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救済者様、旅に出る
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翌朝、健太はルミナが用意してくれた豪華な朝食を子供たちと共に楽しんでいた。焼きたてのパンに、トロトロの卵、香ばしいベーコン。どれもこれも、ルミナの完璧なサポートの賜物だ。しかし、彼の心はどこか落ち着かなかった。
「健太お兄ちゃん、今日はお外で遊ばないの?」
食事が終わり、庭で遊びたそうにしているリリアが健太の服の裾を引いた。ルークとグレンも、期待のこもった眼差しを健太に向けている。
「うーん、それがね…」
健太は言葉を濁した。脳裏には、昨日も引っ切り無しに訪れた各国の使者たちの顔が浮かぶ。アストリア王国の「影の魔境の浄化」という偉業を成し遂げた健太を、どの国も放っておかないだろう。感謝の言葉を伝えに来る者、同盟を申し出る者、中には健太の力を利用しようと企む者もいるかもしれない。
(このままじゃ、子供たちとの時間が全然取れないな…)
健太はそう頭の中でルミナに訴える。
『主、周辺各国からの使者の対応にご苦慮されているご様子。このままでは主の心身の疲弊も懸念されます。いかがなさいますか?』
「何か、いい方法はないかな、ルミナ。しばらくの間でいいから、この家から離れて、子供たちとゆっくり過ごせる場所はないだろうか?」
健太の言葉に、ルミナは間髪入れずに答えた。
『認識いたしました。主の要望に応えるべく、いくつか提案がございます。一つは、本拠地であるこの家を一時的に隠蔽し、別空間に移動させること。もう一つは、主と子供たちが安心して旅ができるよう、チート能力を付与した移動手段を生成し、各地を巡ることでございます』
健太は後者の提案に興味を持った。旅か。この世界に来てから、まとまった旅などしたことないな。子供たちにとっても、きっと良い経験になるだろう。
「旅、か。それは面白そうだね。でも、どんな移動手段なんだい? やっぱり馬車かな?」
『はい、主のお好みに合わせた馬車を生成することが可能です。ただし、ただの馬車ではございません。外部からの攻撃を完全に遮断する結界、瞬間移動能力、さらには内部空間を無限に拡張する能力も付与できます。また、車内には快適な居住空間を完備し、必要に応じて温泉やプール、図書館なども生成可能でございます』
健太は目を見開いた。それはもう、馬車の域を超えている。動く要塞であり、動く豪邸ではないか。
「そ、そこまでできるのか! それじゃあ、旅に出よう! 子供たちも喜ぶだろうし、何より、しばらくは使者たちの対応に追われなくて済む!」
健太の言葉に、子供たちは目を輝かせた。特にリリアは、「やったー! 遠足だー!」と跳び跳ねて喜んでいる。ルークとグレンも、新しい冒険に胸を躍らせているようだった。
『承知いたしました。では、早速準備に取り掛かります。移動先はどちらをご希望されますか?』
「うーん、そうだなぁ…まずは、アストリア王国の南にある、大きな湖に行ってみたいかな。前に本で読んだんだけど、すごく綺麗な場所だって」
『認識いたしました。それでは、湖畔に到着次第、ご連絡いたします。旅の準備は全てこちらで整えますので、健太様と子供たちはご心配なく』
ルミナの言葉通り、健太が子供たちと庭で遊びながら待っていると、家の前がパッと光に包まれた。光が収まると、そこには見慣れない豪華な馬車が停まっていた。
それは、深い森の木々を思わせる落ち着いた緑色の車体を持ち、随所に金色の装飾が施されている。窓は特殊なガラスでできており、外からは中が見えないようになっているが、中からは外が鮮明に見えるようだ。そして何より目を引くのは、馬車の牽引役である。
『主、お待たせいたしました。こちらが今回ご用意した移動手段、”天空の舟(スカイ・シップ)”でございます』
ルミナの声に促され、健太は馬車の前に立つ。そこには、純白の毛並みを持つ二頭のユニコーンが、その優美な角を輝かせながら繋がれていた。その姿は、まるで絵本から飛び出してきたかのように幻想的だ。
