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十四章 契約と誓約
276. 予定変更
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転移魔法の輝きに包まれて、王宮のマゴーに送りだされたアルバート王弟殿下、ドロシー第一王女、そしてバーナード第二王子が到着した。
アルバート王弟殿下はベストに。ドロシー王女はドレスに、そしてバーナードは神官服に。それぞれこの国では王族しか身につけることの許されない、特別な染料で染めた鮮やかな黄色を身に纏っている。更にアルバート王弟殿下のベストに刺繍されているのは、リーン王国の国章にもなっている、幻の猫科魔獣、獅子だ。
「リーナちゃん!」
ドロシー王女に声をかけていただいて、マグダリーナ達は綺麗なお辞儀をする。ニレルを除いて。ニレルはエステラがお辞儀するのを咎めはしない。マグダリーナと一緒にシャロンに習った作法を、一緒に実践したいのだと理解しているので。
「ようこそリィンの町へ。アルバート王弟殿下、ドロシー第一王女殿下、バーナード第二王子殿下。マグダリーナ・ショウネシーが代表してご挨拶申し上げます」
聡いドロシー王女は、配信に気づいたようで笑みを深めた。
「堅苦しい挨拶は、エリックの前だけにしてちょうだい。私はもうじき、ショウネシーの一員になるのですから」
「私もバーナードが女神の塔の三階に行くための付き添いだよ。公務ではないのだから、皆楽にしてくれ。ドロシーはここの職人達にドレスを注文したくて、ついて来たのだよ」
「私達は、父のいつもの配信に。今日は従魔のレベルアップもかねて、家族皆んなでダンジョンに入ろうと思ってたところなんです。ちょうど町長の仕事も、急ぎの案件はひと段落ついたので」
配信のカメラが、ハラとササミ(メス)との再会を喜ぶバーナードという癒し映像を映している間に、マグダリーナは、後ろ手にそっとダーモットから鞭を解いた。
「エステラどうしたのだ? いつもと顔が違う」
「顔が違う?」
エステラは呆然とバーナードの言葉を繰り返した。
エリック王太子の舞踏会で、ハイエルフとしてお披露目してしまったので、エステラとニレルは、偽名を使うのはやめていた。
「サングラスのせい?」
エステラは、女優のようなしっかりしたサングラスを鼻の上でくいくいと動かす。
「そうだ。ニレルも。どうしてわざわざ隠すのだ? 綺麗な顔をしているのに」
「ふふふー。ありがとう。これはね、夏の眩しい日差しから目を保護してるのよ。私とニレルが挑む階層は、ちょっと薄暗いところだから、視界を慣らすことも兼ねてね」
「なるほど、そうなのか」
ぴとぴとっとササミ(メス)とハラが、エステラにくっついて上目遣いで見た。
『主よ。バーナードは女神に仕える神官なのだ。女神の為にも、つつがなく塔から出してやらんといかんのだ』
「せっかくの神官服なの。つよつよにしてなの」
「三階までなら心配することないと思うけれど、まあ、良いわよ」
エステラが手を振ると、王族三人の衣服が淡く輝いた。
「防御力の付与はしたけど、無茶しちゃダメなんだからね」
「わかった。ありがとうエステラ、ハラ、ササミ」
バーナードが、ハラとササミ(メス)をまとめて抱っこした。
「ありがとうエステラちゃん、バーナードのおかげで私まで得してしまったね。それにその服、とても素敵で似合っているよ!」
おそらく末の第三王女にそうしているんだろう、アルバート王弟殿下はエステラを持ち上げると、くるくる回った。
「あはは! アルバートさん、すっごい力持ちで素敵ー」
エステラにとっては、褒めてくれた相手へ褒め返しただけだが、配信画面の向こうでめんどくさい父親がめんどくさい対抗心を燃やしていることなど、知る由もなかった……。
ちょうどそこへ、秘書マゴーがすっとやって来た。
「マグダリーナ様、門前に外国のお客様がいらっしゃったようです。門番と揉めております」
「揉めてる?! なんで?」
理由はお察しだが、一応そう言っておく。国同士の揉め事にせず、穏便に対処したいからこそ、一応偶然を装って王族の三人が来てるのだから。
「リーナ、クマゴーからの映像が届いたわ」
エステラは、ちらりとドロシー王女を見て、王女が小さく頷くのを確認して、その場に魔法で映像表示画面を展開した。二人のその様子に、マグダリーナの背筋に嫌な予感が走る。
