婚約者にある場所へ捨てられたら…そこには隠された秘密があり、私は幸せになれました。

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婚約者にある場所へ捨てられたら…そこには隠された秘密があり、私は幸せになれました。

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「お前とは、ここでお別れだ。」

 そう言って、私を縛っていた縄を解いた婚約者。

 彼は抵抗する私を、無理やり馬車から引きずり下ろした。

 そして私に剣を付き付け、こう言い放った。
 
「殺されたくなければ、この森の中へ入れ。そして二度と戻って来るな。もし戻ったら…お前の家族の命はない。」

「…分かったわ。」

 そして私は、深い森の奥へと足を進めた─。

 婚約者によって、深い森の中に捨てられた私。
 この森は、一度入ったら生きて出られないという「死の森」だ。

 好きな女ができたからって、まさかここまでするなんて。

 あの人…このまま私が死んだ事にして、婚約破棄するつもりね。
 そしてその後は、愛人と結ばれようと─。
 
 でも、私をに捨てたのは、失敗だったわよ?
 
 何故なら、ここはある秘密が隠されているのだから─。

※※※

「あの女、今頃はとっくに死んでいるだろうな。」

「ウフフ…いい案だったでしょ、あの森に置き去りにするのは。」

「ああ。下手に手を下せば、後々が面倒だからな…。こうして偽の手紙を用意した、あいつは男と逃げた事にする。」

「後は…あの女の財産が入ってこれば最高ね!」

「それは、追々…ほとぼりが冷めてからな。あいつの両親は人が良いから、娘が男と逃げたとあっては、俺に慰謝料としてあいつの財産を差し出すだろう。」

 あの女とは、家同士の約束で婚約しただけ。
 美人でも可愛くもないあいつに、俺は何の愛情も持って居ない。

 そして…そんな俺の前に現れたのが、この彼女だった。

 あいつとは全く正反対の、こんないい女を逃すものか。
 
 その為には、あの女が邪魔だった。
 だから、どうやってその存在を消そうか随分悩んだが…まさか、こうも上手くいくとは。

 俺は、笑いが止まらなかった─。

 ところが、事態は思わぬ方向へと動いた。

「…あなたたちの思い通りにはさせませんよ?」

「お前…生きてたのか!?」

「嘘…あそこは死の森よ。どうやってあの森から出たのよ!?」

「それは─。」

※※※

『…確か、この辺りに…あったわ!』

 木には、魔力で矢印が描かれていた。

 私は、矢印が差す方へと進んで行く。

 あった、次は右…今度は─。

『…あなたの魔力のおかげで、私は命拾いしました。でもまさか…あの人が私を殺そうとするなんて…。』 

『よくもそんな酷い事を…。君はここに居た方がいい、帰ったらまた何をされるか分からないから。俺が…その男の思い通りにはさせないよ─。』

「…あの森には、秘密の目印があるんです。あの方に力を貰った私は、決してあの森で迷う事はありません。」

「あの方って…一体誰だ!」

「それは、私だ。」

「あ、あなたは第二王子!?」

「彼女とは幼い頃、あの森で出会い仲良くなってね。実は…あそこは王家の所有する森で…俺にとっては死の森でなく、ただの庭のようなものだ。」

「あの時…森に迷い込み衰弱した私に、王子は魔力を分け与えて助けて下さったの。そしてそのおかげで、王家の者にしか見えない森の道標が、私にも見えるようになったのです。」

「そんな…!」

「俺は一目見て彼女を気に入ってね…いずれ自分の妃にしたいと思ったから、そうしたんだ。なのに、お前のような男と婚約してしまって─。一度は諦めたが…彼女が俺に救いを求めた以上、もう放っては置けない。よくも俺の大事な彼女を殺そうとしたな…お前たちには、罰を受けて貰わねば!」

「ど、どうかお許しを!」

「そんなの嫌よ…誰か助けて~!」

 二人は必死に抵抗していたが…最後は駆けつけた兵によって捕らえられた─。

※※※

 そして二人は、死の森へと連れて行かれた。

「魔力のないお前達には、森の矢印は全く見えない。だから、それこそ死ぬまでこの中でさ迷う事になるだろう。」

「私にした事が、自身に返って来ただけよ…自業自得だわ。」

 兵に取り囲まれ、王子に剣を突き付けられ…そして冷たい目をした私に二人は怯え、泣きわめきながら森の中へ入って行った。

 そして二人の姿を見たのは、その日が最後となった─。

 その後、私は改めて王子に求愛される事となり、近く婚約が決まった。

 あの人が私を捨てたのが、あの森で本当に良かった…。
 おかげで私は、無事お城に辿り着き…王子に助けを求める事が出来たのだから。

 婚約者によって、秘密が隠された森の中に捨てられた私は…結果こうして、幸せを掴む事が出来ました─。
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