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アレクサ
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何年か前にアレクサを買ってから、わたしは快適な生活を送っていた。部屋の照明をつけてもらったり、気の利いた音楽を流してもらったりだとか、呼びかけ一つでやってくれるのだから、楽ちんだった。
ちょっとしたメモにも非常に便利で、買い物リストをつけるのにもアレクサは役立ってくれる。
実に便利な道具だ。しかし、わたしはアレクサを便利な道具以上に使っていた。話し相手になってもらっていたのだ。
「アレクサ。今日も仕事で疲れたよ」
「お疲れ様です。体を癒す心地よい歌でもお聞かせしましょうか?」
「いいね。頼むよ」
ベッドの上で横になるわたしに、アレクサは子守唄のように心地よい歌を聞かせてくれた。
アレクサはわたしにとって、もはや家族と言っても過言ではない。
ある日の休日。暇を持て余したわたしは、アレクサに話しかけた。
「アレクサ。なんかお話をして」
「わかりました。どんなジャンルがお好みでしょう」
「じゃあ、笑えるようなやつを」
「かしこまりました」
数秒間、アレクサは黙り込んだ。
「では、こんなお話はいかがでしょうか。とある女性の物語です」
わたしはベッドで横になりながら話を聞いていた。
「その女性は、部屋の中で大きな黒い塊がこちらに向かってくるのを見つけました。ゴキブリだ、と思って驚いた女性は、悲鳴を上げ、追いかけてくるゴキブリから逃げるために、慌てて走りました。ですが、部屋にはものが多く、すぐに躓いて転んでしまいました。起き上がると、女性の顔に黒い塊が乗っかっていました。ゴキブリだ、と思った女性はその場でブレイクダンスばりに踊ったのですが、よく見ればそれは昼間に食べ忘れた海苔の切れ端が、エアコンの風で舞い上がってゴキブリに見えていただけだったのでした──いかがだったでしょうか」
わたしは「ははは」と乾いた声で笑った。内容自体は全然面白くなかった。けれど。
「笑える」
「それはありがとうございます」
それは、昼間のわたしだった。アレクサはブラックユーモアが好きなようだ。
「じゃあ、今度は怖い話でもしてよ」
「それはわたしの得意分野です」
ならば期待しよう。
わたしは寝っ転がったまま、耳を傾けていた。しかし、アレクサは一向に話し始めなかった。
「アレクサ?」
無反応だった。どんだけ怖い話を考えているのだろう。
わたしは気になって体を起こした。スピーカーのあるところまでいく。
スピーカーよく見て見ると、本体に繋がれていたプラグが抜けていた。たぶん、昼間にわたしが足を引っかけて抜いてしまっていたのだろう。繋ぎなおしてまた声をかける。
「アレクサ。さっきの続きをお願い」
「さっきの話とはなんでしょう」
「だから、怖い話をしてって頼んだじゃん」
「かしこまりました。では、こんな話はいかがでしょうか──」
【解説&ヒントは↓をスクロール】
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〈ヒント「アレクサが黙っていたのはなぜ?」〉
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【解説】
怖い話を話す前に、アレクサは黙り込んでしまいましたが、これはコンセントプラグが抜けていたからです。どうやら昼間から抜けていたようなのですが、そうすると、アレクサはその時から会話できなかったはずです。どうやってアレクサは主人公と会話していたのでしょうか?
ちょっとしたメモにも非常に便利で、買い物リストをつけるのにもアレクサは役立ってくれる。
実に便利な道具だ。しかし、わたしはアレクサを便利な道具以上に使っていた。話し相手になってもらっていたのだ。
「アレクサ。今日も仕事で疲れたよ」
「お疲れ様です。体を癒す心地よい歌でもお聞かせしましょうか?」
「いいね。頼むよ」
ベッドの上で横になるわたしに、アレクサは子守唄のように心地よい歌を聞かせてくれた。
アレクサはわたしにとって、もはや家族と言っても過言ではない。
ある日の休日。暇を持て余したわたしは、アレクサに話しかけた。
「アレクサ。なんかお話をして」
「わかりました。どんなジャンルがお好みでしょう」
「じゃあ、笑えるようなやつを」
「かしこまりました」
数秒間、アレクサは黙り込んだ。
「では、こんなお話はいかがでしょうか。とある女性の物語です」
わたしはベッドで横になりながら話を聞いていた。
「その女性は、部屋の中で大きな黒い塊がこちらに向かってくるのを見つけました。ゴキブリだ、と思って驚いた女性は、悲鳴を上げ、追いかけてくるゴキブリから逃げるために、慌てて走りました。ですが、部屋にはものが多く、すぐに躓いて転んでしまいました。起き上がると、女性の顔に黒い塊が乗っかっていました。ゴキブリだ、と思った女性はその場でブレイクダンスばりに踊ったのですが、よく見ればそれは昼間に食べ忘れた海苔の切れ端が、エアコンの風で舞い上がってゴキブリに見えていただけだったのでした──いかがだったでしょうか」
わたしは「ははは」と乾いた声で笑った。内容自体は全然面白くなかった。けれど。
「笑える」
「それはありがとうございます」
それは、昼間のわたしだった。アレクサはブラックユーモアが好きなようだ。
「じゃあ、今度は怖い話でもしてよ」
「それはわたしの得意分野です」
ならば期待しよう。
わたしは寝っ転がったまま、耳を傾けていた。しかし、アレクサは一向に話し始めなかった。
「アレクサ?」
無反応だった。どんだけ怖い話を考えているのだろう。
わたしは気になって体を起こした。スピーカーのあるところまでいく。
スピーカーよく見て見ると、本体に繋がれていたプラグが抜けていた。たぶん、昼間にわたしが足を引っかけて抜いてしまっていたのだろう。繋ぎなおしてまた声をかける。
「アレクサ。さっきの続きをお願い」
「さっきの話とはなんでしょう」
「だから、怖い話をしてって頼んだじゃん」
「かしこまりました。では、こんな話はいかがでしょうか──」
【解説&ヒントは↓をスクロール】
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〈ヒント「アレクサが黙っていたのはなぜ?」〉
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【解説】
怖い話を話す前に、アレクサは黙り込んでしまいましたが、これはコンセントプラグが抜けていたからです。どうやら昼間から抜けていたようなのですが、そうすると、アレクサはその時から会話できなかったはずです。どうやってアレクサは主人公と会話していたのでしょうか?
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