羽根のついた馬が二頭、馬車を走らせている。はやい! コッコほどではないが、他の馬車より明らかに速度がある。そしてペガサス達はかなり汗を飛び散らせている。休息を取らずに無理に走らされているのが窺えた。
その後を、四体のコッコ(オス)に乗った騎士が追いかけていた。コッコカトリスは一応こう見えて竜種。魔獣としての格の違いか、まだ体力に余裕がうかがえた。
『この領地の個体ではないな』
ササミ(メス)が呟いた。
「あの装備は辺境伯騎士団だね」
アルバート王弟殿下が答える。
辺境伯騎士団の一人が、拡声魔導具を取り出した。
『お戻り下さい!! 今ならまだ、なかったことにすると王もおっしゃっています! リィンの町に入ると後戻り出来ませんよ』
だが馬車は警告を無視して、走り続ける。
騎士を乗せたコッコカトリス(オス)二体は、素晴らしい跳躍を見せて、馬車の前に踊りでた。
だが。
パン パン と、発砲音がした途端、二人の騎士はコッコカトリス(オス)から落下する。ショウネシーの美しい道路に、騎士の身体から滲む血が、じわりと広がる。
マグダリーナは、信じがたいものを見た。
「あれは……迷宮武器か!!」
「迷宮武器ってなんですの?!」
レベッカが青ざめながら、アルバート殿下に尋ねる。
「ダンジョンで手に入る、特殊な武器だ……」
「…………拳銃!!」
マグダリーナは震えながら、呟いた。
これは反則だ。こんなものに対抗出来るはずがない……。
それに、せっかく穏便に済まそうと、こっちは気を遣っていたというのに、この蛮行のせいで全てが台無しになった……!
倒れた騎士の横に、転移魔法の光が現れた。イラナとアーベルだ。イラナはコマコ達とすぐに、倒れている騎士達の治療に入る。
「ダメ! 逃げてアーベル!!」
思わずマグダリーナは、叫んだ。馬車からわずかに見える銃口は、確かにアーベルを狙っている。
『ギルギス王国には世話になった。だが、これ以上の狼藉は赦せぬ。そのままリィンの町で、身の程を知るがいい』
(――――え??)
アーベルは、ギルギス国の馬車をリィンの町の門前に転移させた。
アーベルは、ギルギス国の馬車をリィンの町の門前に転移させた。
アーベルは、ギルギス国の馬車をリィンの町の門前に転移させた……。
(そこはっ、お国にっ、返してちょうだいっっっ!!!!)
マグダリーナはタマ・シャリオ号を取り出すと、全員乗せて泣きながら走りだした。
アルバート王弟殿下はベストに。ドロシー王女はドレスに、そしてバーナードは神官服に。それぞれこの国では王族しか身につけることの許されない、特別な染料で染めた鮮やかな黄色を身に纏っている。更にアルバート王弟殿下のベストに刺繍されているのは、リーン王国の国章にもなっている、幻の猫科魔獣、獅子だ。
「リーナちゃん!」
ドロシー王女に声をかけていただいて、マグダリーナ達は綺麗なお辞儀をする。ニレルを除いて。ニレルはエステラがお辞儀するのを咎めはしない。マグダリーナと一緒にシャロンに習った作法を、一緒に実践したいのだと理解しているので。
「ようこそリィンの町へ。アルバート王弟殿下、ドロシー第一王女殿下、バーナード第二王子殿下。マグダリーナ・ショウネシーが代表してご挨拶申し上げます」
聡いドロシー王女は、配信に気づいたようで笑みを深めた。
「堅苦しい挨拶は、エリックの前だけにしてちょうだい。私はもうじき、ショウネシーの一員になるのですから」
「私もバーナードが女神の塔の三階に行くための付き添いだよ。公務ではないのだから、皆楽にしてくれ。ドロシーはここの職人達にドレスを注文したくて、ついて来たのだよ」
「私達は、父のいつもの配信に。今日は従魔のレベルアップもかねて、家族皆んなでダンジョンに入ろうと思ってたところなんです。ちょうど町長の仕事も、急ぎの案件はひと段落ついたので」
配信のカメラが、ハラとササミ(メス)との再会を喜ぶバーナードという癒し映像を映している間に、マグダリーナは、後ろ手にそっとダーモットから鞭を解いた。
「エステラどうしたのだ? いつもと顔が違う」
「顔が違う?」
エステラは呆然とバーナードの言葉を繰り返した。
エリック王太子の舞踏会で、ハイエルフとしてお披露目してしまったので、エステラとニレルは、偽名を使うのはやめていた。
「サングラスのせい?」
エステラは、女優のようなしっかりしたサングラスを鼻の上でくいくいと動かす。
