275 / 285
十四章 契約と誓約
275. 白いワンピースと白い魔導車
しおりを挟む
「リーナ!」
マグダリーナ達がショウネシー邸の外に出ると、リィンの町まで一緒に行く約束をしていたエステラとニレルが、ちょうど門前についたところだった。エステラが元気よく手を振っている。
いつも首の後ろで一つに括っているエステラの髪が、さらりと風に靡いている。夏らしい白いひらひらワンピース姿のエステラは、息を呑むほど美しく可愛いかった。
「ふわぁぁぁあ!!! 可愛い!! エステラかわいいわ!!!!」
朝練の時は運動服姿だったので、マグダリーナは一気にテンションが上がった。
翻るワンピースの裾からは、いつものようにズボンが覗いているが、その細身のズボンの裾も斜めの段フリルになっていて、やっぱりかわいい。靴も白く踵が高めの、くるぶしまでのブーツで爪先を細らせてあった。
ニレルもエステラに合わせて、上品なブルーグレーのズボンとベストを着ている。
二人ともマントも身につけていた。
エステラのマントの内側には、スライムが入るポケットも付いている。もちろんハラ、ヒラ、モモが楽しそうに収まっていた。
「エステラお姉様、とってもかわいいわ! でもそのお衣装でダンジョンに入りますの?」
「これは戦闘用に防具も兼ねてるの。一応試作品だから、性能試験も兼ねて今日は着てみたのよ。リーナやレベッカの分はこっち! あとで使用感を教えてね。そしてこれ。上の階層に行くにつれ、階層ごとに明るさや気温も変わってくるのよ。このマントは防御の他にも、外気温の急激な変化を緩和してくれるから」
エステラは魔法収納からドレス二着と人数分プラス、ナードとヴヴのマントを出す。マグダリーナとアンソニーのマントの内側には、エステラのマントと同じように、スライムが仕舞えるポケットが付いていた。
マグダリーナとレベッカ、そして従魔のマントは裾スカラップでリボン飾りも付いて、とてもかわいい。
エステラが手を振ると、マグダリーナとレベッカは魔法の光に包まれて、ドレスに着替えてマントを羽織っていた。着ていた運動服は、まとめてマグダリーナの魔法収納に収まっている。
「すごく軽くて動きやすいですわ!!」
レベッカがくるりと回ってみせる。エステラのワンピースのように翻ったりしないが、勿忘草色のドレスはしっかり形崩れもせず美しいシルエットを保っている。
マグダリーナの青藤色のドレスも白いレースの襟が可愛い。
「ありがとう、エステラ! 私も頑張って強くなるわ」
あの夢で見た、未来を変えるために。
早速マグダリーナは、魔法収納から魔導車を取り出した。エステラが町長就任祝いにと贈ってくれた特別仕様魔導車だ。
形はモモ・シャリオ号と同じ。でもその色は真っ白の、タマ・シャリオ号だ。
タマ・シャリオ号の所有権限も、運転者登録権限もマグダリーナにあった。
次にまた拐われるようなことがあっても、これで逃げられるように……エステラは何も言わなかったが、マグダリーナはそのためのタマ・シャリオ号なのだと思った。
「オープン!」
タマ・シャリオ号は『たま~』と鳴いて、フロントと後部座席の扉を開いた。
マグダリーナが運転席、ライアンが助手席に乗ると、アンソニーがダーモットとマゴー1号を連れてきて、皆それぞれ後部座席に乗り込む。
まずは久しぶりの運転のカンを取り戻す為に、マグダリーナがリィンの町まで運転する。今回は領地戦の時のように壁面走行などないから、気が楽だ。
それからライアン、アンソニー、レベッカ……最後にダーモットの順で、運転者登録をしてダンジョン内で運転練習をする予定だった。一番手がライアンなのは、ウィングボードの操作も一番早くコツを掴んだと聞いたから。マグダリーナの代わりに教える側にもなってもらえそうだからである。
「さあ、リィンの町まで出発よ!」
全員乗り込んだのを確認して、マグダリーナはアクセルを踏み込んだ。
「基本は簡単なのよ。足元のアクセルを踏んで、進む、加速する。その隣のブレーキを踏んで、減速、停止。リーナが握ってるハンドルで、進行方向を決める……」
エステラが皆んなに、基本的な運転操作の説明をしていく。
「ニレルやエデンの運転操作と違うみたいですが……?」