「ユニコーン!?」
リリアが歓声を上げた。ルークもグレンも、その神聖な姿に目を奪われている。
『はい、主の安全を考慮し、最も信頼のおける聖獣ユニコーンを配備いたしました。彼らは健太様の意思に呼応し、天空を自由に駆け巡ることができます』
健太はユニコーンのたてがみをそっと撫でた。すると、ユニコーンは健太の手にすり寄るように頭を傾けた。
「すごいな、ルミナ。本当に何でもありなんだな」
健太は苦笑しながらも、そのチート能力に感嘆した。
『では、どうぞご乗車ください。内部は健太様のお好みに合わせて調整済みです』
ルミナの言葉に従い、健太は子供たちと共に馬車に乗り込んだ。車内は想像以上に広々としており、豪華な調度品が並べられている。柔らかそうなソファに、大きな窓。まるで高級ホテルのスイートルームのようだ。
「わー! ふかふかー!」
リリアがソファに飛び込み、その感触を楽しんでいる。ルークは窓から外を眺め、グレンは興味深そうに周囲を見回している。
『主、本日はどちらへ向かいましょうか?』
「うん、まずは南の大きな湖だ。子供たちも景色を楽しめるように、ゆっくりでいいから」
健太がそう言うと、ユニコーンは蹄を鳴らし、馬車はゆっくりと動き出した。窓の外の景色が徐々に遠ざかり、家が小さくなっていく。
天空の舟は、ユニコーンの軽やかな足取りで、まるで空を滑るように進んでいく。窓からは、アストリア王国の豊かな自然が広がっていた。緑豊かな森、清らかな川、そして遠くに見える山々の連なり。
「お兄ちゃん、見て! 鳥さん!」
リリアが指差す先には、鳥の群れが馬車と並走するように飛んでいた。ルークとグレンも、普段見ることのできない景色に目を輝かせている。
『主、ご所望であれば、今現在の位置情報、そして今後の進行ルートを表示させることも可能です』
ルミナの声が響き、馬車の壁一面に透明なスクリーンが現れた。そこには、現在の馬車の位置が示されており、目的地である湖までのルートが描かれている。さらに、周辺の地形や、生息している魔物の情報まで表示されていた。
「これはすごいな。まるでカーナビだ」
健太は感心しながら、子供たちにスクリーンを指し示した。子供たちは、自分たちが今どこにいるのか、どこへ向かっているのかが分かり、さらに旅を楽しんでいるようだった。
旅の途中、ルミナの提案で、馬車の中に「展望デッキ」が生成された。ガラス張りの床と壁を持つその空間からは、360度パノラマで景色を楽しむことができる。健太と子供たちは、展望デッキから眼下に広がる世界を眺め、歓声を上げた。
「あ! 滝だ!」
リリアが指差す先には、巨大な滝が轟音を立てて流れ落ちていた。水しぶきが太陽の光を浴びて虹色に輝き、幻想的な光景を作り出している。
「きれい…」
グレンが感嘆の声を漏らした。ルークも、その迫力に圧倒されているようだった。
健太は子供たちの笑顔を見ながら、この旅に出て本当に良かったと心から思った。王宮での重圧から解放され、子供たちとの時間を満喫できること。それは、何よりも代えがたい喜びだった。
数時間後、天空の舟は目的地の大きな湖に到着した。ルミナが選んだ場所は、湖畔に広がる美しい草原で、周囲には人気もなく、まさに隠れ家のような場所だった。
馬車から降りると、爽やかな風が健太たちの頬を撫でた。湖面は太陽の光を反射してキラキラと輝き、遠くには雪を頂いた山々が見える。
「わー! 海みたい!」
リリアが湖に向かって駆け出した。ルークとグレンも、その広さに驚いているようだった。
『主、湖畔での滞在をより快適にするため、キャンプサイトを設営いたしました。また、釣りの道具や水遊びの道具も準備しております』
ルミナの声に促され、健太は湖畔に目を向けた。そこには、豪華なテントやテーブル、椅子が設置されており、まるでリゾートホテルのようだ。
「ルミナ、本当にありがとう。至れり尽くせりだな」
健太はルミナに感謝の言葉を述べると、ルミナは『とんでもございません』とだけ返した。
