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プリン
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冷蔵庫で冷やしていたはずのわたしのプリンがいつのまにかなくなっている。まただ。
わたしの彼氏はいつも人のものを勝手に食べてしまう。注意しても、名前をちゃんと書いても、「食べないで」って書いた付箋を張っても勝手に食べてしまう。
楽しみにしていたわたしは、なくなっているのを見るといつも悲しくなる。悲しみは、だんだんと怒りに変わって「食べないでって言ったでしょ!」と怒鳴ると、いつだって彼氏は「食べてないよ」と見え透いた嘘をつく。もうたくさんだ。
だからわたしはお仕置きすることにした。
買ってきたプリンに毒を仕込んでおいた。食べた瞬間には気づかないけれど、一口でも食べれば、ころりとあの世へと旅立ってしまうという強力な毒。「食べたら死ぬよ」とちゃんと付箋にて警告した。これで死んでも警告を無視するのが悪いのだ。
翌日プリンが冷蔵庫からなくなっていた。ざまあみろ。でも、あれ? 彼氏が死んでないぞ?
「どうかしたの?」って彼氏が心配の顔を向けてくる。どうかしたのはこっちの台詞だよ!
まさか毒に耐性があるの? でもそんなはずない。だってあれは一口だけでも致死量に達する強力な毒なんだから。
おかしいなとは思いつつも、でも理由はわからなくて、それがなんか怖くてもうプリンも買わなくなって、どんどんと時が流れた。
◆
それはある日のことだった。わたしが冷蔵庫を開けると、中から大量のプリンが飛び出してきた。意味がわからなかった。
「洗濯機の奥から靴下がたくさん出てくる話ってよくあるでしょ。それと同じだよ」
と、彼氏は冷蔵庫の様子を見て笑っていた。
たしかに、そういう話は聞くけれど、でも冷蔵庫のどこに隠れる隙間があるというのだ。そう言おうとしたけれど、彼氏がわたしのことをジト目で見ていたので、
「なに?」
と聞いた。
「謝ってほしいんだけど」
「え?」
「だって、ずっと俺のこと疑ってたでしょ」
「そりゃあ、だって」
「俺、前に言ったよね。もしも俺が食べてたなら、ゴミがゴミ箱にあるはずだって。でも一個もなかったじゃん」
「それは、コンビニとかに行って捨てたのかと」
「わざわざコンビニ行くの? 捨てるためだけに? だったらコンビニでプリン買うでしょ」
ぐうの音も出なかった。でもあの状況で疑わない方がおかしい。もしも彼氏じゃないなら、赤の他人が家の中に入り込んでいたことになってしまうから。でもそうじゃなかった。
そして、彼氏が「ほら」と催促する。謝れ、ということだ。
「うぅ……ご、ごめんな……さい」
「もっとちゃんと言ってほしいなー」
「ごめんなさい!」
「はいはい。許してあげますよ~」
もともとあんまり怒ってない様子で彼氏はわたしのことを許してくれた。それにしてもこの大量のプリンはどうしよう。
「賞味期限切れが多いね」
「これだけの数を捨てるのはもったいないね」
「まあ、仕方ないよ」
彼氏がゴミ袋を持ってきた。「あとはやっておくよ」というので、私はお言葉に甘えた。リビングにいると、袋を縛り終えた彼氏が戻ってきた。今度は彼氏が甘える番で、ソファーに座る私の膝の上に頭を乗せて、横になった。しばらくの間、その状態で二人でテレビを見ていた。
二人で笑いながら見ていると、次第に小腹が空いてきた。彼氏はいつのまにか寝ていた。ゆっくりと頭をどかして、何か冷蔵庫になかったかなと、ソファーから立ち上がる。
プリンが一つ入っていた。捨て忘れたのかな? そう思って、手に取ると賞味期限がギリギリ過ぎていないものだった。おそらく彼氏がまだ食べられると見つけて取っておいてくれたのだろう。
わたしは、スプーンを棚から出して、プリンを食べた。
「う~ん、おいしい」
【解説&ヒントは↓をスクロール】
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〈ヒント「賞味期限が切れていないということは……?」〉
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【解説】
多くのプリンの賞味期限が切れている中で、切れていないということは、それは一番あたらしいプリンということで、そのプリンは毒入りだったはずです。つまり、主人公は毒入りプリンを口にしてしまった、ということですね。
それにしても、洗濯機から靴下が出てくるようにプリンが出てくる冷蔵庫とは一体何なのか?
たやすく猛毒を手に入れて、あっさり彼氏を毒殺しようとしている主人公はなんなのか?
別の部分で謎が深まるばかりですねえ。
わたしの彼氏はいつも人のものを勝手に食べてしまう。注意しても、名前をちゃんと書いても、「食べないで」って書いた付箋を張っても勝手に食べてしまう。
楽しみにしていたわたしは、なくなっているのを見るといつも悲しくなる。悲しみは、だんだんと怒りに変わって「食べないでって言ったでしょ!」と怒鳴ると、いつだって彼氏は「食べてないよ」と見え透いた嘘をつく。もうたくさんだ。
だからわたしはお仕置きすることにした。
買ってきたプリンに毒を仕込んでおいた。食べた瞬間には気づかないけれど、一口でも食べれば、ころりとあの世へと旅立ってしまうという強力な毒。「食べたら死ぬよ」とちゃんと付箋にて警告した。これで死んでも警告を無視するのが悪いのだ。
翌日プリンが冷蔵庫からなくなっていた。ざまあみろ。でも、あれ? 彼氏が死んでないぞ?
「どうかしたの?」って彼氏が心配の顔を向けてくる。どうかしたのはこっちの台詞だよ!
まさか毒に耐性があるの? でもそんなはずない。だってあれは一口だけでも致死量に達する強力な毒なんだから。
おかしいなとは思いつつも、でも理由はわからなくて、それがなんか怖くてもうプリンも買わなくなって、どんどんと時が流れた。
◆
それはある日のことだった。わたしが冷蔵庫を開けると、中から大量のプリンが飛び出してきた。意味がわからなかった。
「洗濯機の奥から靴下がたくさん出てくる話ってよくあるでしょ。それと同じだよ」
と、彼氏は冷蔵庫の様子を見て笑っていた。
たしかに、そういう話は聞くけれど、でも冷蔵庫のどこに隠れる隙間があるというのだ。そう言おうとしたけれど、彼氏がわたしのことをジト目で見ていたので、
「なに?」
と聞いた。
「謝ってほしいんだけど」
「え?」
「だって、ずっと俺のこと疑ってたでしょ」
「そりゃあ、だって」
「俺、前に言ったよね。もしも俺が食べてたなら、ゴミがゴミ箱にあるはずだって。でも一個もなかったじゃん」
「それは、コンビニとかに行って捨てたのかと」
「わざわざコンビニ行くの? 捨てるためだけに? だったらコンビニでプリン買うでしょ」
ぐうの音も出なかった。でもあの状況で疑わない方がおかしい。もしも彼氏じゃないなら、赤の他人が家の中に入り込んでいたことになってしまうから。でもそうじゃなかった。
そして、彼氏が「ほら」と催促する。謝れ、ということだ。
「うぅ……ご、ごめんな……さい」
「もっとちゃんと言ってほしいなー」
「ごめんなさい!」
「はいはい。許してあげますよ~」
もともとあんまり怒ってない様子で彼氏はわたしのことを許してくれた。それにしてもこの大量のプリンはどうしよう。
「賞味期限切れが多いね」
「これだけの数を捨てるのはもったいないね」
「まあ、仕方ないよ」
彼氏がゴミ袋を持ってきた。「あとはやっておくよ」というので、私はお言葉に甘えた。リビングにいると、袋を縛り終えた彼氏が戻ってきた。今度は彼氏が甘える番で、ソファーに座る私の膝の上に頭を乗せて、横になった。しばらくの間、その状態で二人でテレビを見ていた。
二人で笑いながら見ていると、次第に小腹が空いてきた。彼氏はいつのまにか寝ていた。ゆっくりと頭をどかして、何か冷蔵庫になかったかなと、ソファーから立ち上がる。
プリンが一つ入っていた。捨て忘れたのかな? そう思って、手に取ると賞味期限がギリギリ過ぎていないものだった。おそらく彼氏がまだ食べられると見つけて取っておいてくれたのだろう。
わたしは、スプーンを棚から出して、プリンを食べた。
「う~ん、おいしい」
【解説&ヒントは↓をスクロール】
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〈ヒント「賞味期限が切れていないということは……?」〉
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【解説】
多くのプリンの賞味期限が切れている中で、切れていないということは、それは一番あたらしいプリンということで、そのプリンは毒入りだったはずです。つまり、主人公は毒入りプリンを口にしてしまった、ということですね。
それにしても、洗濯機から靴下が出てくるようにプリンが出てくる冷蔵庫とは一体何なのか?
たやすく猛毒を手に入れて、あっさり彼氏を毒殺しようとしている主人公はなんなのか?
別の部分で謎が深まるばかりですねえ。
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