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十一章 笛吹き
218. ロマンスの四阿
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学園にいたマグダリーナが、無事バンクロフト領のマンドラゴラ討伐が終了したのを知ることができたのは、お昼休みにマゴー達がお赤飯とちらし寿司のお弁当を届けてくれたからだ。
タマやシン、ナード、ヴヴの分のミニお重まである。
ヴィヴィアン公爵令嬢とその従魔の分もあったようで、ヴィヴィアンオススメの中庭にある四阿で昼食を取ることにした。
「これがお赤飯? もっと苺みたいな赤になるのかと思ってた……」
ヴェリタスが興味津々に、口に運ぶ。
「あーこのもちもちした食感、俺好きかも。それにごま塩美味い」
マグダリーナは高速で頷いた。
まだお口の中で、もち米の旨味を味わっているので、話はしない。淑女なので。
ちらし寿司の方は、エビ、ウニン、アボカ、ローストウモウとコッコの錦糸卵、香味野菜で彩られた豪華なものだ。アボカは島で見つかった、所謂アボカドだ。中の種が魔石だったり、皮が素材に使えるとか多少違いはある。
「マフンウニンの身だ。良かったね、シンの大好物だ」
「シン、これ好きにょ。トニーもいっぱい食べてー」
アンソニーが自分のお弁当のウニンをシンに渡すと、シンもお返しにアンソニーの好きなローストウモウを渡す。
マグダリーナの弟は、今日も可愛いかった。
「お米にも種類がありますのね。それにこうやって食感を残したまま酢や調味液でお味に変化を出せるのは、お米ならではですわ……」
レベッカがちらし寿司を食べて、頬を弛ませてから、神妙な顔をした。
「お料理はポーション作りや錬金術に似てると、エステラお姉様がおっしゃってたわ。私もお菓子作り以外にも習おうかしら……」
「あらぁ、お料理楽しいですわよぉ。レベッカさんも調理学お取りになりませんこと?」
「ヴィヴィアンお姉様、調理学もお取りになっていらっしゃるの?」
ヴィヴィアンはおっとりと頷いた。
「家政科の必須学科は全部修了してしまいましたのぉ。家格に合わないからと先生方には止められましたけど、給仕学、美容学、環境管理学、育児学も修了してしまいましたので、あたくしヒマなのですわぁ」
家政科の必須学科は、高位貴族や、貴族の女主人としての教養や必要知識が主であり、それ以外でヴィヴィアンの言った学科は、将来継ぐ家のない次男以下や在学中に結婚相手が見つからなさそうな女子が、高位貴族の邸宅や王宮などで使用人として働くための技能習得の学科だった。もちろん、調理学もそうだ。
「…………」
マグダリーナ達は、微妙な目配をし合った。
ヴィヴィアン公爵令嬢、出会いが出会いだったので、残念な印象が強いが、天然無自覚才女なのだ。
エリック王子のお相手にピッタリだと思うのだが……
「でしたら、薬草学はどうです? きっとポーション作りはヴィヴィアンお姉様に合いましてよ」
「ポーション作り……!!」
レベッカの提案にヴィヴィアンの瞳が輝いた。
食事が終わると、タマとシンのスライムコンビが、仲良く手入れされた花々に近づき、観察しはじめる。
「お花を折ったり、草を散らしたりしちゃダメよ」
マグダリーナは一応注意しておく。
「それにしてもここは花も綺麗だし、風通しも良くて、気持ちがいい場所だな」
ライアンは、美しく整えられて咲き誇る、色とりどりの花々を眺めた。
この四阿は、ちょうど中庭の奥の、わかりにくい場所にあって、まさに隠れ家と言って良い。
「こんな素敵な場所を、僕達に教えても良かったんですか?」
アンソニーはヴィヴィアンに聞いた。
「構いませんのぉ。ショウネシーは第二の故郷……もしかしたら、生涯の地になるかもしれませんものぉ。エステラちゃんの仲良しさんとは、あたくしも仲良しさんになりたいのですの」
ヴィヴィアンのその言葉に、誰もが微笑んだ。
「この場所は、叔母様から教えていただいたのですわぁ。王様が学園にいた頃、結ばれなかった恋人と逢瀬を重ねた、ロマンスの場所なんですって……あやかりたいですわぁ」
「いや、結ばれなかったんなら、あやかったらダメだ……ん?」
ツッコミをするヴェリタスが、ふいに真剣な顔をした。
「セドリック王に恋人がいたなんて、母上から聞いたことがない……」
「そりゃ、シャロン夫人は王妃様の親友だし、わざわざそんな話しないだろ」
それはそうだが、何かがヴェリタスのカンに引っかかる。
「公爵令嬢、今の話の真偽は……」
「あたくしは叔母様からは、王様には結婚まで考えた身分違いの恋人がいたとしか聞いてませんの」
それから珍しく、ヴィヴィアンは思案顔をした。
「言っていいのか、わかりませんわぁ……」
「いや、気になるから言ってくれよ」
「叔母様がおっしゃってましたの。もしこのことを、ショウネシーの子達に聞かれたら、恋人の名を教えてあげてよくってよと」
全員の視線が、マグダリーナとアンソニーに集まった。
なんか読めてきた。
マグダリーナは、嫌な予想を確認することにする。
「教えて下さい、ヴィヴィアン様」
ヴィヴィアンは頷いた。
「クレメンティーン・スタンレー、スタンレー伯爵家の庶子で孤児院育ちの娘だったそうですわぁ……」
マグダリーナは目を瞑って、天を仰いだ。
「やっぱり、お母さま……」
「叔母上……」
ヴェリタスも俯いて、手で顔を覆った。
アンソニーはただただ驚いて、目をぱちくりさせている。
「え?! じゃあ王様がリーナお姉様をエリック王子の婚約者にしたがったのって、そういう意味もありましたの!?」
驚くレベッカの横で、ライアンも目を丸くする。
「あのダーモット父さんが、まさか王様から恋人を奪った……の……? どうやって……」
ライアンの顔には、想像つかないとはっきり書いてある。
マグダリーナも同意だ。
「多分きっと、お母さまが身を引いたのよ……それしか考えられないわ……」
タマやシン、ナード、ヴヴの分のミニお重まである。
ヴィヴィアン公爵令嬢とその従魔の分もあったようで、ヴィヴィアンオススメの中庭にある四阿で昼食を取ることにした。
「これがお赤飯? もっと苺みたいな赤になるのかと思ってた……」
ヴェリタスが興味津々に、口に運ぶ。
「あーこのもちもちした食感、俺好きかも。それにごま塩美味い」
マグダリーナは高速で頷いた。
まだお口の中で、もち米の旨味を味わっているので、話はしない。淑女なので。
ちらし寿司の方は、エビ、ウニン、アボカ、ローストウモウとコッコの錦糸卵、香味野菜で彩られた豪華なものだ。アボカは島で見つかった、所謂アボカドだ。中の種が魔石だったり、皮が素材に使えるとか多少違いはある。
「マフンウニンの身だ。良かったね、シンの大好物だ」
「シン、これ好きにょ。トニーもいっぱい食べてー」
アンソニーが自分のお弁当のウニンをシンに渡すと、シンもお返しにアンソニーの好きなローストウモウを渡す。
マグダリーナの弟は、今日も可愛いかった。
「お米にも種類がありますのね。それにこうやって食感を残したまま酢や調味液でお味に変化を出せるのは、お米ならではですわ……」
レベッカがちらし寿司を食べて、頬を弛ませてから、神妙な顔をした。
「お料理はポーション作りや錬金術に似てると、エステラお姉様がおっしゃってたわ。私もお菓子作り以外にも習おうかしら……」
「あらぁ、お料理楽しいですわよぉ。レベッカさんも調理学お取りになりませんこと?」
「ヴィヴィアンお姉様、調理学もお取りになっていらっしゃるの?」
ヴィヴィアンはおっとりと頷いた。
