1 / 1
あなたの愛と引き換えに欲しい物など何もない…愛をくれないなら、もう婚約破棄して─?
しおりを挟む
「今若い娘の間で人気のドレスだ。この色なら、地味なお前にも似合う。」
私に包みを渡すと、彼はすぐに部屋を出て行こうとする。
「少しお話でも─」
「それは無理だ。言っただろう?お前を愛せない代わりに、金でも服でも…何でもやると。だが…時間はやれない。また来るから、次は何が欲しいか言え。」
私は…私が本当に欲しいのは─。
でもそれを言っても、きっと彼はくれないもの…。
私が中々返事を返せないでいると、彼は舌打ちして去って行った─。
※※※
「…それでな、俺が何が欲しいか聞いても答えられないんだ。あの愚図で鈍間な女には、呆れるよ。」
「お姉様は、本当はあなたの事など好きじゃないのよ。好きじゃないから、あなたから何が欲しいか答えられないんじゃない?」
「成程…しかしそれなら、益々腹立たしいな!俺だって…、俺の方があいつをうんと嫌いなんだ。そんな女に嫌われ、馬鹿にされたかと思うと─!」
俺は、怒りにワナワナと震えた。
俺の婚約者は無口で地味で…何とも冴えない女だ。
それでも一応は名家の娘で長女…将来を考え、親の言う通り婚約した。
でもどうせこの家の娘と婚約するなら、この可愛い妹の方が良かった…。
「あなたの事は、お姉様の代わりに私が沢山愛してあげる。それより、私にもそのドレス買って来てくれた?」
「勿論だよ!」
この妹が、今の俺にとっての本命だ…あいつなど、最早ただのおまけにすぎん。
婚約者にあげず、その妹ばかりにあげていてはマズいから…ただそれだけで贈っているだけの事だ。
しかし…毎回二人同時に贈り物をするのは、中々厳しいものがあるな。
だがあいつと結婚したら、あいつの財産から穴埋めすればいいだけだ。
むしろ…あいつの財産を丸ごと奪い、この妹と好きに使ってやろう。
そう、思っていたのに─。
※※※
「婚約破棄したいだと!?」
「私…やはり愛のない婚約は無理です。あなたの愛と引き換えに欲しい物など、私には何もないの。」
「愛など、そんなものにこだわらなくても…もう一度考え直せ、な?」
「あなたが私を愛せないのは、妹を愛してるからでしょう?あなた、私とは別に妹にも贈り物を用意してるでしょう?というか…妹に用意するから、私に用意してたのよね。このメッセージカードを見て気づきました。」
「な、何故妹宛てのカードをお前が持って─」
「あなた…間違えて妹用の贈り物を、私に贈ったのよ。随分豪華な質の良いドレスで、珍しい事もあると思ったら…中からこれが出てきましてね。愛する君には、いつも姉より上質な物を贈る事にしている…そう書かれています。これを見てあなたと妹との関係に気付かない程、私は馬鹿じゃないわ。」
彼は、真っ青な顔になり震えている。
「ついでだから、もう一つ教えてあげる。妹はあなたから贈られた物など、一切身に付けていないの。」
「…え?」
「あの子には、本命の男が居てね…その男がある事業をやってて、その資金が必要なの。だから妹は、あなたから貰った物をそのまま店に持ち込み、金に換えている。それに気づかず、あなたは妹の偽りの愛に騙されせっせと貢ぎ…本当に愚かね。」
「そ、そんな…。」
「私を引き留めるのは、私と結婚し贈り物に使ったお金を穴埋めする為?あなたの考えてる事はお見通しよ。だって…私はそれ程あなたの事を愛し、あなただけを見つめて来たんですもの。でも、もういい…あなたの偽りの愛など、私は欲しくないから─。」
※※※
その後、私は彼に慰謝料を請求、今までに贈られた物も全て引き取って貰った。
あんな物もう見たくもないし、処分するのにも手間だったから良かったわ。
せっかくの良縁を無駄にしてと親に呆れられた彼は、その内家に居辛くなったのか…家督を弟に譲り、この地を去って行った。
そしてそれきり、行方不明だ。
妹は今回の事で父の怒りを買い、親子の縁を切られ家を追い出された。
困った妹は本命の彼の家に転がり込もうとしたが…こんな情けない事をして俺に恥をかかせるなと彼に拒絶され、捨てられてしまった。
その後は悪い男にでも引っかかり、どこぞに売り飛ばされたと聞くが…真相は分からない。
新しい婚約者が決まり、その方を迎える準備に忙しい私には、二人がどうなろうがもう関係のない事よ─。
私に包みを渡すと、彼はすぐに部屋を出て行こうとする。
「少しお話でも─」
「それは無理だ。言っただろう?お前を愛せない代わりに、金でも服でも…何でもやると。だが…時間はやれない。また来るから、次は何が欲しいか言え。」
私は…私が本当に欲しいのは─。
でもそれを言っても、きっと彼はくれないもの…。
私が中々返事を返せないでいると、彼は舌打ちして去って行った─。
※※※
「…それでな、俺が何が欲しいか聞いても答えられないんだ。あの愚図で鈍間な女には、呆れるよ。」
「お姉様は、本当はあなたの事など好きじゃないのよ。好きじゃないから、あなたから何が欲しいか答えられないんじゃない?」
「成程…しかしそれなら、益々腹立たしいな!俺だって…、俺の方があいつをうんと嫌いなんだ。そんな女に嫌われ、馬鹿にされたかと思うと─!」
俺は、怒りにワナワナと震えた。
俺の婚約者は無口で地味で…何とも冴えない女だ。
それでも一応は名家の娘で長女…将来を考え、親の言う通り婚約した。
でもどうせこの家の娘と婚約するなら、この可愛い妹の方が良かった…。
