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七章 腹黒妖精熊事件
138. 人々の祈り
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テントの外に置いてあった桶を拾い、そこにマゴーが差し入れとして持参した蜂蜜と、元々マゴーの魔法収納に入っていた、ショウネシー特産サトウマンドラゴラのラム酒を入れ、騎士団長が腕まくりしてかき混ぜる。
「こんなものか」
「ついでに昏睡の魔法もかけておきましょう」
マゴーがいそいそと魔法をかける。
二人と一体が桶と距離を取ったところで、近くの空間に転移魔法の輝きが現れ、ヨナスがライアンとササミ(メス)を連れて来た。
「ヴェリタス! 怪我はないのか?」
ライアンが心配そうに、ヴェリタスの元にかけてくる。
ヴェリタスはそれが無性に嬉しかった。
兄弟にはなれなかったが、お互いを心配しあえる間柄にはなれた。
「俺は大丈夫、母上はどう?」
「もちろん大丈夫なわけないだろう! 俺たちと一緒に来ようとするから大変だったよ……今はダーモット父さんとルシン兄さんが二人がかりで見てるから、安心していい」
「そっか、ルシン兄と二人がかりか」
ライアンはそっとヴェリタスの背中を叩いて慰めると、騎士団長に向き合って綺麗な礼をした。
「君は……」
「ライアン・ショウネシーです。この度は従兄弟が大変お世話になってます。あちらがハイエルフのヨナス様と、ショウネシーの魔法使いの従魔、ササミです」
その紹介の直後、ササミ(メス)は勢いよく浄化の炎を吹いて、全てのテントを消しさった。
「あ…あ、」
騎士団長は言葉を無くしたが、そこにはテントの布だけが無くなり、倒れ伏す人々とその荷物、そしてその荷物を漁って食糧を貪りながら、貴重品を手当たり次第、懐の魔法収納に仕舞っていく愛くるしい小熊達の姿があった。
『ふむ、これで空気中の毒が無くなったぞ。患者たちに近づいても大丈夫だ。だが、熊が移動してからの方がよかろう』
腹黒妖精熊達は、突然テントが無くなってキョトンとしたものの、蜂蜜とラム酒の混ざった桶に気づくと、素早くそちらに移動した。だが。
桶の周りは既に多数の妖精熊でいっぱいだった。
「こんなに大量に……!? 一体どこに隠れてたんだ」
騎士団長の言葉に、全員同意した。
めいめい桶に手を突っ込んで、甘い酒を舐めては酔っぱらってふらふらになり、しばらくすると皆パタっと腹を出して倒れて寝息をたてていく。
「あのお腹に黒いバッテンがあるのが、妖精熊の亜種、腹黒妖精熊だよ。テントを襲ってたのは腹黒の方だけど、蜂蜜ラム酒に釣られて普通の妖精熊も出てきたみたい」
ヨナスは説明しながら、倒れてる人々に近づき、様子を確認していく。
ヴェリタスと騎士団長は、エリック王子の元に向かった。
「王子!!」
「触れるな!」
エリックを抱き起こそうと手を伸ばした騎士団長を、珍しく乱暴な口調でヨナスが止める。
幼い少年にしか見えないヨナスに怒鳴られて、騎士団長は一瞬反抗しかけたが、理性を総動員して思いとどまった。
ヨナスが身振り手振りで、患者から離れるように指示すると、自身も転移魔法で離れた。
「なんなんだよこれ! なんであんなただの妖精熊の亜種程度の魔獣が、こんな凶悪な毒を作れるんだよ、ハラやヒラじゃあるまいし!!」
それは患者を刺激しないようにと小さな声だったが、だからこそ絞り出された怒りが滲み出していた。
「我、創世の女神に願い奉らん。大地よ彼らに慈悲を……」
静かな詠唱と共に、ヨナスが短杖を振ると、患者達の横たわる地面に、その身体の下に、柔らかな苔が生え、その周囲に彼らを守るように細かな草木が絡み合って、壁や屋根を作っていく。
そして緑の病室から、ふらりと茶色のマゴーが転移してきた。
「申し訳ございません、ヴェリタス様……力及ばず、王子殿下を守りきれませんでした」
「お前は大丈夫なのか? チャー」
「はい、毒が張付き、動けなくはなりましたが、ササミ様の浄化とヨナス様の魔法のおかげで、自動回復機能が正常に動きだしましたので」
そう言ってチャーは深呼吸する。
「あー空気がうまい」
「呼吸してんのか?」
ヴェリタスは率直な疑問を口にした。
「我ら魔力が有れば、どこでも動けますが、あの毒の煙は植物体に張付き、外部からの魔力を取り込めなくする作用もあったようでして。危うく燻製にされるところでした……あれ? 撮影まだ続いてるんですか?」
チャーの言葉に、中継マゴーは頷いた。
「はい。マグダリーナ様が放送に介入した機会に一旦終了しようとしましたが、各神殿を通して王宮に放送を続けるよう国民からの要望がありまして」
「「リーナがどうしたんだ?」」
ヴェリタスとライアンの問いかけに、マゴーは魔法で映像表示画面を出すと、マグダリーナがショウネシー領民に向けた演説を映し出した。
そしてマグダリーナの演説が終わると、噴水の女神像の周りに集まって祈る人々、アーケード広場で、休憩所でそっと祈る人、コッコ(メス)に囲まれて、小さな女神の精石を両手に包んで祈るハンフリー、そしてダーモットとルシンに付き添われながら噴水の女神像に祈るシャロンが映し出された。
「ショウネシー領だけでなく、他領でも神殿に皆さんの無事を祈る人々が増えてるそうです」
「リーナ……」
ヴェリタスは胸にじわりとあたたかいものが広がるのを感じた。
