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九章 噂と理不尽
181. ソイヤァァァ
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黄と緑にいたのが、ライアンとヴェリタスだとわかり、青の陣地にいた生徒達は茫然とした。
先程から魔法兵の攻撃を巧に躱し、砦を周回しているのが、消去法で家政科の女生徒レベッカだとわかったからだ。
魔獣が動かなくなった時点で、青月夜の狼は団旗の周囲に魔法兵を配置した。その甲斐あってか、桃スラの団員は攻撃を躱すものの攻撃してくることは無く、団旗を守る魔法兵の周囲を旋回するばかりだった。
レベッカは敵が茫然としている隙に、ウイングボードから飛び降りて、素早く青の団旗を奪った。そしてまたウイングボードに飛び乗る。
「あっ」
「ちょっと、卑怯だわ。降りていらっしゃいよ!!!」
相手が女生徒なら、男子生徒は手出ししにくいだろうと、騎士科と魔法科の女生徒が集まってくる。
彼女達は遠慮なくレベッカに攻撃していくが、レベッカはウイングボードを巧みに扱って攻撃を避ける。
そして、ライアンと同じように奪った団旗の棒の部分を使って、突きを与えつつ飾り布を絡めて掬い取っていった。
簡単そうに見えるが、なかなか難しく、ヴェリタスは早々に諦めたやり方だ。
近くの観戦席の窓から団扇が振られているのを見て、レベッカは団旗に絡んだ飾り布を自分の身体に掛けると、団旗をバトントワリングのように華麗に回わしてヘルメットを取る。
そして微笑んで手を振った。
可憐な美少女の姿に、一際大きな歓声が上がる。
「通信。3号機から本機へ」
「本機応答可能」
「青の団旗奪取とファンサ完了。これから一騎討ちに入りますわ」
「了解」
通信を受け取って、マグダリーナは深呼吸した。青の陣地付近から、一気に地形が複雑化する。正直、このまま進むのは面倒だった。
◇◇◇
ヘルメットを被り直して、レベッカはハイエルフの教えその一、――集団相手ではまず頭を潰す――を実践することにする。
「一騎討ちを申し込みますの。団長様はいらして?」
レベッカの言葉に、青狼団はざわついた。
中等部に上がったばかりの女生徒が、領地戦に慣れた高等部の団長と一騎討ちなど、身の程知らずにも程がある。特に青月夜の狼は、毎年一位争いに食い込む強豪団なのだ。
「すでに我が団の団旗と、団員の飾り布を奪っておきながら、何の為に一騎討ちを申し込むんだ」
立派な鎧を着込んだ、騎士科の男子生徒が現れる。周囲の団員達の様子からして、彼が団長なのだろう。
レベッカはもう一つのハイエルフの教えを実行した。
ウイングボードから降りて、小さな拳を砦の床に打ち付ける。
教えその二、――圧倒的な力の差を見せつける――だ。
石造りの床にぼこりと大きな穴が空く。
「私の目的は、徹底的な戦意喪失ですわ」
「そうか……」
青狼の団長は穴の空いた床を見て、目を瞑る。
「参りました」
団長はそのまま己の飾り布を差し出した。
(俺出番ないじゃん)
青の陣地に向かっていたヴェリタスは、苦笑いした。
◇◇◇
モモ・シャリオ号を走らせるマグダリーナの瞳に、とうとう団扇が目に入る。
「リーナ」「だいすき!!」
その二つの応援団扇を、エステラが満面の笑みで振っていた。
マグダリーナは覚悟を決めて叫んだ。
「ソイヤァァァ!!!!」
モモ・シャリオ号の前輪が、バウンドした後、勢いよく上がった。
ソイヤァ! ソイヤァ……ソイヤァ……ソイヤァッ!!……ソイヤ……ソイ
車内では、マグダリーナのソイヤに合わせて、ハイエルフ六人の男性の声でソイヤがこだまする。
艶のある大人の美声から始まり、年齢順にソイヤしていく。最後は無感情のソイで終わった。
(エステラ、なんでこんな機能つけたの?! あとルシンは真面目に最後まで言って!!)
