり、元恋人同士のことはあ」
「心外ですね。僕が質問した内容を河合江子がまねているだけかもしれません」
私の話は途中で遮られた。まあ、私が大鷹さんにとっての地雷発言をしたので仕方ない。それにしても、彼らはなにが原因で別れたのだろうか。似た者同士でくっつくカップルもいる中、彼らほどの似た者同士でなぜ別れたのかは気になるところだ。とはいえ、彼らが別れていなかったら、私と大鷹さんがこうして結婚していなかったのだから、理由を聞いたところで縁りを戻してとは言い難い。聞かないのが正解だろう。
「さすがにまねするってことはないと思いますけど」
「それで、僕にした時と同じように説明したんですか?」
大鷹さんの機嫌が急に悪くなった。さて、どうやって夫の機嫌を直したらいいだろうか。考えても正解などわからないので、とりあえず事実だけを伝えておく。
「いえ、朝の着替え中に質問されて時間がなかったので説明はしていません。昼休憩の時間は合わなかったので、今日は質問だけで終わってしまいました」
「なるほど。まあ、河合江子に詳しい説明は不要です。今度聞かれたとしても、無視して構いません」
「なんか、河合さんに対してアタリが強いですよね。ああ、面白いネタが思いつきました!」
「突然ですね。ですが、思いついたということは、また先生の新作が読めるということで、僕としては嬉しい限りです」
「こういうのはどうですか?」
私は今さっき思いついたネタを大鷹さんに披露することにした。
月曜日の朝、出勤して更衣室で制服に着替えていたら、河合さんに話しかけられた。更衣室にはたまたま、私一人しかいなかったので河合さんと二人きりになった。私と河合さんが二人きりになるタイミングが結構ある。
冬至を終えた次の日、私は美容院に髪を切りに行った。いつも担当してくれる人に空きがなかったので、違う人を指名して切ってもらったのが、それがいけなかった。大鷹さんには苦笑いをされたが、変とはいわれなかった。私も切られた直後は何とも思わなかったのだが、帰宅後、洗面所の鏡を見てじわじわと前髪が短すぎてやばいことを実感した。
そうして、週明けの月曜日に河合さんに決定的な言葉を言われたわけだ。どうしたんですか、なんて言葉は変だと言っているようなものだ。
「や、やっぱり切り過ぎですよね」
「い、いえ、別に変とは言っていませんけど、接客業をするものとしてさすがにその短さはちょっと……」
やはり短く切り過ぎたのだ。どうしても、前髪が目に入るのが嫌で短く切ってもらうことが多いのだが、やり過ぎは良くない。
「短いのは短いで、先輩らしさが出ていて良いと思いますよ。ところで、前々から聞こうと思っていたんですけど、先輩の冬の私服っていつも同じなんですか?」
「同じとは?」
前髪の話題はここで終わりらしい。私もこれ以上突っ込まれたくはないのでありがたいが、次に河合さんが話題にした服装もあまり触れられたくない話題だった。そもそも、服装についての話題は、先日大鷹さんと語り合ったばかりだ。同じ話をもう一度別の人に話すのは面倒くさい。
「会社の出勤と退勤に関しては、制服に着替えるので特に何を着ていてもいいとは思うんですけど、どこか出かけるときはやっぱりオシャレしたいじゃないですか?」
「はあ」
回りくどい言い方をしているが、結局何が言いたいのか。朝は時間に余裕がないことが多い。腕時計を見るともうすぐ始業の時間だ。すでに着替えを終えたので更衣室を出たほうがいい。
がちゃり。
「おはようございます」
「おはよう、倉敷さん、河合さん」
『おはようございます』
私たちの会話はここで中断された。同僚の平野さんと安藤さんが更衣室に入ってきた。
「あれ、倉敷さん、髪の毛切ったんだね」
「そうだね。ずいぶん、思い切った長さだね」
「あはははは」
どうやら、世間的に見て、私の前髪はかなり短いらしい。いつもは眉上まで前髪を切ってもらうのだが、ぱっつんヘアにならないように少しだけ斜めにしてもらったり、前髪の間に変化をつけるためにギザギザにしたりと工夫してもらっていた。しかし、今回はぱっつんヘアになってしまった。そこが変に見える理由だろう。
そもそも、30代にもなる女性がぱっつん前髪なのがおかしいのだ。まあ、できるだけ短くしてくださいと頼んだが私も大概なのかもしれないが。
こうして、私は短い前髪のまま(短すぎて修正しようがない)接客をするため、銀行の窓口に立つのだった。
とはいえ、他人の前髪など見て指摘するほど暇な人間はあまりいない。銀行に来るお客さんたちは仕事の合間に来る人もいる。そのため、私自身に面と向かって前髪を指摘するお客さんはひとりもいなかった。
「今日、河合さんに私服について言及されました」
短い前髪をしたまま、一日の仕事を終えて帰宅。急に寒くなったので、コートの前をシッカリと閉じて車に乗る。寒くなると、風邪やインフルエンザが流行りだす。私も接客業をしているので、お客さんから移される可能性が高い。しっかりと防寒して寒さに備えている。
帰宅後、夕食の塩鮭と豚汁を食べながら、大鷹さんに今日会った出来事を話していく。基本的に大鷹さんは自分のことを多くは語らない。私の方から自分の身の回りのことを話し、それに対して、大鷹さんが僕は~と話してくれることが多い。
「河合江子が……」
「そうですよ。ていうか、大鷹さんと河合さんってたまにびっくりするくらい、私に質問する内容が同じ時がありますよね?やっぱり、元恋人同士のことはあ」
「心外ですね。僕が質問した内容を河合江子がまねているだけかもしれません」
私の話は途中で遮られた。まあ、私が大鷹さんにとっての地雷発言をしたので仕方ない。それにしても、彼らはなにが原因で別れたのだろうか。似た者同士でくっつくカップルもいる中、彼らほどの似た者同士でなぜ別れたのかは気になるところだ。とはいえ、彼らが別れていなかったら、私と大鷹さんがこうして結婚していなかったのだから、理由を聞いたところで縁りを戻してとは言い難い。聞かないのが正解だろう。
「さすがにまねするってことはないと思いますけど」
「それで、僕にした時と同じように説明したんですか?」
大鷹さんの機嫌が急に悪くなった。さて、どうやって夫の機嫌を直したらいいだろうか。考えても正解などわからないので、とりあえず事実だけを伝えておく。
「いえ、朝の着替え中に質問されて時間がなかったので説明はしていません。昼休憩の時間は合わなかったので、今日は質問だけで終わってしまいました」
「なるほど。まあ、河合江子に詳しい説明は不要です。今度聞かれたとしても、無視して構いません」
「なんか、河合さんに対してアタリが強いですよね。ああ、面白いネタが思いつきました!」
「突然ですね。ですが、思いついたということは、また先生の新作が読めるということで、僕としては嬉しい限りです」
「こういうのはどうですか?」
私は今さっき思いついたネタを大鷹さんに披露することにした。
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