よく観察している。アンソニーが左手を動かしながら言った。
「そうなの。より簡単に運転出来るようになってるのよ」
マグダリーナは慎重派なので、対向車のいない道路でも、スピードが出過ぎないよう気をつける。助手席のライアンは、隣でマグダリーナを観察して、大体のことは理解できたようだ。さっそく魔法表示画面を操作して、テーブルを出し入れしたり、地図を表示したりしている。
「到着予定時間が残り二十分ってなってるけど、いつもより早くないか?」
地図に表示された時間を見て、ライアンはマグダリーナに聞いたが、答えたのはエステラだ。
「マゴー車は通常、時速四十五キロ走行してるのよ。でもいま六十キロ出てるからね。もっと速度出しても平気よ」
「無理」
マグダリーナは即答した。
無事に野生の魔獣に遭遇することも、うっかりスライムを轢いてしまうこともなく、リィンの町に到着した。
そのまま女神の塔まで着くと、マグダリーナは一旦、タマ・シャリオ号を魔法収納に仕舞う。
『む!』
さて女神の塔に入ろうかというところで、エステラの後ろにいたササミ(メス)が、不意に翼に嘴を入れてモゾモゾする。
『バーナードから、手紙が届いたぞ』
「どうして脇に王子様からの手紙が届くんですの?!」
レベッカの驚きの声に、驚くところ、そこで良いんだっけ? マグダリーナは思った。
『マゴー達が転移してきたのだ』
ササミ(メス)は器用に両羽根で手紙を開ける。ハラもエステラのマントの中から、にゅっと顔を出す。
『なになに……親愛なるササミとハラへ。急ぎマグダリーナに伝えて欲しい』
その書き出し文に嫌な予感しかせず、マグダリーナは振り返ってササミ(メス)を見た。
『深夜辺境伯より、緊急通信が届いた。ギルギス国の第三王子と冒険者ギルド長、そしてAランク冒険者パーティが、辺境伯領を無断で通り抜けショウネシー領へ向かったという。彼らは王国最速の魔獣馬、ペガサスの馬車でやってきた。辺境伯の騎士が追っているらしいが、ペガサス相手に期待はできないだろう。俺と叔父上、ドロシー姉上も急ぎ其方に向かう。念の為、ショウネシー伯爵にはダンジョンに入らずに待機してもらいたい』
マグダリーナはさっそくダンジョンに入ろうとするダーモットの気配を察知し、ルシンから貰った魔鞭を振った。
魔鞭は素早くダーモットに巻きつく。
『という事らしいのだ』
「リーナ……」
ダーモットは鞭でぐるぐる巻きになったまま、しゅんとした顔で娘を見た。
「そんな顔してもダメです。隣国のお客様はお父さまのお話も聞きたいんですよ、きっと。配信をみて来られるんだもの」
エステラはササミ(メス)から手紙を受け取って、まじまじ眺める。
「ペガサス? ペガサスに会えるの!?」
「落ち着いてエステラ。おそらくエステラが期待してる天馬のことじゃないよ。たぶん天馬の血を引いた交配種が定着したものだ。ドルーン王国で何頭か育てていたはずだから」
ニレルの説明に、アンソニーも聞き返した。
「天馬の血を引いてるということは、空を飛ぶんですか?」
「そうだね。高さニメートルぐらいならね。あと普通の車体を引いていては飛べないよ。そのかわり、足はとても速いね」
「でもお師匠は、おでかけする時は、たまに女神の森からペガサスを呼んでいたわよね? いつも高い所から舞い降りてきてたわ」
エステラはニレルの袖を握って、ぶんぶん振る。ニレルは反対の手でエステラの頭を撫でた。
「そうだね。女神の森には確かに天馬がいる。叔母上の従魔だった天馬もね。彼にはちゃんと個別に名前があったんだ。普段は天馬の別称の『ペガサス』と呼んでいたけど」
エステラは思い切り目を見開いて、それからニレルの腕に顔を埋める。
「真っ黒でツヤッツヤで、紅玉みたいに綺麗な赤い目をした子だったわ……」
その色合いに、皆んな誰かを思い出していた。
「あの子の本当の名前は、ハラにも秘密だったの……」
ハラは少し悔しそうに、そしてどこか淋しそうに目を伏せた。
エステラ達が思い出を懐かしんでいる間に、マグダリーナの領民カードがブブブと震えて、ハンフリーから通信が入った。
『リーナ、隣国からのお客様が到着した』
「は? いま?!」
はやすぎないだろうか。はやすぎないだろうか? どんな速度出してるの??
『もう其方へ向かっている。それぞれ武器を携えた者達が乗っている。ダンジョン目当てだと思って通したが、辺境伯騎士団が追ってきた。すまない。気をつけてくれ』
「……ハンフリーさんは、絶対に領都を動かずにいて下さい。王宮からもこちらに人を寄越してくださるようなので、がんばってみます……!」
(向かってる? 向かってる? いま運転してきたあの道を通って?)
ダンジョンを見にくるのに、なんでそこまで慌てる必要あるのかしら……。マグダリーナはもう一度ササミが読み上げた内容を思い出す。
待って、あの手紙、無断って言ってなかった? 無断で辺境伯領通り抜けたって!
ありえない。一般他国民じゃなくて、王族や世界規模組織の関係者でしょ? お忍びでもないんでしょ? なにも言わずに王宮すら素通りして、直接こっちに来るなんて、なんて非常識な……というか、犯罪!
大陸の国家間条約で、王族は他国に入ったら、まずはその国の王城、または王宮を訪ね訪問の意図を詳らかにする決まり事がある。もちろん事前に訪問を知らせて、受け入れ国側の使者と共にだ。
それは先日の王族トリオ女神の塔視察で、何気なく「もしかしてお忍びで他国の王族がやってきたら?」と呟いた時に、「それは我が国に対する宣戦布告だから」と教えてもらった、まだぴっちぴちに新鮮な知識……。
おかげで今日の予定も、上がってた気分も潰れたわ。
「マゴー! 配信の準備よ!」
マグダリーナは高々と宣言した。
マグダリーナ達がショウネシー邸の外に出ると、リィンの町まで一緒に行く約束をしていたエステラとニレルが、ちょうど門前についたところだった。エステラが元気よく手を振っている。
いつも首の後ろで一つに括っているエステラの髪が、さらりと風に靡いている。夏らしい白いひらひらワンピース姿のエステラは、息を呑むほど美しく可愛いかった。
「ふわぁぁぁあ!!! 可愛い!! エステラかわいいわ!!!!」
朝練の時は運動服姿だったので、マグダリーナは一気にテンションが上がった。
翻るワンピースの裾からは、いつものようにズボンが覗いているが、その細身のズボンの裾も斜めの段フリルになっていて、やっぱりかわいい。靴も白く踵が高めの、くるぶしまでのブーツで爪先を細らせてあった。
ニレルもエステラに合わせて、上品なブルーグレーのズボンとベストを着ている。
二人ともマントも身につけていた。
エステラのマントの内側には、スライムが入るポケットも付いている。もちろんハラ、ヒラ、モモが楽しそうに収まっていた。
「エステラお姉様、とってもかわいいわ! でもそのお衣装でダンジョンに入りますの?」
「これは戦闘用に防具も兼ねてるの。一応試作品だから、性能試験も兼ねて今日は着てみたのよ。リーナやレベッカの分はこっち! あとで使用感を教えてね。そしてこれ。上の階層に行くにつれ、階層ごとに明るさや気温も変わってくるのよ。このマントは防御の他にも、外気温の急激な変化を緩和してくれるから」
エステラは魔法収納からドレス二着と人数分プラス、ナードとヴヴのマントを出す。マグダリーナとアンソニーのマントの内側には、エステラのマントと同じように、スライムが仕舞えるポケットが付いていた。
マグダリーナとレベッカ、そして従魔のマントは裾スカラップでリボン飾りも付いて、とてもかわいい。