子供たちは早速、湖に飛び込んだ。水は透明で、足元には小魚が泳いでいるのが見える。健太も子供たちと一緒に湖で水遊びを楽しんだ。
夕食は、湖で釣れた魚を調理してくれた。新鮮な魚の塩焼きは、香ばしくて絶品だ。子供たちも、自分たちが捕まえた魚を美味しそうに食べていた。
夜になると、空には満点の星が広がった。都会では見ることのできない、無数の星々が瞬いている。健太は子供たちと共に、テントの外で焚き火を囲んだ。パチパチと燃える薪の音と、虫の鳴き声が心地よい。
「お兄ちゃん、お星さま、いっぱい!」
リリアが満面の笑みで空を見上げている。ルークは健太の膝に頭を乗せ、グレンは静かに星空を眺めていた。
「そうだね。この世界に来て、こんなに綺麗な星空を見たのは初めてだ」
健太は子供たちを抱き寄せながら、しみじみと語った。この穏やかな時間が、ずっと続けばいいのに。
翌日も、健太たちは湖畔での生活を満喫していた。午前中は釣りをしたり、午後はルミナが生成したボートに乗って湖を散策したり。子供たちの笑顔が絶えることはなかった。
しかし、昼食を食べ終わると、突然ルミナの声が響いた。
『主、緊急事態です。北東方向より、複数の飛空艇が接近しております。おそらく、周辺各国の使者かと存じます』
健太は顔をしかめた。まさか、こんな場所まで追いかけてくるとは。せっかくの穏やかな時間が台無しだ。
「ルミナ、なんとかしてくれ! 子供たちに不安な思いをさせたくない!」
健太の言葉に、ルミナは即座に応じた。
『認識いたしました。ただちに緊急避難モードに移行します。天空の舟へご移動ください!』
健太は子供たちを急かし、天空の舟へと駆け込んだ。ルミナの指示で、馬車は瞬く間に空中に浮上し、高速で移動を開始した。
窓から外を見ると、湖畔に停泊していた飛空艇から、各国の使者たちが慌てて降りてくるのが見えた。彼らは健太たちの姿を探しているようだが、天空の舟の存在には気づいていない。
『主、ご安心ください。天空の舟には、外部からの視覚・聴覚を遮断する結界が張られております。彼らに健太様の存在が知られることはございません』
ルミナの言葉に、健太は安堵の息をついた。
「ルミナ、本当に助かるよ。彼らから逃げ切れるかな?」
『はい、主。天空の舟は彼らの飛空艇よりも圧倒的に速く、隠蔽能力も優れております。問題なく逃げ切ることが可能です。このまま、一旦アストリア王国から離れ、他の国を巡る旅に出ますか?』
健太は少し考えた。使者たちから逃げ続けるのは疲れるが、子供たちと過ごすこの穏やかな時間は、何よりも大切だ。そして、子供たちにとって、色々な場所を見ることは良い経験になるはずだ。
「うん、そうしよう。せっかくだから、この機会に色々な国を見て回ろう。子供たちにも、この世界の広さや多様さを知ってほしいんだ」
健太の言葉に、子供たちは目を輝かせた。彼らは、使者たちの追跡劇を、まるで冒険物語の一幕のように楽しんでいるようだった。
人助けも大事だが、少しくらい自由にさせてくれ。
天空の舟は、アストリア王国を後にし、新たな目的地へと向かっていく。ルミナが提案した次の目的地は、東の果てにある「虹色の滝」だった。その名の通り、七色の光を放つ美しい滝で、この世界の七不思議の一つに数えられているらしい。
旅の途中、健太はルミナの能力で、馬車の中に「簡易図書館」を生成してもらった。そこには、この世界の歴史や文化、地理に関する本が無限に収蔵されており、健太は子供たちに読み聞かせをしながら、この世界の知識を教えていった。
リリアは特に、世界の伝説や神話に興味津々で、ルークは魔物図鑑に夢中になっていた。グレンは何やら植物や動物に関する本を真剣な表情で読み込んでいた。
「お兄ちゃん、このお話の続き、早く読んで!」
リリアが目を輝かせながら健太にせがむ。健太は優しく微笑み、物語の続きを読み始めた。
夜には、ルミナが生成した「移動式温泉」で、旅の疲れを癒した。星空の下、温かい湯に浸かりながら、健太は子供たちとの会話を楽しんだ。
