異母姉の身代わりにされて大国の公妾へと堕とされた姫は王太子を愛してしまったので逃げます。えっ?番?番ってなんですか?執着番は逃さない

降魔 鬼灯

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5.出逢い

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 バルザックの手を取ったアリアは馬車を降りた。

 ずっと馬車に乗っていたので足元が危うい。転びそうになったアリアをバルザックが支えた。

「アリアは城に向かっていたのか?」

「はい。異母姉ジュリアンナの身代りとして……。」

 アリアはそこで言葉を濁した。いずれわかるとしても。
 
 この人にはこれからアリアが娼婦同然の暮らしをすることを自分の口から言いたくなかった。

「では、私が城までお連れしても構わないか?」

 何かを察したのであろうが、あくまで紳士的に接してくれる彼の優しさが痛い。

「ええ」

 アリアは、言葉少なに頷いた。

 バルザックはアリアを抱えたまま黒い大きな天馬にすらりと跨った。
 遅れて駆けつけた部隊が先程の男たちを拘束し、兵士達を介抱していた。

「後は任せた。姫を連れて先に城に戻る。」

 そう言って、軍馬に指示を出すと、軍馬が黒いお大きな羽を広げ、バサッと音を立てて飛翔した。

「えっ?」
 まさか軍馬が飛翔するとは思っていなかったアリアは驚いた。

「我がエスメラルダが誇る天馬だ。この子は特に優秀で揺れることもない。安心すると良い。」
 
 驚くアリアに優しく微笑んで、天馬のたてがみを撫でるバルザックにアリアは強張っていた身体の力を抜いた。

 異母姉が以前押し付けた課題の中にあった情報。

 大国エスメラルダの天馬部隊。

 現在帝国の飛竜部隊と並ぶ最強の部隊だ。

 
 2人を乗せた天馬はぐんぐん空を駆けてあっと言う間に城に到着した。

 城の一角に設けられた天馬専用の発着場らしき場所に天馬が降りたつ。

 
 いよいよだわ。アリアは今日から始まる公妾としての仕事に不安を覚え、ちいさく震えた。

「震えてる。寒いか?」

 心配したバルザックがアリアを天馬から降ろし優しく抱きかかえた。

 その温かさにほぅっと吐息をついて、アリアはバルザックにしがみついた。

 潤む視界でバルザックを見上げる。
 
「うっ」

 バルザックの褐色の肌がすこし赤いような気がした。

「アリア、今日は疲れただろうから私の屋敷で休もう。連絡を入れておくから、王への挨拶は疲れを癒やしてからにしよう。」

「はい。」

 バルザックは王宮の中をアリアを抱えたままズンズン進んだ。

 扉のまえにいる衛兵がに恭しく扉を開けた。ずらりと並んだメイド達が一斉に頭を下げる。

 どうしよう。こんな格好で…。

 動揺するアリアをなだめるように優しく包み込んで、バルザックは執事らしき人に指示した。

「私の番だ。客間を用意してもてなしてくれ。」

 番?

 アリアは母が存命の間に帝国語やエスメラルダ語を初め様々な教育を受けていた。
 
 だから、日常会話に困らないだけのエスメラルダ語は堪能だったが、番という単語の意味だけはわからなかった。

 聞き返すのも申し訳ないので後で辞書で調べようと考えた。

 この決断が後に大きな誤解を産むことになろうとは誰にもわからなかった。
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