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「回帰って。じゃあ、兄さんは本当に」
「ああ。見ていてすぐわかったよ。お前もあの悲劇から――時を戻って来たのだろう?」
今までの疑問への答え合わせだった。
「悪かった。詳しい話はこのウパルパから聞いていたんだ。もっと早く情報交換できていたら良かったんだが」
「相棒ー! われを置いていくとは相棒失格なのだ、ちゃんとポッケに入れて欲しいのだ!」
ベビーピンクのウパルパが兄の上着のポケットから飛び出してきた。
――ピアディだ。
「よちよち本邸に向かって歩いてるところを保護したんだ。ここで騒いでいたら母上に気づかれる。私の部屋に行こう」
回帰後、初めて入る兄の部屋で、ケイは兄テオドールが祖父王から教えられた話を聞いた。
正妻セオドラは、父ユヴェルナートが初恋の人であったこと。
政略結婚で正妻になったが、夫に最愛の女性ポーラがいることも、愛されない結婚であることも知らなかったこと。
セオドラが嫉妬と憎しみに囚われ、狂気に堕ちた理由は、ケイも初めて知った。
そして国王が、勇者の末裔であるアルトレイ伯爵家に王女を降嫁させた理由についてもだ。
「お祖父様は母上に事実を伝えなかったことを後悔しておられた……。はは、私たちはいったい誰を責めればいいのだろうな」
兄が自虐げに笑った。
冷静に考えれば、国王から始まって、父、母、セオドラ、彼らすべてに問題があった。
国王は、王家の思惑を、王女セオドラと伯爵ユヴェルナートに押し付けた。
特に、もともと婚約者がいたユヴェルナートとポーラを引き裂いた、一番の元凶ともいえる。
セオドラはやはり事情があったにせよ、ケイと母ポーラを虐げた事実は消えない。
ましてや回帰前には二人を死まで追い込んでいる。
今回は、――母を流産にまで追い込んでいる。
彼女のことはケイはやはり許せそうになかった。
父も、結局は王命の王女セオドラとの結婚を受け入れて、嫡男テオドールを儲けている。
正妻と妾が同じ敷地内で暮らして仲良くやれるわけがない。妻たちの管理を徹底すべきだったはずだ。
(お母様も……ああ、そうか。元はお父様の婚約者とはいえ、正妻となったセオドラのほうが正しい立場だ。妾に落ちた自分が引くべきだとずっと思ってたから、あんなに遠慮がちだったんだな……)
「じゃあ、俺は誰を恨めばいいんだ?」
ケイの呟きに、テオドールは悲しげに目を伏せた。
何を言っても綺麗事にしかならない気がしたからだ。
代わりに、テオドールは優しくケイを抱きしめた。
回帰前も含め、初めての兄から弟への抱擁だった。
「俺も、お前も、苦しいけれど……それが真実だ。でも、だからこそ、俺たちは憎しみの連鎖を断ち切るんだ」
ケイは涙を流しながら、自分からもテオドールに抱きついた。
「俺は……俺は……!」
「ああ。見ていてすぐわかったよ。お前もあの悲劇から――時を戻って来たのだろう?」
今までの疑問への答え合わせだった。
「悪かった。詳しい話はこのウパルパから聞いていたんだ。もっと早く情報交換できていたら良かったんだが」
「相棒ー! われを置いていくとは相棒失格なのだ、ちゃんとポッケに入れて欲しいのだ!」
ベビーピンクのウパルパが兄の上着のポケットから飛び出してきた。
――ピアディだ。
「よちよち本邸に向かって歩いてるところを保護したんだ。ここで騒いでいたら母上に気づかれる。私の部屋に行こう」
回帰後、初めて入る兄の部屋で、ケイは兄テオドールが祖父王から教えられた話を聞いた。
正妻セオドラは、父ユヴェルナートが初恋の人であったこと。
政略結婚で正妻になったが、夫に最愛の女性ポーラがいることも、愛されない結婚であることも知らなかったこと。
セオドラが嫉妬と憎しみに囚われ、狂気に堕ちた理由は、ケイも初めて知った。
そして国王が、勇者の末裔であるアルトレイ伯爵家に王女を降嫁させた理由についてもだ。
「お祖父様は母上に事実を伝えなかったことを後悔しておられた……。はは、私たちはいったい誰を責めればいいのだろうな」
兄が自虐げに笑った。
冷静に考えれば、国王から始まって、父、母、セオドラ、彼らすべてに問題があった。
国王は、王家の思惑を、王女セオドラと伯爵ユヴェルナートに押し付けた。
特に、もともと婚約者がいたユヴェルナートとポーラを引き裂いた、一番の元凶ともいえる。
セオドラはやはり事情があったにせよ、ケイと母ポーラを虐げた事実は消えない。
ましてや回帰前には二人を死まで追い込んでいる。
今回は、――母を流産にまで追い込んでいる。
彼女のことはケイはやはり許せそうになかった。
父も、結局は王命の王女セオドラとの結婚を受け入れて、嫡男テオドールを儲けている。
正妻と妾が同じ敷地内で暮らして仲良くやれるわけがない。妻たちの管理を徹底すべきだったはずだ。
(お母様も……ああ、そうか。元はお父様の婚約者とはいえ、正妻となったセオドラのほうが正しい立場だ。妾に落ちた自分が引くべきだとずっと思ってたから、あんなに遠慮がちだったんだな……)
「じゃあ、俺は誰を恨めばいいんだ?」
ケイの呟きに、テオドールは悲しげに目を伏せた。
何を言っても綺麗事にしかならない気がしたからだ。
代わりに、テオドールは優しくケイを抱きしめた。
回帰前も含め、初めての兄から弟への抱擁だった。
「俺も、お前も、苦しいけれど……それが真実だ。でも、だからこそ、俺たちは憎しみの連鎖を断ち切るんだ」
ケイは涙を流しながら、自分からもテオドールに抱きついた。
「俺は……俺は……!」
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