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襲われた
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三十分の昼寝のつもりが、気づいたら数時間が過ぎていた。せっかくの休日が……。そんなこともあってか夜中になった今ぜんぜん眠気がやってこなかった俺は、なんとなく気紛れで夜道をぶらぶらと散歩していた。
季節は夏。半袖でも暑いくらいだ。月も出ていて、さほど暗くもない。
静寂と夜風を楽しみながらあてもなく歩いていると、道の反対側からこちらに向かって走ってくる女性を見つけた。街灯に照らされたその姿は、薄着でランニングシューズを履いている。その女性は時折立ち止まると、膝に手をついて肩で息をしていた。
早朝にランニングしている人はよく見かける。夜中にそういう人もいるだろう。そう思っていたら、その人物は俺のところに直進してくるではないか。なんだなんだと戸惑っている間に、その人物は俺の目の前までやって来た。
「た、助けてください……!」
よくよく見ると、服には赤い模様──血痕。怪我しているのかと聞くと、首を横に振られてしまう。観察したが、服は破れてないし血は乾いている。なにかがあったことがわかる。しかし、それはなんだろう。
事情を聞こうと口を開くがそれよりも先に「ついてきてください」と言われ、まあついていけば事情もわかるだろうと、俺は質問を後回しにしてとりあえずその女性についていくことにした。
しばらく走り、とあるアパートのドアの前までやってきた。一階の角の部屋だ。隣はすでに寝ているのか、そもそも住人がいないのか部屋の中が暗い。
ここまで来て、しかし女性は中に入るのを躊躇っていた。俺が中に入っていいか聞くと、、女性は首を小さく縦に振った。俺はドアノブを握る。鍵がかかっていないことを確認して、ゆっくりと開いていき、中の様子を覗き込んだ。
部屋の明かりはついていた。玄関からまっすぐ奥へと短い廊下があり、リビングと思われる部屋の真ん中で誰かが倒れていた。ピクリとも動かない。寝ているのか。でなければ……。
「あれは?」
ここで初めて俺は質問した。女性はうつむいていて、なかなか話してはくれなかったが、ぽつりぽつりと言葉を漏らした。
「あの人は……元カレです。以前同棲していたんですけど、だいぶ前に喧嘩してきっぱり別れたんです……。それが、なんでか知らないんですけど、今日の夜にいきなり部屋に入ってきて……手には包丁が握られていて……」
「襲いに来たのですね」
女性は首を縦に振った。
何かの拍子に復讐心に火が付いて衝動的に訪ねてきたのだろうか?
「それで、どうなったのですか?」
「はい。その……わたしも何しに来たのか聞いたんです。けど、あの人はなにか取り憑かれたように目がギラギラしていて、何も答えてくれなくて……」
「それから?」
「いきなり襲ってきたので、わたしは必死に部屋の中を逃げ回りました。何を言っても聞く耳を持ってくれなくて……。逃げ回っているうちに彼は床の小物につまずいて……、動かなくなっている隙にわたしは、開いていた窓から逃げてきました」
俺は恐る恐る倒れている人に近づいた。
血溜まりが広がっている。胸には一本の包丁が突き刺さっている。転んだ拍子に刺さったのだろう。
「警察に通報してください。大丈夫です。しっかり事情を説明すればわかってくれますよ」
俺は女性を安心させるために、そっと肩を引き寄せた。
【解説&ヒントは↓をスクロール】
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〈ヒント「女性の恰好に違和感が……」〉
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【解説】
窓から逃げたという割には、この女性は靴をしっかりと履いています。それに、その血痕はいつ服に付いたのでしょうか? どうやらこの女性は何か嘘をついているみたいですね。
季節は夏。半袖でも暑いくらいだ。月も出ていて、さほど暗くもない。
静寂と夜風を楽しみながらあてもなく歩いていると、道の反対側からこちらに向かって走ってくる女性を見つけた。街灯に照らされたその姿は、薄着でランニングシューズを履いている。その女性は時折立ち止まると、膝に手をついて肩で息をしていた。
早朝にランニングしている人はよく見かける。夜中にそういう人もいるだろう。そう思っていたら、その人物は俺のところに直進してくるではないか。なんだなんだと戸惑っている間に、その人物は俺の目の前までやって来た。
「た、助けてください……!」
よくよく見ると、服には赤い模様──血痕。怪我しているのかと聞くと、首を横に振られてしまう。観察したが、服は破れてないし血は乾いている。なにかがあったことがわかる。しかし、それはなんだろう。
事情を聞こうと口を開くがそれよりも先に「ついてきてください」と言われ、まあついていけば事情もわかるだろうと、俺は質問を後回しにしてとりあえずその女性についていくことにした。
しばらく走り、とあるアパートのドアの前までやってきた。一階の角の部屋だ。隣はすでに寝ているのか、そもそも住人がいないのか部屋の中が暗い。
ここまで来て、しかし女性は中に入るのを躊躇っていた。俺が中に入っていいか聞くと、、女性は首を小さく縦に振った。俺はドアノブを握る。鍵がかかっていないことを確認して、ゆっくりと開いていき、中の様子を覗き込んだ。
部屋の明かりはついていた。玄関からまっすぐ奥へと短い廊下があり、リビングと思われる部屋の真ん中で誰かが倒れていた。ピクリとも動かない。寝ているのか。でなければ……。
「あれは?」
ここで初めて俺は質問した。女性はうつむいていて、なかなか話してはくれなかったが、ぽつりぽつりと言葉を漏らした。
「あの人は……元カレです。以前同棲していたんですけど、だいぶ前に喧嘩してきっぱり別れたんです……。それが、なんでか知らないんですけど、今日の夜にいきなり部屋に入ってきて……手には包丁が握られていて……」
「襲いに来たのですね」
女性は首を縦に振った。
何かの拍子に復讐心に火が付いて衝動的に訪ねてきたのだろうか?
「それで、どうなったのですか?」
「はい。その……わたしも何しに来たのか聞いたんです。けど、あの人はなにか取り憑かれたように目がギラギラしていて、何も答えてくれなくて……」
「それから?」
「いきなり襲ってきたので、わたしは必死に部屋の中を逃げ回りました。何を言っても聞く耳を持ってくれなくて……。逃げ回っているうちに彼は床の小物につまずいて……、動かなくなっている隙にわたしは、開いていた窓から逃げてきました」
俺は恐る恐る倒れている人に近づいた。
血溜まりが広がっている。胸には一本の包丁が突き刺さっている。転んだ拍子に刺さったのだろう。
「警察に通報してください。大丈夫です。しっかり事情を説明すればわかってくれますよ」
俺は女性を安心させるために、そっと肩を引き寄せた。
【解説&ヒントは↓をスクロール】
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〈ヒント「女性の恰好に違和感が……」〉
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【解説】
窓から逃げたという割には、この女性は靴をしっかりと履いています。それに、その血痕はいつ服に付いたのでしょうか? どうやらこの女性は何か嘘をついているみたいですね。
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