『主、明日には虹色の滝に到着いたします。到着後、主のご希望に応じて、周辺の情報を詳細にお伝えすることも可能です』
ルミナの声が響く。健太は、これからの旅に胸を躍らせていた。
「ありがとう、ルミナ。この旅が子供たちにとって良い経験、良い思い出になればいいな」
健太は窓の外に広がる星空を見上げながら、そう呟いた。突然やってきた使者たちから逃げる形になったが、子供たちはそのアクシデントすらも楽しんでいたようだ。
翌日、天空の舟は東の果てにある「虹色の滝」に到着した。ルミナが選んだ場所は、滝壺から少し離れた高台で、滝全体を見渡すことができる絶好のロケーションだった。
馬車から降りると、轟音と共に、七色の光を放つ巨大な滝が目の前に広がった。水しぶきが太陽の光を浴びて、無数の虹を作り出している。その光景は、まさに息をのむ美しさだった。
「わー! きれいー!」
リリアが歓声を上げた。ルークとグレンも、その幻想的な光景に目を奪われている。
『主、虹色の滝は、魔力の流れが非常に安定している場所であり、周囲の魔素濃度も高いため、心身のリフレッシュに最適です』
ルミナの声に、健太は頷いた。確かに、ここにいるだけで、心が洗われるような気がする。
健太は子供たちと共に、滝壺まで降りていった。滝壺の近くまで行くと、水しぶきが顔にかかり、ひんやりと心地よい。
子供たちは、虹色の光に手を伸ばしたり、水しぶきの中で跳ね回ったりして、大はしゃぎだ。健太も、彼らと一緒に、その壮大な自然の美しさを満喫した。
夕食は、滝壺の近くで、ルミナが用意してくれた豪華な食事が並んだ。新鮮な魚のグリルに、色とりどりの野菜。そして、食後には、虹色の滝にちなんだ七色のデザートが用意されていた。
子供たちは、美味しそうに食事をしながら、今日の感動を健太に話してくれた。
「お兄ちゃん、虹色のお魚がいたんだよ!」とリリアが目を輝かせ、ルークは「滝の音がすごかった!」と興奮気味に話す。グレンは「こんなに大きな滝、初めて見た」と、静かに感動を伝えた。
健太は、子供たちの純粋な笑顔を見ながら、この旅の意義を改めて感じていた。彼らがこの世界で生きていく上で、たくさんの美しいものを見て、たくさんの経験を積んでほしい。それが、健太の心からの願いだった。
虹色の滝での滞在を終え、健太たちは再び天空の舟に乗って旅を続けた。ルミナが提案する次の目的地は、西の果てにある「砂漠のオアシス都市」だった。そこは、灼熱の砂漠の中に突如として現れる、水の都だという。
「砂漠か。これまで見たことのない景色だろうね」
健太は子供たちに話しかけた。リリアは目を輝かせ、「砂のお城作りたい!」と言い、ルークは「砂漠にはどんな動物がいるの?」と興味津々だ。グレンは、砂漠の気候や文化について、ルミナから情報を得ようとしていた。
天空の舟は、広大な砂漠の上を滑るように進んでいく。窓から見える景色は、これまでの緑豊かな森や湖とは全く異なっていた。地平線まで続く砂の海。しかし、その中にも、時折、生命の息吹を感じさせるものが現れる。
旅の途中、ルミナの提案で、馬車の中に「VR体験ルーム」が生成された。そこでは、この世界の様々な場所を、まるで実際に訪れているかのように体験できる。子供たちは、雪山の景色を見たり、海底の世界を冒険したりして、大いに楽しんだ。
「お兄ちゃん、すごい! 本当に雪が降ってるみたい!」
リリアがVRゴーグルをつけたまま、歓声を上げる。ルークは、海底の魔物たちに興奮し、グレンは、VRで見る異国の文化に感銘を受けていた。
健太は、そんな子供たちの姿を見ながら、ルミナの能力に改めて感謝した。チート能力は、王国の危機を救うだけでなく、子供たちの笑顔を作り、彼らの世界を広げる力にもなっているのだ。
『主、砂漠のオアシス都市に到着しました。周辺には人里が少ないため、ご希望であれば、しばらくの間、ここに滞在することも可能です』
ルミナの声が響き、馬車はゆっくりと地上に降り立った。窓の外には、砂漠の中に突如として現れた緑豊かなオアシス都市が広がっていた。椰子の木が生い茂り、清らかな水が流れている。そして、異国情緒あふれる建物が立ち並び、人々が行き交っている。
「ここもまた、新しい発見がたくさんありそうだね」
健太は子供たちと共に、馬車を降りた。熱い砂漠の風が、彼の頬を撫でた。
「健太お兄ちゃん、今日はお外で遊ばないの?」
食事が終わり、庭で遊びたそうにしているリリアが健太の服の裾を引いた。ルークとグレンも、期待のこもった眼差しを健太に向けている。
「うーん、それがね…」
健太は言葉を濁した。脳裏には、昨日も引っ切り無しに訪れた各国の使者たちの顔が浮かぶ。アストリア王国の「影の魔境の浄化」という偉業を成し遂げた健太を、どの国も放っておかないだろう。感謝の言葉を伝えに来る者、同盟を申し出る者、中には健太の力を利用しようと企む者もいるかもしれない。
(このままじゃ、子供たちとの時間が全然取れないな…)
健太はそう頭の中でルミナに訴える。
『主、周辺各国からの使者の対応にご苦慮されているご様子。このままでは主の心身の疲弊も懸念されます。いかがなさいますか?』
「何か、いい方法はないかな、ルミナ。しばらくの間でいいから、この家から離れて、子供たちとゆっくり過ごせる場所はないだろうか?」
健太の言葉に、ルミナは間髪入れずに答えた。
『認識いたしました。主の要望に応えるべく、いくつか提案がございます。一つは、本拠地であるこの家を一時的に隠蔽し、別空間に移動させること。もう一つは、主と子供たちが安心して旅ができるよう、チート能力を付与した移動手段を生成し、各地を巡ることでございます』
健太は後者の提案に興味を持った。旅か。この世界に来てから、まとまった旅などしたことないな。子供たちにとっても、きっと良い経験になるだろう。
「旅、か。それは面白そうだね。でも、どんな移動手段なんだい? やっぱり馬車かな?」
『はい、主のお好みに合わせた馬車を生成することが可能です。ただし、ただの馬車ではございません。外部からの攻撃を完全に遮断する結界、瞬間移動能力、さらには内部空間を無限に拡張する能力も付与できます。また、車内には快適な居住空間を完備し、必要に応じて温泉やプール、図書館なども生成可能でございます』
健太は目を見開いた。それはもう、馬車の域を超えている。動く要塞であり、動く豪邸ではないか。
「そ、そこまでできるのか! それじゃあ、旅に出よう! 子供たちも喜ぶだろうし、何より、しばらくは使者たちの対応に追われなくて済む!」
健太の言葉に、子供たちは目を輝かせた。特にリリアは、「やったー! 遠足だー!」と跳び跳ねて喜んでいる。ルークとグレンも、新しい冒険に胸を躍らせているようだった。
『承知いたしました。では、早速準備に取り掛かります。移動先はどちらをご希望されますか?』
「うーん、そうだなぁ…まずは、アストリア王国の南にある、大きな湖に行ってみたいかな。前に本で読んだんだけど、すごく綺麗な場所だって」
『認識いたしました。それでは、湖畔に到着次第、ご連絡いたします。旅の準備は全てこちらで整えますので、健太様と子供たちはご心配なく』
ルミナの言葉通り、健太が子供たちと庭で遊びながら待っていると、家の前がパッと光に包まれた。光が収まると、そこには見慣れない豪華な馬車が停まっていた。
それは、深い森の木々を思わせる落ち着いた緑色の車体を持ち、随所に金色の装飾が施されている。窓は特殊なガラスでできており、外からは中が見えないようになっているが、中からは外が鮮明に見えるようだ。そして何より目を引くのは、馬車の牽引役である。
『主、お待たせいたしました。こちらが今回ご用意した移動手段、”天空の舟(スカイ・シップ)”でございます』
ルミナの声に促され、健太は馬車の前に立つ。そこには、純白の毛並みを持つ二頭のユニコーンが、その優美な角を輝かせながら繋がれていた。その姿は、まるで絵本から飛び出してきたかのように幻想的だ。
「ユニコーン!?」
リリアが歓声を上げた。ルークもグレンも、その神聖な姿に目を奪われている。
『はい、主の安全を考慮し、最も信頼のおける聖獣ユニコーンを配備いたしました。彼らは健太様の意思に呼応し、天空を自由に駆け巡ることができます』
健太はユニコーンのたてがみをそっと撫でた。すると、ユニコーンは健太の手にすり寄るように頭を傾けた。
「すごいな、ルミナ。本当に何でもありなんだな」
健太は苦笑しながらも、そのチート能力に感嘆した。
『では、どうぞご乗車ください。内部は健太様のお好みに合わせて調整済みです』
ルミナの言葉に従い、健太は子供たちと共に馬車に乗り込んだ。車内は想像以上に広々としており、豪華な調度品が並べられている。柔らかそうなソファに、大きな窓。まるで高級ホテルのスイートルームのようだ。
「わー! ふかふかー!」
リリアがソファに飛び込み、その感触を楽しんでいる。ルークは窓から外を眺め、グレンは興味深そうに周囲を見回している。
『主、本日はどちらへ向かいましょうか?』
「うん、まずは南の大きな湖だ。子供たちも景色を楽しめるように、ゆっくりでいいから」
健太がそう言うと、ユニコーンは蹄を鳴らし、馬車はゆっくりと動き出した。窓の外の景色が徐々に遠ざかり、家が小さくなっていく。
天空の舟は、ユニコーンの軽やかな足取りで、まるで空を滑るように進んでいく。窓からは、アストリア王国の豊かな自然が広がっていた。緑豊かな森、清らかな川、そして遠くに見える山々の連なり。
「お兄ちゃん、見て! 鳥さん!」
リリアが指差す先には、鳥の群れが馬車と並走するように飛んでいた。ルークとグレンも、普段見ることのできない景色に目を輝かせている。
『主、ご所望であれば、今現在の位置情報、そして今後の進行ルートを表示させることも可能です』
ルミナの声が響き、馬車の壁一面に透明なスクリーンが現れた。そこには、現在の馬車の位置が示されており、目的地である湖までのルートが描かれている。さらに、周辺の地形や、生息している魔物の情報まで表示されていた。
「これはすごいな。まるでカーナビだ」
健太は感心しながら、子供たちにスクリーンを指し示した。子供たちは、自分たちが今どこにいるのか、どこへ向かっているのかが分かり、さらに旅を楽しんでいるようだった。
旅の途中、ルミナの提案で、馬車の中に「展望デッキ」が生成された。ガラス張りの床と壁を持つその空間からは、360度パノラマで景色を楽しむことができる。健太と子供たちは、展望デッキから眼下に広がる世界を眺め、歓声を上げた。
「あ! 滝だ!」
リリアが指差す先には、巨大な滝が轟音を立てて流れ落ちていた。水しぶきが太陽の光を浴びて虹色に輝き、幻想的な光景を作り出している。
「きれい…」
グレンが感嘆の声を漏らした。ルークも、その迫力に圧倒されているようだった。
健太は子供たちの笑顔を見ながら、この旅に出て本当に良かったと心から思った。王宮での重圧から解放され、子供たちとの時間を満喫できること。それは、何よりも代えがたい喜びだった。
数時間後、天空の舟は目的地の大きな湖に到着した。ルミナが選んだ場所は、湖畔に広がる美しい草原で、周囲には人気もなく、まさに隠れ家のような場所だった。
馬車から降りると、爽やかな風が健太たちの頬を撫でた。湖面は太陽の光を反射してキラキラと輝き、遠くには雪を頂いた山々が見える。
「わー! 海みたい!」
リリアが湖に向かって駆け出した。ルークとグレンも、その広さに驚いているようだった。
『主、湖畔での滞在をより快適にするため、キャンプサイトを設営いたしました。また、釣りの道具や水遊びの道具も準備しております』
ルミナの声に促され、健太は湖畔に目を向けた。そこには、豪華なテントやテーブル、椅子が設置されており、まるでリゾートホテルのようだ。
「ルミナ、本当にありがとう。至れり尽くせりだな」
健太はルミナに感謝の言葉を述べると、ルミナは『とんでもございません』とだけ返した。
子供たちは早速、湖に飛び込んだ。水は透明で、足元には小魚が泳いでいるのが見える。健太も子供たちと一緒に湖で水遊びを楽しんだ。
夕食は、湖で釣れた魚を調理してくれた。新鮮な魚の塩焼きは、香ばしくて絶品だ。子供たちも、自分たちが捕まえた魚を美味しそうに食べていた。
