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いつか手放す日のために【R-18】
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部下に命じてリオールには、独り身オメガ用の玩具を買い与えさせた。
「オメガなら番である貴方が抱けば一発で発情が治るでしょう。そんなに奥方様は発情期おつらいんですか?」
「元々避妊していて中に出してない」
「え……、何故」
アルバは視線を書類から外した。眉を顰め、こほんと咳をする。オメガの発情期は、繁殖のためのものだ。精を腹に出せば治っていく。しかし以前からリオールの発情期には熱を発散するために行為をするだけで、対症療法に過ぎなかった。根本に対する治療ではなかった。
それは親になるというおぞましさを厭うての事だった。親から碌に愛なんて与えられていない自分が、子どもに愛を与えるなんて無理だ。以前から考えている事で、今もこの考えは変わっていない。
「手放せなくなるから」
「……玩具を?」
口を噤む。俺が、彼を、手放せなくなるから。もう手放せない事は一緒かも知れないけれど、リオールに別れを言われればまた別かも知れない。
「この話は終いだ。変わらず様子を伝えるように」
「……まあ。後悔だけはせんでくださいね。家には帰ってくださいよ」
「分かった。きちんと帰る」
数日して、屋敷に帰った。屋敷に足を踏み入れた瞬間、発情期の最中だと分かった。しまった。もう終わると思って日付を開けたのに、見誤ってしまったようだ。
「おかえりなさい。……久しぶり、ですね」
「服を取りに来ただけだ。構わず寝てくれ」
香る、フェロモン。夫婦の寝室はリオールだけが使っているため、彼の匂いが立ち込めていた。甘い匂いがする。独り身用の玩具で慰めていたのだろう。服を用意して、荷物を纏める。
リオールはその様子をベッドに座り、見ていた。上にシャツを一枚羽織っただけで、扇状的に白い足が伸びている。うずうずと足を何回か組み直す。長くここにいるのは得策ではない。
「もう、行く」
「…………はい……」
リオールは足の指をもぞもぞと動かしている。少し動くだけで濃密に香る。ふうとリオールは息を吐く。
荷物を抱え、背を向けたところでアルバは背中に衝撃を受けた。きゅっとジャケットが握られる。はあ、はあ、と荒い息を吐いているのを感じる。ぎくりと背筋を伸ばした。
「……ふく、服……、ください……、その洗濯していないやつ、おれに……」
「あっ……、ああ、……うん。持っていってくれ」
立ち尽くしていたら荷物を持って行かれた。ごそごそとベッドの上に服を並べている。
「ぁ……っ、アぅ! あっ、……ぁ、ンん! ふ……っ! ぅ"!」
我慢出来ずにリオールは甘い声を上げる。目を閉じると水音が響く。はふはふと荒い息と、切ない声が上がる。アルバは扉に手をかけた。こつ、と靴を鳴らす。靴の音より小さな声で、リオールは声を上げた。
「…………一週間、一度も、イけてないんです……、手に、力入らなくて…………」
「は……?」
「おてつだい、いただけますか…………、アルバ、さま」
「オメガなら番である貴方が抱けば一発で発情が治るでしょう。そんなに奥方様は発情期おつらいんですか?」
「元々避妊していて中に出してない」
「え……、何故」
アルバは視線を書類から外した。眉を顰め、こほんと咳をする。オメガの発情期は、繁殖のためのものだ。精を腹に出せば治っていく。しかし以前からリオールの発情期には熱を発散するために行為をするだけで、対症療法に過ぎなかった。根本に対する治療ではなかった。
それは親になるというおぞましさを厭うての事だった。親から碌に愛なんて与えられていない自分が、子どもに愛を与えるなんて無理だ。以前から考えている事で、今もこの考えは変わっていない。
「手放せなくなるから」
「……玩具を?」
口を噤む。俺が、彼を、手放せなくなるから。もう手放せない事は一緒かも知れないけれど、リオールに別れを言われればまた別かも知れない。
「この話は終いだ。変わらず様子を伝えるように」
「……まあ。後悔だけはせんでくださいね。家には帰ってくださいよ」
「分かった。きちんと帰る」
数日して、屋敷に帰った。屋敷に足を踏み入れた瞬間、発情期の最中だと分かった。しまった。もう終わると思って日付を開けたのに、見誤ってしまったようだ。
「おかえりなさい。……久しぶり、ですね」
「服を取りに来ただけだ。構わず寝てくれ」
香る、フェロモン。夫婦の寝室はリオールだけが使っているため、彼の匂いが立ち込めていた。甘い匂いがする。独り身用の玩具で慰めていたのだろう。服を用意して、荷物を纏める。
リオールはその様子をベッドに座り、見ていた。上にシャツを一枚羽織っただけで、扇状的に白い足が伸びている。うずうずと足を何回か組み直す。長くここにいるのは得策ではない。
「もう、行く」
「…………はい……」
リオールは足の指をもぞもぞと動かしている。少し動くだけで濃密に香る。ふうとリオールは息を吐く。
荷物を抱え、背を向けたところでアルバは背中に衝撃を受けた。きゅっとジャケットが握られる。はあ、はあ、と荒い息を吐いているのを感じる。ぎくりと背筋を伸ばした。
「……ふく、服……、ください……、その洗濯していないやつ、おれに……」
「あっ……、ああ、……うん。持っていってくれ」
立ち尽くしていたら荷物を持って行かれた。ごそごそとベッドの上に服を並べている。
「ぁ……っ、アぅ! あっ、……ぁ、ンん! ふ……っ! ぅ"!」
我慢出来ずにリオールは甘い声を上げる。目を閉じると水音が響く。はふはふと荒い息と、切ない声が上がる。アルバは扉に手をかけた。こつ、と靴を鳴らす。靴の音より小さな声で、リオールは声を上げた。
「…………一週間、一度も、イけてないんです……、手に、力入らなくて…………」
「は……?」
「おてつだい、いただけますか…………、アルバ、さま」
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