まあでも、最後までソイヤされても困るのだが。
震える腹筋に力を入れて、マグダリーナは再度叫んだ。
「ソイヤァァァ!!!!」
ソイヤァ! ソイヤァ……ソイヤァ……ソイヤァッ!!……ソイヤ……ソイ
土壁が、赤熊の砦に向けて一直線に伸びる。
ウイリーしたモモ・シャリオ号は壁に接地して、壁面を一気に走り抜けた。
赤炎の熊の砦まで。
全ての視線が、壁面走行するモモ・シャリオ号に集まる。
緊張で震える手でハンドルを握り締め、マグダリーナは赤熊の砦前で土壁の魔法を消すと、モモ・シャリオ号をジャンプさせる。
ウインドウを開けて身を乗り出すと、赤の団旗を掴み、腕輪の魔導具を使って団旗を固定させている縄を切り裂き、抜き取った。
そのまま着地はしない。サイドに現れたパーツに団旗を固定して、マグダリーナは命令を指示すると、運転席にきちんと座り直す。
「コマンド/ウイング!」
モモ・シャリオ号の両脇から羽根が現れ、桜色の車体は飛翔した――
その時、マグダリーナは、何かが割れる音を聞いた。
パリン パリ パリン
空がひび割れ、透明なガラスのように溢れ落ちて、溶けて消えて行く。
魔導具の結界が壊れたのだ。
先程から魔法兵の攻撃を巧に躱し、砦を周回しているのが、消去法で家政科の女生徒レベッカだとわかったからだ。
魔獣が動かなくなった時点で、青月夜の狼は団旗の周囲に魔法兵を配置した。その甲斐あってか、桃スラの団員は攻撃を躱すものの攻撃してくることは無く、団旗を守る魔法兵の周囲を旋回するばかりだった。
レベッカは敵が茫然としている隙に、ウイングボードから飛び降りて、素早く青の団旗を奪った。そしてまたウイングボードに飛び乗る。
「あっ」
「ちょっと、卑怯だわ。降りていらっしゃいよ!!!」
相手が女生徒なら、男子生徒は手出ししにくいだろうと、騎士科と魔法科の女生徒が集まってくる。
彼女達は遠慮なくレベッカに攻撃していくが、レベッカはウイングボードを巧みに扱って攻撃を避ける。
そして、ライアンと同じように奪った団旗の棒の部分を使って、突きを与えつつ飾り布を絡めて掬い取っていった。
簡単そうに見えるが、なかなか難しく、ヴェリタスは早々に諦めたやり方だ。
近くの観戦席の窓から団扇が振られているのを見て、レベッカは団旗に絡んだ飾り布を自分の身体に掛けると、団旗をバトントワリングのように華麗に回わしてヘルメットを取る。
そして微笑んで手を振った。
可憐な美少女の姿に、一際大きな歓声が上がる。
「通信。3号機から本機へ」
「本機応答可能」
「青の団旗奪取とファンサ完了。これから一騎討ちに入りますわ」
「了解」
通信を受け取って、マグダリーナは深呼吸した。青の陣地付近から、一気に地形が複雑化する。正直、このまま進むのは面倒だった。
◇◇◇
ヘルメットを被り直して、レベッカはハイエルフの教えその一、――集団相手ではまず頭を潰す――を実践することにする。
「一騎討ちを申し込みますの。団長様はいらして?」
レベッカの言葉に、青狼団はざわついた。
中等部に上がったばかりの女生徒が、領地戦に慣れた高等部の団長と一騎討ちなど、身の程知らずにも程がある。特に青月夜の狼は、毎年一位争いに食い込む強豪団なのだ。
「すでに我が団の団旗と、団員の飾り布を奪っておきながら、何の為に一騎討ちを申し込むんだ」
立派な鎧を着込んだ、騎士科の男子生徒が現れる。周囲の団員達の様子からして、彼が団長なのだろう。
レベッカはもう一つのハイエルフの教えを実行した。
ウイングボードから降りて、小さな拳を砦の床に打ち付ける。
教えその二、――圧倒的な力の差を見せつける――だ。
石造りの床にぼこりと大きな穴が空く。
「私の目的は、徹底的な戦意喪失ですわ」
「そうか……」
青狼の団長は穴の空いた床を見て、目を瞑る。
「参りました」
団長はそのまま己の飾り布を差し出した。
(俺出番ないじゃん)
青の陣地に向かっていたヴェリタスは、苦笑いした。
◇◇◇
モモ・シャリオ号を走らせるマグダリーナの瞳に、とうとう団扇が目に入る。
「リーナ」「だいすき!!」
その二つの応援団扇を、エステラが満面の笑みで振っていた。
マグダリーナは覚悟を決めて叫んだ。
「ソイヤァァァ!!!!」
モモ・シャリオ号の前輪が、バウンドした後、勢いよく上がった。
ソイヤァ! ソイヤァ……ソイヤァ……ソイヤァッ!!……ソイヤ……ソイ
車内では、マグダリーナのソイヤに合わせて、ハイエルフ六人の男性の声でソイヤがこだまする。
艶のある大人の美声から始まり、年齢順にソイヤしていく。最後は無感情のソイで終わった。
(エステラ、なんでこんな機能つけたの?! あとルシンは真面目に最後まで言って!!)
まあでも、最後までソイヤされても困るのだが。
震える腹筋に力を入れて、マグダリーナは再度叫んだ。
「ソイヤァァァ!!!!」
ソイヤァ! ソイヤァ……ソイヤァ……ソイヤァッ!!……ソイヤ……ソイ
土壁が、赤熊の砦に向けて一直線に伸びる。
ウイリーしたモモ・シャリオ号は壁に接地して、壁面を一気に走り抜けた。
赤炎の熊の砦まで。
全ての視線が、壁面走行するモモ・シャリオ号に集まる。
緊張で震える手でハンドルを握り締め、マグダリーナは赤熊の砦前で土壁の魔法を消すと、モモ・シャリオ号をジャンプさせる。
ウインドウを開けて身を乗り出すと、赤の団旗を掴み、腕輪の魔導具を使って団旗を固定させている縄を切り裂き、抜き取った。
そのまま着地はしない。サイドに現れたパーツに団旗を固定して、マグダリーナは命令を指示すると、運転席にきちんと座り直す。
「コマンド/ウイング!」
モモ・シャリオ号の両脇から羽根が現れ、桜色の車体は飛翔した――
その時、マグダリーナは、何かが割れる音を聞いた。
パリン パリ パリン
空がひび割れ、透明なガラスのように溢れ落ちて、溶けて消えて行く。
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