夜になると、空には満点の星が広がった。都会では見ることのできない、無数の星々が瞬いている。健太は子供たちと共に、テントの外で焚き火を囲んだ。パチパチと燃える薪の音と、虫の鳴き声が心地よい。
「お兄ちゃん、お星さま、いっぱい!」
リリアが満面の笑みで空を見上げている。ルークは健太の膝に頭を乗せ、グレンは静かに星空を眺めていた。
「そうだね。この世界に来て、こんなに綺麗な星空を見たのは初めてだ」
健太は子供たちを抱き寄せながら、しみじみと語った。この穏やかな時間が、ずっと続けばいいのに。
翌日も、健太たちは湖畔での生活を満喫していた。午前中は釣りをしたり、午後はルミナが生成したボートに乗って湖を散策したり。子供たちの笑顔が絶えることはなかった。
しかし、昼食を食べ終わると、突然ルミナの声が響いた。
『主、緊急事態です。北東方向より、複数の飛空艇が接近しております。おそらく、周辺各国の使者かと存じます』
健太は顔をしかめた。まさか、こんな場所まで追いかけてくるとは。せっかくの穏やかな時間が台無しだ。
「ルミナ、なんとかしてくれ! 子供たちに不安な思いをさせたくない!」
健太の言葉に、ルミナは即座に応じた。
『認識いたしました。ただちに緊急避難モードに移行します。天空の舟へご移動ください!』
健太は子供たちを急かし、天空の舟へと駆け込んだ。ルミナの指示で、馬車は瞬く間に空中に浮上し、高速で移動を開始した。
窓から外を見ると、湖畔に停泊していた飛空艇から、各国の使者たちが慌てて降りてくるのが見えた。彼らは健太たちの姿を探しているようだが、天空の舟の存在には気づいていない。
『主、ご安心ください。天空の舟には、外部からの視覚・聴覚を遮断する結界が張られております。彼らに健太様の存在が知られることはございません』
ルミナの言葉に、健太は安堵の息をついた。
「ルミナ、本当に助かるよ。彼らから逃げ切れるかな?」
『はい、主。天空の舟は彼らの飛空艇よりも圧倒的に速く、隠蔽能力も優れております。問題なく逃げ切ることが可能です。このまま、一旦アストリア王国から離れ、他の国を巡る旅に出ますか?』
健太は少し考えた。使者たちから逃げ続けるのは疲れるが、子供たちと過ごすこの穏やかな時間は、何よりも大切だ。そして、子供たちにとって、色々な場所を見ることは良い経験になるはずだ。
「うん、そうしよう。せっかくだから、この機会に色々な国を見て回ろう。子供たちにも、この世界の広さや多様さを知ってほしいんだ」
健太の言葉に、子供たちは目を輝かせた。彼らは、使者たちの追跡劇を、まるで冒険物語の一幕のように楽しんでいるようだった。
人助けも大事だが、少しくらい自由にさせてくれ。
天空の舟は、アストリア王国を後にし、新たな目的地へと向かっていく。ルミナが提案した次の目的地は、東の果てにある「虹色の滝」だった。その名の通り、七色の光を放つ美しい滝で、この世界の七不思議の一つに数えられているらしい。
旅の途中、健太はルミナの能力で、馬車の中に「簡易図書館」を生成してもらった。そこには、この世界の歴史や文化、地理に関する本が無限に収蔵されており、健太は子供たちに読み聞かせをしながら、この世界の知識を教えていった。
リリアは特に、世界の伝説や神話に興味津々で、ルークは魔物図鑑に夢中になっていた。グレンは何やら植物や動物に関する本を真剣な表情で読み込んでいた。
「お兄ちゃん、このお話の続き、早く読んで!」
リリアが目を輝かせながら健太にせがむ。健太は優しく微笑み、物語の続きを読み始めた。
夜には、ルミナが生成した「移動式温泉」で、旅の疲れを癒した。星空の下、温かい湯に浸かりながら、健太は子供たちとの会話を楽しんだ。
『主、明日には虹色の滝に到着いたします。到着後、主のご希望に応じて、周辺の情報を詳細にお伝えすることも可能です』
ルミナの声が響く。健太は、これからの旅に胸を躍らせていた。
「ありがとう、ルミナ。この旅が子供たちにとって良い経験、良い思い出になればいいな」
健太は窓の外に広がる星空を見上げながら、そう呟いた。突然やってきた使者たちから逃げる形になったが、子供たちはそのアクシデントすらも楽しんでいたようだ。
翌日、天空の舟は東の果てにある「虹色の滝」に到着した。ルミナが選んだ場所は、滝壺から少し離れた高台で、滝全体を見渡すことができる絶好のロケーションだった。
馬車から降りると、轟音と共に、七色の光を放つ巨大な滝が目の前に広がった。水しぶきが太陽の光を浴びて、無数の虹を作り出している。その光景は、まさに息をのむ美しさだった。
「わー! きれいー!」
リリアが歓声を上げた。ルークとグレンも、その幻想的な光景に目を奪われている。
『主、虹色の滝は、魔力の流れが非常に安定している場所であり、周囲の魔素濃度も高いため、心身のリフレッシュに最適です』
ルミナの声に、健太は頷いた。確かに、ここにいるだけで、心が洗われるような気がする。
健太は子供たちと共に、滝壺まで降りていった。滝壺の近くまで行くと、水しぶきが顔にかかり、ひんやりと心地よい。
子供たちは、虹色の光に手を伸ばしたり、水しぶきの中で跳ね回ったりして、大はしゃぎだ。健太も、彼らと一緒に、その壮大な自然の美しさを満喫した。
夕食は、滝壺の近くで、ルミナが用意してくれた豪華な食事が並んだ。新鮮な魚のグリルに、色とりどりの野菜。そして、食後には、虹色の滝にちなんだ七色のデザートが用意されていた。
子供たちは、美味しそうに食事をしながら、今日の感動を健太に話してくれた。
「お兄ちゃん、虹色のお魚がいたんだよ!」とリリアが目を輝かせ、ルークは「滝の音がすごかった!」と興奮気味に話す。グレンは「こんなに大きな滝、初めて見た」と、静かに感動を伝えた。
健太は、子供たちの純粋な笑顔を見ながら、この旅の意義を改めて感じていた。彼らがこの世界で生きていく上で、たくさんの美しいものを見て、たくさんの経験を積んでほしい。それが、健太の心からの願いだった。
虹色の滝での滞在を終え、健太たちは再び天空の舟に乗って旅を続けた。ルミナが提案する次の目的地は、西の果てにある「砂漠のオアシス都市」だった。そこは、灼熱の砂漠の中に突如として現れる、水の都だという。
「砂漠か。これまで見たことのない景色だろうね」
健太は子供たちに話しかけた。リリアは目を輝かせ、「砂のお城作りたい!」と言い、ルークは「砂漠にはどんな動物がいるの?」と興味津々だ。グレンは、砂漠の気候や文化について、ルミナから情報を得ようとしていた。
天空の舟は、広大な砂漠の上を滑るように進んでいく。窓から見える景色は、これまでの緑豊かな森や湖とは全く異なっていた。地平線まで続く砂の海。しかし、その中にも、時折、生命の息吹を感じさせるものが現れる。
旅の途中、ルミナの提案で、馬車の中に「VR体験ルーム」が生成された。そこでは、この世界の様々な場所を、まるで実際に訪れているかのように体験できる。子供たちは、雪山の景色を見たり、海底の世界を冒険したりして、大いに楽しんだ。
「お兄ちゃん、すごい! 本当に雪が降ってるみたい!」
リリアがVRゴーグルをつけたまま、歓声を上げる。ルークは、海底の魔物たちに興奮し、グレンは、VRで見る異国の文化に感銘を受けていた。
健太は、そんな子供たちの姿を見ながら、ルミナの能力に改めて感謝した。チート能力は、王国の危機を救うだけでなく、子供たちの笑顔を作り、彼らの世界を広げる力にもなっているのだ。
『主、砂漠のオアシス都市に到着しました。周辺には人里が少ないため、ご希望であれば、しばらくの間、ここに滞在することも可能です』
ルミナの声が響き、馬車はゆっくりと地上に降り立った。窓の外には、砂漠の中に突如として現れた緑豊かなオアシス都市が広がっていた。椰子の木が生い茂り、清らかな水が流れている。そして、異国情緒あふれる建物が立ち並び、人々が行き交っている。
「ここもまた、新しい発見がたくさんありそうだね」
健太は子供たちと共に、馬車を降りた。熱い砂漠の風が、彼の頬を撫でた。
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