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4章 嫌いで好きな君へ疾走
22 可愛い先輩の秘密
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「いや飲めないわ。おまえが飲めるのめっちゃ先」
一人突っ込みする。あまりにもナチュラルに瓶を台所に置くので、騙されかけた。
「はい。だから陽先輩が飲んだときは、絶対俺を迎えに呼んでくださいね。ハーレーで送ってあげます」
叶斗は構わず彼氏みたいな台詞を口にしたかと思うと、やっぱりナチュラルに皿を洗い出す。
主役は座ってな、とジェスチャーしてもやめない。
(素が優しいんだよな)
そんなに親切したいならと、二人並んで昼の食器を片づけていく。
「ほんとは俺の隣以外で飲むの禁止したいですけど」
優しい一方、譲らないところもある。
叶斗用のグラスにノンアルサワー(缶をよく見たらちゃんと0%と書いてあった)を注いでやりながら、笑い飛ばす。
「心配し過ぎだって。僕が可愛く見えるの、叶斗くらいだよ」
「先輩は酔った自分を見たことないから危機感ないんですよ」
「じゃあ今日動画撮ってみる?」
「もうあります」
「は?」
あ。って顔をした。手もとでシンクの水がざあざあ流れる。でも今の一言は流せない。
「星川くん」
「その呼び方距離感じてやだ……」
「だったらスマホ出しな」
秒でスマホの押収に成功した。当初「好きにさせようとしていた」罪により、力関係は僕のほうがほんの少し上なのだ。
「これです」と、動画の特定までさせる。
お気に入りらしいもふもふショート動画と同じフォルダに入れられているのは、さておき。
再生ボタンを押す。ざわめきが聞こえる。
雰囲気のいいダイニングバー。大学最寄り駅前の店だ。
クリスマス前に高橋の傷心飲みに付き合ったが、動画を撮ったっけ? 撮ったとして、なぜ叶斗が持っている?
いぶかしむ間に、頬が上気し、とろんとゆるんだ表情の僕が映った。
(うわ、酔ってるな)
顔に出ているだけでなく、『帰んない』と話し方も舌足らずだ。
『ほしかわが来てくれなきゃ、陽ちゃん帰んない!』
――は?
『この一点張りで。悪いんだけど迎え来れる?』
脳みそが理解を拒否する間に、高橋が映り込む。彼も首まで真っ赤だが口調は確かだ。
ビデオ通話か。ということは、あの夜おんぶでアパートまで送ってくれたのって……。
スマホと、にやけている叶斗の顔とを、交互に見る。
「お゙っ、おまえが?」
「はい」
含みたっぷりの相槌が返ってきた。
認めたくないが、認めざるを得ない。
(陽ちゃんとか陽ちゃんとか……っ!)
駄々こね動画がループ再生されかけ、慌てて止める。
「なんで消さないんだよ。ていうか、なんで画録してんの」
「陽ちゃん可愛かったんで」
「可愛いって言えば何でも許されると思うな!」
憤死ものの証拠を削除しようと試みるも、抜群の反射神経でスマホを奪還され、頭の上に持っていかれた。身長ハラスメントだ。
六月に叶斗が「陽ちゃん」って急なちゃん付けしだしたの、酔った僕が原因か……。
(酒の力、そっちに暴走すな)
年明け、学食で高橋に「石田には貸しがふたつある」って奢らされたのも、このイケメン後輩召喚のことを言っていたようだ。
もうひとつは何だ? 僕と叶斗が付き合い始めたのをいつの間にか知っていたが。
とにかく。
「消せ!」
「でも、俺の記憶からは消せませんし」
ぴょんぴょん跳ねても、叶斗も同じタイミングでジャンプするのでスマホに手が届かない。ふえん。
「じゃ、じゃあ責任取れ!」
「よろこんで」
「……っ」
一人突っ込みする。あまりにもナチュラルに瓶を台所に置くので、騙されかけた。
「はい。だから陽先輩が飲んだときは、絶対俺を迎えに呼んでくださいね。ハーレーで送ってあげます」
叶斗は構わず彼氏みたいな台詞を口にしたかと思うと、やっぱりナチュラルに皿を洗い出す。
主役は座ってな、とジェスチャーしてもやめない。
(素が優しいんだよな)
そんなに親切したいならと、二人並んで昼の食器を片づけていく。
「ほんとは俺の隣以外で飲むの禁止したいですけど」
優しい一方、譲らないところもある。
叶斗用のグラスにノンアルサワー(缶をよく見たらちゃんと0%と書いてあった)を注いでやりながら、笑い飛ばす。
「心配し過ぎだって。僕が可愛く見えるの、叶斗くらいだよ」
「先輩は酔った自分を見たことないから危機感ないんですよ」
「じゃあ今日動画撮ってみる?」
「もうあります」
「は?」
あ。って顔をした。手もとでシンクの水がざあざあ流れる。でも今の一言は流せない。
「星川くん」
「その呼び方距離感じてやだ……」
「だったらスマホ出しな」
秒でスマホの押収に成功した。当初「好きにさせようとしていた」罪により、力関係は僕のほうがほんの少し上なのだ。
「これです」と、動画の特定までさせる。
お気に入りらしいもふもふショート動画と同じフォルダに入れられているのは、さておき。
再生ボタンを押す。ざわめきが聞こえる。
雰囲気のいいダイニングバー。大学最寄り駅前の店だ。
クリスマス前に高橋の傷心飲みに付き合ったが、動画を撮ったっけ? 撮ったとして、なぜ叶斗が持っている?
いぶかしむ間に、頬が上気し、とろんとゆるんだ表情の僕が映った。
(うわ、酔ってるな)
顔に出ているだけでなく、『帰んない』と話し方も舌足らずだ。
『ほしかわが来てくれなきゃ、陽ちゃん帰んない!』
――は?
『この一点張りで。悪いんだけど迎え来れる?』
脳みそが理解を拒否する間に、高橋が映り込む。彼も首まで真っ赤だが口調は確かだ。
ビデオ通話か。ということは、あの夜おんぶでアパートまで送ってくれたのって……。
スマホと、にやけている叶斗の顔とを、交互に見る。
「お゙っ、おまえが?」
「はい」
含みたっぷりの相槌が返ってきた。
認めたくないが、認めざるを得ない。
(陽ちゃんとか陽ちゃんとか……っ!)
駄々こね動画がループ再生されかけ、慌てて止める。
「なんで消さないんだよ。ていうか、なんで画録してんの」
「陽ちゃん可愛かったんで」
「可愛いって言えば何でも許されると思うな!」
憤死ものの証拠を削除しようと試みるも、抜群の反射神経でスマホを奪還され、頭の上に持っていかれた。身長ハラスメントだ。
六月に叶斗が「陽ちゃん」って急なちゃん付けしだしたの、酔った僕が原因か……。
(酒の力、そっちに暴走すな)
年明け、学食で高橋に「石田には貸しがふたつある」って奢らされたのも、このイケメン後輩召喚のことを言っていたようだ。
もうひとつは何だ? 僕と叶斗が付き合い始めたのをいつの間にか知っていたが。
とにかく。
「消せ!」
「でも、俺の記憶からは消せませんし」
ぴょんぴょん跳ねても、叶斗も同じタイミングでジャンプするのでスマホに手が届かない。ふえん。
「じゃ、じゃあ責任取れ!」
「よろこんで」
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