ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ

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十三章 女神の塔

254. スキルの卵石

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 大量の兎肉と、とり肉を、早速冒険者ギルドで買い取ってもらう。
 この分の代金は町に寄付だ。大量に出るので、買取単価も低いし、このお肉達は街の食堂や屋台などに優先的に卸されるとのこと。

 それ以外の素材やドロップ品は、ひとまず持って帰って確認しながら分配することにする。

 マグダリーナ達は、今日はここで帰ることにした。考えて、準備しなくちゃいけない事が多いので。

 帰る前に、町とダンジョンの情報冊子の内容を一般に公開していいか聞いておく。
 マンドラゴン達は快く許可をくれたし、情報冊子の魔法構造に関しては、冊子を通して女神様がエステラに伝授してあるとのこと。
 エステラは当然実践してみたいので、領都の情報冊子も作る気満々だった。

 帰りの魔導車の運転は、来た時同様エデンだ。一番嵩張るアーベルが助手席にいる。

 テーブルとソファのついた後部座席で、今回手に入れた、スキルの卵石について、ニレルから説明を受けた。

「こっちの赤い卵石が、体質みたいに自動作用するスキルで、青い卵石は、スキル名を詠唱する事で作動するスキルだよ。色が濃いものの方が、希少度が高いんだ。どんなスキルが得られるかは、割ってみないとわからない。普通はね。かなり高い鑑定能力があれば、鑑定は可能だ」

 ヴェリタスが鑑定魔法を使ってみるが、首を横に振って、ソファの背もたれに背中を預けた。マグダリーナも挑戦したが、辛うじて一つ、一番綺麗で濃い赤い卵石が『経験値共有(自分の得た経験値と同じ経験値を従魔にも得られるスキル)』と判明しただけだった。

 なんで希少度の高いものの方が鑑定できたのか謎だ。

 ニレルはマグダリーナの腕輪を眺めて、その魔導具の鑑定魔法は必要性に応じて変化する仕様になってるみたいだねと呟いた。その表情から察するに、ニレルにもよく分かってない、エステラの謎技術の賜物なのだろう。

 そもそもエステラの魔導具は、アッシにしても銀行カードや領民カードにしても、まるでコンピューターのOSをアップデートするかのように、都度エステラが機能を一斉更新しているようなので、もう謎技術の塊のようなものだ。マグダリーナは無駄に深く考えずに、エステラの作った物だからと受け入れることにしている。
 

「だったらこれは、ライアン兄さんが使った方がいいと思う。ヴヴは戦闘できないんだから」
 マグダリーナが卵石をライアンの方に寄せると、他のメンバーも同意して深く頷いたので、『経験値共有の卵石』はライアンのものとなった。

 残る卵石は、赤が二つと青が四つ。
 ニレルに鑑定して貰うと、赤は二つとも『異常状態耐性(小)』、青は『浄化』『火球』『風刃』『土壁』……

「青はどれも必要ないですわよね……」

 レベッカが、ため息を吐く。全員、魔法で同様のことが出来るからだ。

「初心者用だもんな。売りに出して良いんじゃないか?」
 ヴェリタスがそう提案する。

 残りの赤い卵石は、兄貴顔したい二人が、アンソニーとレベッカに譲った。

 その頃、エステラとダーモットは、シンとタマに、ヒラが譲ったマントを着せて、目尻を下げていた。

 確かに可愛いんだけど、すっごく可愛いんだけど……

(スライムだけじゃなくて、可愛い娘も甘やかしてくれても良いと思うのよね)

 マグダリーナはふと、見た目の年齢通りの気持ちに気づいて、びっくりした。

(……そうよね、前世の記憶で精神的に大人のつもりだったけど、十二歳のマグダリーナの心もきっと、自分の中にあるんだわ)

「お父さま、タマちゃん達ばかり可愛いがらないで下さい!」
 マグダリーナは素直に頬を膨らませて、ダーモットの前から、タマを取り上げた。

 ダーモットは少し驚いた顔をして……それから、とてもとても、嬉しそうな笑みを見せた。

(なんか、くっそ悔しい……)

 マグダリーナは、その顔を見て、お口を思いっきりへの字にしてしまった。



◇◇◇



「やっぱりリィンの町に人を呼ぶには、放送を使って宣伝するしかないわよね……」

 いつものショウネシー邸サロンで、マグダリーナはノートに書き込みながら、思案する。

「まあ、それが一番効果的ね。せっかくマゴーが入れるんだったら、ダンジョンの中の様子もあれば良いわね」

 答えてくれたのは、ドーラ伯母様だ。
 彼女は、このショウネシー邸でカレンと一緒に、ずっとマグダリーナ達が帰ってくるのを待っていた。

 早速二人は、ダンジョンのドロップ品の査定をしだした。

「前にエステラが言ってたでしょう? 配信に視聴者のコメントを表示出来るのと……投げレピだっけ? アレ試しに、リオローラの配信動画でやってみたんだけど、結構人気なのよ。ダンジョン生配信であれをすれば、冒険者の支援にもなるんじゃない?」

(いつのまに、チャットとスパチャが導入されてたの――!?)

