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翌朝、テオドールが目を覚ますと目の前にピンクのカエル、いやウパルパのピアディがいた。
「起きたのか。兄よ」
「ピアディ殿!? ど、どうして私の部屋に君がいるんだ?」
いつの間に部屋に忍び込んだのか?
「どうしたもこうしたもないのだー! そなたたちの手先がケイの部屋を襲撃したのだぞ、われもケイも怖くて一睡もできなかった!」
「し、襲撃だと!? ……母上の配下か!」
(お話だけしてすぐ帰っていったけど! ここは少し話を盛って兄の危機感を煽るのだ)
「お陰でわれ寝不足! まだ幼くいたいけなウパルパから甘美な眠りを奪うとは許し難しー!」
普段のベビーピンク色のボディを真っ赤に染めて、ピアディが怒っている。
テオドールは泡を食って、自分付きの侍従を呼ぶ間も惜しみ、慌てて寝巻きから服を着替えた。
「何ということだ。ケイは無事なのか?」
「無事だけど、睡眠不足で具合が悪そうなのだ。お母上に任せてわれは抗議しに来たのだ」
「教えてくれて助かった。私は母を問い正しに行く。お前はケイの元に戻ってくれ」
「ノー! われも連れて行けなのだ!」
ぴょんっと驚きの跳躍力で、ピアディはテオドールの上着にしがみついた。
そのまま、よじよじとサイドのポケットの中にインした。
顔だけ出して自慢げにテオドールを見上げてくる。
「………………お前、なぜ私のポケットに?」
「兄よ。われは話に聞くそなたの母がどのような人物か、この目と耳で確認したいのだ。母に会いに行くならわれも連れていくのだ」
「……いいだろう。だが母上はカエルがお嫌いだ。姿を見せぬように」
「カエルじゃないもん。ウパルパだもん!」
「……はいはい」
先触れを出す時間も惜しかった。
母セオドラの部屋を訪ねると、まだ早い時刻だが母は起きて、いつも通り銀の髪を結い上げ、美しく身だしなみを整えた後だった。
前置きもなく、テオドールは本題を切り出した。
「母上、ケイの部屋にそちらの侍女を向かわせたそうですね。もうやめてください。ケイに酷いことをするのは……」
「あら、何のことかしら?」
扇で口元を隠しながら、セオドラはしらばっくれていふ。
「ケイは、私の弟です。あの子に意地悪をするのは……」
「黙りなさい!」
セオドラの叫びが部屋に響いた。
テオドールは身を竦めた。
「妾の子ごときに絆されるとはね。見損なったわ、テオドール」
セオドラの赤い瞳は狂気と憎悪にギラギラと輝いている。
「ああ、だめ、だめ、もう耐えられない……あの女も、あの女の息子も……消えろ、消えろ、消えてしまえ……!」
(母上……どうして……)
美しく結い上げた頭を振り乱す母を目の当たりにして、テオドールは胸が痛んだ。
(前の人生でも、同じ光景を見た……)
(母上が嫉妬と憎悪に囚われ、狂気に堕ちていく姿を……)
「母上。教えてください。あなたがポーラ様やケイを憎む理由を。そこまで強い恨みには理由があるはずです」
「理由? そんなの」
セオドラの赤い瞳が暗く澱んだ。
「ポーラ。あの女さえいなければ、わたくしはユヴェルナート様に愛された!」
狂気に満ちた声が、部屋中に響いた。
セオドラは本気でそう思っているのだ。
(母上と父上は、王命による政略結婚だと聞いている。父上の愛は……ポーラ様にしかない)
テオドールは母の狂気を、恐怖と悲しみを持って見つめていた。
「起きたのか。兄よ」
「ピアディ殿!? ど、どうして私の部屋に君がいるんだ?」
いつの間に部屋に忍び込んだのか?
「どうしたもこうしたもないのだー! そなたたちの手先がケイの部屋を襲撃したのだぞ、われもケイも怖くて一睡もできなかった!」
「し、襲撃だと!? ……母上の配下か!」
(お話だけしてすぐ帰っていったけど! ここは少し話を盛って兄の危機感を煽るのだ)
「お陰でわれ寝不足! まだ幼くいたいけなウパルパから甘美な眠りを奪うとは許し難しー!」
普段のベビーピンク色のボディを真っ赤に染めて、ピアディが怒っている。
テオドールは泡を食って、自分付きの侍従を呼ぶ間も惜しみ、慌てて寝巻きから服を着替えた。
「何ということだ。ケイは無事なのか?」
「無事だけど、睡眠不足で具合が悪そうなのだ。お母上に任せてわれは抗議しに来たのだ」
「教えてくれて助かった。私は母を問い正しに行く。お前はケイの元に戻ってくれ」
「ノー! われも連れて行けなのだ!」
ぴょんっと驚きの跳躍力で、ピアディはテオドールの上着にしがみついた。
そのまま、よじよじとサイドのポケットの中にインした。
顔だけ出して自慢げにテオドールを見上げてくる。
「………………お前、なぜ私のポケットに?」
「兄よ。われは話に聞くそなたの母がどのような人物か、この目と耳で確認したいのだ。母に会いに行くならわれも連れていくのだ」
「……いいだろう。だが母上はカエルがお嫌いだ。姿を見せぬように」
「カエルじゃないもん。ウパルパだもん!」
「……はいはい」
先触れを出す時間も惜しかった。
母セオドラの部屋を訪ねると、まだ早い時刻だが母は起きて、いつも通り銀の髪を結い上げ、美しく身だしなみを整えた後だった。
前置きもなく、テオドールは本題を切り出した。
「母上、ケイの部屋にそちらの侍女を向かわせたそうですね。もうやめてください。ケイに酷いことをするのは……」
「あら、何のことかしら?」
扇で口元を隠しながら、セオドラはしらばっくれていふ。
「ケイは、私の弟です。あの子に意地悪をするのは……」
「黙りなさい!」
セオドラの叫びが部屋に響いた。
テオドールは身を竦めた。
「妾の子ごときに絆されるとはね。見損なったわ、テオドール」
セオドラの赤い瞳は狂気と憎悪にギラギラと輝いている。
「ああ、だめ、だめ、もう耐えられない……あの女も、あの女の息子も……消えろ、消えろ、消えてしまえ……!」
(母上……どうして……)
美しく結い上げた頭を振り乱す母を目の当たりにして、テオドールは胸が痛んだ。
(前の人生でも、同じ光景を見た……)
(母上が嫉妬と憎悪に囚われ、狂気に堕ちていく姿を……)
「母上。教えてください。あなたがポーラ様やケイを憎む理由を。そこまで強い恨みには理由があるはずです」
「理由? そんなの」
セオドラの赤い瞳が暗く澱んだ。
「ポーラ。あの女さえいなければ、わたくしはユヴェルナート様に愛された!」
狂気に満ちた声が、部屋中に響いた。
セオドラは本気でそう思っているのだ。
(母上と父上は、王命による政略結婚だと聞いている。父上の愛は……ポーラ様にしかない)
テオドールは母の狂気を、恐怖と悲しみを持って見つめていた。
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