「あなたの事は、お姉様の代わりに私が沢山愛してあげる。それより、私にもそのドレス買って来てくれた?」
「勿論だよ!」
この妹が、今の俺にとっての本命だ…あいつなど、最早ただのおまけにすぎん。
婚約者にあげず、その妹ばかりにあげていてはマズいから…ただそれだけで贈っているだけの事だ。
しかし…毎回二人同時に贈り物をするのは、中々厳しいものがあるな。
だがあいつと結婚したら、あいつの財産から穴埋めすればいいだけだ。
むしろ…あいつの財産を丸ごと奪い、この妹と好きに使ってやろう。
そう、思っていたのに─。
※※※
「婚約破棄したいだと!?」
「私…やはり愛のない婚約は無理です。あなたの愛と引き換えに欲しい物など、私には何もないの。」
「愛など、そんなものにこだわらなくても…もう一度考え直せ、な?」
「あなたが私を愛せないのは、妹を愛してるからでしょう?あなた、私とは別に妹にも贈り物を用意してるでしょう?というか…妹に用意するから、私に用意してたのよね。このメッセージカードを見て気づきました。」
「な、何故妹宛てのカードをお前が持って─」
「あなた…間違えて妹用の贈り物を、私に贈ったのよ。随分豪華な質の良いドレスで、珍しい事もあると思ったら…中からこれが出てきましてね。愛する君には、いつも姉より上質な物を贈る事にしている…そう書かれています。これを見てあなたと妹との関係に気付かない程、私は馬鹿じゃないわ。」
彼は、真っ青な顔になり震えている。
「ついでだから、もう一つ教えてあげる。妹はあなたから贈られた物など、一切身に付けていないの。」
「…え?」
「あの子には、本命の男が居てね…その男がある事業をやってて、その資金が必要なの。だから妹は、あなたから貰った物をそのまま店に持ち込み、金に換えている。それに気づかず、あなたは妹の偽りの愛に騙されせっせと貢ぎ…本当に愚かね。」
「そ、そんな…。」
「私を引き留めるのは、私と結婚し贈り物に使ったお金を穴埋めする為?あなたの考えてる事はお見通しよ。だって…私はそれ程あなたの事を愛し、あなただけを見つめて来たんですもの。でも、もういい…あなたの偽りの愛など、私は欲しくないから─。」
※※※
その後、私は彼に慰謝料を請求、今までに贈られた物も全て引き取って貰った。
あんな物もう見たくもないし、処分するのにも手間だったから良かったわ。
せっかくの良縁を無駄にしてと親に呆れられた彼は、その内家に居辛くなったのか…家督を弟に譲り、この地を去って行った。
そしてそれきり、行方不明だ。
妹は今回の事で父の怒りを買い、親子の縁を切られ家を追い出された。
困った妹は本命の彼の家に転がり込もうとしたが…こんな情けない事をして俺に恥をかかせるなと彼に拒絶され、捨てられてしまった。
その後は悪い男にでも引っかかり、どこぞに売り飛ばされたと聞くが…真相は分からない。
新しい婚約者が決まり、その方を迎える準備に忙しい私には、二人がどうなろうがもう関係のない事よ─。
160
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
【完】お望み通り婚約解消してあげたわ
さち姫
恋愛
婚約者から婚約解消を求められた。
愛する女性と出会ったから、だと言う。
そう、それなら喜んで婚約解消してあげるわ。
ゆるゆる設定です。3話完結で書き終わっています。
好きな人ができたなら仕方ない、お別れしましょう
四季
恋愛
フルエリーゼとハインツは婚約者同士。
親同士は知り合いで、年が近いということもあってそこそこ親しくしていた。最初のうちは良かったのだ。
しかし、ハインツが段々、心ここに在らずのような目をするようになって……。
お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。
四季
恋愛
お前は要らない、ですか。
そうですか、分かりました。
では私は去りますね。
真実の愛の祝福
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
皇太子フェルナンドは自らの恋人を苛める婚約者ティアラリーゼに辟易していた。
だが彼と彼女は、女神より『真実の愛の祝福』を賜っていた。
それでも強硬に婚約解消を願った彼は……。
カクヨム、小説家になろうにも掲載。
筆者は体調不良なことも多く、コメントなどを受け取らない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
真実の愛かどうかの問題じゃない
ひおむし
恋愛
ある日、ソフィア・ウィルソン伯爵令嬢の元へ一組の男女が押しかけた。それは元婚約者と、その『真実の愛』の相手だった。婚約破棄も済んでもう縁が切れたはずの二人が押しかけてきた理由は「お前のせいで我々の婚約が認められないんだっ」……いや、何で?
よくある『真実の愛』からの『婚約破棄』の、その後のお話です。ざまぁと言えばざまぁなんですが、やったことの責任を果たせ、という話。「それはそれ。これはこれ」
婚約破棄、別れた二人の結末
四季
恋愛
学園一優秀と言われていたエレナ・アイベルン。
その婚約者であったアソンダソン。
婚約していた二人だが、正式に結ばれることはなく、まったく別の道を歩むこととなる……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる