そんなに私が嫌いなら、もう一緒に居る事は出来ません…あなたの愛する妹と共に去ります。

coco

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そんなに私が嫌いなら、もう一緒に居る事は出来ません…あなたの愛する妹と共に去ります。

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『お前とは、家同士の約束で仕方なく婚約したんだ。俺が一番大事で愛しているのは、俺の妹だ。つまらない嫉妬しっとで虐める様な事があれば、叩き出す!』

 婚約してすぐ彼の口から飛び出たこの言葉に、私はとてもショックを受けた。

 その日の夜は悲しくて眠れなかったし、三日程は気分が沈んだままだった。

 でも今は…。

「お前は世界一可愛いな。これからも、この兄のそばに居てくれ。」

「お兄様…私だって、この世でお兄様が一番素敵でカッコいいと思ってるわ!」

 もう分かったから、そこ退いてくれます?
 掃除の邪魔…何なら、ゴミと一緒に外に放り出してやりたい。

 と、いった所だ。

 だって、色々言っても無駄だもの。
 妹とは血は繋がってないし良いだろうと逆切れされ、それで終わりよ。

 慣れって凄いわね…でも、こんな事に慣れてしまうなんて、あまりに寂しい事よ。

「ボケっとしてないで、早く掃除を済ませ出て行け。お前と同じ空気を吸いたくない!」

「そうよ、相変わらず気の利かない女ね!お兄様~、本当にこの女が婚約者じゃないと駄目なの?」

「すまないな、お前にまで嫌な思いをさせて。俺だってこいつが嫌いなんだ、でも…家同士の事もあるし、な?」

 嫌い…今まで、彼にハッキリとその言葉を言われた事はなかった。
 中々に心をえぐる言葉ね…。

 何だかもう、ここに居るのが嫌になったわ。
 
 もうこれ以上、あなたとは一緒に居られない。
 私は…あなたの愛する妹と共に去ります─。

※※※

「俺と婚約破棄し、家を出る!?」

「お互いの父も、そろって了承りょうしょうしました。」

「何!?」

「私の父など、そんな異常な愛を繰り広げる兄妹だと思わなかった。しかも、その妹が悪女なら尚更と言って。」

 私の言葉に、婚約者は怒りを見せた。

「異常とは失礼な!というか、あの子が悪女とはどういう事だ!?」

「あの子は、あなたの継母が連れてきた連れ子ですよね。実はあの子、学生時代に虐めの首謀者をやってましてね。あの子に傷付けられた令嬢は大勢居ます。それによって学園が崩壊しかけ、ついには退学させられたの。それで逃げる様に母子でこの地にやって来て…やがて母親はあなたのお父上と再婚。それであの子は、あなたの妹になったという訳。」

「あの子が、そんな恐ろしい真似を…?」

「酷い話よね…謝罪もせず、慰謝料も踏み倒し逃亡するなど。そんな女には、ちゃんと罪を償う機会を与えねばいけません。」
 
 私が手を叩き合図すれば、家から呼んでいた従者が、妹を連れ部屋に入って来た。

「ちょっと、離して!」

「この子には、私と共に家を出て貰います。実は私、ある田舎の修道院に伝手つてがありましてね。そこはどんな悪女でも、喜んで受け入れてくれます。そして悪女がそこに入れば、もう一生出て来れません。何でも特別な部屋が用意してあるとか…まさに、この子にピッタリでしょう?」

「そんな所、誰が行くもんか!お兄様、助けて!」

「お、俺は…その…。」

「無駄よ、この人は面倒事から逃げるクズだから。とはいえ、愛する女と離れるのはさぞや悲しいでしょう。まぁ…悲しんでいられるのも、今の内だろうけど。」

「…え?」

「では、私たちはこれで失礼しますね─。」

※※※

 私は実家に帰る途中、妹を修道院に放り込んできた。

 実は…そこには、ある黒い噂があった。

 修道女の生活は厳しく、ストレスが溜まるものだ。
 その為、特別室に罪を犯した悪女を住まわせ、厳しく折檻する事でそのけ口にしているらしい。

 らしいだからね、あくまで噂よ。
 そうでないなら、修道女として修業に励めばいいだけだし…例えそれが本当でも、あの子はそうされても仕方のない事をこれまでしてきたんだもの。

 上手く婚約破棄する為に、彼だけでなくその妹の事まで調べ上げて良かった。
 あの子に、こんな黒い過去が出て来るとは─。

 のちに彼の父は、継母とあの子が踏み倒した慰謝料を払う事を決めた。
 その額はかなりのもので、元婚約者もその返済に自身の財産を使う羽目に…。
 
 また、血は繋がってないとはいえ妹と…それも悪女との禁断の恋が世間に知られる事となり、彼は周りから白い目で見られるようになってしまった。
 その為あの地に居られなくなり、ついには田舎の親類の家へ夜逃げを─。
 だがそこでもその存在を鬱陶うっとうしがられ、邪険じゃけんに扱われているみたい。

 こんな事ならお前をちゃんと好きになれば良かった、嫌いだなんて誤解だと、未練みれんがましい手紙を送って来たが…私にはもう新しい婚約者が居たので、すぐにそれは破り捨てられた─。
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