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17.ジュリアンナ王女
しおりを挟む「ジュリアンナ王女殿下、こちらは花嫁の支度部屋でございます。入室はご遠慮くださいませ。」
マリーが慇懃に頭を下げた。
「あら、私は花嫁の姉でレジオン国王女よ、お前ごときに私が止められるとでも。」
ジュリアンナ王女が手にした扇子でマリーの顎を上げる。
「あら。見たことのある顔だと思ったら、すご腕のメイク係じゃない。ちょうど良かった。お前、私の側に置いてあげてよ。」
ふふふ。ジュリアンナはさも可笑しそうに笑うと、身につけたケープのボタンを外す。
ジュリアンナ王女の足元にケープがスルッと滑り落ちた。
アリアの母の形見のウェディングドレス。清楚な純白のそれがジュリアンナ王女の妖艶な肢体を彩る。
「これ。貴女の母の形見よね。流石帝国王女の婚礼衣装、とても豪奢で綺麗。私に相応しいドレスだわ。」
ジュリアンナ王女がうっとりと自身が身につけた純白のドレスを眺める。
そして一つ一つ丁寧に縫い付けられたちいさな宝石や真珠を撫でた。
「お母様のドレス、どうかお返しください。」
アリアが震える声で言い返す。
「良いわよ。ただし、ただではね。」
アリアをいたぶるように愉悦に歪むジュリアンナ王女の唇。
「私、もう何も持っていませんわ。」
そう、アリアにあるのは母の形見の古びた手鏡だけ。他は全てジュリアンナ王女に取り上げられた。
「あらあ、そのドレスも宝石も素敵じゃない。私、欲しいの。あと、バルザックも……。この意味わかるわよね、アリア。」
ジュリアンナ王女が、アリアを突き飛ばす。幸い柔らかなクッションの上に転んだ為ダメージはない。
だが……。
バルザックは渡せない、渡すわけにはいかない。ようやく見つけた私の幸せ。
このドレスもバルザックも渡したくない。いつも、奪われるだけの人生。これ以上、この人に奪われるのは嫌だ。
「嫌です。バルザックは私のものです。」
「なんですって。」
初めてアリアに逆らわれた事にジュリアンナ王女が
逆上して手にした扇子を振り上げた。
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