米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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魔人襲来

魔人襲来⑤

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 シルヴィアは昨日と変わらない人好きのする笑顔で微笑む。

「冒険者ギルドは特殊な結界を張っているから、中にいれば安全に過ごせるんだよ。あ、公爵。使い魔有難う」

 彼女が手の平を上に向けると、白い文鳥の様な生き物が現れ、公爵の元にパタパタと飛んで行った。

「道案内は、バッチリだったみたいだね。良かった」

「それと、道中で貴方の従者君を拾ったよ。満身創痍でちょっと心配な有様だった」

「チェスター君を助けてくれたのか。有難う。彼は今どこに?」

「この近くに冒険者ギルドの連中を固めてるから、彼等に預けて来たよ。無理に連れて来て、何かあると大変だからね」

 公爵の従者は自分達を逃してくれた。恩を感じている事もあり、彼の怪我がどの程度だったのか気になるところだ。

「そうなんだ。心配だね……」

「魔法で治癒させてるから、一、二時間程で動けるくらいまでには回復するだろう。心配いらないよ。それにしてもこの建物? 車輪が付いている所を見ると、動くのかな? 凄すぎないか? これ程頑強な外装と、豪華な内装は初めてみたよ」

 シルヴィアもまた、公爵同様、興味深げにキャンプカーを観察している。

「私が住んでいた世界でも、ここまでのキャンプカーは珍しかったよ。たぶん、レアネーのどの宿屋より住み心地は良い気がする」

「うん。治めている僕が言う事じゃないけど、あの街の宿屋は馬小屋に毛が生えたものだからね。泊まらない方がいい」

「ど田舎だから仕方がないさ。これから発展させていこう。そのために、まずは魔人から街を取り戻さないといけないね」

 力強く言葉を放つシルヴィアが輝いて見える。こういう前向きなお姉さんは大好きだ。

「シルヴィアさんが状況に慣れてそうだから、なんかホッとする。来てくれてよかった」

「冒険者ギルトを管理していると、毎日の様に事件が起こるからね。でも余裕があるのは、私だけじゃない。公爵を見てごらん? あの緊張感の無い顔、普通の神経の持ち主じゃ出来ない」

 ディスペンサーから手の平の上にデトックスウォーターを注いでいた公爵は、確かに緊急時とは思えない程のほほんとした表情だ。彼は指摘されてもどうという事も無いのか、締まりの無い笑みを浮かべた。

「え、めちゃビビってるよ?」

 どう見ても怖がってるようには見えない。彼みたいな人は尻を叩かれないと、真面目にならないのかもしれない。
 しょうがなく、マリはさっきの話を持ち出す事にした。

「公爵、さっき、王都の冒険者ギルドに応援を頼むかどうかについてシルヴィアさんと相談するって言ってたよね。やっぱりその方向でいくの?」

「うん。シルヴィア、異論がないなら直ぐにでも向こうに応援を頼んでくれない?」

 公爵は漸く少し表情を引き締めた。

「実はもう連絡したよ。魔人討伐が可能なSランクの冒険者が数人フリーみたいだから、こちらに向かわせる様に頼んでおいた。ただ、向こうも瘴気が関係する事件が立て続けに起きているから、術者の数が不足気味なんだよ」

 魔人の討伐が出来そうな人達がこちらに向かっている事を知り、マリは喜んだのだが、続くシルヴィアの言葉が引っかかる。

「それって、魔人を倒せたとしても、おかしくなっている住人達は治せないって事?」

「魔人を倒したら、魅了の術は解けると思うよ。ただね、魔人の多くは大量の瘴気をばら撒く。ライフワークみたいに、ね。正体を現した以上、遠慮もなくなるだろう。瘴気にあてられた住人は、魔人が居なくなった後も理性を無くしたケダモノに成り果てる可能性が高いだろうね」

 公爵の言葉を引き継ぎ、試験体066が、言葉を足す。

「瘴気に脳が犯された人間は、魔人に統率されている方がマシかも……」

 二人の説明に、マリは「成る程……」と頷く。魔人を倒せたとしても、瘴気の影響を受けたセバスちゃんを連れ戻すのは、リスキーな事なのかもしれない。

「瘴気の治療みたいなのを、冒険者ギルドの人達だけじゃ、無理って事だったよね? じゃあさ、それを他の組織に頼んだらいいんじゃないかな?」

 マリが提案してみると、シルヴィアは「それがいいと思う」と同意してくれた。

「ここから馬の脚で2日程の距離に土の神殿がある。そこには神聖魔法の使い手が大勢いるんだ。彼等に協力を求めよう」

「それがベストなんだろうね。でも実は僕、あそこの大神官に嫌われちゃってるからな~。スンナリ頷かないかもしれないよ」

 話がいい方向に進んでいたのに、公爵が水を差した。
 緊急時である今持ち出すという事は、無視出来ない程に険悪な関係とみていいだろう。マリは彼のヘラヘラとした表情を半眼で見つめる。こういう有事の際に、助けてもらえるように、日頃から良い関係を気づくというのが、大人の社交なんじゃないかと思うのだが、期待し過ぎなのだろうか?

「公爵がその大神官さんに謝って、助けを求められないの? 自分の管理する街でヤバい事が起きてるんだから、くだらないプライドを傍におけば?」

「マリちゃん……、手厳しいなぁ……。僕もクセがあるんだろうけど、彼も変わり者でね。相当の誠意をみせないと許されなそうなんだよ」

「じゃあ、このキャンプカーで土の神殿に連れて行ってあげる! 公爵、全力で謝って!」
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