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第二章
16.居場所(慧視点)
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結局、瑞樹をおぶったまま慧の家へと辿りついた。
瑞樹は部屋に入るなり、まるで自分の縄張りを確かめる子猫のように軽い足取りで部屋を歩き回り始めた。ソファの端から窓際まで、あちこちを指さして宣言していく。
「ここ、おれの服おきばだから!」
「こっちは、おれのすわるところ! 窓際もおれ!」
その一つ一つを力強く主張する姿に、慧は思わず苦笑が漏れる。
瑞樹の声には、いつものツンツンした強気な響きと、どこか不安を隠すような切実さが混ざっていた。
(……瑞樹くん以外をここに招く気なんて、最初からないんだけどな)
慧の家は、そもそも瑞樹のためにあるようなものだ。それでも、瑞樹が必死に自分のスペースを確保していく様子は、なんだか愛おしくてたまらない。
まるでこの部屋が、瑞樹にとって初めての『安全な居場所』であるかのように。
瑞樹はソファの上に置いてあったふわふわの毛布を手に取り、鼻先を埋めるようにしてくんくんと匂いを嗅いだ。
「この毛布、慧のにおいする」
その無防備な仕草に、慧の胸がきゅっと締め付けられる。
「それ、僕がよく寝落ちしてるやつだよ」
慧は笑いながら答えたが、内心では瑞樹のその一言がじんわりと心に染み込んでいた。
「ここ……おれの場所にしていい?」
瑞樹の声は、ほんの少しだけ震えていた。
先ほどは強気な口調で押し切っていたのに、今はどこか不安げで、確認するように慧の顔をチラッと見上げる。
「もちろん。瑞樹くんがそうしたいなら、全部瑞樹くんの場所でいいよ」
慧は柔らかく微笑み、ソファの端に腰を下ろして瑞樹を見つめた。
瑞樹は一瞬目を丸くし、すぐに満足げに頷いた。
「じゃあ、ここがおれのソファ。これ、おれの毛布。おれの……ねるとこ」
一つ一つを丁寧に、まるで大切な宝物を数えるように口にする瑞樹。
その声には、冗談めかした軽さよりも、「ここにいてもいいんだ」という安心を求める気持ちが強く滲んでいた。
慧の胸が、温かさと切なさでいっぱいになった。
ヒートを初めて経験した瑞樹は、まだ自分のΩとしての身体に戸惑っているのだろう。
あの夜、熱に浮かされながら慧にしがみつき、涙と汗でぐしゃぐしゃになった姿が、慧の脳裏に鮮やかに蘇る。あのとき、瑞樹は慧の腕の中で初めて『自分はΩだ』と受け入れたのかもしれない。
そして今、こうやって慧の家で自分の居場所を必死に主張する姿は、瑞樹なりの「ここにいたい」という叫びなのだ。
瑞樹はソファにごろんと横になり、慧のパーカーの袖をぎゅっと握ってくんくんと匂いを嗅いだ。 その仕草は、まるで子猫が安心を求めて飼い主にすり寄るようで、慧の心をくすぐる。
「……ここ、すき。すきすぎて、ちょっとこわい……」
瑞樹の声は、ヒート後のぼんやりした余韻を残し、ふにゃふにゃと柔らかかった。
その無防備な告白に、慧の心臓がドクンと跳ねる。一瞬、言葉に詰まり、ただただ瑞樹の顔を見つめた。
「瑞樹くんがここを好きでいてくれて、嬉しい。僕も安心するよ」
慧はそっと毛布を瑞樹の肩にかけながら、胸の奥で熱いものが込み上げるのを感じた。
(こんな無防備な姿、他の誰にも見せたことないんだろうな。瑞樹くんがこんな風に甘えてくれるのは、僕だけでいいよね……)
慧の家が、瑞樹にとって『甘えられる居場所』になってくれたことが、たまらなく嬉しかった。
瑞樹の閉じた瞼に、ほのかな笑みが浮かんでいるように見える。
その寝顔は、普段の態度とはまるで別人で、ただただ愛おしい。
慧はそっと身をかがめ、瑞樹の耳元で囁いた。
「……おやすみ、瑞樹くん」
瑞樹の唇が、ほんの少しだけ動いた。
「ん……慧……」
小さな寝言のような呟きに、慧は思わず笑みを深めた。
◇
部屋は静まり返り、窓から差し込む午後の陽光が、ソファの上の瑞樹を柔らかく照らしていた。
慧はそっとソファの横に座り、瑞樹の寝顔を見つめる。ヒートの影響でまだ少し火照った頬、緩やかに上下する胸元、毛布をぎゅっと握る小さな手。
その一つ一つが、慧の心を温かく、けれどどこか切なく揺さぶる。
(瑞樹くんがこんな風に安心して眠れる場所を、僕が守ってあげたいな)
慧はそっと瑞樹の前髪を指で払い、その額に軽くキスを落とした。
すると、瑞樹が寝ぼけたように小さく身じろぎし、慧のパーカーの袖をさらに強く握りしめた。