「すごいな、リーナは。俺もショウネシーの平穏の為に頑張らないと」
ライアンはそういうと、ササミ(メス)から行李を受け取って、腹黒妖精熊を詰めこんでいく。
ヴェリタスと騎士団長もそれにならった。
「こんなものか」
「ついでに昏睡の魔法もかけておきましょう」
マゴーがいそいそと魔法をかける。
二人と一体が桶と距離を取ったところで、近くの空間に転移魔法の輝きが現れ、ヨナスがライアンとササミ(メス)を連れて来た。
「ヴェリタス! 怪我はないのか?」
ライアンが心配そうに、ヴェリタスの元にかけてくる。
ヴェリタスはそれが無性に嬉しかった。
兄弟にはなれなかったが、お互いを心配しあえる間柄にはなれた。
「俺は大丈夫、母上はどう?」
「もちろん大丈夫なわけないだろう! 俺たちと一緒に来ようとするから大変だったよ……今はダーモット父さんとルシン兄さんが二人がかりで見てるから、安心していい」
「そっか、ルシン兄と二人がかりか」
ライアンはそっとヴェリタスの背中を叩いて慰めると、騎士団長に向き合って綺麗な礼をした。
「君は……」
「ライアン・ショウネシーです。この度は従兄弟が大変お世話になってます。あちらがハイエルフのヨナス様と、ショウネシーの魔法使いの従魔、ササミです」
その紹介の直後、ササミ(メス)は勢いよく浄化の炎を吹いて、全てのテントを消しさった。
「あ…あ、」
騎士団長は言葉を無くしたが、そこにはテントの布だけが無くなり、倒れ伏す人々とその荷物、そしてその荷物を漁って食糧を貪りながら、貴重品を手当たり次第、懐の魔法収納に仕舞っていく愛くるしい小熊達の姿があった。
『ふむ、これで空気中の毒が無くなったぞ。患者たちに近づいても大丈夫だ。だが、熊が移動してからの方がよかろう』
腹黒妖精熊達は、突然テントが無くなってキョトンとしたものの、蜂蜜とラム酒の混ざった桶に気づくと、素早くそちらに移動した。だが。
桶の周りは既に多数の妖精熊でいっぱいだった。
「こんなに大量に……!? 一体どこに隠れてたんだ」
騎士団長の言葉に、全員同意した。
めいめい桶に手を突っ込んで、甘い酒を舐めては酔っぱらってふらふらになり、しばらくすると皆パタっと腹を出して倒れて寝息をたてていく。
「あのお腹に黒いバッテンがあるのが、妖精熊の亜種、腹黒妖精熊だよ。テントを襲ってたのは腹黒の方だけど、蜂蜜ラム酒に釣られて普通の妖精熊も出てきたみたい」
ヨナスは説明しながら、倒れてる人々に近づき、様子を確認していく。
ヴェリタスと騎士団長は、エリック王子の元に向かった。
「王子!!」
「触れるな!」
エリックを抱き起こそうと手を伸ばした騎士団長を、珍しく乱暴な口調でヨナスが止める。
幼い少年にしか見えないヨナスに怒鳴られて、騎士団長は一瞬反抗しかけたが、理性を総動員して思いとどまった。
ヨナスが身振り手振りで、患者から離れるように指示すると、自身も転移魔法で離れた。
「なんなんだよこれ! なんであんなただの妖精熊の亜種程度の魔獣が、こんな凶悪な毒を作れるんだよ、ハラやヒラじゃあるまいし!!」
それは患者を刺激しないようにと小さな声だったが、だからこそ絞り出された怒りが滲み出していた。
「我、創世の女神に願い奉らん。大地よ彼らに慈悲を……」
静かな詠唱と共に、ヨナスが短杖を振ると、患者達の横たわる地面に、その身体の下に、柔らかな苔が生え、その周囲に彼らを守るように細かな草木が絡み合って、壁や屋根を作っていく。
そして緑の病室から、ふらりと茶色のマゴーが転移してきた。
「申し訳ございません、ヴェリタス様……力及ばず、王子殿下を守りきれませんでした」
「お前は大丈夫なのか? チャー」
「はい、毒が張付き、動けなくはなりましたが、ササミ様の浄化とヨナス様の魔法のおかげで、自動回復機能が正常に動きだしましたので」
そう言ってチャーは深呼吸する。
「あー空気がうまい」
「呼吸してんのか?」
ヴェリタスは率直な疑問を口にした。
「我ら魔力が有れば、どこでも動けますが、あの毒の煙は植物体に張付き、外部からの魔力を取り込めなくする作用もあったようでして。危うく燻製にされるところでした……あれ? 撮影まだ続いてるんですか?」
チャーの言葉に、中継マゴーは頷いた。
「はい。マグダリーナ様が放送に介入した機会に一旦終了しようとしましたが、各神殿を通して王宮に放送を続けるよう国民からの要望がありまして」
「「リーナがどうしたんだ?」」
ヴェリタスとライアンの問いかけに、マゴーは魔法で映像表示画面を出すと、マグダリーナがショウネシー領民に向けた演説を映し出した。
そしてマグダリーナの演説が終わると、噴水の女神像の周りに集まって祈る人々、アーケード広場で、休憩所でそっと祈る人、コッコ(メス)に囲まれて、小さな女神の精石を両手に包んで祈るハンフリー、そしてダーモットとルシンに付き添われながら噴水の女神像に祈るシャロンが映し出された。
「ショウネシー領だけでなく、他領でも神殿に皆さんの無事を祈る人々が増えてるそうです」
「リーナ……」
ヴェリタスは胸にじわりとあたたかいものが広がるのを感じた。
「すごいな、リーナは。俺もショウネシーの平穏の為に頑張らないと」
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ヴェリタスと騎士団長もそれにならった。
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