エステラが手を振ると、マグダリーナとレベッカは魔法の光に包まれて、ドレスに着替えてマントを羽織っていた。着ていた運動服は、まとめてマグダリーナの魔法収納に収まっている。
「すごく軽くて動きやすいですわ!!」
レベッカがくるりと回ってみせる。エステラのワンピースのように翻ったりしないが、勿忘草色のドレスはしっかり形崩れもせず美しいシルエットを保っている。
マグダリーナの青藤色のドレスも白いレースの襟が可愛い。
「ありがとう、エステラ! 私も頑張って強くなるわ」
あの夢で見た、未来を変えるために。
早速マグダリーナは、魔法収納から魔導車を取り出した。エステラが町長就任祝いにと贈ってくれた特別仕様魔導車だ。
形はモモ・シャリオ号と同じ。でもその色は真っ白の、タマ・シャリオ号だ。
タマ・シャリオ号の所有権限も、運転者登録権限もマグダリーナにあった。
次にまた拐われるようなことがあっても、これで逃げられるように……エステラは何も言わなかったが、マグダリーナはそのためのタマ・シャリオ号なのだと思った。
「オープン!」
タマ・シャリオ号は『たま~』と鳴いて、フロントと後部座席の扉を開いた。
マグダリーナが運転席、ライアンが助手席に乗ると、アンソニーがダーモットとマゴー1号を連れてきて、皆それぞれ後部座席に乗り込む。
まずは久しぶりの運転のカンを取り戻す為に、マグダリーナがリィンの町まで運転する。今回は領地戦の時のように壁面走行などないから、気が楽だ。
それからライアン、アンソニー、レベッカ……最後にダーモットの順で、運転者登録をしてダンジョン内で運転練習をする予定だった。一番手がライアンなのは、ウィングボードの操作も一番早くコツを掴んだと聞いたから。マグダリーナの代わりに教える側にもなってもらえそうだからである。
「さあ、リィンの町まで出発よ!」
全員乗り込んだのを確認して、マグダリーナはアクセルを踏み込んだ。
「基本は簡単なのよ。足元のアクセルを踏んで、進む、加速する。その隣のブレーキを踏んで、減速、停止。リーナが握ってるハンドルで、進行方向を決める……」
エステラが皆んなに、基本的な運転操作の説明をしていく。
「ニレルやエデンの運転操作と違うみたいですが……?」
よく観察している。アンソニーが左手を動かしながら言った。
「そうなの。より簡単に運転出来るようになってるのよ」
マグダリーナは慎重派なので、対向車のいない道路でも、スピードが出過ぎないよう気をつける。助手席のライアンは、隣でマグダリーナを観察して、大体のことは理解できたようだ。さっそく魔法表示画面を操作して、テーブルを出し入れしたり、地図を表示したりしている。
「到着予定時間が残り二十分ってなってるけど、いつもより早くないか?」
地図に表示された時間を見て、ライアンはマグダリーナに聞いたが、答えたのはエステラだ。
「マゴー車は通常、時速四十五キロ走行してるのよ。でもいま六十キロ出てるからね。もっと速度出しても平気よ」
「無理」
マグダリーナは即答した。
無事に野生の魔獣に遭遇することも、うっかりスライムを轢いてしまうこともなく、リィンの町に到着した。
そのまま女神の塔まで着くと、マグダリーナは一旦、タマ・シャリオ号を魔法収納に仕舞う。
『む!』
さて女神の塔に入ろうかというところで、エステラの後ろにいたササミ(メス)が、不意に翼に嘴を入れてモゾモゾする。
『バーナードから、手紙が届いたぞ』
「どうして脇に王子様からの手紙が届くんですの?!」
レベッカの驚きの声に、驚くところ、そこで良いんだっけ? マグダリーナは思った。
『マゴー達が転移してきたのだ』
ササミ(メス)は器用に両羽根で手紙を開ける。ハラもエステラのマントの中から、にゅっと顔を出す。
『なになに……親愛なるササミとハラへ。急ぎマグダリーナに伝えて欲しい』
その書き出し文に嫌な予感しかせず、マグダリーナは振り返ってササミ(メス)を見た。
『深夜辺境伯より、緊急通信が届いた。ギルギス国の第三王子と冒険者ギルド長、そしてAランク冒険者パーティが、辺境伯領を無断で通り抜けショウネシー領へ向かったという。彼らは王国最速の魔獣馬、ペガサスの馬車でやってきた。辺境伯の騎士が追っているらしいが、ペガサス相手に期待はできないだろう。俺と叔父上、ドロシー姉上も急ぎ其方に向かう。念の為、ショウネシー伯爵にはダンジョンに入らずに待機してもらいたい』
マグダリーナはさっそくダンジョンに入ろうとするダーモットの気配を察知し、ルシンから貰った魔鞭を振った。
魔鞭は素早くダーモットに巻きつく。
『という事らしいのだ』
「リーナ……」
ダーモットは鞭でぐるぐる巻きになったまま、しゅんとした顔で娘を見た。
「そんな顔してもダメです。隣国のお客様はお父さまのお話も聞きたいんですよ、きっと。配信をみて来られるんだもの」
エステラはササミ(メス)から手紙を受け取って、まじまじ眺める。
「ペガサス? ペガサスに会えるの!?」
「落ち着いてエステラ。おそらくエステラが期待してる天馬のことじゃないよ。たぶん天馬の血を引いた交配種が定着したものだ。ドルーン王国で何頭か育てていたはずだから」
ニレルの説明に、アンソニーも聞き返した。
「天馬の血を引いてるということは、空を飛ぶんですか?」
「そうだね。高さニメートルぐらいならね。あと普通の車体を引いていては飛べないよ。そのかわり、足はとても速いね」
「でもお師匠は、おでかけする時は、たまに女神の森からペガサスを呼んでいたわよね? いつも高い所から舞い降りてきてたわ」
エステラはニレルの袖を握って、ぶんぶん振る。ニレルは反対の手でエステラの頭を撫でた。
「そうだね。女神の森には確かに天馬がいる。叔母上の従魔だった天馬もね。彼にはちゃんと個別に名前があったんだ。普段は天馬の別称の『ペガサス』と呼んでいたけど」
エステラは思い切り目を見開いて、それからニレルの腕に顔を埋める。
「真っ黒でツヤッツヤで、紅玉みたいに綺麗な赤い目をした子だったわ……」
その色合いに、皆んな誰かを思い出していた。
「あの子の本当の名前は、ハラにも秘密だったの……」
ハラは少し悔しそうに、そしてどこか淋しそうに目を伏せた。
エステラ達が思い出を懐かしんでいる間に、マグダリーナの領民カードがブブブと震えて、ハンフリーから通信が入った。
『リーナ、隣国からのお客様が到着した』
「は? いま?!」
はやすぎないだろうか。はやすぎないだろうか? どんな速度出してるの??
『もう其方へ向かっている。それぞれ武器を携えた者達が乗っている。ダンジョン目当てだと思って通したが、辺境伯騎士団が追ってきた。すまない。気をつけてくれ』
「……ハンフリーさんは、絶対に領都を動かずにいて下さい。王宮からもこちらに人を寄越してくださるようなので、がんばってみます……!」
(向かってる? 向かってる? いま運転してきたあの道を通って?)
