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クラウス様の胸の中で、私はそっと目を閉じた。
彼の温もりが心地よくて、離れがたいと思ってしまう。
(私は……彼のそばにいたいのかしら)
まだ完全には答えを出せないまま、時間だけが静かに流れていく。
翌日、私は王宮の廊下を歩いていた。
クラウス様とのやり取りを思い出しては、無意識に胸を押さえてしまう。
そんなとき――。
「レティシア」
不意に、聞き覚えのある声がした。
振り向くと、そこにはアルベルトが立っていた。
「……アルベルト様」
彼とこうして顔を合わせるのは久しぶりだった。
以前の私なら、彼の顔を見るだけで苦しくなっただろう。
けれど、今は――。
「少し、話せるか?」
「……構いませんわ」
私は彼とともに人気のない庭園へと足を運んだ。
アルベルトはしばらく沈黙したあと、ゆっくりと口を開く。
「……お前は、今……幸せなのか?」
「……どうしてそんなことを聞くのです?」
「……」
アルベルトは少し困ったように笑った。
「俺は……お前を傷つけた」
「……」
「だが、それでも……クラウスのもとで幸せになれているのなら、それでいい」
彼の言葉を聞いて、私はゆっくりと瞬きをした。
(……あのアルベルト様が、こんなことを言うなんて)
「……私が幸せかどうかは、まだ分かりませんわ」
正直に答えると、アルベルトは少し驚いた顔をした。
「そうか」
「ええ……けれど」
私は静かに微笑んだ。
「少なくとも、今の私は昔のように苦しんでいません」
「……そうか」
彼は少し寂しそうに目を伏せる。
「……お前は、変わったな」
「そうですわね」
「いや……本当は、変わったのではなく、もともとそういう人間だったのかもしれないな」
私はその言葉には答えず、そっと庭園の花に目を向けた。
「……貴女が幸せになることを願っている」
アルベルトはそう言い残し、ゆっくりと背を向けて去っていった。
私はその背中を見送りながら、そっと呟く。
「……ありがとう」
ようやく、心のどこかにあったわだかまりが消えていくのを感じた。
夜、私はクラウス様の部屋を訪ねた。
扉を叩くと、すぐに彼の声が聞こえてくる。
「レティシア?」
「少し、お話しできますか?」
「もちろんだ」
クラウス様は私を迎え入れ、部屋の中へと招き入れてくれた。
「どうした?」
「……クラウス様、私は……」
私は彼の瞳を見つめる。
「……まだ迷っています」
「……そうか」
「けれど、私は貴方のそばにいると……心が安らぐのです」
彼は目を見開き、そして、ゆっくりと微笑んだ。
「それだけで十分だ」
彼は私の手を優しく握る。
「私は、貴女を待つ」
彼の言葉が、胸の奥まで響いた。
(……この人のそばにいたい)
ようやく、私はその気持ちを認めることができた。
彼の温もりが心地よくて、離れがたいと思ってしまう。
(私は……彼のそばにいたいのかしら)
まだ完全には答えを出せないまま、時間だけが静かに流れていく。
翌日、私は王宮の廊下を歩いていた。
クラウス様とのやり取りを思い出しては、無意識に胸を押さえてしまう。
そんなとき――。
「レティシア」
不意に、聞き覚えのある声がした。
振り向くと、そこにはアルベルトが立っていた。
「……アルベルト様」
彼とこうして顔を合わせるのは久しぶりだった。
以前の私なら、彼の顔を見るだけで苦しくなっただろう。
けれど、今は――。
「少し、話せるか?」
「……構いませんわ」
私は彼とともに人気のない庭園へと足を運んだ。
アルベルトはしばらく沈黙したあと、ゆっくりと口を開く。
「……お前は、今……幸せなのか?」
「……どうしてそんなことを聞くのです?」
「……」
アルベルトは少し困ったように笑った。
「俺は……お前を傷つけた」
「……」
「だが、それでも……クラウスのもとで幸せになれているのなら、それでいい」
彼の言葉を聞いて、私はゆっくりと瞬きをした。
(……あのアルベルト様が、こんなことを言うなんて)
「……私が幸せかどうかは、まだ分かりませんわ」
正直に答えると、アルベルトは少し驚いた顔をした。
「そうか」
「ええ……けれど」
私は静かに微笑んだ。
「少なくとも、今の私は昔のように苦しんでいません」
「……そうか」
彼は少し寂しそうに目を伏せる。
「……お前は、変わったな」
「そうですわね」
「いや……本当は、変わったのではなく、もともとそういう人間だったのかもしれないな」
私はその言葉には答えず、そっと庭園の花に目を向けた。
「……貴女が幸せになることを願っている」
アルベルトはそう言い残し、ゆっくりと背を向けて去っていった。
私はその背中を見送りながら、そっと呟く。
「……ありがとう」
ようやく、心のどこかにあったわだかまりが消えていくのを感じた。
夜、私はクラウス様の部屋を訪ねた。
扉を叩くと、すぐに彼の声が聞こえてくる。
「レティシア?」
「少し、お話しできますか?」
「もちろんだ」
クラウス様は私を迎え入れ、部屋の中へと招き入れてくれた。
「どうした?」
「……クラウス様、私は……」
私は彼の瞳を見つめる。
「……まだ迷っています」
「……そうか」
「けれど、私は貴方のそばにいると……心が安らぐのです」
彼は目を見開き、そして、ゆっくりと微笑んだ。
「それだけで十分だ」
彼は私の手を優しく握る。
「私は、貴女を待つ」
彼の言葉が、胸の奥まで響いた。
(……この人のそばにいたい)
ようやく、私はその気持ちを認めることができた。
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