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「誰かいる! 捕らえろ!」
光り輝いたせいで隠れていたはずのトリシャが、見つかってしまった。
「伝説は本当だったのか?! いや、そもそもお前は誰だ!」
「す、すみませんっ!」
王族が訪れる箇所に隠れていたトリシャはどうみても不審者である。
護衛騎士としては暗殺を警戒するのは当然で、トリシャは取り押さえられてしまった。
もっとも女性から熱烈なアプローチを受けることの多い王太子としては、この手のことは珍しくないので話を聞く余裕を持ってくれていたのは幸いだったが。
思った以上に大事になってしまった。
(どうしたらいいのかしら。マリエールは……?)
元はと言えばトリシャにお願いした立場のマリエールだったが、トリシャの視線を受ければ目をそらす。
「そんな恥知らずなことを私がお願いするはずないでしょう?」
そう白をきられてしまった。
トリシャが単独で王太子と伝説を成就させようとした、という話になったのだが、そんな捕らえられているトリシャに王太子は笑って縄をほどくよう命じてくれた。
「樹が光れば運命の相手? それは根本的な勘違いだよね」
「え?」
「因果関係が逆だろう? 成立するカップルだからこそ現象が起きるのであって、結果だけが起きても恋が起きるわけではないんだし」
(……それはそうよね)
王太子の言葉を聞いて、もっともだ、とトリシャは頷いていた。
聖なる樹を光らせてしまったけれど、別にトリシャ自体が王太子殿下に恋をしているとは思えないし、と思っていたからだ。
理路整然と説明する王太子に対して、冷静だなぁと感心すらしてしまった。
しかし、王太子の話はそこで終わらなかった。
「でも、私はこの伝説をこの国の規範になる者として守っておかないといけないと思うんだよね。それに、そこまでしてでも私の心を得たいと願ってくれた君の気持ちが嬉しい」
「……はい?」
王太子はトリシャを優しく見つめると片膝をつき、トリシャの手の甲にキスを落とす。
「君は私の運命の人だ。どうか私と結婚してください」
因果関係がどうのとか言っておきながら、あっさりと手のひらを返している王太子殿下にトリシャは目をぱちぱちさせた。
王太子はそんなトリシャにほほ笑んで手を伸ばす。この手をとってほしい、と。
王太子は貴族しか持ちえない潤沢な魔力を行使して樹に光をともし、自身も光り輝いていておろおろしていたトリシャに一目惚れをしてしまったのだ。
その後も問題を起こしたとはいえ、その後は自分の行動を反省して慎み深くふるまうトリシャにますます好感度が上がったのである。今まで、そのように素直な人は、彼の周りにいなかったから。
一方、その流れに憤懣やるかたないのはマリエールの方だった。
「ひどい、ひどいわ、トリシャ! 絶対に許さないんだから!」
(なんでトリシャが王太子様とうまくいくのよ!)
マリエール視点では自分のアイディアを盗んで、トリシャが王太子に上手く取り入ったとしか思えない。
自分が狙っていた玉の輿を目の前で、しかも自分の下僕のように思っていたトリシャに奪われたということでますます悔しさが倍増してしまっている。
(絶対に取り返してやるんだから!)
周囲にトリシャが親友である自分のものであった王太子を策略で奪ったという悪い噂を流したけれど、奪うもなにも、王太子とマリエールでは元々何もなかった間柄であったし、それまで恋人がいるという噂の1つもなかった王太子殿下だということで、マリエールの話の方が嘘だろうと、あっさりと見切られてしまっていた。
そもそもマリエールの評判自体が悪かったのもあったのだ。
マリエールの嫉妬にかられた言動は、未来の王太子妃の名誉を傷つけたということで、マリエールの実家に対して正式に謝罪が要求されることとなり、それまでワガママ娘を放置していたツケが回ることになった。
結果として、マリエールのプライドも社交界での地位も、王家からの心証も地に落ちることになってしまっていた。
一方、突然の展開にびっくりしていたトリシャだったが、結局は「まぁ、いいか」と王太子からの求愛を受け入れることになった。元々こだわらない性格だったので。
あんな唐突な出会い方をしたとはいえ、王太子は自分を愛して優しくしてくれているのに代わりはなかったし、トリシャも彼を慕うようになっていたというのもある。
その後、ロイヤルカップルを繋いだ聖なる樹として、あの伝説がいっそう有名になっていったのは言うまでもない。
光り輝いたせいで隠れていたはずのトリシャが、見つかってしまった。
「伝説は本当だったのか?! いや、そもそもお前は誰だ!」
「す、すみませんっ!」
王族が訪れる箇所に隠れていたトリシャはどうみても不審者である。
護衛騎士としては暗殺を警戒するのは当然で、トリシャは取り押さえられてしまった。
もっとも女性から熱烈なアプローチを受けることの多い王太子としては、この手のことは珍しくないので話を聞く余裕を持ってくれていたのは幸いだったが。
思った以上に大事になってしまった。
(どうしたらいいのかしら。マリエールは……?)
