婚約者の愛人が継母で本命は義妹でした、私はこの家ごとあなたを捨てます。

coco

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婚約者の愛人が継母で本命は義妹でした、私はこの家ごとあなたを捨てます。

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 私の婚約者に愛人あいじんが居た。
 その相手は、私の継母ままははだった。

 それに気づいたのは、半年ほど前の事。

 継母の部屋から、かみみだした婚約者が出てきたところを偶然ぐうぜん見かけた。

「はい、これ。今月の分。」

「いつも、ありがとうございます。」

「いいのよ、可愛いあなたの為だもの。」

 そう言って継母は、彼の手に札束さつたばにぎらせた。

 受け取った彼は、うれしそう笑っていた。

「だから…またいてね?」

 彼はうなずき、この家を出て行った。

 私は思わず、彼のあとを追いかけた。

 すると彼は、庭のすみ義妹ぎまいと抱き合っていた。

「また、お母様の所に居たわね。」

「ごめんよ。でもほら、こうしてまたお小遣こづかいがもらえた。これで何でも好きな物を買ってあげるから。」

「あの人ケチだから、私には一銭いっせんもくれないんだもの。お父様と同じ様に、早くあの世に行ってくれないかしら。あの家に住むのは、私とあなたの2人だけで良いのに。」

「お母さんの事も、あいつの事も、上手くやるから待っててくれ。」
 
 何よそれ…あなたは私の継母と愛人関係を持った上で、本当に欲しいのは義妹って事?

 全てを理解りかいした時、私はあまりの気持ち悪さにその場にうずくまった。

 私は、あなたに愛されてなかったのね…。

 私はみにくあい巣食すくうこの家ごと、彼を捨てることにした─。

※※※

「私と、婚約破棄こんやくはきをして下さい。」

「何だ、いきなり。」

「あなたには継母と義妹が居るでしょ。これ以上、まだ女が欲しいと言うのですか?」

「お、お前、気づいて…!」

「あなたが私と婚約したのは、この家が私の名義めいぎになっているからでしょう?私と結婚したら上手い事言って自分の名義に書き換えさせ、私を追い出すつもりだった?それとも、自殺じさつに見せかけて、私を殺すつもりだった?このくすりで─。」

 私はびんに入った液体えきたいを、彼に突き付けた。
 
 彼は、驚きで言葉も出ない様だ。

「あなた、継母にもこれを飲ませて殺そうとしてたでしょ。…これをお酒にでもぜて飲ませた後、はげしく抱き合えば…あの人心臓しんぞうが弱いもの、かなり危険な状況じょうきょうだわ。お母さんの事も、あいつの事も、上手くやるから待っててくれって言うのは、こういう事だったのね。」

「聞いていたのか…!」

「そして、この薬を入手にゅうしゅしたのは義妹でしょ。あの子の部屋から、薬の売人ばいにんとのやり取りが書かれたメモを見つけたわ。この話をする前に、事前じぜん憲兵けんぺいにそれを見せておいたのよ。ついさっき、義妹をとらえたと連絡れんらくがあったわ。そして、もうすぐここにも来るそうよ…次はあなたのばんね。」

「そんな…ここを、俺と彼女の愛のにする計画けいかくが…。」

「何が愛の巣よ。この家には醜い愛が巣食っている…こんな家、あなたごと捨てるわ─。」

※※※

 あれから継母は、自分が殺されそうだったというショックからおかしくなり、今は療養所りょうようじょで暮らしている。

 元婚約者と義妹は、2人そろってろうの中だ。

 私はあの家を売却ばいきゃくし、自分のアトリエをかまえた。
 
 周りにはかくしていたが、私は画家がかだ。

 その絵は貴族きぞく王族おうぞくの間で評判ひょうばんが良く、私のパトロンになってくれる人は山程居た。
 だから私は、婚約者や家を失っても生活に困る訳でもない。

 今では、私の才能さいのうと私自身にんだと言うかたとお付き合いを始め、幸せな日々を送っているわ。

 婚約者も継母も義妹も家も…全てを捨てたおかげで、今のこの幸せがあるの─。
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