自分の欲望を満たす為に妃となるはずの私を生贄にした王子は、その身を滅ぼしました。

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自分の欲望を満たす為に妃となるはずの私を生贄にした王子は、その身を滅ぼしました。

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「…どうか、生贄いけにえになってくれ!」

「私が、ですか…?」

「だって、お前は神に愛された娘なんだろう─?」

※※※

 神に愛された娘…私がそう言われる様になったのは、少女時代の事だ。

 夢の中で神の声を聞いた私はこの国の神殿を訪れ、そこで聖女としての務めを果たす事になった。

 すると、神に愛された娘は王家に繁栄をもたらすと言う理由で、私は第一王子の妃候補に選ばれたのだ。

 でも、元は平民の私。
 それを知った第一王子は、私を見下した目で見る様になり…そしていつしか、愛人を作る様になった。

 やがて愛人の数は増えて行き…お城の中で、愛人専用の屋敷を建てるまでになってしまった。

 するとその愛人たちの屋敷で、不幸な事が次々と怒り始めた。
 妙な病が流行ったり、謎の害虫が発生したり、雷が屋根に直撃したり…。
 
 そのせいで、あれだけ居た愛人たちはどんどん減って行き…今や数人の愛人しか残って居ない。

 するとそれを見た神官長は、これは国の守護神の怒りによるものだと、第一王子に話したのだと言う。

「神の怒りを鎮めるには、聖女のお前の命を捧げるのが一番いい。お前は俺の為に存在している女なんだ…だから、その役目を請け負ってくれるな─?」

 そう言って王子は、私がまだ何も返事をしない内にその身を拘束し…無理矢理、私を神殿へと引き摺って行ったのだ。
 
 そして私は縄で縛られ、神殿の泉の前に立たされた。

 神官長や神官たちが必死に王子を宥めるも、彼は聞く耳を持たなかった。

「神に愛されたお前が生贄になれば…そうすれば、愛人たちに不幸は起きない。そしたら、またあの屋敷は俺を愛する女たちで一杯に…!」

「王子…あなたは、大きな過ちを犯しました。」

「…え?」

「確かに、あの愛人たちの屋敷で起きた不幸は、この国の守護神の怒りによるもの。ですが、それを鎮める方法が間違って居ます。私を生贄に捧げようなど…そしてそれを実行しようとすれば、あなたは破滅するでしょう。」

「だ、黙れ!誰か早くこの女を、泉に突き落とせ!」

 その時だった、一人の男が私の方へと近寄って来て…そして腰の剣を振り上げた。

「おお!先に黙らせてから泉に突き落とすのか…いいぞ、やれ─!」

※※※

 だが…その剣は私を斬る事は無かった。

 その剣は、私の腰に巻かれた縄をスパリと斬り捨て…そして、ふらついて泉に落ちそうになる私を、その人物は優しく抱き留めた。

「…ご自分の欲望を満たす為に、聖女様の命を奪うなど…あなたには呆れます。」

「お、お前…どうしてここに!?」

 それは第一王子の弟君である、第二王子だった。

「お前は、王の命を受け隣国に旅立っていたんじゃ…?」

「その王に頼まれたんです。今すぐ、城に帰還するようにと。聞けば、あなたが王の体調が優れないのをいい事に、城で好き放題やって困っていると言うではありませんか。神に愛された娘である聖女様を妃に迎えるあなたが、愛人たちを囲い込むなど…どうかしています。しかも、その愛人の館を維持する為、聖女様の命を神に捧げるなど…とても許される事ではない。」

「な、何を生意気な…この次期王である俺に歯向かうなど─」

「あなたは、もう次期王ではありません。神が仰いました…あなたのような男は、王の器ではないと─。」

「何!?」

「だから私は、神の意思に沿い、あなたの加護を剥奪します。」

「…え?」

 私の言葉に、彼は目を丸くした。

 私があなたの為に加護を授けて居た事、知らなかったものね。

 でもね…私はあなたと初めて会った時から、あなたの妃になる覚悟を決め、あなたに加護を授けていたの。
 それを、今この場で外させて貰うわ。

 そしてその加護は、新たに─。

 第一王子に手をかざしある言葉を唱えると、彼の身体から光の塊が抜け出た。

「や、辞めてくれ…元に戻すんだ…!」

 そしてその光は、私を支えてくれている第二王子の身体へと入っていった。

「次期王は、あなたではなく彼です。あなたは…生贄という方法で聖女殺しをしようとした、ただの悪人です。」

「兄上…あなたには、次期王である俺が厳しい処罰を与えます。」

「そ、そんな…!」

※※※

 その後第一王子は捕らえられ、牢へと送られた。

 そしてこの国から追放を受け、神の恩恵を何も受けない孤島へと、ただ一人流されてしまったのだ。

 そんな地で、この先一人で生きて行かねばならないなんて…あれだけ大勢の愛人たちに囲まれ楽しくやっていたあなたには、きっと耐えられないでしょうね。

 その後、第二王子の命で愛人の屋敷は解体され、残って居た愛人たちは皆城を追い出された。

「俺は君しか要らない。この先も聖女として…そして俺の妃として、ずっと傍に居てくれないか?」

 私は、第二王子の気持ちを受け入れた。

 彼には、初めて会った時からずっとときめきを感じていたもの…。
 私を助けてくれた温かい手、優しい眼差し…彼とならばきっと幸せになれる、私はそう信じているわ─。
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