「家政科の必須学科は全部修了してしまいましたのぉ。家格に合わないからと先生方には止められましたけど、給仕学、美容学、環境管理学、育児学も修了してしまいましたので、あたくしヒマなのですわぁ」
家政科の必須学科は、高位貴族や、貴族の女主人としての教養や必要知識が主であり、それ以外でヴィヴィアンの言った学科は、将来継ぐ家のない次男以下や在学中に結婚相手が見つからなさそうな女子が、高位貴族の邸宅や王宮などで使用人として働くための技能習得の学科だった。もちろん、調理学もそうだ。
「…………」
マグダリーナ達は、微妙な目配をし合った。
ヴィヴィアン公爵令嬢、出会いが出会いだったので、残念な印象が強いが、天然無自覚才女なのだ。
エリック王子のお相手にピッタリだと思うのだが……
「でしたら、薬草学はどうです? きっとポーション作りはヴィヴィアンお姉様に合いましてよ」
「ポーション作り……!!」
レベッカの提案にヴィヴィアンの瞳が輝いた。
食事が終わると、タマとシンのスライムコンビが、仲良く手入れされた花々に近づき、観察しはじめる。
「お花を折ったり、草を散らしたりしちゃダメよ」
マグダリーナは一応注意しておく。
「それにしてもここは花も綺麗だし、風通しも良くて、気持ちがいい場所だな」
ライアンは、美しく整えられて咲き誇る、色とりどりの花々を眺めた。
この四阿は、ちょうど中庭の奥の、わかりにくい場所にあって、まさに隠れ家と言って良い。
「こんな素敵な場所を、僕達に教えても良かったんですか?」
アンソニーはヴィヴィアンに聞いた。
「構いませんのぉ。ショウネシーは第二の故郷……もしかしたら、生涯の地になるかもしれませんものぉ。エステラちゃんの仲良しさんとは、あたくしも仲良しさんになりたいのですの」
ヴィヴィアンのその言葉に、誰もが微笑んだ。
「この場所は、叔母様から教えていただいたのですわぁ。王様が学園にいた頃、結ばれなかった恋人と逢瀬を重ねた、ロマンスの場所なんですって……あやかりたいですわぁ」
「いや、結ばれなかったんなら、あやかったらダメだ……ん?」
ツッコミをするヴェリタスが、ふいに真剣な顔をした。
「セドリック王に恋人がいたなんて、母上から聞いたことがない……」
「そりゃ、シャロン夫人は王妃様の親友だし、わざわざそんな話しないだろ」
それはそうだが、何かがヴェリタスのカンに引っかかる。
「公爵令嬢、今の話の真偽は……」
「あたくしは叔母様からは、王様には結婚まで考えた身分違いの恋人がいたとしか聞いてませんの」
それから珍しく、ヴィヴィアンは思案顔をした。
「言っていいのか、わかりませんわぁ……」
「いや、気になるから言ってくれよ」
「叔母様がおっしゃってましたの。もしこのことを、ショウネシーの子達に聞かれたら、恋人の名を教えてあげてよくってよと」
全員の視線が、マグダリーナとアンソニーに集まった。
なんか読めてきた。
マグダリーナは、嫌な予想を確認することにする。
「教えて下さい、ヴィヴィアン様」
ヴィヴィアンは頷いた。
「クレメンティーン・スタンレー、スタンレー伯爵家の庶子で孤児院育ちの娘だったそうですわぁ……」
マグダリーナは目を瞑って、天を仰いだ。
「やっぱり、お母さま……」
「叔母上……」
ヴェリタスも俯いて、手で顔を覆った。
アンソニーはただただ驚いて、目をぱちくりさせている。
「え?! じゃあ王様がリーナお姉様をエリック王子の婚約者にしたがったのって、そういう意味もありましたの!?」
驚くレベッカの横で、ライアンも目を丸くする。
「あのダーモット父さんが、まさか王様から恋人を奪った……の……? どうやって……」
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