【完結】変態αのフェロモン観測記録

加賀ユカリ

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第四章

26.番※

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 慧の予想通り、一週間に瑞樹のヒートはやって来た。
 事前に大学の手続きも済ませ、慧の家のリビングでともにその時を過ごしていた。

 瑞樹は慧の膝の上に跨るように座り、細い指で慧の首元をぎゅっと掴んでいた。震える指先は、まるで慧の存在を確かめるように、彼の肌に食い込んでいる。慧の熱が掌を通じて伝わり、瑞樹の内側を溶かしていく。

 慧の大きな掌が瑞樹の背中にそっと添えられ、一定のリズムで優しく撫で下ろす。その温もりと規則正しい動きが、瑞樹の昂ぶる心をほぐそうとしていた。
 指の腹が背筋をなぞるたび、瑞樹の身体は微かに震え、甘い吐息が漏れる。

「大丈夫だよ、瑞樹」

 慧の声は低くて柔らかく、まるで子守唄のように瑞樹の耳に響く。息が首筋にかかり、瑞樹の肌を熱くくすぐった。

「……ん」  

 瑞樹の小さな返事は、微かに震えていた。
 久しぶりのヒートのせいか、いよいよ番契約が結ばれるという緊張のせいか──瑞樹のフェロモンは濃く、部屋全体を満たしていた。慧のαの匂いと混じり合い、互いの欲求を煽り立てる。

(慧の匂い、近くて……頭ぼんやりする……熱い)

「……瑞樹、体調はどう? 本格的なヒートがくる前にお風呂入ろっか」  
「……はいる」  

 小さな声で返事をしながら、瑞樹は慧の首にさらにしがみついた。まるで離れることが怖いかのように身体を密着させる。
 
 慧が苦笑しながら、瑞樹の身体を軽々と抱き上げた。瑞樹の足が自然に慧の腰に絡みつき、密着したままの姿勢で運ばれる。

「ほんと、甘えんぼモード全開だね」  
「……」

 返事を返すこともなく、瑞樹は慧の胸に顔を埋めた。慧の心臓の鼓動が耳元で規則正しく響いている。まるで、瑞樹のヒートを呼び起こすように。

 ◇

 風呂場の湯気に包まれながら、瑞樹は慧の腰にぴったりと引っ付いていた。熱いお湯で肌が濡れ、湯気の中で慧の匂いが色濃く漂う。

 慧は、瑞樹の背中や腕を丁寧に洗っていく。だが、瑞樹は慧から一瞬たりとも離れようとせず、まるで子猫のように引っ付いていた。腰を擦り寄せ、慧の硬くなった部分に自分の熱を押し付ける。


「ちょっと、瑞樹。そんなにくっついてたら洗えないよ?」

 慧は苦笑まじりに言うが、瑞樹は首を振って拒否をする。

「……んっ……やだ、はなれない……」

 慧の匂いが濃く漂い、瑞樹の理性が揺らぐ。ヒートの熱が身体の芯から湧き上がり、肌が敏感に反応する。慧の指が肌を滑るたび、瑞樹の唇から小さな喘ぎ声が漏れた。

「……ん、だめ……そこ……」

 慧は瑞樹の乱れを和らげるように、ゆっくりと濡れた髪を丁寧に解した。指が耳朶を撫で、首筋をなぞる。瑞樹の身体がびくんと跳ね、甘い蜜液が内腿を伝う。

「大丈夫、焦らなくていいよ。……今日は瑞樹と、ちゃんと番になる日だから」  

 その言葉に、瑞樹の肩がびくりと震えた。


 ──番になる。


 その響きが、頭の奥で甘くとろけるように反響する。慧のαとしての存在感、匂い、声、そのすべてが瑞樹を包み込み、安心と欲望の狭間で揺れた。
 瑞樹の奥が熱く疼き、慧の熱を求めるように自然と腰をくねらせる。

「ん、けい……ここ、さわって……もっと……」

 掠れた声で呟き、瑞樹は慧にしがみついたまま身体を擦り寄せた。  
 慧が瑞樹の腰を抱き、湯気の中で唇を重ねる。舌が絡み合い、熱い唾液が混じり、瑞樹の喉から甘い声が漏れる。

「んんっ……けい、ぅ……」

 瑞樹の喘ぎ声が風呂場に響き、身体が熱く震える。  
 慧の指が瑞樹の敏感な部分をなぞり、ゆっくりと解していく。濡れた後孔を広げ、熱い蜜液を掻き回すように指が沈められていく。

「はぁ、んっ……そこ……!」  

 慧の動きに合わせて、瑞樹の腰が自然に動く。
 湯気の熱と慧の匂いが、瑞樹の理性を溶かしていた。慧の指がさらに深く探り、瑞樹の敏感な場所を刺激すると、瑞樹の声は甘く切なげに高まった。

「んん……っ! も、だめ……!」

 指が曲がり、柔らかな壁を擦られるたびに瑞樹の身体が弓なりに反る。内壁が激しく収縮し、熱い波が湧き上がっていく。慧の指を濡らしながら、瑞樹は何度も絶頂に達した。

 ◇

 お風呂を終え、瑞樹の身体はまだヒートの熱に浮かされていた。慧は瑞樹をバスタオルで優しく包み、寝室へと運ぶ。
 瑞樹の濡れた髪から滴る水滴が、慧の肩を濡らし、肌に触れるたびに小さな電流のような感覚が走る。

 慧は瑞樹をベッドに下ろす前に、そのまま抱き上げた。瑞樹の足が自然に慧の腰に絡みつき、身体が密着する。慧の硬くなった熱が瑞樹の柔らかな部分に押し付けられ、互いの欲求が疼く。

 慧は瑞樹の腰をしっかりと支え、身体を密着させたまま、ゆっくりと動き始める。熱い先端が瑞樹の内側を広げ、深く沈み込む。瑞樹の身体が慧のリズムに合わせて揺れ、熱い吐息が慧の首筋にかかる。  

「んんっ……けい、ぅ、ふかい……!」

 瑞樹の声が部屋に響き、慧の動きに合わせて身体が跳ねる。慧の手が瑞樹の背中を滑り、敏感な部分を愛撫するたび、瑞樹の甘い蜜液が溢れ出した。

 やがて、慧は瑞樹をベッドにそっと横たえ、身体を重ねる。異なる角度で愛撫が続く。慧の熱がさらに深く入り込み、瑞樹の敏感な部分を繰り返し擦る。
 瑞樹の身体はヒートの熱と慧の温もりに溶け、深い快感に溺れた。互いの汗が混じり、肌の滑る音が部屋に響いた。


 瑞樹の身体はヒートの熱に浮かされつつも、慧の匂いを強く求めていた。  
 震える手で自らネックガードを外し、白い首筋を差し出す。ミズキの花が刻まれたネックガードが、ベッドサイドで静かに輝いている。

「けい……ん、はぁ……おれ、けいの、つがいになりたい……」

 瑞樹の声は熱に濡れ、切実な願いが込められていた。慧が瑞樹の首筋にそっと触れ、優しく微笑んだ。

「瑞樹くん、僕も君のαになりたい。ずっとそばにいるよ」  

 慧の唇が瑞樹の首筋に触れ、軽く歯を立てる。動きを早くし、深く沈まれるたびに瑞樹の内側を掻き乱した。

「んぁあ……っ! けい、ぅ……!」

 瑞樹の喘ぎ声が部屋に響き、慧の匂いがさらに濃く漂う。慧の歯が首筋に食い込み、番契約の印を刻まれた瞬間、瑞樹の身体は快感と安心感に包まれた。
 慧の熱が瑞樹の奥で膨張し、激しい脈動とともに白濁が勢いよく放つ。瑞樹の身体がびくびくとふる震え、慧の熱を受け止めながら再び絶頂に達した。


 フェロモン値:329.1(番契約成立)


 ◇

 しばらく経ち、瑞樹は慧の腕の中でぐったりと横たわっていた。  
 慧の匂いに包まれ、身体の熱がようやく落ち着く。首筋に刻まれた印が、ほのかに疼くが、それは安心感に満ちていた。

「ん……けい……」

 ぼんやりと呟き、瑞樹は慧の胸に顔を埋めた。  
 慧が瑞樹の髪を撫で、耳元で囁く。

「瑞樹くん、可愛い……なんだか夢みたいだ……」

 その言葉に、瑞樹の胸がじんわり熱くなった。
 ふと、瑞樹は口を開いた。

「……こんなΩでも、けいのつがいになれた……よかった」  

 慧が瑞樹をぎゅっと抱きしめ、柔らかく笑った。

「“こんなΩ”なんかじゃない。瑞樹くんは世界で一番素敵なΩ。僕の番になってくれて嬉しいよ」

 瑞樹の目が潤み、慧の手をぎゅっと握り返した。


 部屋には余韻が静かに漂い、ふたりの絆を祝福するようにミズキの花のネックガードが柔らかな光を放っていた。
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