3 / 20
2.異母姉
しおりを挟む
異母姉ジュリアンナ王女が帰って来た。
しかし、いつも威張り散らしているジュリアンナの様子がおかしい。
何かに怯えているように静かだった。
その夜アリアは父王から呼ばれた。
その場には珍しい事に父王と側妃、ジュリアンナ王女とアリアの四人しかいなかった。
「大国エスメラルダからジュリアンナ王女を差し出すように要請を受けた。」
憔悴しきった表情で父王は小さな声で呟いた。
「戒律の厳しい修道院で修道女となるか、先代王の公妾となるかの2択であるが……。」
父王としては愛しいジュリアンナ王女をそんな過酷な状況に置きたくないのだろう。
しかし、そんな無茶苦茶な要求が突きつけられるなんて、ジュリアンナ王女は留学中に一体何をしたのだろう。
「修道女なんて嫌よ。」
ジュリアンナ王女が泣き崩れた。
「あなた、ジュリアンナが修道女なんてもってのほかですわ。」
側妃がジュリアンナ王女をかばうように抱きかかえた。
「では先代王の公妾か。」
父王が重苦しく呟いた。確か、エスメラルダの国王は父王と同じくらいの年齢であった筈だ。
ならば、その父親である先代王は更に上。しかも、既に王位を子に譲り引退しているのだから、子が産まれたところで王位は望めない。
それどころか、先代王が亡くなった後、子もろとも葬られる可能性だったある。それならば、修道女のほうが100倍ましだろう。
「ええ。わかったわ。でもお父様この国にはもう1人王女がいてよ。」
ジュリアンナ王女が泣きながら、父王に縋り付いた。あぁ、この話の流れは…嫌な予感がする。
「あなた、ジュリアンナは我が国の跡継ぎをもうけなければならないのに、公妾なんて外聞が悪いわ。それに公妾ならば人前に出る事はないと聞いていますわ。すげ替えてもわかりはしませんわ。」
ああ、最悪な形で話が転がる。最初から替え玉で話をしてくれたなら、修道女を選べたのに。
いや、今からでも遅くない。
「私が行くのでしたら、修道女の方で…」
なんとか話の流れを止めようとしたアリアの言葉はジュリアンナの大袈裟な鳴き声に阻まれた。
「あら、お父様、いくらなんでも修道女なんて可哀想よ。腐っても王女なんですもの大国の公妾が相応しいわ」
ジュリアンナ王女の強引な泣き落としに父王が頷く。
「そうだな」
決まってしまった。
「アリア、明日エスメラルダの公妾として出立を命じる」
明日。しかも、出立は明日なのね。
項垂れて退出するアリアの耳元にジュリアンナが嬉しそうに囁いた。
「ねぇ、知ってる?エスメラルダの先代王の公妾っていうのは、表向きの役割でね。本当は妻のいないエスメラルダ王族や貴族達の性欲処理に使われる公の娼婦って意味なの。これは流石にお父様も知らなかったようね。」
父王の暗愚っぷりはおバカなジュリアンナ王女にもわかっているらしい。
ジュリアンナ王女は、ふふふと嬉しそうに笑いながら、アリアを慰めるふりをして続けた。
「でも安心して。教会で子供が出来ないような儀式をするみたいよ。毎日たくさんの男たちの相手をするけど子を妊娠することはないわ。まあ、妊娠したら堕胎すれば良いだけだけなんだけど。」
自分の尻拭いをまんまとアリアに押し付けたジュリアンナ王女はふふふと心底楽しそうに笑っていた。
最悪の選択を人に押し付けて嘲笑うジュリアンナ王女は悪魔だった。
しかし、大国エスメラルダをここまで怒らせるとは、ジュリアンナ王女は一体何をしたのだろう。
災禍を押し付けられる羽目になったアリアはぶるりと身震いをした。
しかし、いつも威張り散らしているジュリアンナの様子がおかしい。
何かに怯えているように静かだった。
その夜アリアは父王から呼ばれた。
その場には珍しい事に父王と側妃、ジュリアンナ王女とアリアの四人しかいなかった。
「大国エスメラルダからジュリアンナ王女を差し出すように要請を受けた。」
憔悴しきった表情で父王は小さな声で呟いた。
「戒律の厳しい修道院で修道女となるか、先代王の公妾となるかの2択であるが……。」
父王としては愛しいジュリアンナ王女をそんな過酷な状況に置きたくないのだろう。
しかし、そんな無茶苦茶な要求が突きつけられるなんて、ジュリアンナ王女は留学中に一体何をしたのだろう。
「修道女なんて嫌よ。」
