別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾

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side慧弥

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生まれた頃からずっと、欲しいなって思った物はすぐ手に入った。例えそれが、他人の物でも。
小学生の頃、仲のいいαの女の子が持っていたぬいぐるみを見て、ただ自然に僕は感想を言った。

「それ、めっちゃ可愛いね」

「!ありがとう、お気に入りなの」

「そうなんだ」

「でも、慶弥くんにあげるわ」

そうしてそのぬいぐるみは僕の物になった。白いうさぎの大きなぬいぐるみ。黒い目がパッチリしていて手触りもいいし、汚れも無い。
部屋に置いて眺める事数日、僕は段々それに興味がなくなり、それを使用人に捨てるよう言い付けた。

「宜しいのですか、ご友人からのプレゼントでしょう?」

「いいよ、いらないから。なんなら君にあげる。きっと高く売れるよ」

中学生になって、バース姓が分かって、周りの空気が浮わつき始めた。聞くとカップルが増えたらしい。
αはβやΩの憧れの対象になり、も良く大勢に視線を向けられた。男女どちらも、何人にも告白されたが誰も彼も魅力的には感じず、付き合う理由も無かった為全て断る。
そんな日々を続けていたある日、βの友人がとても嬉しそうな顔で言ってきた。

「俺さ、昨日ついに彼女出来たんだ!」

パックのジュースを飲んでいる途中だった為それを止めて祝いの言葉を述べようとすると、隣に立っていた幼馴染みの御子柴涼みこしばりょうが先に口を開いた。

「おぉ、良かったな。どんな子?」

「へへ、βなんだけど大人しい性格でいい奴なんだよ。絶対浮気とかしないタイプで、今朝もわざわざ、お揃いのキーホルダー渡しに来てな」

「健気で可愛いね」

僕がそう言うと、友人は満点の笑みをパッと変えて少し驚いたような表情になりこちらを見つめてくる。どうしたんだろうと思っていると、1人の女の子がこちらに来て放心している様子の彼に話し掛けた。

小野おのくん、今いい?」

「あ、おう」

赤い髪のショートカットに眼鏡をかけた女の子。
少し頬を赤くした友人は、へへんと自慢げな様子で俺達に向き合った。

「紹介するぜ。俺の彼女、黒阪くろさかだ」

「はじめまして」

控え目に微笑む彼女は派手好きな友人とは真反対と言った雰囲気だった。少し友人と話すとすぐ去っていき、少人数の女子の輪に入っていく。
それを見届けた小野は何かを飲み込むような仕草をした後、覚悟を決めた表情でこちらを見た。

「……なぁ、霜月。お前あいつ見てどう思った?」

「え?どうって、お淑やかって感じでいい子だなって思ったけど」

「……そうか……。じゃあ、やるよ、あいつ。お前と付き合えるならあいつも本望だろ」

そうして僕は人生で初めて女の子と付き合った。御子柴は信じられない目でこちらを見ていたが、くれると言うなら貰うべきだろう。
黒阪と付き合い始めて分かったのは、大人しそうに見えたのは猫を被っていたからだと言う事。僕に近付きたかったから、小野と付き合ったんだと。
童貞は彼女で卒業した、ピアスも開けて貰った、二の腕に刺青も入れられた。何でも僕は周りから“チャラく”見られているらしい。だから足りない部分を足したと。これでやっと理想の彼氏になった、みんなに自慢できると誇らしげに笑う彼女に僕はいい物を手に入れたと思った。そして告げた。

「僕達もう別れよう。今までありがとう、楽しかった」

「……え?な、なんで。わたし達これからでしょ?」

「え、これから?うーん、でも、もういらないから」

目を見開き唖然とする彼女を家まで送って僕は黒阪と別れた。良く分からないけど、いらないと思った物を捨てても僕は満足感に包まれていたし後悔もしていない。
時は過ぎて高等科に進学した。それまで通っていた学校では高等科になると校舎がαβΩに分けられる。何でも思春期の学生達が問題を起こしまくるからと。
αの校舎ではすぐにカーストのような物が出来て、上の者は良くこの棟へ恋仲のΩを連れてきていた。僕も上位に位置していたと思うが時間が経ってもそんな気は微塵も起きない。
彼女の1人も居ない俺を見かねた御子柴が合コンをセッティングした。
同じ学校の生徒は俺と御子柴だけ、あとは他校の女子や男子を集めたらしい。場所は合コンの定番らしいカラオケで、俺の両端にはΩの女の子が座っていた。

「慧弥くんって言うんだぁ、かっこい~!」

「ありがと~」

「すんごいイケメンだねっ!あたしぃ、こんなにイケメンな人今まで見た事なぁい」

「褒めすぎ」

腕に胸を押し付けてくる彼女達に僕は笑顔を浮かべて応答する。御子柴を除く他の男子からの視線が痛い、女子全員が俺の周りに集まっているからだ。最初は御子柴の方に何人か行っていたが、あまりに熱狂して歌うものだからみんな引いていた。
そんな彼らを鬱陶しく思い始めた頃、ちょうどドリンクが無くなって好機と僕はそれを言い訳に1人で颯爽と部屋から出る。付いてこようとする女子達も他の男達が必死の思いで引き留めていたから内心安堵した。
少し疲れたと眉間に触れながらドリンクバーの前に立つ。御子柴が先程美味しそうに飲んでいたジンジャエールにしようか、それとも女の子が勧めてきたコーラにしようか。
迷っていると、頭がくらっと立ちくらみがした。座りたくて、早く戻ろうと僕はジンジャエールを選びボタンを押す。その時だった。

「大丈夫すか?」
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感想 2

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みんなの感想(2件)

まぁさ
2025.08.11 まぁさ

攻め視点きてめちゃくちゃ浮かれています!!!
また続きが読めて嬉しいです!!!

2025.08.11 翡翠飾

感想ありがとうございます(^ー^)
喜んで頂けてこちらも嬉しいです。

解除
おなご
2025.08.09 おなご

本当にこの作品が好きです!
続き楽しみに待ってます!

2025.08.09 翡翠飾

ありがとうございます(*^^*)
とても嬉しいです!

解除

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