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七章 腹黒妖精熊事件
139. 足りナイもの
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「放送が続いてるんなら、僕からどういう症状の毒か説明していい?」
ヨナスがマゴーに聞く。
「ええ、お願いします」
ヨナスは頷いた。
「まずは討伐隊を襲った、腹黒妖精熊について説明するよ。妖精熊は通常盗む以外に人に害をなすことはない。それは彼らが非常にひ弱で怠惰だからだ。だが極稀に、盗みの欲求が強く、道具を作ってより有利な状況で多くを盗ろうと、知恵を働かせる個体がいる。それが亜種の腹黒妖精熊に変化する。そして腹黒妖精熊が現れた群れは、群れ全体が腹黒妖精熊に変化する。これは、最初の腹黒妖精熊が群れのリーダーになり道具を作り出し、それを群れ全体で使用するようになるからなんだ。つまり亜種に変化しても、最初の一体以外は基本怠惰なまま変わらない。今回の毒は、その極珍しい、研究心のある腹黒妖精熊が作り出した、最悪な毒だ。鑑定すると《マンドラゴラの麻痺毒》とある。これは素材にマンドラゴラが使用されているという意味ではなく、マンドラゴラの様に痛感を発達させ、ほんの少しの接触や衝撃でも激しい苦痛を与える状態になり、更に身体を麻痺させて指一本動かすことも、声を上げるどころか、意識を手放すことも出来ない毒という事だ。彼らは解毒剤が出来るまで、僕らには想像も出来ない苦痛の中にいると認識してほしい。この状態は非常に命の力を削っていく。正直僕には、次の夜明けまで彼らの命が保つとは思えない」
「「「……!!!」」」
ヨナスの言葉に、ヴェリタス達三人は驚いて彼を見た。
それは、丁度転移で到着したマグダリーナ達も一緒だった。
ヨナスは言葉を続けた。
「だから祈ってほしい。女神に。奇跡を! 我らが創世の女神は、愛には愛を返す慈愛深い女神だ。祈りは必ず彼らの命を繋ぎ止めるだろう。今僕らに足りないのは時間と素材だ。解毒剤に必要な素材は希少なものが多く、その中でも幻と云われる風霊の緑柱玉と女神の闇花は、ハイエルフの長老とショウネシーの魔法使いが採取に向かっている。大量に必要な妖精キノコはエルロンド領から届く。他の素材も、冒険者ギルドやリオローラ商団の伝手で大体入手の目星はついてる。あとアルミラージの角だけが足りない。王宮の素材庫から一本見つかったが、あと二本必要だ。アルミラージの角の在庫、もしくはアルミラージの出現情報があれば、最寄りの神殿に申し出てほしい」
「アルミラージの角……」
ヨナスの言葉を、ヴェリタスはぼんやり呟いた。
「心当たりがあるの?!」
ヨナスは期待の眼差しでヴェリタスを見た。
「前の宮廷魔法師団長、ドミニク・オーブリーの杖がアルミラージの角だったんだ……」
「杖か……本来使用者の魔力に染まってる杖は、薬の素材に適さないんだけど……」
ヨナスが難しい顔をする。
「彼の杖でしたら、王宮で保管してある筈ですわ。短杖と長杖の両方。もちろん刑期が終わった彼に返す為ではなくてよ。魔法使いの杖には仕掛けが多いので、今の王宮に安全に処理出来る者が居ないからですわ……」
ドリーも難しい顔をして続けた。
「えっ!? ドリー?! 何でいんの!?」
ドリーの存在に気づいたヴェリタスは、驚いて声を上げる。ドリーの正体に気づいた騎士団長も、あ……、あ……、しか言えなくなっていた。
「もちろんこんな大変な時に、何もせずにはいられないからです。そうでしょう? 私は王族なのですから!」
ドリーがすっと顔を上げると、外套のフードがぱさりと背中に落ちた。