ジュリアンナ王女が泣き崩れた。
「あなた、ジュリアンナが修道女なんてもってのほかですわ。」
側妃がジュリアンナ王女をかばうように抱きかかえた。
「では先代王の公妾か。」
父王が重苦しく呟いた。確か、エスメラルダの国王は父王と同じくらいの年齢であった筈だ。
ならば、その父親である先代王は更に上。しかも、既に王位を子に譲り引退しているのだから、子が産まれたところで王位は望めない。
それどころか、先代王が亡くなった後、子もろとも葬られる可能性だったある。それならば、修道女のほうが100倍ましだろう。
「ええ。わかったわ。でもお父様この国にはもう1人王女がいてよ。」
ジュリアンナ王女が泣きながら、父王に縋り付いた。あぁ、この話の流れは…嫌な予感がする。
「あなた、ジュリアンナは我が国の跡継ぎをもうけなければならないのに、公妾なんて外聞が悪いわ。それに公妾ならば人前に出る事はないと聞いていますわ。すげ替えてもわかりはしませんわ。」
ああ、最悪な形で話が転がる。最初から替え玉で話をしてくれたなら、修道女を選べたのに。
いや、今からでも遅くない。
「私が行くのでしたら、修道女の方で…」
なんとか話の流れを止めようとしたアリアの言葉はジュリアンナの大袈裟な鳴き声に阻まれた。
「あら、お父様、いくらなんでも修道女なんて可哀想よ。腐っても王女なんですもの大国の公妾が相応しいわ」
ジュリアンナ王女の強引な泣き落としに父王が頷く。
「そうだな」
決まってしまった。
「アリア、明日エスメラルダの公妾として出立を命じる」
明日。しかも、出立は明日なのね。
項垂れて退出するアリアの耳元にジュリアンナが嬉しそうに囁いた。
「ねぇ、知ってる?エスメラルダの先代王の公妾っていうのは、表向きの役割でね。本当は妻のいないエスメラルダ王族や貴族達の性欲処理に使われる公の娼婦って意味なの。これは流石にお父様も知らなかったようね。」
父王の暗愚っぷりはおバカなジュリアンナ王女にもわかっているらしい。
ジュリアンナ王女は、ふふふと嬉しそうに笑いながら、アリアを慰めるふりをして続けた。
「でも安心して。教会で子供が出来ないような儀式をするみたいよ。毎日たくさんの男たちの相手をするけど子を妊娠することはないわ。まあ、妊娠したら堕胎すれば良いだけだけなんだけど。」
自分の尻拭いをまんまとアリアに押し付けたジュリアンナ王女はふふふと心底楽しそうに笑っていた。
最悪の選択を人に押し付けて嘲笑うジュリアンナ王女は悪魔だった。
しかし、大国エスメラルダをここまで怒らせるとは、ジュリアンナ王女は一体何をしたのだろう。
災禍を押し付けられる羽目になったアリアはぶるりと身震いをした。
66
あなたにおすすめの小説
ヒロインが私の婚約者を攻略しようと狙ってきますが、彼は私を溺愛しているためフラグをことごとく叩き破ります
奏音 美都
恋愛
ナルノニア公爵の爵士であるライアン様は、幼い頃に契りを交わした私のご婚約者です。整った容姿で、利発で、勇ましくありながらもお優しいライアン様を、私はご婚約者として紹介されたその日から好きになり、ずっとお慕いし、彼の妻として恥ずかしくないよう精進してまいりました。
そんなライアン様に大切にされ、お隣を歩き、会話を交わす幸せに満ちた日々。
それが、転入生の登場により、嵐の予感がしたのでした。
不愛想な婚約者のメガネをこっそりかけたら
柳葉うら
恋愛
男爵令嬢のアダリーシアは、婚約者で伯爵家の令息のエディングと上手くいっていない。ある日、エディングに会いに行ったアダリーシアは、エディングが置いていったメガネを出来心でかけてみることに。そんなアダリーシアの姿を見たエディングは――。
「か・わ・い・い~っ!!」
これまでの態度から一変して、アダリーシアのギャップにメロメロになるのだった。
出来心でメガネをかけたヒロインのギャップに、本当は溺愛しているのに不器用であるがゆえにぶっきらぼうに接してしまったヒーローがノックアウトされるお話。
【短編版】憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜
降魔 鬼灯
恋愛
コミカライズ化進行中。
連載版もあります。
ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。
幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。
月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。
義務的に続けられるお茶会。義務的に届く手紙や花束、ルートヴィッヒの色のドレスやアクセサリー。
でも、実は彼女はルートヴィッヒの番で。
彼女はルートヴィッヒの気持ちに気づくのか?ジレジレの二人のお茶会
三話完結
【完結】溺愛される意味が分かりません!?
もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢
ルルーシュア=メライーブス
王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。
学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。
趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。
有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。
正直、意味が分からない。
さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか?
☆カダール王国シリーズ 短編☆
冷徹公に嫁いだ可哀想なお姫様
さくたろう
恋愛
役立たずだと家族から虐げられている半身不随の姫アンジェリカ。味方になってくれるのは従兄弟のノースだけだった。
ある日、姉のジュリエッタの代わりに大陸の覇者、冷徹公の異名を持つ王マイロ・カースに嫁ぐことになる。
恐ろしくて震えるアンジェリカだが、マイロは想像よりもはるかに優しい人だった。アンジェリカはマイロに心を開いていき、マイロもまた、心が美しいアンジェリカに癒されていく。
※小説家になろう様にも掲載しています
いつか設定を少し変えて、長編にしたいなぁと思っているお話ですが、ひとまず短編のまま投稿しました。
愛を知らないアレと呼ばれる私ですが……
ミィタソ
恋愛
伯爵家の次女——エミリア・ミーティアは、優秀な姉のマリーザと比較され、アレと呼ばれて馬鹿にされていた。
ある日のパーティで、両親に連れられて行った先で出会ったのは、アグナバル侯爵家の一人息子レオン。
そこで両親に告げられたのは、婚約という衝撃の二文字だった。
王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…
ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。
王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。
それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。
貧しかった少女は番に愛されそして……え?
愛されていないはずの婚約者に「貴方に愛されることなど望んでいませんわ」と申し上げたら溺愛されました
海咲雪
恋愛
「セレア、もう一度言う。私はセレアを愛している」
「どうやら、私の愛は伝わっていなかったらしい。これからは思う存分セレアを愛でることにしよう」
「他の男を愛することは婚約者の私が一切認めない。君が愛を注いでいいのも愛を注がれていいのも私だけだ」
貴方が愛しているのはあの男爵令嬢でしょう・・・?
何故、私を愛するふりをするのですか?
[登場人物]
セレア・シャルロット・・・伯爵令嬢。ノア・ヴィアーズの婚約者。ノアのことを建前ではなく本当に愛している。
×
ノア・ヴィアーズ・・・王族。セレア・シャルロットの婚約者。
リア・セルナード・・・男爵令嬢。ノア・ヴィアーズと恋仲であると噂が立っている。
アレン・シールベルト・・・伯爵家の一人息子。セレアとは幼い頃から仲が良い友達。実はセレアのことを・・・?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる