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1章 酒の力を借りて暴走
7 イケメン後輩の悩み①
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叶斗とじいちゃんの行き着けだという、国道沿いのダイナーに入った。カウンターのハイスツールに着く。オールドアメリカン風の内装だ。
メニューもハンバーガーとかワッフルとか。そのいかにもな二種類を注文した。
「結構でかいですよ」
「じゃ、ひとつを半分こしよ」
テラス席を見やれば、ハーフパンツにサンダルというラフな恰好の、近所に住んでいるのだろうおじさまが、豪快に生ビールを呷っている。
「ツーリングだから酒飲めなくて残念だな」
「そうですね。せっかく俺と一緒なのに」
「ん?」
どういう意味だ。
首を傾げるうち、縦にも横にもでかいハンバーガーがやってきた。ひとまずナイフで切り分けにかかる。先輩だし。
「ちょっとすみません」
悪戦苦闘のさなか、叶斗がするりと立ち上がった。カウンターの陰に積まれたブランケットを手に取る。
店内はクーラーがしっかり効いてるけど、寒くはないよな……?
僕を通り越し、背後のソファ席に近づく。
「これどうぞ」
女性二人組が、驚きと嬉しさの入り混じった笑顔になった。細い腿にブランケットを広げ、安心したように食事を再開する。
ソファの座面がかなり沈むので、ミニ丈のスカートで座ると下着が見えてしまうと困っていたらしい。
(ハンバーガーばっかり見てて、ぜんぜん気づかなかった)
気づいたとて、二.五軍に話し掛けられたくないかなとか躊躇って、僕には何もできなかったに違いない。
「交代」
席に戻ってきた叶斗は、ひけらかしたりせず、ハンバーガーの残りを切ってくれた。
挟んだパティや野菜が飛び出しもせずきれいだ。
「……いただきます」
ありがたく齧りつく。美味しい。
お世話されて終わりにはしたくない。
でも、僕は叶斗を見習うことすらできなくて。
「あの。インスタ交換しませんかぁ?」
もそもそ咀嚼していたら、さっきの女性二人組が声を掛けてきた。
会計を済ませて帰りがてら、さらりと。それでいてうっとり叶斗を見つめている。
(ドラマかよ)
男なら喜んで応じるだろう。
でも叶斗は一瞬、「しまった」みたいな表情を浮かべた。
「ごめんなさい、インスタやってないんです。スマホもナビに使って電池切れちゃって」
嘘だ。地図は叶斗の頭にきっちり入っていた。
二人組はすごすご引き下がる。
同情せざるを得ない。一軍にあしらわれるの、死ぬほど居たたまれないんだぞ。
華奢な背中が扉の向こうに消えてから、叶斗の腕をつつく。
「夏休み中に彼女できたの」
「はい?」
確認しただけなのに、圧強めに聞き返された。知らせるほど仲良くないって?
「断ってたから。それなら僕も配慮するし」
「いいえ。誰でもいいわけじゃないんで」
叶斗はきっぱり否定した。
二人組、ふつうに美女でしたけど。
相当理想が高いらしい。なぜか胸がずんと重くなる。
バイクで走って発散したいけれど、注文したマスカットスペシャルワッフルが運ばれてきてしまう。食べるしかない。
「きゃ」
口に詰め込んでいたら、僕たちの席のすぐ後ろで、さっきとは違う女性客がポーチを落とした。リップや手鏡が散らばる。
でも、叶斗は動かない。カウンターに頬杖を突いたまま。
(絶対気づいてるのに)
代わりに僕がスツールから降りて手伝う。
「これでぜんぶですか」
「……はい」
特に連絡先を聞かれることなく、座り直す。
女性には興味がないから、別にいいとして。
叶斗の様子が、これまでの距離を感じる態度と重なった。急に遠くなるのだ。
「どした? 叶斗らしくなくない」
メニューもハンバーガーとかワッフルとか。そのいかにもな二種類を注文した。
「結構でかいですよ」
「じゃ、ひとつを半分こしよ」
テラス席を見やれば、ハーフパンツにサンダルというラフな恰好の、近所に住んでいるのだろうおじさまが、豪快に生ビールを呷っている。
「ツーリングだから酒飲めなくて残念だな」
「そうですね。せっかく俺と一緒なのに」
「ん?」
どういう意味だ。
首を傾げるうち、縦にも横にもでかいハンバーガーがやってきた。ひとまずナイフで切り分けにかかる。先輩だし。
「ちょっとすみません」
悪戦苦闘のさなか、叶斗がするりと立ち上がった。カウンターの陰に積まれたブランケットを手に取る。
店内はクーラーがしっかり効いてるけど、寒くはないよな……?
僕を通り越し、背後のソファ席に近づく。
「これどうぞ」
女性二人組が、驚きと嬉しさの入り混じった笑顔になった。細い腿にブランケットを広げ、安心したように食事を再開する。
ソファの座面がかなり沈むので、ミニ丈のスカートで座ると下着が見えてしまうと困っていたらしい。
(ハンバーガーばっかり見てて、ぜんぜん気づかなかった)
気づいたとて、二.五軍に話し掛けられたくないかなとか躊躇って、僕には何もできなかったに違いない。
「交代」
席に戻ってきた叶斗は、ひけらかしたりせず、ハンバーガーの残りを切ってくれた。
挟んだパティや野菜が飛び出しもせずきれいだ。
「……いただきます」
ありがたく齧りつく。美味しい。
お世話されて終わりにはしたくない。
でも、僕は叶斗を見習うことすらできなくて。
「あの。インスタ交換しませんかぁ?」
もそもそ咀嚼していたら、さっきの女性二人組が声を掛けてきた。
会計を済ませて帰りがてら、さらりと。それでいてうっとり叶斗を見つめている。
(ドラマかよ)
男なら喜んで応じるだろう。
でも叶斗は一瞬、「しまった」みたいな表情を浮かべた。
「ごめんなさい、インスタやってないんです。スマホもナビに使って電池切れちゃって」
嘘だ。地図は叶斗の頭にきっちり入っていた。
二人組はすごすご引き下がる。
同情せざるを得ない。一軍にあしらわれるの、死ぬほど居たたまれないんだぞ。
華奢な背中が扉の向こうに消えてから、叶斗の腕をつつく。
「夏休み中に彼女できたの」
「はい?」
確認しただけなのに、圧強めに聞き返された。知らせるほど仲良くないって?
「断ってたから。それなら僕も配慮するし」
「いいえ。誰でもいいわけじゃないんで」
叶斗はきっぱり否定した。
二人組、ふつうに美女でしたけど。
相当理想が高いらしい。なぜか胸がずんと重くなる。
バイクで走って発散したいけれど、注文したマスカットスペシャルワッフルが運ばれてきてしまう。食べるしかない。
「きゃ」
口に詰め込んでいたら、僕たちの席のすぐ後ろで、さっきとは違う女性客がポーチを落とした。リップや手鏡が散らばる。
でも、叶斗は動かない。カウンターに頬杖を突いたまま。
(絶対気づいてるのに)
代わりに僕がスツールから降りて手伝う。
「これでぜんぶですか」
「……はい」
特に連絡先を聞かれることなく、座り直す。
女性には興味がないから、別にいいとして。
叶斗の様子が、これまでの距離を感じる態度と重なった。急に遠くなるのだ。
「どした? 叶斗らしくなくない」
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