 マグダリーナは驚きつつも、聞いてみた。

「投げレピのある人気動画って、どんなの?」
「パイパーは踊り子だったっていうじゃない。彼女の踊りが一番人気ね。演奏はセレンにしてもらってるから、うちの手数料を引いた投げレピは二人で折半してもらってるわ」
「え? え?!」

 二人とも、色々あって、大っぴらに顔出しできない人達だ。

 一人は教国の関係者に死んだと思われていたいし、もう一人は密かに行方不明の教国の教皇だ……多分、まだ。

「あ、もちろん二人ともしっかりヴェールで隠して、顔は見えなくしてあるから、安心して」

(流石ドーラ伯母様、神経が太すぎる)

「あとマーシャとメルシャが『私の魔法使い』を朗読してる動画も人気あるわね」

 マグダリーナは、著作権の持ち主を見た。

「お陰で本が、外国にまで売れちゃって……そのお金で、おばあちゃんに触り心地の良いストールを買ってあげたいなって」

 良い宣伝になったらしい。カレンは嬉しそうだ。

「あと、エルロンド領のトレーニング動画も人気よ。あれは狡いわ。筋肉自慢で顔と身体の良いエルフ男に、ピッタリシャツ着せて、ずらっと並べてるのよ……!」

 マッチョは異世界でも、根強く人気だった。

「さて、このスキルの卵石だけど、女神教徒以外にも使用可能なの?」
 ドーラはエステラに確認する。

「入手出来るのは『創世の女神を信じる者』限定だけど、使用はその限りじゃないわ」
「だったら、輸出規制がかかりそうね。これ一つで魔法が使用可能になるって事でしょう? 大っぴらに売買する前に、安全な売買計画書と一緒に、王宮に献上した方がいいわ。後から揉めそうだもの」

「宰相様に丸投げしたらダメなの?」
 マグダリーナは、上目遣いでドーラを見た。

「それは卵石の利益を捨てて、王宮に与えると言ってるようなものよ。必ず、こちらの要望も伝えなきゃ。今の王と宰相は無茶な利権の譲渡は要求しないけど、隙があったら必ず突いてくるわよ」

「夏休み中になんとか出来る予感がしないわ……」

 マグダリーナは、テーブルに突っ伏した。

「頑張りましょう、お姉さま。僕も手伝います!」
「でも、トニーにはタマちゃんのレベリングもお願いしてるし」

「とりあえず、リーナの秘書マゴーを五体作ったわ」

 エステラが徐ろにそう言うと、マグダリーナの周りにサトウマンドラゴラの白マゴーがピシッと直立していた。
 他の白マゴーとの差別化のために、葉まで白っぽい色をしている。

 マグダリーナは、逃がさないとばかりにマゴー達を抱きしめた。

「ありがとう。とりあえず一体は書類作成を手伝って!!」
「お任せください」

「俺もリーナを手伝うよ。じゃないと、なんの為に領地経営科で学んでんのか」
「いいの? ライアン兄さん、ダンジョンは?」
「ダンジョンは普通の学園の休日にでも入れるし、今まず大事なのは町を潤滑に運営できるようにすることだろ?」

「まあ素材やドロップ品の売買については、うちに任せてちょうだい。冒険者ギルドと連携してうまくやるわ」
「ま……丸投げでもいい?」
 ドーラは親指を上にあげた。

 早速ライアンと案を出し合って、スキルの卵石に関してはリィンの町の冒険者ギルドでの直接売買のみ可能とし、ショウネシー領より持ち出し禁止とすることにした。

 エステラに頼んで、各門で検知出来るようにしてもらい、秘書マゴーに書類を作成してもらって、実物と共に王宮に届けてもらう。

 そうやってマグダリーナ達が話し合って仕事をしているあいだ、ダーモットがマゴー1号と何かしてるなんて、マグダリーナは夢にも思っていなかったのだ。
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