ダンジョンを見にくるのに、なんでそこまで慌てる必要あるのかしら……。マグダリーナはもう一度ササミが読み上げた内容を思い出す。
待って、あの手紙、無断って言ってなかった? 無断で辺境伯領通り抜けたって!
ありえない。一般他国民じゃなくて、王族や世界規模組織の関係者でしょ? お忍びでもないんでしょ? なにも言わずに王宮すら素通りして、直接こっちに来るなんて、なんて非常識な……というか、犯罪!
大陸の国家間条約で、王族は他国に入ったら、まずはその国の王城、または王宮を訪ね訪問の意図を詳らかにする決まり事がある。もちろん事前に訪問を知らせて、受け入れ国側の使者と共にだ。
それは先日の王族トリオ女神の塔視察で、何気なく「もしかしてお忍びで他国の王族がやってきたら?」と呟いた時に、「それは我が国に対する宣戦布告だから」と教えてもらった、まだぴっちぴちに新鮮な知識……。
おかげで今日の予定も、上がってた気分も潰れたわ。
「マゴー! 配信の準備よ!」
マグダリーナは高々と宣言した。
69
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
小さな貴族は色々最強!?
谷 優
ファンタジー
神様の手違いによって、別の世界の人間として生まれた清水 尊。
本来存在しない世界の異物を排除しようと見えざる者の手が働き、不運にも9歳という若さで息を引き取った。
神様はお詫びとして、記憶を持ったままの転生、そして加護を授けることを約束した。
その結果、異世界の貴族、侯爵家ウィリアム・ヴェスターとして生まれ変ることに。
転生先は優しい両親と、ちょっぴり愛の強い兄のいるとっても幸せな家庭であった。
魔法属性検査の日、ウィリアムは自分の属性に驚愕して__。
ウィリアムは、もふもふな友達と共に神様から貰った加護で皆を癒していく。
魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
異世界は流されるままに
椎井瑛弥
ファンタジー
貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。
日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。
しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。
これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
転生したので、今世こそは楽しく生きます!~大好きな家族に囲まれて第2の人生を謳歌する~
結笑-yue-
ファンタジー
『可愛いわね』
『小さいな』
『…やっと…逢えた』
『我らの愛しい姫。パレスの愛し子よ』
『『『『『『『『『『我ら、原初の精霊の祝福を』』』』』』』』』』
地球とは別の世界、異世界“パレス”。
ここに生まれてくるはずだった世界に愛された愛し子。
しかし、神たちによって大切にされていた魂が突然できた輪廻の輪の歪みに吸い込まれてしまった。
神たちや精霊王、神獣や聖獣たちが必死に探したが、終ぞ見つけられず、時間ばかりが過ぎてしまっていた。
その頃その魂は、地球の日本で産声をあげ誕生していた。
しかし異世界とはいえ、神たちに大切にされていた魂、そして魔力などのない地球で生まれたため、体はひどく病弱。
原因不明の病気をいくつも抱え、病院のベッドの上でのみ生活ができる状態だった。
その子の名は、如月結笑《キサラギユエ》ーーー。
生まれた時に余命宣告されながらも、必死に生きてきたが、命の燈が消えそうな時ようやく愛し子の魂を見つけた神たち。
初めての人生が壮絶なものだったことを知り、激怒し、嘆き悲しみ、憂い……。
阿鼻叫喚のパレスの神界。
次の生では、健康で幸せに満ち溢れた暮らしを約束し、愛し子の魂を送り出した。
これはそんな愛し子が、第2の人生を楽しく幸せに暮らしていくお話。
家族に、精霊、聖獣や神獣、神たちに愛され、仲間を、友達をたくさん作り、困難に立ち向かいながらも成長していく姿を乞うご期待!
*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈
小説家になろう様でも連載中です。
第1章無事に完走したので、アルファポリス様でも連載を始めます!
よろしくお願い致します( . .)"
*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる