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第一章 とても不思議な世界
10話 入門者③
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食卓で他の魔導士が来るのを待つ日々喜は、何をするでもなく窓から見える中庭の風景を見つめていた。
「あ、あのー……」
突然声を掛けられ、日々喜はそちらを振り返る。そこには、トレーを持った女の子が一人立っていた。
「朝食の、食器を下げに来まして……、そこに置いておけばいいですかね?」
女の子は自分の掛けている眼鏡越しに、視線で配膳台を指して尋ねた。
「良いと思います。良く、分からないけど」
「どうも……。あの、ここの見習いの方じゃないんですか?」
「まだ違います。今日はその為の挨拶に来ました」
「ああ、新しく門下に入られる方ですね。私もそうです。昨日このイバラ領に来たんですよ」
女の子はそう言いながら、食器を配膳台に置くと、日々喜の方へ近づいた。
「リグラ・ドールです。同じ門下に入れるといいですね」
「長岐日々喜です。ドールさん、身体はもう動かして平気ですか?」
「え!? 昨日の事、どうして知っているんですか?」
「昨日の森の中で、皆が倒れているのを見かけました」
「貴方が? 長岐さんが、私達の事を助けてくれたんですか?」
「助けたのはコウミ……、僕の師匠です。僕は直ぐそばに居たんです」
「トウワ人の魔導士……。長岐さんのお師匠さんの事だったんですね。そうとは知らず、すいません。あの時、私は気を失っていて、長岐さん達が来てくれなかったら、そのまま蛇に呑まれていたかもしれないと聞かされて。……本当に助かりました。ありがとうございます」
リグラは昨晩の事を思い出したのか、少し青い顔をしながら、日々喜に礼を言った。
「平気そうで良かったです。後、僕の事は日々喜で良いです。皆そう呼ぶので」
「それでは、私の事もリグラと呼んで下さい」
リグラは照れ臭そうに、自分の掛けている眼鏡を弄った。鼻の頭に残るソバカスが見え隠れし、その仕草と相まって初々しい印象を日々喜に与えた。
「ところで、日々喜はここで何をしているんですか?」
日々喜は、ここで待たされている経緯をリグラに話した。
「そうでしたか、やはり、大きな問題になっているんですね。キリアンが森でゴブリンを追いかけようとした時、私もオレガノも止めようとしたんです。それなのにあの人は、ゴブリンなんかに負けないと言い張って。モンスターが姿を現した時点で異常な事態であるって事が分かっていないんですよ、きっと」
リグラがキリアンに対する愚痴をこぼし始めた時、日々喜は何かが気になる様子で、厨房の方をながめ始めた。
「……どうかしましたか?」
「うん……。聞こえるんだ」
「何が聞こえるんです?」
「子供の……。あっちからだ」
日々喜は席を立ち、厨房へ向かい始める。リグラも日々喜の後に続いて厨房へ向かって行った。すると、日々喜の言う通り子供のすすり泣く様な声が聞こえて来る。
二人は厨房を覗き込んだ。
「誰も居ないようですが」
「鳴き声が聞こえた。子供の」
「変ですね。ここに子供なんて。……あれ?」
リグラが何かに気が付き厨房の中へと入って行く。
「ウサギの人形? どうして厨房なんかに」
顔を両手で覆うウサギの人形が、台所の前に置かれた椅子の上に座らされている。リグラは、確認する様にその人形の頭を撫でた。
「……にゃん?」
不意に、人形がその頭をもたげ、リグラの方を向いた。
「うわ!?」
「ひゃあ!?」
目を合わせた二人は互いに驚いた。
リグラは思わず尻餅をついた。人形は慌てた様に両手をバタつかせ、そのまま椅子ごと倒れてしまった。
「イタタ……」
「リグラ、平気」
