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番外編【ファンが増えました】9私の趣味は……
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「どうして、梨々花さんが私のペンネームを知っているんですか?」
今日はたまたま、河合さんと二人きりの昼休憩となった。控室でこっそりと彼女に話しかける。
朝の更衣室でのことが気になった。私の作品はBL(ボーイズラブ)がメインで、一般的には『腐女子』と呼ばれる部類の人間が読むジャンルとされている。梨々花ちゃんは見た目からは普通の女性という印象を受けるが、私のペンネームを知っていた。
ということは、私の作品を読んだことがある。だとしたら、彼女は私たちと同じ『腐女子』になるのだろうか。
「それはですね……」
河合さんは、まるでいたずらに成功した子供のようなとてもうれしそうな表情で、私の耳元に顔を近づけて囁く。
「なぜそんなことを言ったんですか!」
その内容を聞いた私は思わず叫んでしまう。慌てて周囲を確認するが、私と河合さん以外に控え室に人はいない。誰かが扉をノックしてくる様子もなかったのでほっとした。
「ちょっと、声が大きいですよ、先輩。ただ私の趣味を教えただけなのに、なぜそんなに驚いているのですか?」
河合さんに注意されてしまったが、私が悪いわけではない。彼女が変なことを言うから驚いたのだ。
最近、梨々花さんは河合さんにべったりとまとわりついているが、そこで個人的なことをたくさん聞かれるらしい。生年月日、家族構成、趣味、マイブーム、好きな人のタイプなど様々で、その中の趣味を答えるときに私のペンネームを口にしたらしい。
「別に趣味で【BL作品を読む】と答えることは構いません。しかし、どうしてそこで私のペンネームを出したのですか?」
「どうしてって、先輩のファンを一人でも増やすためでしょう?現状、リアルなファンが私とおおたかっちだけじゃあ、少ないと思いませんか?今こそ、新たなファンを獲得するチャンスだと思いまして」
「いやいや、確かにファンが増えるのは嬉しいですよ。でも、それが寄りにもよって、私を嫌っている梨々花さんと言うのはちょっと……」
河合さんの言いたいこともわかるし、梨々花さんじゃなければ、喜んでいただろう。いや、もし私の作品を読んでいるのが会社の同僚だとしたら、それも気まずい。どうせなら、まったくの赤の他人がファンの方がよい気がする。
「そもそも、私がなぜ、腐女子ではなさそうな梨々花ちゃんにBLを趣味だと伝えたかと言いますとね」
正直、梨々花ちゃんと距離を置きたかったからなんです。
「はあ」
「先輩だって感じているでしょう?ここ最近のあの子の行動を。私のストーカーよろしく、いつでもどこでも、私を見つけるとすぐに近寄ってくるんですよ。おまけに紗々先輩を目の敵にしているみたいで、先輩と話していると邪魔してくるし」
どうやら、河合さんも梨々花さんの行動には迷惑しているようだ。傍から見ても迷惑そうだと思うのだったら、本人はそれの何倍も迷惑かもしれない。
「でも、距離を置かれるどころか、結局、私の言葉をきっかけに、梨々花ちゃんは『腐女子』の道を歩み始めてしまいました」
「そ、そうなんですね」
「これにはさすがの私も驚きました。まさか、距離を置いてもらおうとして発した言葉が、逆に私たちの仲を深めることになるとは」
「言っている意味がわかりません」
私たちの仲を深めるとはいったいどういうことか。
「簡単なことですよ。先輩の作品を読むという共通点ができてしまったわけです。そうなれば、私たちの仲が自然と深まるのは当然のことです」
自信ありげに答える河合さんに、思わず呆れた視線を送ってしまう。結局、河合さんは梨々花さんと距離を置くほど、嫌いになり切れていないということだ。彼女の心の読むのは難しい。
河合さんは一般人を一人、腐女子に変えてしまったらしい。別に腐女子が増えること自体に問題はない。他人の趣味趣向に口を出すものでもない。私が口にすべき言葉は。
「梨々花さんは、私の作品を読んで何か言っていましたか?」
私の新たな読者となった梨々花さんの私の作品に対する感想を聞くこと。私の素性を知りたがっていた様子を見る限り、面白くないということはないだろう。
「気になりますか?」
「あ、当たり前です」
「どうしようかなあ。梨々花ちゃんの許可も得ずに話してもいいかなあ」
急にもったいぶった話し方をし始めた河合さんにイライラするが、黙って続きを促す。許可がいるようなことではない。サッサと私に伝えて欲しい。
「どうせなら、三人での食事会の時に直接、聞いてみたらいいじゃないですか?」
「それはやはり、私の素性を梨々花さんにばらすってこと……」
「先輩は梨々花ちゃんが嫌いかもしれないですけど、話してみると、案外面白い子ですよ。彼女って」
「だからと言って、私の正体をばらしてよい理由にはなりません」
まったく、河合さんの身勝手さにはあきれるばかりである。
今日はたまたま、河合さんと二人きりの昼休憩となった。控室でこっそりと彼女に話しかける。
朝の更衣室でのことが気になった。私の作品はBL(ボーイズラブ)がメインで、一般的には『腐女子』と呼ばれる部類の人間が読むジャンルとされている。梨々花ちゃんは見た目からは普通の女性という印象を受けるが、私のペンネームを知っていた。
ということは、私の作品を読んだことがある。だとしたら、彼女は私たちと同じ『腐女子』になるのだろうか。
「それはですね……」
河合さんは、まるでいたずらに成功した子供のようなとてもうれしそうな表情で、私の耳元に顔を近づけて囁く。
「なぜそんなことを言ったんですか!」
その内容を聞いた私は思わず叫んでしまう。慌てて周囲を確認するが、私と河合さん以外に控え室に人はいない。誰かが扉をノックしてくる様子もなかったのでほっとした。
「ちょっと、声が大きいですよ、先輩。ただ私の趣味を教えただけなのに、なぜそんなに驚いているのですか?」
河合さんに注意されてしまったが、私が悪いわけではない。彼女が変なことを言うから驚いたのだ。
最近、梨々花さんは河合さんにべったりとまとわりついているが、そこで個人的なことをたくさん聞かれるらしい。生年月日、家族構成、趣味、マイブーム、好きな人のタイプなど様々で、その中の趣味を答えるときに私のペンネームを口にしたらしい。
「別に趣味で【BL作品を読む】と答えることは構いません。しかし、どうしてそこで私のペンネームを出したのですか?」
「どうしてって、先輩のファンを一人でも増やすためでしょう?現状、リアルなファンが私とおおたかっちだけじゃあ、少ないと思いませんか?今こそ、新たなファンを獲得するチャンスだと思いまして」
「いやいや、確かにファンが増えるのは嬉しいですよ。でも、それが寄りにもよって、私を嫌っている梨々花さんと言うのはちょっと……」
河合さんの言いたいこともわかるし、梨々花さんじゃなければ、喜んでいただろう。いや、もし私の作品を読んでいるのが会社の同僚だとしたら、それも気まずい。どうせなら、まったくの赤の他人がファンの方がよい気がする。
「そもそも、私がなぜ、腐女子ではなさそうな梨々花ちゃんにBLを趣味だと伝えたかと言いますとね」
正直、梨々花ちゃんと距離を置きたかったからなんです。
「はあ」
「先輩だって感じているでしょう?ここ最近のあの子の行動を。私のストーカーよろしく、いつでもどこでも、私を見つけるとすぐに近寄ってくるんですよ。おまけに紗々先輩を目の敵にしているみたいで、先輩と話していると邪魔してくるし」
どうやら、河合さんも梨々花さんの行動には迷惑しているようだ。傍から見ても迷惑そうだと思うのだったら、本人はそれの何倍も迷惑かもしれない。
「でも、距離を置かれるどころか、結局、私の言葉をきっかけに、梨々花ちゃんは『腐女子』の道を歩み始めてしまいました」
「そ、そうなんですね」
「これにはさすがの私も驚きました。まさか、距離を置いてもらおうとして発した言葉が、逆に私たちの仲を深めることになるとは」
「言っている意味がわかりません」
私たちの仲を深めるとはいったいどういうことか。
「簡単なことですよ。先輩の作品を読むという共通点ができてしまったわけです。そうなれば、私たちの仲が自然と深まるのは当然のことです」
自信ありげに答える河合さんに、思わず呆れた視線を送ってしまう。結局、河合さんは梨々花さんと距離を置くほど、嫌いになり切れていないということだ。彼女の心の読むのは難しい。
河合さんは一般人を一人、腐女子に変えてしまったらしい。別に腐女子が増えること自体に問題はない。他人の趣味趣向に口を出すものでもない。私が口にすべき言葉は。
「梨々花さんは、私の作品を読んで何か言っていましたか?」
私の新たな読者となった梨々花さんの私の作品に対する感想を聞くこと。私の素性を知りたがっていた様子を見る限り、面白くないということはないだろう。
「気になりますか?」
「あ、当たり前です」
「どうしようかなあ。梨々花ちゃんの許可も得ずに話してもいいかなあ」
急にもったいぶった話し方をし始めた河合さんにイライラするが、黙って続きを促す。許可がいるようなことではない。サッサと私に伝えて欲しい。
「どうせなら、三人での食事会の時に直接、聞いてみたらいいじゃないですか?」
「それはやはり、私の素性を梨々花さんにばらすってこと……」
「先輩は梨々花ちゃんが嫌いかもしれないですけど、話してみると、案外面白い子ですよ。彼女って」
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