ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ

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八章 エステラの真珠

152. 複雑な父オヤ心

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 朝日と共にエデンは目覚めた。
 怪我も傷もなく、いつも通りのイケてる身体だ。

 部屋の中を漂う小精霊達を認めて、エデンは既に、全てが済んだあとだと認識する。 
 心地の良い絹の寝具は、確かにショウネシーの我が家にいるのだと確信させた。

(俺の娘は……)

 無事なんだろうか、

 自然とそう思っている己に気づいて、エデンは口の端を皮肉げに歪めた。

(ナンテコッタ、ただの親子ごっこのつもりだったのに)

 ハイエルフの行く末を見届けるのが、最長老であり一番目のハイエルフたるエデンの役目だ。そのついでに最愛のディオンヌの、唯一の弟子の面倒くらい見てやっても、いい。そんな軽い気持ちだった……はず。

 兎に角無事を確認する為にエステラの寝室まで行き、その入り口の引戸を開いて、エデンは絶句した。
 一見すると隣同士のエステラとニレルの寝室だが、出入り口が分かれているだけで中は一部屋だったのだ。

 そうして睡眠に特化した木造の部屋は、壁に紙と絹でできた白い壁紙が貼られ、窓辺のカーテンも、白地に淡緑のつる草と薄紅の花が図案化された紋様を織り込んだ絹地で統一されている。
 周囲には木の床から魔法で、エステラの好きな薔薇をはじめ、香りの良い草花が咲き誇る。ついでに女神の光花と闇花も競い咲き、美しい鉱石達も配置され、さらに心地よいそよ風が吹いていた。

 その中心の大きな大きな寝台で、ニレルとエステラが一緒に眠っていた。

 それでも寝台の空間は余っており、そこには従魔達がめいめい好きな場所で、ころころ転がったりしながら寝ているのだ。

(従魔達はともかく、なんでニレルがちゃっかり一緒に寝てるんだ……)

 二人の幸せそうな寝姿に、エデンは呆れながらも安堵した。

 やがてヒラとハラが起き出し、自慢のぷるつやスライムボディを色んな方向に伸ばすと、イケスラパウダーたる光の粒を弾けさせながら、エデンのところにやって来た。

「エデおはぁ」
「ンあぁ、オハヨウ。ところでニレルとエステラはいつも同じ寝台で寝てるのかな?」
「体調不良の時以外はそうなの」
「皆んなで一緒に寝てるよぉ」

 ヒラはにゅっと手を伸ばして、エデンと手を繋いだ。

「エデも朝のお茶にする、お花摘みにいこぉ」

「……」

「どぉしたの?」
「いや、スライムに触るのはハジメテだと思ってな……」

「スライム、ハイエルフに近づくだけで死んじゃうもんねぇ。ヒラがベビーぃの時も、おばあちゃんすっごく魔力制御してくれてたよぉ」
「スラ競の時はデボラやアーベルがスライムの近くに居ても影響無かったの。エデンは努力が足りないの」
「いやいや、始まりのハイエルフと若いハイエルフを一緒にしちゃ良くないな。魔力の高さが全然違うだろ」

 今握っているヒラの手が、昨日最愛の女に触れた手だとは夢にも思わず、エデンは笑っていた。
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