「ええ、大丈夫です」
日々喜に手を借りながらリグラは立ち上がる。
「あ、貴方達、誰です。厨房で何をしているんですか?」
ウサギの人形が、倒れた椅子を元に戻しながら、二人に話し掛けた。
「に、人形が喋った!?」
「人形じゃないですにゃん。私は、メイドのタイムと言いますにゃ。ここの厨房を任されているのですにゃ」
「メ、メイド?」
リグラは眼鏡の位置を直しながら、タイムと名乗る人形をしげしげとながめた。
「メイドさんでしたか、すいません。まるで、その、人形のように見えたもので」
再び人形と呼ばれ、タイムはシクシクと泣き出してしまった。
その様子をながめていた日々喜とリグラの二人。泣いてる理由は分からないままだったが、とても悲しい気持ちになって来た。
「泣いてしまって、ごめんなさいにゃ」
「さっきも声が聞こえたんだ。タイムさんはどうして泣いているのかな?」
「私がいけないんですにゃ。私の無作法がたたって、そのお仕置きで、こんな醜い姿に変えられてしまっているんですにゃ」
タイムの話を聞きリグラは驚く。
「変えられたですって!? それじゃ、これは魔導によって、人形の姿に変えられているんですか? ちょっと、失礼します」
「にゃ!?」
リグラは、タイムの了解も待たず、その人形の様な顔を手で触り確認し始めた。
「信じられない。見た目は人形の様なのに、確かに人の温もりを感じる。魔導でこんな事ができるなんて。でも、一体どうやって?」
「僕も触っていいかな?」
「あ、どうぞ」
「にゃー!?」
リグラの言う通り、生き物としての温もりを感じる。そればかりか、見た目以上に柔らかく、日々喜はその触感を楽むかの様に、両のほっぺを優しく抓った。
「何なんですか! 止めてくださいにゃ!」
「ああ、ごめんなさい。日々喜、嫌がっているようですから、それ以上は止めておきましょう。……日々喜?」
日々喜は、タイムの後頭部の辺りに注目していた。リグラには見えていない何かをつかもうとするように手を伸ばす。すると、その指先から淡い光が漏れ出し、手のひらほどの大きさの魔法陣が出現した。
「魔法陣が、見えない様に隠してあったんだ」
リグラはその光景を見て呟いた。
「触れない」
「それは、そうですよ。魔法陣はエーテルで形作られているんですから」
「エーテル?」
「魔力を定義する特殊なエレメントですよ。アルテマの中に蓄えられている奴です。エーテルには触る事が出来ません」
「触れない……、抵抗が無いのか。でもこれは」
魔法陣はタイムの頭の動きに合わせる様に動かされている。日々喜の目にはそう映った。そして、タイムの頭を注意深く見てみると、その人形の様な頭部にめり込んでいる物を見つけた。
日々喜はそれを摘まみ上げる。深々と突き刺さっていたにもかかわらずするりと滑る様に、それは簡単に引き抜く事ができた。
髪留めだった。女性物のアクセサリーらしく、銀にる細工が施されている。何を模るデザインなのか、一目で判断できない程に細かく繊細な模様が描かれていた。
良く確認してみようと、日々喜は手にする髪留めを目の前へと近づける。
すると、浮遊していた魔法陣がタイムの頭を離れ日々喜の顔に近づいた。
丁度、髪留めから数センチ離れた空間に固定されているかのように、今度は日々喜の手に付いて動いているのだ。どうやら、この髪留めの存在が触る事の出来ない魔法陣を動かす原因らしい。
今度は魔法陣を良く観察し始めた。魔法陣とその周りに何かが流れて見える。
その流れは正確な真球の形を留める様に弧を描いて動き、真球の内部に描かれる魔法陣に沿って、中心へと螺旋を描く様に流れ込んだ。
「……何だこれ?」
日々喜がその正体を見極める間も無く、魔法陣はその存在を曖昧にするように、輝く力を弱め、消えてしまった。
「その髪留め、媒体になっていたんですね」
