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――9年後。
二人はそのまま静かに成長をしていった。
メルディナは異性にかしずかれる自分に自信を持ったまま育ち、それに引き換えクレアの容姿は相変わらずの十人並みのままだった。
メルディナの周囲の男子を振り回す行為はなりをひそめることもなく、そのまま結婚適齢期を迎えることになった。
美しく育ったメルディナのところには、山のように縁談が……と思いきやまるで静まりかえっていた。
はじめのうちはメルディナも「なんで私には縁談が来ないのかしら。私の美しさに怖気づいてしまっているのかしらね」なんてのんきなことを言ってたが、ほどなくしてクレアが成人して、縁談が一気に来るようになってようやく顔色を変えた。
なぜこのようなことが起きたかというと、いつまでも精神的に成長しないメルディナに愛想が尽きて、異性はみな去っていってしまったのだ。
十代の始めの頃までは、男子の中ではメルディナのようにワガママにふるまう娘が分かりやすくてよかったのだ。
しかし砂糖菓子のように可愛らしい見た目と、年齢が次第にちぐはぐになってくると、子供のうちは可愛さで許されたことも、いつまでも若い頃のように周囲は見てくれない。
そして男が恋人に求めることと、結婚相手に求めるものは違う。貴族の夫人となれば求められる素養はさらに多い。
可愛くて手に入れたことで男同士のプライドを満たしてくれる女より、欲望や安心を満たしてくれる手近な女の方がいい。
それに気づいた男たちがメルディナを見限って、そしてライバルがいなくなったことに気づいた男たちが、メルディナを手に入れてもうまみがないことに勘づいて歩み去った。
時の流れとは残酷なものである。
自分をちやほやしてくれる男が消え失せたことから、メルディナは初めて焦るということを覚えた。
ようやく自分の間違いと出遅れに気付いて子供っぽいデザインのドレスに袖を通すことを止めたのだったが。
「私がイメージチェンジして本気になれば、男は食いついてくるはずだわ。可哀想だけれど、クレアよりいいと証明しちゃうことになるわね」
自分の美貌に自信を持っているメルディナは妹に来た縁談を狙い始めた。
貴族にくる縁談は家同士のもの。要するにメルディナが結婚するのでも構わないのだ。
しかし、メルディナは気づいていなかった。
クレアに縁談を申し込んできた中には、過去にメルディナと噂になっていた男も多かった。
過去にメルディナにフラれ、プライドを傷つけられた相手はメルディナがいくら言い寄っても本気にせず、警戒して言いなりになるはずもない。
そして過去にメルディナに興味を持たなかった男は、そもそもメルディナよりクレアのような女がタイプなわけで彼女に目もくれなかった。
焦るメルディナをよそに、姉と比較されることでかえって株が上がってしまったクレアは困惑していた。
「森で足をくじいた俺を助けてくれただろう? 君はあの時から俺のこと、好きだったんだよな?」
「ごめんなさい……覚えてないわ。貴方以外にもそんな人はたくさんいたから」
「大人になって君の良さが分かってきたよ。僕が好きだったのは君の方だったんだね、クレア……」
そんな風にメルディナにとっては日常茶飯事だったことを逆手に取り、勘違いされて言い寄られることも増えてきた。
クレアからしたら相手の名前すら憶えてない姉の取り巻きその1が、どうしてそんな図々しい勘違いができるのか、呆れを通り越して恐怖すら覚える。
彼らがメルディナの美貌と愛想に惹かれて媚びを売っていた姿を覚えているクレアは、手のひらをかえすようにすり寄ってこられても、と自分に群がってくる彼らに辟易としていたのだったが。
その中に、今までまるっきり縁がなかったはずの飛び切りの大物からの縁談が舞い降りた。
――9年後。
二人はそのまま静かに成長をしていった。
メルディナは異性にかしずかれる自分に自信を持ったまま育ち、それに引き換えクレアの容姿は相変わらずの十人並みのままだった。
メルディナの周囲の男子を振り回す行為はなりをひそめることもなく、そのまま結婚適齢期を迎えることになった。
美しく育ったメルディナのところには、山のように縁談が……と思いきやまるで静まりかえっていた。
はじめのうちはメルディナも「なんで私には縁談が来ないのかしら。私の美しさに怖気づいてしまっているのかしらね」なんてのんきなことを言ってたが、ほどなくしてクレアが成人して、縁談が一気に来るようになってようやく顔色を変えた。
なぜこのようなことが起きたかというと、いつまでも精神的に成長しないメルディナに愛想が尽きて、異性はみな去っていってしまったのだ。
十代の始めの頃までは、男子の中ではメルディナのようにワガママにふるまう娘が分かりやすくてよかったのだ。
しかし砂糖菓子のように可愛らしい見た目と、年齢が次第にちぐはぐになってくると、子供のうちは可愛さで許されたことも、いつまでも若い頃のように周囲は見てくれない。
そして男が恋人に求めることと、結婚相手に求めるものは違う。貴族の夫人となれば求められる素養はさらに多い。
可愛くて手に入れたことで男同士のプライドを満たしてくれる女より、欲望や安心を満たしてくれる手近な女の方がいい。
それに気づいた男たちがメルディナを見限って、そしてライバルがいなくなったことに気づいた男たちが、メルディナを手に入れてもうまみがないことに勘づいて歩み去った。
時の流れとは残酷なものである。
自分をちやほやしてくれる男が消え失せたことから、メルディナは初めて焦るということを覚えた。
ようやく自分の間違いと出遅れに気付いて子供っぽいデザインのドレスに袖を通すことを止めたのだったが。
「私がイメージチェンジして本気になれば、男は食いついてくるはずだわ。可哀想だけれど、クレアよりいいと証明しちゃうことになるわね」
自分の美貌に自信を持っているメルディナは妹に来た縁談を狙い始めた。
貴族にくる縁談は家同士のもの。要するにメルディナが結婚するのでも構わないのだ。
しかし、メルディナは気づいていなかった。
クレアに縁談を申し込んできた中には、過去にメルディナと噂になっていた男も多かった。
過去にメルディナにフラれ、プライドを傷つけられた相手はメルディナがいくら言い寄っても本気にせず、警戒して言いなりになるはずもない。
そして過去にメルディナに興味を持たなかった男は、そもそもメルディナよりクレアのような女がタイプなわけで彼女に目もくれなかった。
焦るメルディナをよそに、姉と比較されることでかえって株が上がってしまったクレアは困惑していた。
「森で足をくじいた俺を助けてくれただろう? 君はあの時から俺のこと、好きだったんだよな?」
「ごめんなさい……覚えてないわ。貴方以外にもそんな人はたくさんいたから」
「大人になって君の良さが分かってきたよ。僕が好きだったのは君の方だったんだね、クレア……」
そんな風にメルディナにとっては日常茶飯事だったことを逆手に取り、勘違いされて言い寄られることも増えてきた。
クレアからしたら相手の名前すら憶えてない姉の取り巻きその1が、どうしてそんな図々しい勘違いができるのか、呆れを通り越して恐怖すら覚える。
彼らがメルディナの美貌と愛想に惹かれて媚びを売っていた姿を覚えているクレアは、手のひらをかえすようにすり寄ってこられても、と自分に群がってくる彼らに辟易としていたのだったが。
その中に、今までまるっきり縁がなかったはずの飛び切りの大物からの縁談が舞い降りた。
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