二人の間に流れる時間は柔らかくて温かく、まるで永遠のように感じられた。
瑞樹は部屋に入るなり、まるで自分の縄張りを確かめる子猫のように軽い足取りで部屋を歩き回り始めた。ソファの端から窓際まで、あちこちを指さして宣言していく。
「ここ、おれの服おきばだから!」
「こっちは、おれのすわるところ! 窓際もおれ!」
その一つ一つを力強く主張する姿に、慧は思わず苦笑が漏れる。
瑞樹の声には、いつものツンツンした強気な響きと、どこか不安を隠すような切実さが混ざっていた。
(……瑞樹くん以外をここに招く気なんて、最初からないんだけどな)
慧の家は、そもそも瑞樹のためにあるようなものだ。それでも、瑞樹が必死に自分のスペースを確保していく様子は、なんだか愛おしくてたまらない。
まるでこの部屋が、瑞樹にとって初めての『安全な居場所』であるかのように。
瑞樹はソファの上に置いてあったふわふわの毛布を手に取り、鼻先を埋めるようにしてくんくんと匂いを嗅いだ。
「この毛布、慧のにおいする」
その無防備な仕草に、慧の胸がきゅっと締め付けられる。
「それ、僕がよく寝落ちしてるやつだよ」
慧は笑いながら答えたが、内心では瑞樹のその一言がじんわりと心に染み込んでいた。
「ここ……おれの場所にしていい?」
瑞樹の声は、ほんの少しだけ震えていた。
先ほどは強気な口調で押し切っていたのに、今はどこか不安げで、確認するように慧の顔をチラッと見上げる。
「もちろん。瑞樹くんがそうしたいなら、全部瑞樹くんの場所でいいよ」
慧は柔らかく微笑み、ソファの端に腰を下ろして瑞樹を見つめた。
瑞樹は一瞬目を丸くし、すぐに満足げに頷いた。
「じゃあ、ここがおれのソファ。これ、おれの毛布。おれの……ねるとこ」
一つ一つを丁寧に、まるで大切な宝物を数えるように口にする瑞樹。
その声には、冗談めかした軽さよりも、「ここにいてもいいんだ」という安心を求める気持ちが強く滲んでいた。
慧の胸が、温かさと切なさでいっぱいになった。
ヒートを初めて経験した瑞樹は、まだ自分のΩとしての身体に戸惑っているのだろう。
あの夜、熱に浮かされながら慧にしがみつき、涙と汗でぐしゃぐしゃになった姿が、慧の脳裏に鮮やかに蘇る。あのとき、瑞樹は慧の腕の中で初めて『自分はΩだ』と受け入れたのかもしれない。
そして今、こうやって慧の家で自分の居場所を必死に主張する姿は、瑞樹なりの「ここにいたい」という叫びなのだ。
瑞樹はソファにごろんと横になり、慧のパーカーの袖をぎゅっと握ってくんくんと匂いを嗅いだ。 その仕草は、まるで子猫が安心を求めて飼い主にすり寄るようで、慧の心をくすぐる。
「……ここ、すき。すきすぎて、ちょっとこわい……」
瑞樹の声は、ヒート後のぼんやりした余韻を残し、ふにゃふにゃと柔らかかった。
その無防備な告白に、慧の心臓がドクンと跳ねる。一瞬、言葉に詰まり、ただただ瑞樹の顔を見つめた。
「瑞樹くんがここを好きでいてくれて、嬉しい。僕も安心するよ」
慧はそっと毛布を瑞樹の肩にかけながら、胸の奥で熱いものが込み上げるのを感じた。
(こんな無防備な姿、他の誰にも見せたことないんだろうな。瑞樹くんがこんな風に甘えてくれるのは、僕だけでいいよね……)
慧の家が、瑞樹にとって『甘えられる居場所』になってくれたことが、たまらなく嬉しかった。
瑞樹の閉じた瞼に、ほのかな笑みが浮かんでいるように見える。
その寝顔は、普段の態度とはまるで別人で、ただただ愛おしい。
慧はそっと身をかがめ、瑞樹の耳元で囁いた。
「……おやすみ、瑞樹くん」
瑞樹の唇が、ほんの少しだけ動いた。
「ん……慧……」
小さな寝言のような呟きに、慧は思わず笑みを深めた。
◇
部屋は静まり返り、窓から差し込む午後の陽光が、ソファの上の瑞樹を柔らかく照らしていた。
慧はそっとソファの横に座り、瑞樹の寝顔を見つめる。ヒートの影響でまだ少し火照った頬、緩やかに上下する胸元、毛布をぎゅっと握る小さな手。
その一つ一つが、慧の心を温かく、けれどどこか切なく揺さぶる。
(瑞樹くんがこんな風に安心して眠れる場所を、僕が守ってあげたいな)
慧はそっと瑞樹の前髪を指で払い、その額に軽くキスを落とした。
すると、瑞樹が寝ぼけたように小さく身じろぎし、慧のパーカーの袖をさらに強く握りしめた。
二人の間に流れる時間は柔らかくて温かく、まるで永遠のように感じられた。
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