元はと言えばトリシャにお願いした立場のマリエールだったが、トリシャの視線を受ければ目をそらす。
「そんな恥知らずなことを私がお願いするはずないでしょう?」
そう白をきられてしまった。
トリシャが単独で王太子と伝説を成就させようとした、という話になったのだが、そんな捕らえられているトリシャに王太子は笑って縄をほどくよう命じてくれた。
「樹が光れば運命の相手? それは根本的な勘違いだよね」
「え?」
「因果関係が逆だろう? 成立するカップルだからこそ現象が起きるのであって、結果だけが起きても恋が起きるわけではないんだし」
(……それはそうよね)
王太子の言葉を聞いて、もっともだ、とトリシャは頷いていた。
聖なる樹を光らせてしまったけれど、別にトリシャ自体が王太子殿下に恋をしているとは思えないし、と思っていたからだ。
理路整然と説明する王太子に対して、冷静だなぁと感心すらしてしまった。
しかし、王太子の話はそこで終わらなかった。
「でも、私はこの伝説をこの国の規範になる者として守っておかないといけないと思うんだよね。それに、そこまでしてでも私の心を得たいと願ってくれた君の気持ちが嬉しい」
「……はい?」
王太子はトリシャを優しく見つめると片膝をつき、トリシャの手の甲にキスを落とす。
「君は私の運命の人だ。どうか私と結婚してください」
因果関係がどうのとか言っておきながら、あっさりと手のひらを返している王太子殿下にトリシャは目をぱちぱちさせた。
王太子はそんなトリシャにほほ笑んで手を伸ばす。この手をとってほしい、と。
王太子は貴族しか持ちえない潤沢な魔力を行使して樹に光をともし、自身も光り輝いていておろおろしていたトリシャに一目惚れをしてしまったのだ。
その後も問題を起こしたとはいえ、その後は自分の行動を反省して慎み深くふるまうトリシャにますます好感度が上がったのである。今まで、そのように素直な人は、彼の周りにいなかったから。
一方、その流れに憤懣やるかたないのはマリエールの方だった。
「ひどい、ひどいわ、トリシャ! 絶対に許さないんだから!」
(なんでトリシャが王太子様とうまくいくのよ!)
マリエール視点では自分のアイディアを盗んで、トリシャが王太子に上手く取り入ったとしか思えない。
自分が狙っていた玉の輿を目の前で、しかも自分の下僕のように思っていたトリシャに奪われたということでますます悔しさが倍増してしまっている。
(絶対に取り返してやるんだから!)
周囲にトリシャが親友である自分のものであった王太子を策略で奪ったという悪い噂を流したけれど、奪うもなにも、王太子とマリエールでは元々何もなかった間柄であったし、それまで恋人がいるという噂の1つもなかった王太子殿下だということで、マリエールの話の方が嘘だろうと、あっさりと見切られてしまっていた。
そもそもマリエールの評判自体が悪かったのもあったのだ。
マリエールの嫉妬にかられた言動は、未来の王太子妃の名誉を傷つけたということで、マリエールの実家に対して正式に謝罪が要求されることとなり、それまでワガママ娘を放置していたツケが回ることになった。
結果として、マリエールのプライドも社交界での地位も、王家からの心証も地に落ちることになってしまっていた。
一方、突然の展開にびっくりしていたトリシャだったが、結局は「まぁ、いいか」と王太子からの求愛を受け入れることになった。元々こだわらない性格だったので。
あんな唐突な出会い方をしたとはいえ、王太子は自分を愛して優しくしてくれているのに代わりはなかったし、トリシャも彼を慕うようになっていたというのもある。
その後、ロイヤルカップルを繋いだ聖なる樹として、あの伝説がいっそう有名になっていったのは言うまでもない。
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