リグラが、日々喜の疑問に答える。
「媒体?」
「そうです。魔法陣を展開する時の目標に――」
「にゃ!? 顔が!」
突然タイムが声を上げた。二人はタイムの方に注目する。
「直った! 直ったにゃん」
それまでウサギの頭をしていたタイムは、焦げ茶色の猫の顔をした女の子になっていた。
「まだ少し変だけど、平気なの?」
喜ぶタイムに日々喜が尋ねる。
「変じゃないですにゃ! 生まれた時からこの顔のはずですにゃ」
タイムは怒った表情を作った。
「日々喜。多分、タイムさんは、獣人の方なんですよ」
獣人と言われ、日々喜は改めてタイムの姿を良く見てみた。
それは、人の服を着た二足歩行をする大きな猫だった。しかし、人の様に感情表現豊かな表情を浮かべている。
「本物なんだ。……可愛いい」
日々喜は、そんなタイムから受ける率直な印象をつい言葉に出した。
「タイムさん。仕事場に入ってスイマセンでした。私は昨日この館に到着した見習い魔導士のリグラ・ドールといいます」
「リグラさんよろしくにゃ。宿舎は皆のものですにゃ。気兼ねなく出入りしてくれて構わないですにゃ」
「僕は長岐日々喜です。タイムさんは幾つですか?」
「にゃ? 一四歳ですにゃ」
「僕は十六です。日々喜と呼んで下さい。タイム」
「分かりましたにゃ。でも、フォーリアム一門のお弟子さんを呼び捨てにするわけにはいかないにゃ。よろしくお願いしますにゃ、日々喜さん」
「僕は、フォーリアム一門のお弟子じゃないです。今日は館の方々に挨拶をしに来たんです」
「そ、そうですにゃ? それでは、私が本館の方へご案内いたしますにゃ」
「ありがとう。タイム」
「こちらへどうぞにゃ。勝手口から裏庭に出れますにゃ。リグラさん、ありがとうございましたにゃ。それでは、失礼しますにゃ」
「またね。リグラ」
「え!? はあ、また」
タイムに続き、日々喜は厨房の勝手口から出て行った。
「行っちゃった……。食堂で待って居たのではなかったのでしょうか?」
リグラは、裏庭へと出て行く日々喜達の事を見送りながらそう呟いた。
「あ、あのー……」
突然声を掛けられ、日々喜はそちらを振り返る。そこには、トレーを持った女の子が一人立っていた。
「朝食の、食器を下げに来まして……、そこに置いておけばいいですかね?」
女の子は自分の掛けている眼鏡越しに、視線で配膳台を指して尋ねた。
「良いと思います。良く、分からないけど」
「どうも……。あの、ここの見習いの方じゃないんですか?」
「まだ違います。今日はその為の挨拶に来ました」
「ああ、新しく門下に入られる方ですね。私もそうです。昨日このイバラ領に来たんですよ」
女の子はそう言いながら、食器を配膳台に置くと、日々喜の方へ近づいた。
「リグラ・ドールです。同じ門下に入れるといいですね」
「長岐日々喜です。ドールさん、身体はもう動かして平気ですか?」
「え!? 昨日の事、どうして知っているんですか?」
「昨日の森の中で、皆が倒れているのを見かけました」
「貴方が? 長岐さんが、私達の事を助けてくれたんですか?」
「助けたのはコウミ……、僕の師匠です。僕は直ぐそばに居たんです」
「トウワ人の魔導士……。長岐さんのお師匠さんの事だったんですね。そうとは知らず、すいません。あの時、私は気を失っていて、長岐さん達が来てくれなかったら、そのまま蛇に呑まれていたかもしれないと聞かされて。……本当に助かりました。ありがとうございます」
リグラは昨晩の事を思い出したのか、少し青い顔をしながら、日々喜に礼を言った。
「平気そうで良かったです。後、僕の事は日々喜で良いです。皆そう呼ぶので」
「それでは、私の事もリグラと呼んで下さい」
リグラは照れ臭そうに、自分の掛けている眼鏡を弄った。鼻の頭に残るソバカスが見え隠れし、その仕草と相まって初々しい印象を日々喜に与えた。