「そうだ。ニレルも。どうしてわざわざ隠すのだ? 綺麗な顔をしているのに」
「ふふふー。ありがとう。これはね、夏の眩しい日差しから目を保護してるのよ。私とニレルが挑む階層は、ちょっと薄暗いところだから、視界を慣らすことも兼ねてね」
「なるほど、そうなのか」
ぴとぴとっとササミ(メス)とハラが、エステラにくっついて上目遣いで見た。
『主よ。バーナードは女神に仕える神官なのだ。女神の為にも、つつがなく塔から出してやらんといかんのだ』
「せっかくの神官服なの。つよつよにしてなの」
「三階までなら心配することないと思うけれど、まあ、良いわよ」
エステラが手を振ると、王族三人の衣服が淡く輝いた。
「防御力の付与はしたけど、無茶しちゃダメなんだからね」
「わかった。ありがとうエステラ、ハラ、ササミ」
バーナードが、ハラとササミ(メス)をまとめて抱っこした。
「ありがとうエステラちゃん、バーナードのおかげで私まで得してしまったね。それにその服、とても素敵で似合っているよ!」
おそらく末の第三王女にそうしているんだろう、アルバート王弟殿下はエステラを持ち上げると、くるくる回った。
「あはは! アルバートさん、すっごい力持ちで素敵ー」
エステラにとっては、褒めてくれた相手へ褒め返しただけだが、配信画面の向こうでめんどくさい父親がめんどくさい対抗心を燃やしていることなど、知る由もなかった……。
ちょうどそこへ、秘書マゴーがすっとやって来た。
「マグダリーナ様、門前に外国のお客様がいらっしゃったようです。門番と揉めております」
「揉めてる?! なんで?」
理由はお察しだが、一応そう言っておく。国同士の揉め事にせず、穏便に対処したいからこそ、一応偶然を装って王族の三人が来てるのだから。
「リーナ、クマゴーからの映像が届いたわ」
エステラは、ちらりとドロシー王女を見て、王女が小さく頷くのを確認して、その場に魔法で映像表示画面を展開した。二人のその様子に、マグダリーナの背筋に嫌な予感が走る。
羽根のついた馬が二頭、馬車を走らせている。はやい! コッコほどではないが、他の馬車より明らかに速度がある。そしてペガサス達はかなり汗を飛び散らせている。休息を取らずに無理に走らされているのが窺えた。
その後を、四体のコッコ(オス)に乗った騎士が追いかけていた。コッコカトリスは一応こう見えて竜種。魔獣としての格の違いか、まだ体力に余裕がうかがえた。
『この領地の個体ではないな』
ササミ(メス)が呟いた。
「あの装備は辺境伯騎士団だね」
アルバート王弟殿下が答える。
辺境伯騎士団の一人が、拡声魔導具を取り出した。
『お戻り下さい!! 今ならまだ、なかったことにすると王もおっしゃっています! リィンの町に入ると後戻り出来ませんよ』
だが馬車は警告を無視して、走り続ける。
騎士を乗せたコッコカトリス(オス)二体は、素晴らしい跳躍を見せて、馬車の前に踊りでた。
だが。
パン パン と、発砲音がした途端、二人の騎士はコッコカトリス(オス)から落下する。ショウネシーの美しい道路に、騎士の身体から滲む血が、じわりと広がる。
マグダリーナは、信じがたいものを見た。
「あれは……迷宮武器か!!」
「迷宮武器ってなんですの?!」
レベッカが青ざめながら、アルバート殿下に尋ねる。
「ダンジョンで手に入る、特殊な武器だ……」
「…………拳銃!!」
マグダリーナは震えながら、呟いた。
これは反則だ。こんなものに対抗出来るはずがない……。
それに、せっかく穏便に済まそうと、こっちは気を遣っていたというのに、この蛮行のせいで全てが台無しになった……!
倒れた騎士の横に、転移魔法の光が現れた。イラナとアーベルだ。イラナはコマコ達とすぐに、倒れている騎士達の治療に入る。
「ダメ! 逃げてアーベル!!」
思わずマグダリーナは、叫んだ。馬車からわずかに見える銃口は、確かにアーベルを狙っている。
『ギルギス王国には世話になった。だが、これ以上の狼藉は赦せぬ。そのままリィンの町で、身の程を知るがいい』
(――――え??)
アーベルは、ギルギス国の馬車をリィンの町の門前に転移させた。
アーベルは、ギルギス国の馬車をリィンの町の門前に転移させた。
アーベルは、ギルギス国の馬車をリィンの町の門前に転移させた……。
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