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第四章
25.瑞樹グラフ
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キッチンで洗い物をしていた瑞樹は、慧の匂いに包まれた空間に心地よさを感じていた。
ヒート関係なく慧の部屋に通うことが、いつの間にか“当たり前”になっていた。
「瑞樹、こっち来て!」
キッチンにまで響く弾んだ声に、瑞樹は手を拭きながら顔をしかめた。「またか……」と小さくぼやきつつも、足取りは自然と早まる。
瑞樹が部屋に入ると、パソコンとにらめっこをしている慧の姿が目に入った。モニターには、複雑なグラフと数値がずらりと並んでいた。
「なに?」
「瑞樹! これ、見て! フェロモングラフ、最高傑作!」
「またグラフか……」
瑞樹は呆れた顔で慧のデスクに近づいた。
瑞樹の名前と日付が並ぶ表計算シートが表示され、その横に日ごとのフェロモン値がグラフ化されていた。細かい注釈には『体温+0.3』『声に艶あり』など、慧独自に観測メモまで残されている。
「……なに勝手に“艶あり”とか書いてんだよ」
「だって本当に艶があったんだもん」
「観察日記じゃねーんだぞ」
瑞樹の抗議など気にも留めず、慧は興奮気味に画面を指差した。
「ほら、ここ! このグラフの緩やかな上昇カーブ、分かる? この傾向なら、来週にはヒートが来る!」
「……っ!?」
瑞樹の胸がドクンと跳ねた。
──次のヒートが来たら正式に番になる。
それはふたりの間で交わした大切な約束だった。
だが、“来週”と具体的に言われた途端、足元がぐらついたような感覚に襲われる。瑞樹の耳が赤くなり、喉がひくりと鳴った。
「な、なんでそんなに嬉しそうなんだよ」
「だって、瑞樹と一生一緒になれるって証明されるんだよ? 嬉しくない方がおかしいでしょ!」
「おまえ……っ、そういうの真顔で言うな!」
慧が最初に「君は僕の運命の番だ」と言ったとき、瑞樹は本気にしていなかった。
欠陥Ωの自分を、誰かが“選ぶ”なんてあり得ないと思っていた。
けれど今は──慧の目を見れば分かる。彼は本気で、心の底から信じている。
顔を逸らしても、頬の熱は隠しきれなかった。
慧はそんな瑞樹の表情を逃さず、そっと目を細める。
「来週、覚悟しておいてね」
「……なに勝手に予定立ててんだよ」
「予定じゃないよ、運命」
ふざけたように言いながらも、その瞳は真剣そのものだった。
瑞樹は思わず視線を逸らし、息を整える。
──来週にヒートが来る。
その時、きっと自分は、もう今までみたいに『欠陥Ω』なんて言えなくなる。
慧の部屋の空気が、少しだけ甘く感じられた。
ヒート関係なく慧の部屋に通うことが、いつの間にか“当たり前”になっていた。
「瑞樹、こっち来て!」
キッチンにまで響く弾んだ声に、瑞樹は手を拭きながら顔をしかめた。「またか……」と小さくぼやきつつも、足取りは自然と早まる。
瑞樹が部屋に入ると、パソコンとにらめっこをしている慧の姿が目に入った。モニターには、複雑なグラフと数値がずらりと並んでいた。
「なに?」
「瑞樹! これ、見て! フェロモングラフ、最高傑作!」
「またグラフか……」
瑞樹は呆れた顔で慧のデスクに近づいた。
瑞樹の名前と日付が並ぶ表計算シートが表示され、その横に日ごとのフェロモン値がグラフ化されていた。細かい注釈には『体温+0.3』『声に艶あり』など、慧独自に観測メモまで残されている。
「……なに勝手に“艶あり”とか書いてんだよ」
「だって本当に艶があったんだもん」
「観察日記じゃねーんだぞ」
瑞樹の抗議など気にも留めず、慧は興奮気味に画面を指差した。
「ほら、ここ! このグラフの緩やかな上昇カーブ、分かる? この傾向なら、来週にはヒートが来る!」
「……っ!?」
瑞樹の胸がドクンと跳ねた。
──次のヒートが来たら正式に番になる。
それはふたりの間で交わした大切な約束だった。
だが、“来週”と具体的に言われた途端、足元がぐらついたような感覚に襲われる。瑞樹の耳が赤くなり、喉がひくりと鳴った。
「な、なんでそんなに嬉しそうなんだよ」
「だって、瑞樹と一生一緒になれるって証明されるんだよ? 嬉しくない方がおかしいでしょ!」
「おまえ……っ、そういうの真顔で言うな!」
慧が最初に「君は僕の運命の番だ」と言ったとき、瑞樹は本気にしていなかった。
欠陥Ωの自分を、誰かが“選ぶ”なんてあり得ないと思っていた。
けれど今は──慧の目を見れば分かる。彼は本気で、心の底から信じている。
顔を逸らしても、頬の熱は隠しきれなかった。
慧はそんな瑞樹の表情を逃さず、そっと目を細める。
「来週、覚悟しておいてね」
「……なに勝手に予定立ててんだよ」
「予定じゃないよ、運命」
ふざけたように言いながらも、その瞳は真剣そのものだった。
瑞樹は思わず視線を逸らし、息を整える。
──来週にヒートが来る。
その時、きっと自分は、もう今までみたいに『欠陥Ω』なんて言えなくなる。
慧の部屋の空気が、少しだけ甘く感じられた。
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