「ところで、日々喜はここで何をしているんですか?」
日々喜は、ここで待たされている経緯をリグラに話した。
「そうでしたか、やはり、大きな問題になっているんですね。キリアンが森でゴブリンを追いかけようとした時、私もオレガノも止めようとしたんです。それなのにあの人は、ゴブリンなんかに負けないと言い張って。モンスターが姿を現した時点で異常な事態であるって事が分かっていないんですよ、きっと」
リグラがキリアンに対する愚痴をこぼし始めた時、日々喜は何かが気になる様子で、厨房の方をながめ始めた。
「……どうかしましたか?」
「うん……。聞こえるんだ」
「何が聞こえるんです?」
「子供の……。あっちからだ」
日々喜は席を立ち、厨房へ向かい始める。リグラも日々喜の後に続いて厨房へ向かって行った。すると、日々喜の言う通り子供のすすり泣く様な声が聞こえて来る。
二人は厨房を覗き込んだ。
「誰も居ないようですが」
「鳴き声が聞こえた。子供の」
「変ですね。ここに子供なんて。……あれ?」
リグラが何かに気が付き厨房の中へと入って行く。
「ウサギの人形? どうして厨房なんかに」
顔を両手で覆うウサギの人形が、台所の前に置かれた椅子の上に座らされている。リグラは、確認する様にその人形の頭を撫でた。
「……にゃん?」
不意に、人形がその頭をもたげ、リグラの方を向いた。
「うわ!?」
「ひゃあ!?」
目を合わせた二人は互いに驚いた。
リグラは思わず尻餅をついた。人形は慌てた様に両手をバタつかせ、そのまま椅子ごと倒れてしまった。
「イタタ……」
「リグラ、平気」
「ええ、大丈夫です」
日々喜に手を借りながらリグラは立ち上がる。
「あ、貴方達、誰です。厨房で何をしているんですか?」
ウサギの人形が、倒れた椅子を元に戻しながら、二人に話し掛けた。
「に、人形が喋った!?」
「人形じゃないですにゃん。私は、メイドのタイムと言いますにゃ。ここの厨房を任されているのですにゃ」
「メ、メイド?」
リグラは眼鏡の位置を直しながら、タイムと名乗る人形をしげしげとながめた。
「メイドさんでしたか、すいません。まるで、その、人形のように見えたもので」
再び人形と呼ばれ、タイムはシクシクと泣き出してしまった。
その様子をながめていた日々喜とリグラの二人。泣いてる理由は分からないままだったが、とても悲しい気持ちになって来た。
「泣いてしまって、ごめんなさいにゃ」
「さっきも声が聞こえたんだ。タイムさんはどうして泣いているのかな?」
「私がいけないんですにゃ。私の無作法がたたって、そのお仕置きで、こんな醜い姿に変えられてしまっているんですにゃ」
タイムの話を聞きリグラは驚く。
「変えられたですって!? それじゃ、これは魔導によって、人形の姿に変えられているんですか? ちょっと、失礼します」
「にゃ!?」
リグラは、タイムの了解も待たず、その人形の様な顔を手で触り確認し始めた。
「信じられない。見た目は人形の様なのに、確かに人の温もりを感じる。魔導でこんな事ができるなんて。でも、一体どうやって?」
「僕も触っていいかな?」
「あ、どうぞ」
「にゃー!?」
リグラの言う通り、生き物としての温もりを感じる。そればかりか、見た目以上に柔らかく、日々喜はその触感を楽むかの様に、両のほっぺを優しく抓った。
「何なんですか! 止めてくださいにゃ!」
「ああ、ごめんなさい。日々喜、嫌がっているようですから、それ以上は止めておきましょう。……日々喜?」
日々喜は、タイムの後頭部の辺りに注目していた。リグラには見えていない何かをつかもうとするように手を伸ばす。すると、その指先から淡い光が漏れ出し、手のひらほどの大きさの魔法陣が出現した。
「魔法陣が、見えない様に隠してあったんだ」
リグラはその光景を見て呟いた。
「触れない」
「それは、そうですよ。魔法陣はエーテルで形作られているんですから」
「エーテル?」
「魔力を定義する特殊なエレメントですよ。アルテマの中に蓄えられている奴です。エーテルには触る事が出来ません」
「触れない……、抵抗が無いのか。でもこれは」
魔法陣はタイムの頭の動きに合わせる様に動かされている。日々喜の目にはそう映った。そして、タイムの頭を注意深く見てみると、その人形の様な頭部にめり込んでいる物を見つけた。
日々喜はそれを摘まみ上げる。深々と突き刺さっていたにもかかわらずするりと滑る様に、それは簡単に引き抜く事ができた。
髪留めだった。女性物のアクセサリーらしく、銀にる細工が施されている。何を模るデザインなのか、一目で判断できない程に細かく繊細な模様が描かれていた。
良く確認してみようと、日々喜は手にする髪留めを目の前へと近づける。
すると、浮遊していた魔法陣がタイムの頭を離れ日々喜の顔に近づいた。
丁度、髪留めから数センチ離れた空間に固定されているかのように、今度は日々喜の手に付いて動いているのだ。どうやら、この髪留めの存在が触る事の出来ない魔法陣を動かす原因らしい。
今度は魔法陣を良く観察し始めた。魔法陣とその周りに何かが流れて見える。
その流れは正確な真球の形を留める様に弧を描いて動き、真球の内部に描かれる魔法陣に沿って、中心へと螺旋を描く様に流れ込んだ。
「……何だこれ?」
日々喜がその正体を見極める間も無く、魔法陣はその存在を曖昧にするように、輝く力を弱め、消えてしまった。
「その髪留め、媒体になっていたんですね」
リグラが、日々喜の疑問に答える。
「媒体?」
「そうです。魔法陣を展開する時の目標に――」
「にゃ!? 顔が!」
突然タイムが声を上げた。二人はタイムの方に注目する。
「直った! 直ったにゃん」
それまでウサギの頭をしていたタイムは、焦げ茶色の猫の顔をした女の子になっていた。
「まだ少し変だけど、平気なの?」
喜ぶタイムに日々喜が尋ねる。
「変じゃないですにゃ! 生まれた時からこの顔のはずですにゃ」
タイムは怒った表情を作った。
「日々喜。多分、タイムさんは、獣人の方なんですよ」
獣人と言われ、日々喜は改めてタイムの姿を良く見てみた。
それは、人の服を着た二足歩行をする大きな猫だった。しかし、人の様に感情表現豊かな表情を浮かべている。
「本物なんだ。……可愛いい」
日々喜は、そんなタイムから受ける率直な印象をつい言葉に出した。
「タイムさん。仕事場に入ってスイマセンでした。私は昨日この館に到着した見習い魔導士のリグラ・ドールといいます」
「リグラさんよろしくにゃ。宿舎は皆のものですにゃ。気兼ねなく出入りしてくれて構わないですにゃ」
「僕は長岐日々喜です。タイムさんは幾つですか?」
「にゃ? 一四歳ですにゃ」
「僕は十六です。日々喜と呼んで下さい。タイム」
「分かりましたにゃ。でも、フォーリアム一門のお弟子さんを呼び捨てにするわけにはいかないにゃ。よろしくお願いしますにゃ、日々喜さん」
「僕は、フォーリアム一門のお弟子じゃないです。今日は館の方々に挨拶をしに来たんです」
「そ、そうですにゃ? それでは、私が本館の方へご案内いたしますにゃ」
「ありがとう。タイム」
「こちらへどうぞにゃ。勝手口から裏庭に出れますにゃ。リグラさん、ありがとうございましたにゃ。それでは、失礼しますにゃ」
「またね。リグラ」
「え!? はあ、また」
タイムに続き、日々喜は厨房の勝手口から出て行った。
「行っちゃった……。食堂で待って居たのではなかったのでしょうか?」
リグラは、裏庭へと出て行く日々喜達の事を見送りながらそう呟いた。
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