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第三章
17.文化祭準備
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季節は巡り、肌寒い風が制服の裾を揺らすようになった頃。
浩太のクラスでは、いよいよ文化祭の準備が本格的に始まろうとしていた。
黒板には、白いチョークでいくつもの出し物の候補が書き連ねられている。
──劇
──喫茶店
──お化け屋敷
──縁日
「なんか、定番ばっかだな……」
浩太がぼんやりと黒板を眺めていると、隣の席の宗介がにやにやしながら身を乗り出してきた。
「なあなあ、浩太。メイド喫茶とかやりたくね?」
「はあ?」
突飛な発言に、浩太は思わず半眼になる。
「コスプレだよコスプレ!こういうイベントの時じゃないと、なかなかできないじゃん?一回くらいやっときたいだろ!」
「いや、俺は別に……」
浩太は苦笑しながら宗介をあしらおうとしたが、やたらとテンションの高いその勢いに押される形で──というより、彼が本当にクラスに提案してしまったことにより──
「……本当に通ったのかよ」
「通っちまったもんは仕方ねーだろ!しかも“男子もメイド衣装着用”な!」
「まじかよ……」
こうして、浩太のクラスの出し物は『男女共用メイド喫茶』に決定したのだった。
◇
文化祭本番まで、残り二週間。
放課後の教室には、段ボール、布、リボン、裁縫道具、ペンキ──普段の勉強道具とは全く違う品々が並び始めていた。
「買ってきたぞー!!」
「黒い布と白レース、あと飾り用の造花も!」
「リボンは五十メートルのやつ買ってきた!」
買い出し班がどや顔で帰ってくると、教室の中が一気に活気づいた。
「段ボールでカウンター作るんだっけ?」
「店の看板、文字担当は高橋ね!字、めっちゃ綺麗だから!」
「私、イラスト描けるから背景任せて!」
手際よく役割分担がされていく中、浩太はひとり、机に向かって布と格闘していた。
黒いエプロンに白いフリルを縫い付ける作業──ただそれだけのはずなのに、針は指に刺さるわ、糸は絡まるわ、フリルのバランスはズレるわで、作業はまったく捗らなかった。
「はぁぁ……」
深いため息と共に、浩太は肩を落とす。
「浩太~!お前、ほんと不器用だなあ!」
そう言って笑いながらやってきたのは、例によって宗介だった。
「……不器用で悪かったな」
「いやいや、安心しろ。俺もだ」
「え?」
宗介が浩太に差し出した衣装は、同じく無残な出来栄えだった。
「浩太……一緒に頑張ろうな!」
「ああ……」
その後、二人は休み時間も返上して、何とか衣装づくりを進めていった。
◇
準備は順調に進み、数日後の土曜には一日がかりで店内のレイアウトと装飾が完成した。
「看板、いい感じじゃん」
「制服も届いた!試着しようぜ浩太!」
「やだ」
「逃げんなよ~!みんなで着るんだからさ!」
──そんなふうに、男子たちの声が飛び交う中。
結局その場にいた男子全員が試着することになった。
届いた制服に、自分たちで作ったエプロンを合わせる。
「……なんか、お前似合わないな」
「……うるせえ。お前も大概だぞ」
蓮のように華やかな顔立ちの人間にはこういった衣装も似合うのかもしれない。けれど、自分のような平凡な顔立ちの人間には似合わなかった。
けれど、不思議と嫌じゃなかった。
浩太のクラスでは、いよいよ文化祭の準備が本格的に始まろうとしていた。
黒板には、白いチョークでいくつもの出し物の候補が書き連ねられている。
──劇
──喫茶店
──お化け屋敷
──縁日
「なんか、定番ばっかだな……」
浩太がぼんやりと黒板を眺めていると、隣の席の宗介がにやにやしながら身を乗り出してきた。
「なあなあ、浩太。メイド喫茶とかやりたくね?」
「はあ?」
突飛な発言に、浩太は思わず半眼になる。
「コスプレだよコスプレ!こういうイベントの時じゃないと、なかなかできないじゃん?一回くらいやっときたいだろ!」
「いや、俺は別に……」
浩太は苦笑しながら宗介をあしらおうとしたが、やたらとテンションの高いその勢いに押される形で──というより、彼が本当にクラスに提案してしまったことにより──
「……本当に通ったのかよ」
「通っちまったもんは仕方ねーだろ!しかも“男子もメイド衣装着用”な!」
「まじかよ……」
こうして、浩太のクラスの出し物は『男女共用メイド喫茶』に決定したのだった。
◇
文化祭本番まで、残り二週間。
放課後の教室には、段ボール、布、リボン、裁縫道具、ペンキ──普段の勉強道具とは全く違う品々が並び始めていた。
「買ってきたぞー!!」
「黒い布と白レース、あと飾り用の造花も!」
「リボンは五十メートルのやつ買ってきた!」
買い出し班がどや顔で帰ってくると、教室の中が一気に活気づいた。
「段ボールでカウンター作るんだっけ?」
「店の看板、文字担当は高橋ね!字、めっちゃ綺麗だから!」
「私、イラスト描けるから背景任せて!」
手際よく役割分担がされていく中、浩太はひとり、机に向かって布と格闘していた。
黒いエプロンに白いフリルを縫い付ける作業──ただそれだけのはずなのに、針は指に刺さるわ、糸は絡まるわ、フリルのバランスはズレるわで、作業はまったく捗らなかった。
「はぁぁ……」
深いため息と共に、浩太は肩を落とす。
「浩太~!お前、ほんと不器用だなあ!」
そう言って笑いながらやってきたのは、例によって宗介だった。
「……不器用で悪かったな」
「いやいや、安心しろ。俺もだ」
「え?」
宗介が浩太に差し出した衣装は、同じく無残な出来栄えだった。
「浩太……一緒に頑張ろうな!」
「ああ……」
その後、二人は休み時間も返上して、何とか衣装づくりを進めていった。
◇
準備は順調に進み、数日後の土曜には一日がかりで店内のレイアウトと装飾が完成した。
「看板、いい感じじゃん」
「制服も届いた!試着しようぜ浩太!」
「やだ」
「逃げんなよ~!みんなで着るんだからさ!」
──そんなふうに、男子たちの声が飛び交う中。
結局その場にいた男子全員が試着することになった。
届いた制服に、自分たちで作ったエプロンを合わせる。
「……なんか、お前似合わないな」
「……うるせえ。お前も大概だぞ」
蓮のように華やかな顔立ちの人間にはこういった衣装も似合うのかもしれない。けれど、自分のような平凡な顔立ちの人間には似合わなかった。
けれど、不思議と嫌じゃなかった。
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