貴族の品位と威厳を表す、豪華なドレスも宝石もない。見窄らしいとすら思われかねない、質素な出立ちのドリーだったが、その所作から滲み出る気品は、確かに王族のそれだった。
ヨナスがマゴーに聞く。
「ええ、お願いします」
ヨナスは頷いた。
「まずは討伐隊を襲った、腹黒妖精熊について説明するよ。妖精熊は通常盗む以外に人に害をなすことはない。それは彼らが非常にひ弱で怠惰だからだ。だが極稀に、盗みの欲求が強く、道具を作ってより有利な状況で多くを盗ろうと、知恵を働かせる個体がいる。それが亜種の腹黒妖精熊に変化する。そして腹黒妖精熊が現れた群れは、群れ全体が腹黒妖精熊に変化する。これは、最初の腹黒妖精熊が群れのリーダーになり道具を作り出し、それを群れ全体で使用するようになるからなんだ。つまり亜種に変化しても、最初の一体以外は基本怠惰なまま変わらない。今回の毒は、その極珍しい、研究心のある腹黒妖精熊が作り出した、最悪な毒だ。鑑定すると《マンドラゴラの麻痺毒》とある。これは素材にマンドラゴラが使用されているという意味ではなく、マンドラゴラの様に痛感を発達させ、ほんの少しの接触や衝撃でも激しい苦痛を与える状態になり、更に身体を麻痺させて指一本動かすことも、声を上げるどころか、意識を手放すことも出来ない毒という事だ。彼らは解毒剤が出来るまで、僕らには想像も出来ない苦痛の中にいると認識してほしい。この状態は非常に命の力を削っていく。正直僕には、次の夜明けまで彼らの命が保つとは思えない」
「「「……!!!」」」
ヨナスの言葉に、ヴェリタス達三人は驚いて彼を見た。
それは、丁度転移で到着したマグダリーナ達も一緒だった。
ヨナスは言葉を続けた。
「だから祈ってほしい。女神に。奇跡を! 我らが創世の女神は、愛には愛を返す慈愛深い女神だ。祈りは必ず彼らの命を繋ぎ止めるだろう。今僕らに足りないのは時間と素材だ。解毒剤に必要な素材は希少なものが多く、その中でも幻と云われる風霊の緑柱玉と女神の闇花は、ハイエルフの長老とショウネシーの魔法使いが採取に向かっている。大量に必要な妖精キノコはエルロンド領から届く。他の素材も、冒険者ギルドやリオローラ商団の伝手で大体入手の目星はついてる。あとアルミラージの角だけが足りない。王宮の素材庫から一本見つかったが、あと二本必要だ。アルミラージの角の在庫、もしくはアルミラージの出現情報があれば、最寄りの神殿に申し出てほしい」
「アルミラージの角……」
ヨナスの言葉を、ヴェリタスはぼんやり呟いた。
「心当たりがあるの?!」
ヨナスは期待の眼差しでヴェリタスを見た。
「前の宮廷魔法師団長、ドミニク・オーブリーの杖がアルミラージの角だったんだ……」
「杖か……本来使用者の魔力に染まってる杖は、薬の素材に適さないんだけど……」
ヨナスが難しい顔をする。
「彼の杖でしたら、王宮で保管してある筈ですわ。短杖と長杖の両方。もちろん刑期が終わった彼に返す為ではなくてよ。魔法使いの杖には仕掛けが多いので、今の王宮に安全に処理出来る者が居ないからですわ……」
ドリーも難しい顔をして続けた。
「えっ!? ドリー?! 何でいんの!?」
ドリーの存在に気づいたヴェリタスは、驚いて声を上げる。ドリーの正体に気づいた騎士団長も、あ……、あ……、しか言えなくなっていた。
「もちろんこんな大変な時に、何もせずにはいられないからです。そうでしょう? 私は王族なのですから!」
ドリーがすっと顔を上げると、外套のフードがぱさりと背中に落ちた。
貴族の品位と威厳を表す、豪華なドレスも宝石もない。見窄らしいとすら思われかねない、質素な出立ちのドリーだったが、その所作から滲み出る気品は、確かに王族のそれだった。
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